この記事のまとめ
- 内定取り消しは法的に認められない場合もある
- 内定取り消しを受けたら大学のキャリアセンターや総合労働相談センターに相談しよう
- 取り消し理由に納得できない場合は見切りをつけるのも一つの選択肢
内定を承諾して就活を終えていたにもかかわらず、就職予定の企業から内定を取り消されてしまったらとても困りますよね。「就職したかったのにどうすることもできないのか」「これからどうすればいいのだろう」と困惑してしまう学生がほとんどでしょう。
できれば起こってほしくない事態ですが、内定を出した後に取り消す企業が稀に存在するのも事実です。その場合、内定取り消しに関する正しい知識をもって対処する必要があります。
この記事では、社労士の涌井さん、キャリアアドバイザーの谷所さん、大場さんの見解を交えつつ、内定取り消しにあった場合の対処法を解説していきます。すべての学生が知っておくべきことなので、最後までぜひ確認してくださいね。
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内定取り消しは起こり得る! 状況に応じた適切な行動を取ろう
内定の取り消しは通常であれば起こり得ないことです。企業は採用する人材を慎重に選んだうえであなたに入社してほしいと内定を通達しているので、その考えが簡単に覆ることはありません。しかし、それでも予測できない事態が起こって内定を取り消すことはあります。
記事ではまず、社労士の涌井さんが内定取り消しの違法性について解説。そして、内定を取り消された場合、考えられる原因と撤回できる可能性についても検討していきます。内定取り消しを受けた人は、自分のケースが不当なのかどうかを判断する材料としてください。
そして記事中盤では、違法な内定取り消しを撤回させる方法を解説しています。どのような手順を踏んで企業と交渉すれば良いのか押さえましょう。
また終盤では、内定後の落とし穴も解説しています。落とし穴に注意しなければ、内定取り消しの原因を自ら作ってしまうことになりかねません。内定獲得後も気を抜かず、社会人になる準備をしながら過ごしましょう。
一度承諾した内定を学生側から取り消したい場合は、こちらの記事を参考にしましょう。
内定承諾後の辞退で大惨事? 断り例文付きで不安別の対処法を解説
社労士が解説! 内定取り消しは違法なのか
過去には、内定の取り消しを受けた学生が企業を訴えた裁判が話題になることもありました。学生側の主張が認められたケースも多く、「内定取り消しは違法なのでは」と考えている学生も多いですよね。
ここでは社労士の涌井さんに、内定の取り消しが違法なのかどうかについて解説してもらいます。
アドバイザーコメント
涌井 好文
プロフィールを見る合理的な理由がなければ内定取り消しは違法とされる可能性がある
企業で働く場合には、企業と労働契約を締結することになります。新卒採用の場合、内定という段階を経て企業で実際に働くことになるでしょう。では、内定の時点では、労働契約は成立していないのでしょうか。
実は、企業が応募者に内定通知書を発行し、応募者が内定承諾書を提出することで労働契約が成立します。つまり、内定の段階で労働契約自体は成立しているとみなせるわけです。
また、契約自体は口頭でも成立するため、承諾書を必ず交わさなければならないわけではありませんが、書類とすることで証拠も残しているといえます。
内定取り消しは解雇に相当し得るので相当な理由が必要
内定の段階では、企業に内定取り消し事由に基づく解約権が留保されています。そのため、企業は一定の場合には内定という労働契約を解除することが可能です。そして労働契約の解除とは解雇に該当します。
解雇は無制限に許されるものではなく、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と法律で定められています。
これは内定取り消しの場合も同様であり、経歴詐称や内定後の犯罪行為、内定当時企業が知り得なかった重大な情報が発覚したなど、合理的な理由が内定取り消しには必要となります。
企業が定めている内定取り消し事由であれば、制限なく認められるわけではないことに注意しましょう。
内々定の段階で取り消された場合、内定取り消しとは事情が異なってきます。まずはこちらの記事を確認して、自分が内定なのか内々定なのかを把握しましょう。
内定とは? 内々定との違いから承諾・辞退の連絡まで徹底解説
内々定を取り消された場合の対処法は、こちらの記事で詳しく解説しています。
内々定を取り消しされる可能性は? 取り消されるケースや対処法を解説
なぜ内定を取り消された? 考えられる理由と撤回できる可能性
なぜ内定を取り消された? 考えられる理由と撤回できる可能性
- 卒業できなかった
- 必要な資格を取得できなかった
- 怪我や病気で就労が難しくなった
- 選考時に経歴を詐称していた
- 犯罪行為に及んだ
- ほかに採用したい候補者が現れた
- 経営状況が悪化した
内定の取り消しは解雇に相当します。そして法律では、下記のように規定されています。
労働契約法16条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
つまり、内定の取り消しも理由によっては不当なものとされ撤回させられる可能性があるのです。ここでは、内定を取り消された場合に考えられる具体的な理由と、その場合に撤回できる可能性があるのかどうかについて解説していきます。
卒業できなかった
企業に入社する社員には、職務に専念する義務があり、入社時には学校を卒業していることが前提となります。学生自身も入社を指定されている年次には卒業する見込みとして、企業の選考を受けていたはずです。
想定に反して学生が学校を卒業できなかった場合には、職務に専念できないため企業は内定を取り消さざるを得ません。この場合、合理的な理由として企業側の判断が認められる可能性が高いといえます。
内定が出ているにもかかわらず留年の可能性がある人は、こちらのQ&Aでキャリアアドバイザーがアドバイスしているので、ぜひ参考にしてください。
必要な資格を取得できなかった
入社までに資格取得を必須としている企業もあります。特に、入社直後に従事予定の業務に一定の資格が必須となる場合、資格を取得できなければ業務に大きな支障が出てしまいます。
その旨は、内定時に書面や口頭で担当者から説明があるはずです。よって、必要な資格を取得できなかった場合も、内定取り消しをする合理的な理由として企業側の判断が認められる可能性が高いといえます。
企業規模が小さく採用人数が少ない中小企業は、病気や怪我により想定した労働力が得られない場合や、必要な資格を取得できなければ、内定を取り消す可能性が比較的高いです。
社員数が少なく一人が欠けると会社への影響が大きいため、雇用できないと判断しやすい傾向があります。
- 入社までに必要な資格取得のために勉強していますが、不合格の場合は内定を取り消されるのでしょうか。
採用の条件であれば内定を取り消される可能性がある
内定が出た企業で働くために、一定の資格が必要である場合も多くあるでしょう。
しかし、すでに保有している場合ばかりではなく、合格見込みのような状況も考えられます。このような場合には、必要とする資格を保有していることが採用の条件です。そのため、合格できなければ内定は取り消されることになります。
もちろん保有していない資格を保有していると虚偽の申告をしていた場合も、同様に取り消されることになるでしょう。
具体的な例として、看護師として病院で働く予定の人が、看護師の資格を保有していないような状況を考えるとわかりやすいと思います。
怪我や病気で就労が難しくなった
内定者が入社前に怪我をし体に障害を負ってしまった場合には、想定していた労働能力が発揮できなくなってしまいます。また、病気により就労に耐えられない健康状態になってしまうこともあります。
これらの場合は、企業が内定取り消しをしたとしても、合理的な理由として認められる可能性が高いといえます。
内定後に健康状態が悪化するなどして、労働に耐えられなくなることもあり得ます。このような場合には、残念ながら内定は取り消される可能性があります。
ただし、内定当時に将来健康状態が悪化することを企業が知っていたような特殊な事情があれば、内定取り消しは許されません。
多くの企業では、内定通知後、健康診断を受けるよう指示があります。もし健康診断で病気が見つかれば、内定取り消しの理由になってしまうのでしょうか。こちらのQ&Aで、キャリアコンサルタントが解説しています。
選考時に経歴を詐称していた
選考時に学歴や取得資格など内定者個人の情報を詐称していたことが発覚して、内定を取り消されるケースが考えられます。
企業の採用選考では、詐称していた経歴も含めて判断し内定を出しているので、その情報が虚偽であれば、内定取り消しは正当だと認められやすくなります。
ただ、わざとではなく不本意で誤った情報を伝えてしまっていたり、虚偽の内容が軽微であれば、内定取り消しは正当とはされない可能性が高いでしょう。
こちらの記事では、履歴書でミスをしやすい項目を取り上げています。不本意だとしても、経歴の詐称として内定取り消しの理由を作ってしまうことがないように、チェックしたうえで履歴書を提出しましょう。
履歴書の誤字を見つけても焦らないで! 挽回できる方法を解説
意図的な経歴詐称が企業側に見抜かれるかどうかについては、こちらのQ&Aでキャリアアドバイザーが回答しています。
犯罪行為に及んだ
内定者が入社前に犯罪行為に及んだ場合、内定取り消しを受けてもおかしくありません。
刑事事件の被疑者を採用した場合、企業の対外的なイメージを下げてしまったり、社内の秩序に悪影響を与える可能性は高く、自社の社員としての適性がないと判断されても仕方がないためです。
そのため、刑事事件の被疑者として逮捕されたり、起訴されたという場合には、内定取り消しは正当な判断だと認められる可能性が高いです。
ほかに採用したい候補者が現れた
採用活動を継続している中でほかに採用したい候補者が複数現れて、すでに入社予定の学生の内定を取り消したいと一方的に通達する企業も、稀にですが存在します。
この場合は、企業側の判断に問題があるとされる可能性が高いので、総合労働相談コーナーや弁護士に相談して対処した方が良いでしょう。
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経営状況が悪化した
内定を出した後に災害など不測の事態で急速に経営が傾いた場合、内定者の内定を取り消すということはありえます。
このような内定取消しは、整理解雇の一種とされています。
整理解雇とは
企業が経営危機にあり、余剰人員を雇用し続けることが難しくなったときにおこなう、人員削減を目的とする解雇のこと
とはいえ、会社の経営が危機だからといって解雇が仕方ないとも言い切れません。整理解雇が正当だと認められるのは厳しい要件を満たす場合のみで、企業はできるだけ解雇を回避しようと努力しなければなりません。
そのため、会社側が一方的に経営悪化を理由に内定を取り消した場合、不当だと判断される可能性もあります。
- 身辺調査をされて宗教や親の仕事が発覚して内定を取り消されることはないのでしょうか?
信仰する宗教などを理由にして内定を取り消すことは違法
企業が内定予定者の身辺調査をすることはあります。その結果として内定を取り消す企業もあるかも知れません。しかし、内定の取り消しは解雇と同一視できるものであり、無制限におこなうことは不可能です。
内定取り消しには、内定当時に知り得なかった合理的理由が必要であり、重大な経歴詐称や犯罪行為の発覚などがなければおこなえません。そのため、親族の従事する仕事や、信仰する宗教などを理由として内定を取り消すことは違法となります。
また、家庭状況や信仰する宗教で不採用とすることは就職差別となり、憲法をはじめとするさまざまな法に触れる行為でもあります。仮にこのような差別を受けたと感じるのであれば、総合労働相談コーナーなどへ相談してください。
アドバイザーコメント
谷所 健一郎
プロフィールを見る内定の取り消しは企業側としてもやむを得ない状況で起こることが多い
内定の取り消しが起こり得るケースについて、特に多いものを紹介します。
ケース①卒業できなかった
単位不足などの理由で卒業できなくなり、内定を取り消すことがあります。内定は入社を前提として出されているので、卒業できなければ内定を取り消される可能性は高いでしょう。
私の経験でも、試験の成績が悪く単位不足で卒業できなくなったため、内定を取り消したことがありました。一方、半年後に卒業できる学生に対して、アルバイトとして新入社員研修に参加をしてもらい、正社員としての入社を半年遅らせる対応をおこなった経験もあります。
ケース②経営状況が悪化した
内定を出した後に企業の不正が発覚するなど不測の事態や災害が発生し、急激に経営状況が悪化すると、内定を取り消すことがあります。
特に中小企業では、ほかの事業でリカバリーすることが不可能で短い期間で業績が悪化し、社員の整理解雇と合わせて内定を取り消すことがあります。
ケース③業務に支障を与える要因が発覚した
病気や怪我で想定していた業務ができなくなれば、内定が取り消しになることがあります。病気や怪我ではありませんが、私の経験で選考時に長袖のため腕のタトゥーに気付かず、内定後に本人からの申告で判明したことがありました。
職務によっては問題ないこともありますが、半袖で接客をおこなうことがあるため、本人と話し合いのうえ内定を取り消したことがあります。
自己判断は危険かも! 内定取り消しを受けたときの身近な相談先
内定取り消しを受けた学生は、困惑やショックで冷静な判断ができない人が多くいます。誰かに相談しようとしても、内定が獲得できたと報告済みの友人や家族に取り消されたことを伝えるのは気が引けるという人もいるのではないでしょうか。
まずは、就活のプロや労働者向けの相談センターに話を聞いてもらい、状況を整理したり、これからの動きについてアドバイスをもらいましょう。「どうにかしなきゃ」と焦って行動に出ると、逆に自分を追い詰めることにもなりかねません。ここで紹介する相談先をぜひ利用してくださいね。
就活をしているとわからないことや悩むことが多くあり、相談したりアドバイスをもらいたい場面がありますよね。こちらの記事では内定獲得前と後、それぞれのフェーズに合う相談先を紹介しているのでぜひ参考にしてくださいね。
就活の相談先14選! 良い決断ができる相談相手の選び方も解説
内定取り消しという想像もしなかった事態のショックは大きく、とるべき次の行動もわからないものです。一人で抱え込んでいてもなかなか前に進めないでしょう。
まずは、自分の大学のキャリアセンターに足を運んで相談することから始めてください。
あなたが受けない方がいい職業を確認して下さい
就活では自分に適性がある仕事を選ぶ事が大事です。適性が低い仕事に就職すると、イメージとのギャップから早期の退職に繋がってしまうリスクがあります。
そこで活用したいのが「適職診断」です。簡単な質問に答えるだけで、あなたの強み・弱みを分析し、適性が高い職業・低い職業を診断できます。
強み・弱みを理解し、自分がどんな仕事に適性があるのか診断してみましょう。
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大学のキャリアセンター
各大学はキャリアセンターを設置し、学生の就活の悩み相談に乗ったりセミナーを開催して選考対策をおこなっています。
キャリアセンターで働いているスタッフは、さまざまな学生とかかわってきた人たちなので、就活に関するイレギュラーな事態も経験したことがある可能性が高いです。内定を取り消された自分の状況を伝えて、今後どうするべきかアドバイスをもらいましょう。
大学施設内であればすぐに行ける人が多いですよね。まずはキャリアセンターの職員に相談してみるのがおすすめです。
総合労働相談コーナー
総合労働相談コーナーは労働に関するトラブルの相談に乗ってくれる公的機関で、解決のための情報提供や、企業側の行為に違法性が疑われた場合に行政指導の権限を持つ担当部署に取り次ぐ役割を担っています。
各都道府県労働局、全国の労働基準監督署内など合計379カ所設置されていて、電話での相談も受け付けています。社会人に限らず、学生・就活生も利用できる機関なので気軽に相談しましょう。
まずは住んでいる地域の近くの総合労働相談コーナーに電話し、内定を取り消されたことや現在の状況を伝えてアドバイスをもらいましょう。
総合労働相談コーナーは、賃金や労働時間などの一定の事項だけでなく、あらゆる分野の労働問題について相談可能です。
自分が相談したい内容がどの分野に該当するのかわからないような場合には、まず総合労働相談コーナーに相談してみると良いでしょう。
違法な内定取り消しを撤回させたいときの対処法
違法な内定取り消しを撤回させたいときの対処法
- 内定を受けた証拠を用意する
- 企業に内定取り消しの理由を確かめる
- 弁護士に相談する
- 企業に対して内定取り消しの無効を主張する
ここからは、内定取り消しを撤回させるためにどのような手順を踏んで企業との交渉を進めれば良いかについて解説します。
ただ、内定の取り消しを無効とするには法律に関する知識が必要で、学生一人で成し遂げるのは難しいといえます。そのため、まずは先に挙げた総合労働相談コーナーに相談するなど周囲の協力を得るようにしてくださいね。
①内定を受けた証拠を用意する
内定取り消しの撤回に向けて企業と交渉するうえでは、メールや書類など内定を受けた証拠が必要になります。
入社日の通知、必要書類提出の案内、研修の案内などが内定があったことの証拠になります。これらが記載されたメールや書類は失くさないように保存し、企業側に対して証拠として提示できるようにまとめておきましょう。
内定を受けた証拠になるものの例
- 内定通知書
- 必要書類提出の案内
- 研修の案内
- 内定式の案内
- 入社日の通知
通常、内定の証拠としては通知書や承諾書の写しなどを保管しておけば問題ありません。しかし、口頭で内定を伝えられる場合もあり、そのような場合にはできる限り正確に日時や場所、内容を覚えておきましょう。
また、メールの場合にはメールを保管し、クラウドなどでバックアップを取っておくと安心です。
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②企業に内定取り消しの理由を確かめる
会社が内定を取り消した理由がわからなければ、正当な取り消しなのかどうかが判断できません。取り消しの連絡を受けた際に理由を説明されていなければ、問い合わせて説明を求めましょう。
口頭ではなく、メールや書面でも連絡をし、後からでもやりとりの内容を見返せるようにしておくのが大切です。
取り消しを撤回させたい場合は、やりとりは慎重におこなう必要があります。キャリアセンターの職員など身近な人に相談しながら、企業との交渉を進めましょう。
内定取り消しは解雇に相当し、正当な理由なくおこなえません。そのため取り消された場合には、その理由が正当かどうか確かめることが重要です。
問い合わせに対して企業が答えてくれる場合は良いのですが、もし答えてくれない場合には、弁護士などの専門家を通して問い合わせると良いでしょう。
③弁護士に相談する
内定取り消しをどうしても撤回したい場合は、弁護士を立てて企業と交渉するのがベターです。内定の取り消しは、企業特有の取り消し事由があったり、解雇に相当することを企業側が正しく理解しておらず交渉が難航するケースが多いです。
初回の相談であれば無料で受け付けている弁護士事務所も多いため、労働案件の経験が豊富な弁護士にぜひ相談しましょう。
④企業に対して内定取り消しの無効を主張する
弁護士に相談のうえ内定の取り消しを無効とさせることを決めたら、会社に対し内定時点で労働契約を締結していることを主張したうえで、労働者としての地位確立や予定通り入社できるよう対応を求めることになります。
弁護士を挟んで会社との交渉を進めると、費用はかかりますが、迅速かつ適切に手続きを進められる可能性が高いでしょう。
裁判に発展したケースもある
交渉で解決しない場合は、労働審判もしくは訴訟を起こすことも選択肢として考えられます。内定者は、撤回を求めることも含めて次のような法的手段を取ることができます。
内定者が取れる法的手段
- 内定取り消しの撤回を求める
- 賃金を請求する
- 損害賠償を請求する
裁判所で争う場合の期間は、労働審判であれば3カ月程度、訴訟であれば1年から2年程度と想定されます。ただ、それだけの時間を使ったとしても入社できる確証があるわけではありません。リスクを踏まえた判断が必要になります。
一方的に内定を取り消されたら見切りをつけるのも一つの選択肢
内定取り消しの理由に納得できない場合、学生側から見切りをつけるというのも選択肢の一つです。
納得できない理由で、一方的に内定取り消しを伝えてくるような企業で働きたいとは思えない人もいますよね。
内定取り消しを撤回させるために企業と争うのには費用も時間もかかります。それだけのコストをかけて、それでもその会社で働きたいか、自分にメリットはあるのかを想像してみてください。
そこまでの価値がその企業にないと判断するのであれば、早々に見切りをつけてさらに良い企業を探した方が最終的に幸せになるかもしれません。
アドバイザーコメント
大場 美由紀
プロフィールを見る選択肢はその企業だけではない! 冷静に自分のキャリアを考えよう
交渉しようかどうか迷っているのなら、とりあえず就活を再開する覚悟はしておきましょう。就活再開をまったく想定していないと、必要となったときのスタートが遅れてしまいます。
企業側は内定取り消し理由について違法であるという認識は持っていないからこそ、内定取り消しという手段をとっているのでしょう。よって、いくら不当だと思っても自分では交渉しきれないことが考えられます。
仮に弁護士を立てても交渉で解決できずに、訴訟を起こすとなると時間と費用を要することは目に見えています。
大事なのは「ここでキャリアを築きたい」と思える企業に入社すること
そもそも不当だと思える内定取り消しをおこなうような企業が、自分のファーストキャリアで良いのでしょうか。あるいは何の後ろめたさも引きずらずに、その会社に貢献したいという想いで働いていくことができるでしょうか。もう一度、冷静に自分に問いかけたうえでどうするか決めましょう。
就活を再開するためにもう一度立ち上がるのは、大変なエネルギーを要することは確かです。ですが、入社してすぐに転職するようなことにならないための覚悟を持った決断をしましょう。
取り消し理由を自ら作らないように注意! 内定獲得後の落とし穴
最後に内定を出された学生に向けて、取り消しを受けないために注意するべきことを解説していきます。
内定を出されて安心する気持ちはとてもよくわかりますが、ここからは入社に向けた準備をする段階です。緊張を完全に解くのではなく、社会人に向けてさらに気を引き締めていきましょう。
特に以下の2つは、内定獲得後の学生が陥りやすい落とし穴です。くれぐれも注意してくださいね。
SNSの扱い
TwitterやInstagramなどのSNSを利用しているときは、プライベートな時間なので油断している人も多いのではないでしょうか。しかし、その投稿は不特定多数の人に見られる可能性があり、その中には企業の関係者も含まれるかもしれません。
SNSを通じて公序良俗に反する行為などが見られると、内定を取り消される理由になりかねません。匿名だとしても誹謗中傷などルール違反な行為は開示請求によって突き止められ、そのほかの方法で本人が特定されるケースもあります。
節度のあるSNSの扱いを心掛けましょう。
- 内定者のSNSの投稿をチェックしている企業はあるのでしょうか。
チェックをおこなう企業は多い! 裏アカウントも油断できない
社員が公序良俗に反する行為をおこなうことで業績が悪化するケースがあるので、内定者のSNSの投稿をチェックしている企業はあります。
選考時にチェックする企業もありますが、公共の場での迷惑行為や特定の人物の誹謗中傷などが発覚すれば、内定取り消しにつながる可能性もあります。
人事が調査をおこなうこともあれば、専門の調査会社に依頼をして、SNSの裏アカントまでチェックすることがあります。
メールや書類の確認漏れ
書類の提出を求められたり、内定式への参加を案内されたのに、メールや郵送物の確認漏れで対応しなかった場合、入社への準備が進まず企業に迷惑をかけてしまいます。企業からも「本当に入社する気があるのか」と不信感を抱かれても仕方がありません。
郵送物やメールは適宜確認が漏れていないかチェックするようにしましょう。メールの場合は、迷惑メールに自動で振り分けられてしまうケースがあります。迷惑メールも定期的に確認するようにしましょう。
内定通知書が手元に届かない場合、自分から企業に問い合わせるべきか悩む人もいますよね。こちらのQ&Aでキャリアアドバイザーが適切な確認の仕方を解説しているので参考にしてくださいね。
アドバイザーコメント
大場 美由紀
プロフィールを見る内定獲得後は企業の一員になる準備を始めよう
まず気を付けなければならないことは、きちんと卒業するということです。以前、内定はもらっていたにもかかわらず、卒業のための単位数がギリギリで足らなくなりそうで慌ててキャリアセンターに相談に来た学生がいました。
原因はレポートの未提出でした。単位は余裕を持って計画的に取得しておくようにしましょう。
企業側に提出する書類も期限は厳守しましょう。提出期限が守れないようでは、入社前から印象は悪くなります。まして提出を忘れてしまっていると、内定を取り消されてしまうこともあるかもしれません。
SNSの扱いには要注意
また、SNSの投稿には注意が必要です。内定が出て気持ちが緩み、非常識な投稿や、誹謗中傷につながる投稿はしないようにしてください。企業側の人事もSNSをチェックしていることが多々あります。不適切な投稿は、内定先企業の社会的な信用を落とすことにもなりかねません。
怪我や病気にも気を付けましょう。大きな怪我や病気で業務に影響するとなると、内定取り消しとなってしまうこともあり得ます。
まだ学生とはいえ、健康管理も含め、企業の一員として迎え入れられる準備と心構えを忘れないようにしましょう。
内定取り消しを受けたら自分が納得いくかたちで就活を終えよう
内定取り消しを受けた場合でも、重視するべきは自分が納得いくかたちで就活を終えることです。企業に内定取り消しを撤回してもらうより、もっと自分に合った企業に入社する方が納得いくのであれば、就活を再開しましょう。
ただ、リスクを承知のうえでそれでも内定取り消しの無効を主張したいと考えるのであれば、それが自分にとって納得いくかたちで就活を終えるために必要なことだといえます。
総合労働相談センターや弁護士など自分の味方になってくれる人はいるはずです。毅然とした態度や心持ちで自分の権利を主張しましょう。
アドバイザーコメント
谷所 健一郎
プロフィールを見る内定後の不測の事態には適切な相手に相談したうえで行動しよう
企業の業績悪化などが原因で内定を取り消されるかもしれないと不安に感じているならば、入社して頑張りたい意思を示したうえで、現状について採用担当者に確認をしてみると良いでしょう。
採用担当者の説明で疑問や不安が払拭できなければ、就活を継続した方が良いですね。
業績不振を理由として内定を取り消された場合は、電話だけでなく書面やメールで理由を説明してもらい、大学のキャリアセンターや労働基準監督署に相談しましょう。業績不振による内定取り消しであれば、弁護士を通して和解金などの交渉ができる可能性があります。
今後の糧になる経験と思って諦めずに再スタートしよう
内定を取り消されると今後の見通しが立たず不安になりますが、内定を取り消すような企業であれば、入社しても遅かれ早かれ解雇になるかもしれません。気持ちを切り替えて就活をスタートしましょう。
まったくエントリーできる企業がなければ就職留年という選択肢もありますが、できれば別の企業で内定をもらえるように頑張ってみることをおすすめします。志望度が低い企業でも入社をして経験を積み、将来転職をするという選択肢もあります。
つらい経験をしたことはきっと今後の糧になります。諦めずに頑張ってください。
執筆・編集 PORTキャリア編集部
> コンテンツポリシー記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi
3名のアドバイザーがこの記事にコメントしました
社労士/涌井社会保険労務士事務所代表
Wakui Yoshifumi〇平成26年に神奈川県で社会保険労務士事務所を開業。企業の人事労務相談や給与計算などを請け負う。また、関与先企業の社員のキャリアプランなどに関してアドバイスをしている
プロフィール詳細キャリア・デベロップメント・アドバイザー/キャリアドメイン代表
Kenichiro Yadokoro〇大学でキャリアデザイン講座を担当した経験を持つ。現在は転職希望者や大学生向けの個別支援、転職者向けのセミナー、採用担当者向けのセミナーのほか、書籍の執筆をおこなう
プロフィール詳細キャリアコンサルタント/フィナンシャルプランナー
Miyuki Oba〇大学などでカウンセリングや講義、企業や行政における新人研修・セミナーなどに多数登壇。ファイナンシャルプランナーおよび小論文講師としての知見も加味したアドバイスをおこなう
プロフィール詳細