自己PRが作れないという悩み
「自分をPRしてください」と言われると、「よほど説得力のあるすごいことを言わないといけない」と多くの人は無意識に思うのではないでしょうか。
そして、普通に生活している人にとっては、そんな経験がなかなか見つからないのも無理はありません。だから話を盛ってみたり、ちょっと嘘を挟んでしまったりすることが起こります。
それもこれも「PR」という言葉が良くないのではないかと私は思っています。PRしようと思うから見つからないのです。
本コラムのコンセプト
生成AIによる一般的な情報がすぐに手に入る時代。就活生や求職者にいま求められているのは、経験や体験に基づく血の通ったアドバイスではないか。そうした読者のニーズに応えるために、編集部がテーマを選定し、参画するキャリアコンサルタントらに寄稿いただくコラム企画を始めました。自身の経験や実アドバイスをベースに、綺麗事を一切排除した本音の就活対策をお届けします。
企業が自己PRを聞く意図
企業が自己PRを聞く意図
企業が学生を採用する理由は、突き詰めれば一緒に仕事をしてくれる仲間探しです。その人が仕事仲間(家族や恋人や友達ではない)としてふさわしいかどうかを判断するために、何が適切か考え抜かれたうえで、採用試験が構成されています。
そう考えていただくと、自己PRの位置づけがなんとなくわかると思います。
「あなたはどんな人か」を知りたい
仮にあなたが採用側であったとしたら、まず初対面の応募者にきいてみたいのはどんなことでしょう。おそらく「あなたはどんな人なのか?」ではないかと思います。
もっと具体的に言えば「これまでどういう考えでどんなことをしてきた人なのか」ということになるだろうと思います。
最初のこの問いを安易に「自己PR」と言ってしまうから、何がききたいのかがよくわからなくなってしまうのではないでしょうか。これは厳密にいえばPRではありません。
過去の経験を通して成長可能性を判断したい
具体的にこれを言い換えると、少しくどい言い方になりますが、会社側は「これまでの経験でどういう考え方や行動をする人なのかを根拠をもって伝えてもらいたい」、「それが会社に入ってからの業務にどのくらい影響するか、成長可能性や期待度という面から判断したい」ということになります。
期待度とつなげるから「PR」という表現になってはいますが、これは質問の種類という観点で見ると、「過去質問」の変形にすぎません。
「これまでの過去の経験を通して応募者のことをもっと知りたい」というのが端的な「自己PR」を聞く目的だと思います。
自己PRの材料が見つけられないわけ
自己PRの材料が見つけられないわけ
自己PRがなかなか見つからないという相談について、そのおもな原因は「PR」という言葉の語感が採用の目的とちょっとずれているからだと私は感じています。
「PR」という言葉を過剰にとらえてしまう
たとえば、自分を「PR」してください、と言われたら誰もがちょっと気後れするところがあると思うのですが、それはそこにリスクがともなうからです。自分ではPRと思っていても、傍から見たら「そんなの大したことない」と言われかねないですし、アピールが強すぎたら嫌われるかもしれません。
「自己PR」の本質は前述のように、「あなたの特長(あなたらしさ)」「他人との違い」のようなものです。そのうえで、「私たちの仲間としてこの人を選んでよいものか?」を企業側は自問自答しながら選考を進めています。
求めているのは決して突出した実績や能力ではなく、それを過度に売り込んでほしいわけでもありません。
仕事で重要な可視化できない能力を見逃してしまっている
極論をいえば、すごい能力や実績があっても嫌な奴だって世の中にはたくさんいるでしょうし、たいして目立つ実績がなくても素直で前向きな好感度の高い人もいます。どっちを仲間にしたいかは企業の判断によりますが、割と後者が勝つことも多いのです。
少なくとも、過去にすごい能力や実績の証明が無くても結構良い勝負ができるということはお伝えしたいです。
というのは仕事に就いてから必要な能力と学生時代に評価されてきた能力はやや異なるからです。
たとえば先ほど挙げた「好感度」というのは仕事においてはすごく重要な能力なのですが、それは可視化や数値化ができないため学校教育ではあまり重要視されていません。見えないからPRもしにくいですし、学生時代は、別に誰からも満遍なく好かれる必要もなく、気の合う仲間だけと付き合っていれば良いので気にならないでしょう。
しかし初対面の人や良く知らない人と多くかかわる仕事の場面では、短時間で人に好かれたり信用されたりする要素はとても有利で重要なものなのです。
採用場面で面接官はそうした定性的な評価も必ずしていますので、必ずしも目に見える能力や目立った実績ばかりをPRの材料にしなければならないわけではないのです。
あなた自身が持っている人としての資質や魅力に着目して、いろいろな角度から考えてみてください。
自己PRを見つけるためにすべきこと
自己PRを見つけるためにすべきこと
「自己PR」の本質は「あなたらしさ」や「他社との違い」と書きましたが、どうしても多くの学生の「自己PR」が似たり寄ったりになってしまうという印象が長年にわたり企業の人事にはあります。
これは、一言で言えば「掘り下げが浅い」ということになるのですが、PRの根拠となるのは自分自身の経験であり、固有の経験というのはしっかり振り返って掘り下げれば同じになるはずがないのです。
掘り下げた経験を書き出す
そうなるとやるべきことは、いわゆる「自己分析」をしっかりおこなうことですが、それには「書き出すこと」が絶対条件だと思います。いちいち書き出すことは確かに面倒な作業かもしれませんが、多くの学生が頭の中で考えるだけで済ませているため、どうしても漠然としたままの内容になってしまいます。
有能なビジネスマンは論理構造を使ったり矢線図を描いたりして課題を整理することがありますが、そうしたやり方が学生にも浸透していくと良いのではないかと思います。
因果関係を肉付けする
たとえば「サークルの部長を務めました。」と言ったところで、サークルの部長経験者なんてほかにもたくさんいるわけです。やってきたことだけを伝えてもあなたがどんな人かはわからないので、これだけでは何の特長も差別化も表現できません。
何のサークルでなぜ自分がそれをすることになったのか、何人いてどんな苦労があったのか、自分で考えて工夫したことは何か、その経験からどんな学びを得たか、などが肉付けされたら、因果関係がたくさん出てくるので、ほかの人と重複するはずなど絶対にないわけです。そこまで掘り下げて初めて固有の体験を伝える内容になります。
自分の力で内省する
自分なりの思考、感情、教訓、価値観などが見つかるまで、書き出したものを見ながらある程度内省する時間を作ることがとても重要です。
この「書き出し」と「内省」が自己PRを言語化するために絶対に必要なプロセスです。
書類を作るだけならAI(人工知能)を使ってもいいですが、自分の頭で考えないと対話で使える言語化はできません。そのプロセスがあって初めて、書いたことと話すことに整合性ができてくるのです。
自己PRを考える際に留意すべきこと
自己PRを考える際に留意すべきこと
「自分がやったこと」を伝えるのではなく「自分自身のこと」を伝えるのが自己PRの目標です。「やったこと」は自分を伝えるための材料、手段、根拠にすぎません。
目標と手段を混同しない
おもな留意点の1つは目標と手段を混同しないこと。この構造を理解して結論を外さないでほしいです。
目的と手段が混同されてしまっているためにうまくいっていないものが非常に多いと感じています。
嘘をつかない
2つ目は絶対に嘘をつかないことです。あからさまな嘘はもちろんダメですが、「あえて言わないでおこう」というような「白い噓」もなるべく避けたいところです。
自分自身が信じていないものを相手に伝えてはいけません。それはばれるからでなく、自分の心理的な弱点を自分で作ることだからです。
結果は時の運でうまくいくときもいかないときもありますが、少なくとも心の中に「引け目」を作らず自信をもって就活をしている状態を維持しないと良い結果にはつながりにくいと思います。
良い自己PRとはどのようなものなのか
良い自己PRとはどのようなものなのか
良い自己PRには、多くの場合、強さも弱さも伝わる「自己開示」と仕事に対する意欲を感じます。
自己開示が含まれている
能力や実績をPRできないときの例を挙げてみると、良い自己PRにはまず「自己開示」が含まれていることが多いと感じます。たとえば学生時代、勉強も部活動もあまりぱっとしなかった、取り立てて良い結果が出なかった、ということを素直に認めるようなケースです。
もちろん強みや意欲などポジティブな要素がしっかり伝えられるに越したことはありません。それは表現したうえで、これまでの反省や自分の弱点なども少しだけ併せて書かれていると、より人間性や人物のイメージが伝わり、素直さ、正直さといった部分で評価されやすい傾向があります。
意欲の強さが伝わる
2つ目は、これからおこなう仕事に対する意欲があることが含まれていることです。
当然と思うかもしれませんが、学生はまだ本格的な仕事をしていない立場ですから、職業能力や適性は実際のところまだ未知数なので、それらを根拠をもって説明するには限界があります。しかし意欲には根拠はあまりいりません。入社後の成長につながるのは潜在能力よりもむしろ意欲の強さと持続性が大きい要素になります。
自己PRの添削例(300字以内)
自己PRを書くときに抱えがちな課題と改善のポイントを、具体的な例文を通して解説します。
もとの自己PR例文
私の長所は協調性があることです。大学時代は合気道部の部長を務めていました。
コロナ禍の直後でまだいろいろ制限があるなかで、できる範囲で充実感のある活動をするため、顧問の先生方や部員にもいろいろな意見を聴きながら、学園祭の演武や遠征試合の段取りなど、最善の活動ができるように工夫してきました。
大会での成績はあまり良くありませんでしたが、部員間のコミュニケーションが改善でき、最後まで良い雰囲気で活動することができました。
いろいろな立場の意見を取りまとめるのは難しかったのですが、課題を解決する力を身につけることができました。この経験を仕事でも活かして頑張っていきたいです。
この例文の課題
- 「やったこと」は簡潔にまとめてあるが、人物像はあいまい
- コミュニケーションの改善、課題解決、の内容があいまい
- 最初と最後の結論にブレがある「協調性」→「課題解決力」
修正例
私の長所は問題解決力です。大学時代、合気道部の部長を務めました。
消極的な性格だったのですが、3年次に誰も部長をやりたがらず、大学から始めた下手な自分が部長になり非常に苦労しました。
当初はミスも多く落ち込み、経験の長い部員から理不尽な批判もされましたが、ある時「もう開き直って頑張るしかない」と腹を括る機会があり、何とか最後まで務め切ることができました。
正直、大会などの成績は平凡で成果は出せませんでしたが、顧問との調整や練習場所の確保など、交渉や問題解決の経験を積むことで学びもたくさんあり、以前より積極的に行動できるようになりました。
仕事ではしっかり成果も出せるよう頑張ります。
修正ポイント
- ネガティブな体験の自己開示によって内面的な要素も表現
- 自分自身の変化と成長を伝える内容を盛り込む
- 結論は「やったこと」ではなく自分自身の姿やこれからの意欲に焦点を当てる
解像度を上げることで自己PRを磨く
例文は当たり障りのない内容にしていますが、これが必ずしも悪いとも限りません。実際の採用では何がどう評価されるかは企業の考え方次第で正解はないのです。
それでも、2つを見比べていただければ、イメージの解像度の違いがわかると思います。
執筆・編集 PORTキャリア編集部
> コンテンツポリシー記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi




