新卒で「やめたい」と感じたあなたへ。会社を辞める前に考えたいこと

この記事の執筆者 幅広い業界での経験とキャリア支援実績がある専門家が書き下ろしました
瀧本 博史
瀧本 博史
キャリアコンサルタント/キャリアコンサルティング技能士
Hiroshi Takimoto〇年間約2000件以上の就活相談を受け、これまでの相談実績は60000件超。30年以上の実務経験をもとに、就活本を複数出版し、NHK総合の就活番組の監修もおこなう。キャリコンリンク代表。国立大学の特任講師や大学内での就職講演も担当。就活生の不安を払拭し、一人ひとりの強みを見出すきめ細やかな支援が強み。

「新卒で入社したばかりなのに、もう会社をやめたい。」

「日曜日の夜になると、明日から会社に行くのがつらくてため息が出る。」

こうした「新卒でやめたい」という気持ちは、決してあなただけのものではありません。4月に社会人になって数カ月経つ春から初夏は、多くの人が仕事や職場に違和感を覚え始める時期です。

国の調査では、大卒で就職した人のおよそ3人に1人が、入社から3年以内に会社を辞めているとされています。「新卒で辞めるなんて甘えなんじゃないか」と自分を責めてしまいがちですが、実際には珍しいことではありません。

だからこそ、「新卒でやめたい」と感じたときに、すぐに会社を辞めるかどうかだけで判断してしまうのはもったいない場面もあります。いったん立ち止まり、自分の本音と状況を整理してから、納得のいく選択をしていきましょう

本コラムのコンセプト

生成AIによる一般的な情報がすぐに手に入る時代。就活生や求職者にいま求められているのは、経験や体験に基づく血の通ったアドバイスではないか。そうした読者のニーズに応えるために、編集部がテーマを選定し、参画するキャリアコンサルタントらに寄稿いただくコラム企画を始めました。自身の経験や実アドバイスをベースに、綺麗事を一切排除した本音の就活対策をお届けします。

新卒で「やめたい」と感じたとき、まず確認したい3つのポイント

新卒で入社した会社を辞めたいと思ったときに、いきなり退職願を書く必要はありません。まずは、次の3つを順番に確認してみましょう。

①「何が嫌なのか」をできるだけ具体的にする

「全部嫌だ」「とにかく会社に行きたくない」と感じるときでも、よく振り返ると原因は複数あることが多いものです。

  • 仕事内容そのものが苦痛なのか
  • 上司や先輩との人間関係がつらいのか
  • 労働時間や通勤時間など、働き方が負担になっているのか
  • 同期との比較や評価がストレスになっているのか

「昨日一番つらかった場面はどこだったか」を思い出しながら、ノートやスマホに箇条書きで書き出してみてください。新卒で「やめたい」と感じる本当の理由が分かると、取るべき対策も見えてきます。

②今の会社内で変えられることはないか確認する

「新卒 やめたい」と感じた瞬間に、「転職サイトを開いて、今すぐ応募先を探さなきゃ」と行動する人もいます。ですが、その前に「今の会社で、自分が動けば変えられることはないか」を一度探ってみてください

  • 上司に、仕事の進め方や負担感を素直に相談してみる
  • 先輩に、教え方やかかわり方についてお願いしてみる
  • 別部署への異動相談ができないか、総務や人事に聞いてみる

何もせずに新卒で会社を辞めるのと、できる限りのことを試したうえで「やめる」と決断するのとでは、その後の納得感が大きく違ってきます。うまくいかないこともありますが、「やれることはやった」という実感は、次の職場に行ってからも自分を支えてくれます。

③心と体が限界を超えていないか問いかける

一方で、「新卒だから多少つらくても我慢しなきゃ」と頑張り過ぎてしまう人もいます。次のような状態が続いているなら、「やめたい」と悩むよりも「今すぐ環境を変えるべき」場面かもしれません。

  • ほぼ毎日のように怒鳴られる、人格を否定するような言葉を浴びる
  • 休日も仕事の不安で頭がいっぱいで、まったく休めた気がしない
  • 会社のことを考えると涙が出る、寝つけない・何度も目が覚める・食欲がない

こうした環境は、心の健康を大きく損なう可能性があります。厚生労働省も、職場のパワハラ(パワーハラスメント)や強い心理的負荷がうつ病などの精神障害の原因になりうると認め、労災認定基準の明確な評価対象としています。

「新卒で辞めるかどうか」以上に、まずは自分の心と体を守ることが優先です。社内の産業医(いない会社もあります)やメンタルヘルス相談窓口、地域の相談機関、心療内科など、社外の専門家も含めて早めに頼ってください

「やめたい」の奥にある感情を言葉にしてみる

新卒で会社を辞めたいと思ったとき、その一言の裏側には、いろいろな感情が重なっています。

  • 上司の顔色をうかがってばかりで、自分の意見が言えない
  • 誰が読むのかわからない資料の修正ばかりで、自分の存在意義が感じられない
  • 同期は楽しそうに見えるのに、自分は輪に入れず孤立している気がする

「会社が嫌なのか」「仕事が嫌なのか」「人間関係がつらいのか」。

新卒で「やめたい」と感じた原因を、できるだけ具体的な出来事に落とし込むほど、問題の正体がはっきりしてきます

新卒が会社を「やめたい」と思いがちな3つのパターン

多くの新卒の方と向き合っていると、「やめたい」という悩みは、だいたい次の3つのパターンにまとまることが多いと感じます。

①入社前とのギャップにショックを受ける

就活のとき、企業はどうしても一番良い部分をアピールします。

華やかなプロジェクトややりがいのある仕事の話を聞いて入社したのに、実際は地味な作業や雑務が中心で、「想像していた新卒の仕事と違う」とショックを受けるケースです。

このように、期待していた姿と現実とのギャップに戸惑う状態は、「リアリティショック」と呼ばれています。真面目で期待値が高かった人ほど、「自分はただの歯車なのかな」と落ち込みやすいタイミングです。

②「同期と比べて、自分だけできていない」と感じる

電話対応や来客対応、ちょっとした報連相。まわりの同期はスムーズにこなしているように見えるのに、自分は失敗が多くて落ち込む――そんな不安から、新卒で「やめたい」という気持ちが強くなる人もいます。

ただ、入社して数か月の「できなさ」は、ほとんどが「慣れていないだけ」です。同期と自分を比べるのではなく、「先週の自分より、今週の自分が少しでもできることが増えたか」という視点で見てみてください。

③明らかにおかしい環境で消耗している

一方で、「新卒 やめたい」というより、「ここにいたら本当にまずい」と言える職場もあります。

  • 日常的な暴言や、人格を否定するような叱責
  • 明らかに違法な長時間労働が続き、休みもほとんど取れない
  • ミスをしていないのに、人前で何度も怒鳴られる

こうした環境は、「我慢すれば成長できる」といったレベルではありません。心身の不調が出ているなら、早めに環境を変えることも立派な選択肢です

新卒で会社を辞める前に、試しておきたい2つのこと

「新卒 やめたい」と悩んでいるなら、退職の前に、次の2つだけでも試してみてください。

①「誰にも見せないノート」に気持ちを書き出す

頭の中で考え続けると、悩みはどんどん膨らんでいきます。まずは、「自分だけが読むノート」を1冊用意して、今の気持ちを書き出してみましょう

  • 最近一番つらかったことは何か
  • 誰のどんな言葉が刺さっているのか
  • この状態があと1年続いたら、自分はどうなっていそうか
  • もし今、何の制約もなく仕事を選べるとしたら、どんな仕事をしたいか

うまくまとまっていなくてかまいません。書いているうちに、「自分はこんなことを大事にしたいんだ」「本当はこうしたかったんだ」といった本音が見えてきます

②「今の会社で」動いてみる

もう一つは、「今の会社で、自分が動けば変えられることはないか」を試してみることです

たとえば、ある新卒の方は、「この会社では自分のやりたい仕事は一生できない」と思い、転職を決意して相談に来ました。詳しく話を聞いてみると、その人のやりたい仕事は、同じ会社の別の部署に存在していました。

そこで、「辞める前に、一度だけ会社のなかで動いてみませんか?」と提案し、上司や人事に「今の仕事では力を発揮できている実感がないが、〇〇の部署なら自分の強みを活かせると思う」と率直に伝えてもらいました。結果として、半年後に希望していた部署への異動が実現し、その会社で生き生きと働いている、というケースもあります。

もちろん、いつも希望通りうまくいくわけではありません。それでも、新卒で「やめたい」と感じたときに、一度は会社のなかで動いてみた経験は、その後どこで働くにしても必ず役に立ちます。

早期離職のメリットと、向き合っておきたい現実

新卒の方が会社をやめることには、メリットもあれば、現実的なハードルもあります。

合わない環境から離れることで見えてくるもの

合わない職場から離れることで、「自分にはこういう環境は合わない」ということを身をもって知ることができます。これは、次の仕事を選ぶときにとても役立つ材料です。

  • 自分が大事にしたい価値観
  • 働きやすいと感じる組織の雰囲気
  • ストレスが溜まりやすい仕事の進め方

新卒で一度ミスマッチを経験すると、次の職場選びでは、こうした軸がより明確になっていきます

「早期離職」という事実はどう見られるか

一方で、新卒で半年~1年程度で会社を辞めると、採用する側から「またすぐ辞めてしまうのでは」と心配されることもあります。早期離職の経験者自体は珍しくなくても、「なぜ辞めたのか」は必ずと言って良いほど聞かれます。

そのときに大切なのは、「上司と合わなかったから」「仕事がつまらなかったから」で終わらせないことです。

  • 何が合わなかったのか
  • そこから何を学んだのか
  • 次の職場で何を実現したいのか

この3点を自分の言葉で整理しておけば、新卒で「やめたい」と悩んだ経験も、次のチャレンジにつながるストーリーになります。

「自分で決めた」と言えるかどうか

最後に、大事なのは「辞めたか・辞めなかったか」そのものよりも、「自分で考え、自分で決めた」と胸を張って言えるかどうかです。

「周りの新卒がどんどん辞めているから自分も……」

「なんとなく不安だから、とりあえず辞めてみる」

「面倒なことから逃げたいから退職する」

こうした流れで勢いだけで辞めてしまうと、次の職場でも同じような壁にぶつかる可能性が高くなります。

一方で、「十分に考えたうえで自分で選んだ」と思えていれば、どちらの選択をしても、その後の行動は違ってきます

新卒で辞めると決めたなら

  • なぜ辞めるのか、次の職場でどんな働き方をしたいのかを整理しつつ、退職のタイミングや生活費、転職活動の計画を現実的に組み立てていきましょう。

今の会社に残ると決めたなら

  • 「あと3年間、この会社を自分の成長のために使い倒す」と決めて、身につけたいスキルや築きたい人脈を書き出してみてください。「いつまでに何をできるようになるか」を決めることで、毎日の仕事の意味合いが変わってきます。

新卒で「やめたい」と悩んでいる今の時間は、決して無駄ではありません。この悩みと丁寧に向き合うことが、これからのキャリアの大切な土台になっていきます。

執筆・編集 PORTキャリア編集部

明日から使える就活ノウハウ情報をテーマに、履歴書・志望動機といった書類の作成方法や面接やグループワークなどの選考対策の方法など、多様な選択肢や答えを提示することで、一人ひとりの就活生の意思決定に役立つことを目指しています。 国家資格を保有するキャリアコンサルタントや、現役キャリアアドバイザーら専門家監修のもと、最高品質の記事を配信しています。

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記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi

高校卒業後、航空自衛隊に入隊。4年間の在籍後、22歳で都内の大学に入学し、心理学・教育学を学ぶ。卒業後は人材サービスを展開するパソナで、人材派遣営業やグローバル人材の採用支援、女性活躍推進事業に従事。NPO(非営利団体)での勤務を経て、「PORTキャリア」を運営するポートに入社。キャリアアドバイザーとして年間400人と面談し、延べ2500人にも及ぶ学生を支援。2020年、厚生労働大臣認定のキャリアコンサルタント養成講習であるGCDF-Japan(キャリアカウンセラートレーニングプログラム)を修了

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