
就活で「やりたいことがわからない」と悩むのは自然なこと
就活を始めると、多くの学生が一度は「自分は何がしたいんだろう」と立ち止まります。私は大学でのキャリア支援やキャリアカウンセリングを通して、この悩みを何度も聞いてきました。むしろ、就活にきちんと向き合おうとしている学生ほど、この壁にぶつかりやすいように感じています。
企業は選考のなかで、「入社したら何がしたいですか」「将来どのような姿を目指していますか」とたずねてきます。そうすると、「やりたいことがはっきりしていない自分はだめなのでは」と不安になるかもしれません。
でも、やりたいことがわからない状態は、決して珍しいことではありません。今すぐきれいな答えを出せなくても大丈夫です。焦って無理に答えを作ろうとしなくて良いのです。
本コラムのコンセプト
生成AIによる一般的な情報がすぐに手に入る時代。就活生や求職者にいま求められているのは、経験や体験に基づく血の通ったアドバイスではないか。そうした読者のニーズに応えるために、編集部がテーマを選定し、参画するキャリアコンサルタントらに寄稿いただくコラム企画を始めました。自身の経験や実アドバイスをベースに、綺麗事を一切排除した本音の就活対策をお届けします。
私が見てきた「やりたいことがわからない」の中身
「やりたいことがわからない」の中身
「やりたいことがわからない」と言っても、その中身は人によって少しずつ違います。
仕事を十分に知らない
一つは、世のなかにどんな仕事があるのかを、まだ十分に知らないケースです。
仕事研究が進んでいないと、そもそも選択肢が少ないまま「やりたいことがない」と感じてしまいます。
理想の仕事を探しすぎている
もう一つは、理想の仕事を探しすぎているケースです。「本当に好きなこと」「絶対に向いていること」「ずっと続けたいこと」を最初から見つけようとして、かえって動けなくなってしまうのです。
私はこれは、能力がないというより、真剣に考えているからこそ止まってしまっている状態だと思っています。就活では、最初からはっきりした答えを持っている人のほうが少ないものです。
「好きなこと」を無理に見つけなくても良い
就活では、「好きなことを仕事にしよう」と言われることがあります。もちろん、好きなことがはっきりしている人にとっては、それが大きな軸になります。
ただ、実際には、そこまで明確に見えている学生ばかりではありません。そんなとき、私は「好き」だけで考えなくても良いと思っています。
たとえば、「この会社の考え方に共感できる」「この商品やサービスは人の役に立っていると感じる」「説明会で話していた社員の雰囲気が良かった」。そのくらいの入り口でも十分です。
実際に、説明会で出会った社員に惹かれて選考を受けた学生や、たまたま知った業界に興味を持って進路が変わった学生、インターンで職場の空気を知って志望を決めた学生を、私はこれまで何人も見てきました。
最初から「これが大好き」と言い切れなくても大丈夫です。まずは、少し気になる、なんとなくいいと思える、共感できる。そこから始めて良いのです。
企業が「やりたいこと」を聞くのはなぜか
学生のなかには、「やりたいことがないと面接で不利になるのでは」と心配する人もいます。けれど、企業が知りたいのは、壮大な夢があるかどうかだけではないと私は感じています。
見ているのは、「この人は自社で前向きに働けそうか」「自分なりに考えて行動できるか」といったところです。つまり、完成された将来像よりも、今の時点で何に関心を持ち、どんなことに価値を感じているのかのほうが大切なのです。
ですから、「まだ明確ではありませんが、人の生活を支える仕事に関心があります」「ものづくりそのものより、それをどう届けるかに興味があります」といった答え方でも十分です。
大事なのは、立派な夢を語ることではなく、自分の言葉で話せることです。少しあいまいでも、自分なりに考えたことが伝わるほうが、相手の心には届きやすいと私は思います。
「適職」よりも「納得感」で考えてみる
就活では、「自分に向いている仕事を見つけたい」と考える学生が多いです。もちろん、その視点も大切です。ただ実際には、仕事はやってみないとわからない部分がとても多いと感じています。
最初は向いていないと思っていた仕事が、やってみたら意外と合っていたということもあります。逆に、良さそうに見えた仕事が、実際にはそうでもなかったということもあります。
だからこそ、「絶対にここしかない」と考えるより、「この会社なら今の自分でも前向きに頑張れそう」と思えるかどうかを大事にしてほしいのです。
私は学生に、「100点満点の企業を探さなくて良い」とよく伝えます。100%理想どおりの企業はなかなかありません。だからこそ、70%くらい納得できれば十分です。そのくらいのほうが、かえって前に進みやすくなります。
やりたいことは、考えるだけでは見つかりにくい
ここは、私が学生支援の現場で強く感じていることです。やりたいことは、頭のなかだけで考え続けても見つかりにくいものです。むしろ、動いた先で見えてくることのほうが多いように思います。
自己分析だけでやりたいことが見つかった人より、実際に行動した結果として見つかった人のほうが多いと感じます。説明会に参加したり、企業研究をしたり、インターンに行ったりするなかで、「意外とこういう仕事が気になる」「この雰囲気は自分に合いそう」と、少しずつ感覚が育っていくのです。
自己分析はもちろん大切です。ただ、それだけで答えを出そうとしすぎると苦しくなります。少し考えたら、少し動く。その繰り返しが、自分の進みたい方向を見つける近道になることは多いです。
夢がはっきりしていない人には、その人なりの進み方がある
キャリアの進み方には、大きく分けて二つのタイプがあると私は感じています。一つは、明確な夢や目標に向かって進むタイプ。もう一つは、その場その場で経験を重ねながら、自分の道を作っていくタイプです。
前者のように、最初から目標がはっきりしている人もいます。一方で、後者のように、やりながら見つけていく人もたくさんいます。私は、後者もとても自然なキャリアの築き方だと思っています。
最初の就職先を、人生の最終結論のように考えすぎなくて良いのです。最初の一社は、あくまでスタート地点かもしれません。その一歩を踏み出した先で、次の選択肢が見えてくることは少なくありません。
やりたいことがわからないときに、まずやってほしいこと
やりたいことがわからないときにやってほしいこと
やりたいことがわからないとき、私ならまず三つのことを勧めます。
業界・企業・職種で見てみる
一つ目は、業界・企業・職種を分けて見てみることです。
業界だけで判断するのではなく、そのなかにどんな企業があり、さらにどんな職種があるのかまで見ていくと、「思っていたより幅広いな」と感じるはずです。
企業が誰をどうやって幸せにしているか考える
二つ目は、その企業が「誰を、どうやって幸せにしているのか」を見てみることです。
給料や知名度、福利厚生だけでなく、その企業の商品やサービスがどんな価値を生み出しているのかに目を向けると、共感できるポイントが見つかりやすくなります。
一人で抱え込まない
三つ目は、一人で抱え込まないことです。
就活は迷って当然です。だからこそ、キャリアセンターやキャリアカウンセリングを活用してほしいと思います。
相談することで、自分の考えが整理され、「今の自分はここで迷っていたんだな」と見えてくることは本当に多いです。
就活でやりたいことがわからないあなたへ伝えたいこと
「やりたいことがわからない」という悩みは、就活に本気で向き合っているからこそ出てくるものです。いい加減に決めたくない、自分に合わない道を選びたくない。そう思うからこそ迷うのだと思います。
だからこそ、無理にきれいな答えを作らなくて大丈夫です。好きなことが見つからなくても、共感できるところから始めれば良い。適職にこだわりすぎず、納得感を大事にすれば良い。明確な夢がなくても、行動しながら見つけていけば良いのです。
やりたいことは、じっと考えているだけで突然見つかるものではなく、少しずつ動くなかで輪郭が見えてくるものです。今はまだわからなくても大丈夫です。まずは一つ、行動してみてください。その一歩が、次のヒントを連れてきてくれるはずです。
執筆・編集 PORTキャリア編集部
> コンテンツポリシー記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi




