固定残業代制の企業はホワイトではない? やめとけといわれる理由

3名のアドバイザーがこの記事にコメントしました

  • キャリアコンサルタント/合同会社渡部俊和事務所代表

    Toshikazu Watanabe〇会社員時代は人事部。独立後は大学で就職支援を実施する他、企業アドバイザーも経験。採用・媒体・応募者の全ての立場で就職に携わり、3万人以上のコンサルティングの実績

    プロフィール詳細
  • キャリアコンサルタント/コラボレーター代表

    Yukari Itaya〇未就学児から大学生、キャリア層まで多様な世代のキャリアを支援。大企業からベンチャー、起業・副業など、幅広いキャリアに対応。ユニークな生き方も提案するパーソナルコーチとして活躍

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  • キャリア・デベロップメント・アドバイザー/キャリアドメイン代表

    Kenichiro Yadokoro〇大学でキャリアデザイン講座を担当した経験を持つ。現在は転職希望者や大学生向けの個別支援、転職者向けのセミナー、採用担当者向けのセミナーのほか、書籍の執筆をおこなう

    プロフィール詳細

この記事のまとめ

  • 固定残業代制を取り入れている企業にもホワイト企業は存在する
  • ブラック企業が固定残業代制を悪用したことで制度への悪評が流布した
  • ホワイト企業かを見分ける方法にはいくつかのポイントがある

就活生の大きな関心事の一つに、残業があります。働き方への意識が高まっている今、「固定残業代制の企業はホワイトではない」という声を聞いて気になっている人もいるかもしれません。

その一方で、なぜ「固定残業代制=ホワイトではない」といわれているのか、理解している人は少ないでしょう。

この記事では固定残業代制の企業は避けるべきといわれている理由や、その実態について、キャリアアドバイザーの谷所さん、渡部さん、板谷さんとともに解説します。記事をもとに固定残業代制への理解を深め、自分に合った企業を選べるようになりましょう。

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目次

「固定残業代=ホワイトではない」とは言い切れないため企業の実態をリサーチしよう! 

結論、固定残業代制を導入しているからといってホワイトではないとは言い切れません。その企業が自分の理想の労働環境を提示しているか、自身で見抜く必要があります。

固定残業代制は、実際の残業時間にかかわらず、一定の残業代を支給する制度です。その性質からホワイトではないと思われがちですが、実はメリットもあります。

まずは正確に企業を評価できるよう、固定残業代制の概要をチェックしましょう。そのうえで固定残業代制のメリットやデメリットなどを解説するので、企業選びの参考にしてみて下さい。

後半では固定残業代制を企業が正しく取り入れているかをチェックする方法や、企業がホワイトかどうかを見分ける3つのポイントも解説します。最後まで読んで固定残業代制の企業が自分に合うかどうかを見極め、納得いく就職を実現しましょう。

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そもそも固定残業代制(みなし残業制)とは? 

なぜ「固定残業代制は悪いもの」とする考え方があるのかを見ていく前に、まずは制度自体を理解しておきましょう。固定残業代制に関する正しい知識がなければ、企業がホワイトかを正確に見分けるのは困難です。

実際、制度を正しく理解しないまま固定残業代制を採用する企業を候補から除外する就活生も多くいます。しかし、これにより優良企業を見逃してしまうこともあるのです。

まずはこの章で制度の概要を正しく理解し、そのうえでキャリア選びに活かしましょう。

実際の残業時間にかかわらず一定の残業代を支払う制度

固定残業代制とは、実際の残業時間には関係なく、定額で残業代が支払われる制度です。月ごとに時間外労働時間が定められていて、その範囲内では定額で残業代が支払われます。

たとえば30時間分の固定残業代が定められている場合、実際の残業時間が20時間だったとしても、30時間分の固定残業代が支払われるという仕組みです。毎月一定時間残業しているとみなす制度のため、みなし残業制とも呼ばれます。

固定残業代制では、定額の残業代が基本給に上乗せされて支給されるのが一般的です。ただし固定残業代制で定められた残業時間を超えた場合、超過分に対して追加の残業代の支払いが義務付けられています。つまり、仮に35時間残業した場合は、オーバーしている5時間分の残業代は別途支給されます。

労働基準法第36条には、労働者に残業させる場合や法定休⽇に労働させる場合の取り決めが記載されています。労働基準法第36条が適用されるのは、固定残業代制も同様です。

一般的かつ法律に則った正当な支払い制度

固定残業代制は広く活用されている一般的な制度で、厚生労働省も固定残業代制に関するルールを設けていることから、公的に認められた制度であることがわかります。

一方で、募集や求人票の表記が明確に統一されていなかったことで、多くの賃金トラブルが発生してきました。トラブルが多発したことにより、「固定残業代制=ホワイトではない」というイメージが流布したのです。

厚生労働省は現在、以下の3つを原則として明記することを、固定残業代制を導入する企業に求めています。

厚生労働省が企業に求める3つの明記すべき項目

  1. 固定残業代を除いた基本給の額
  2. 固定残業代に関する労働時間数と金額などの計算方法
  3. 固定残業時間を超える時間外労働、休日労働および深夜労働に対して割増賃金を追加で支払う旨

板谷 侑香里

プロフィール

固定残業代制は、大企業や公的企業に関しては一定数普及しているものの、ベンチャー企業や中小企業ではまだ課題が残っている段階です。

固定残業代の時間は明記されているものの、労働時間数と金額が明記されていなかったり、休日労働、深夜労働に対しての割増賃金についての説明がなかったりする例も多い印象があります。

まずはあなたが受けない方がいい職業を確認してください

就活では自分に適性がある仕事を選ぶ事が大事です。適性が低い仕事に就職すると、イメージとのギャップから早期の退職に繋がってしまうリスクがあります。

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強み・弱みを理解し、自分がどんな仕事に適性があるのか診断してみましょう。

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固定残業代制がホワイトでないといわれる4つの理由を解説

固定残業代制がホワイトでないといわれる4つの理由

  • 残業代が未払いになる可能性があるから
  • 基本給が低く設定されている場合があるから
  • 残業が増えるほど損をするから
  • 半ば強制的に残業させられる場合があるから

固定残業代制を正しく理解したところで、この制度がホワイトでないといわれる理由をチェックしましょう。

固定残業代制は正当な制度でありながら、その運用に対して厳密なルールが課されているわけではありません。そのため企業によっては悪用されることもあり、それによって悪いイメージが定着しているのです。

キャリアアドバイザーの意見も参考にしながら、固定残業代制がなぜダメといわれるのか、理由を見ていきましょう。

①残業代が未払いになる可能性があるから

固定残業代制では、企業が正しく残業時間を管理していない場合、残業代の未払いが懸念されます。実際、残業代未払いのトラブルもあるのが現状です。

企業には、固定残業代として定められた以上の残業時間が発生した場合の、超過分への追加支払いが義務付けられています。ただし、企業が残業時間を曖昧にしていると、この超過分がどれだけ発生したのかがわからず、残業代の未払いが発生するのです

固定残業代制を導入していない場合、正しい支払いのための残業時間管理は必須です。一方、固定残業代制は残業代の支払いが一律のため、規定時間内で働くよう時間管理をする意識が低くなりがちといえます。

②基本給が低く設定されている場合があるから

企業が固定残業代を賃金に含めて表示している場合、基本給が低く設定されている場合があります。

通常、賃金を表示する場合は基本給で表記します。一方、固定残業制を導入している企業では、「基本給+固定残業代」の合計額を賃金として表示している場合があるのです。

実際、固定残業代まで含めた金額を基本給と勘違いして入社し、あとで実際の給与体系に気付くというトラブルもこれまで発生しています。これも固定残業代制にネガティブな意見を持つ人がいる理由の一つです。

現在では対策として、厚生労働省が固定残業代を除いた基本給の額の表示を働きかけています

固定残業代制を導入している企業について調べる際は、あらかじめ賃金に固定残業代が含まれているのかを明確にし、トラブルを未然に防ぎましょう。

賃金が基本給なのか、固定残業代まで含めた額なのかが明記されていない場合、ホワイト企業でない可能性が高いですか? 

渡部 俊和

プロフィール

明確な賃金表記や説明がない企業はホワイトではない可能性が高い

固定残業代制を導入する企業としては、残業に伴う労働時間と賃金の不確定要素を少しでも縮減するのが本来の趣旨で、給与の額をわかりにくくしたいわけではありません。

しかし、結果的にいろいろなわかりにくさが残ってしまうのがこの制度の問題で、企業側もそれは理解しているはずです。

また、「残業代をそもそも払うのに、なぜそれを固定にしなければならないかがわかりにくい」という学生の悩みも理解しているでしょう。

本当に良い会社なら、それを明快に説明して、働く人に理解をしてもらおうとするはずです。

賃金の明細が明示されていないということは、わかりにくい部分を放置している状態なので、意図的にそうしているように見えても仕方がありません。

もちろん、それだけでブラック企業と判断できるわけではないですが、健全経営をして資金的にゆとりのある優良企業とはいえないのは確かではないかと思います。

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③残業が増えるほど損をするから

固定残業代制では残業時間にかかわらず、一定の残業代が支給されます。たとえば固定残業代の時間が30時間の場合、5時間残業したでも30時間残業した月でも、賃金は変わらないということです

そのため残業時間を抑えられれば労働時間以上の賃金を得られるものの、逆に残業が増えれば増えるほど、損するように感じられるでしょう。

実際、残業が多い企業に入社し「損した」と感じている人は多くいるため、「固定残業代制はやめておけ」といわれているのです。

また、残業をなるべく少なくしようと努力しても、新たな業務を割り振られて結局残業時間が増えてしまうケースも想定されます。この場合、より多くの仕事をこなしたにもかかわらず残業代は一定のため、モチベーションが下がることも考えられます。

このような精神的な不満辛さが、固定残業代制の評価をさらに落としているのです。

④半ば強制的に残業させられる場合があるから

固定残業代制が導入されている企業では、「残業をしなければならない」という雰囲気により、半ば強制的に残業させられる場合があります。

仕組み上、固定残業代は残業をしていない社員にも支払われます。つまり企業目線で考えると、同じ残業代を支払うのであれば、上限の範囲内でより多く仕事をしてもらった方が得なのです

残業が強いられることがなくとも、企業によっては上司より早く帰ったり、仕事が未完のまま帰ったりするのがタブーな風潮があることも考えられます。

固定残業代制のある企業を志望する際は、会社の雰囲気や人間関係までチェックすることが大切です。

固定残業代制の場合でも、風潮や雰囲気を気にせず、自分の仕事が終わったらすぐ帰るのは難しいですか?

谷所 健一郎

プロフィール

仕事内容によるが基本的に決められた仕事が終われば帰宅できる

効率良く仕事をこなし、決められた仕事が終われば、固定残業時間以下でも固定残業代が支払われるため、自分の仕事が終われば帰ることは可能です。

ただし、自分一人で完結する仕事でなければ、ほかのメンバーのサポートが必要な場合があります。社員同士が協力する社風であれば、帰るのが難しい雰囲気になってしまうかもしれません。

仕事内容の詳細や社風に加え、自分の仕事が終われば帰れる状況かを実際に社員や人事に聞くなどして判断しましょう。

そもそもなぜ残業が発生するのか疑問に感じる人は、以下のQ&Aがおすすめです。キャリアコンサルタントが読者の疑問に回答しています。

その固定残業代は合法? 正当性をチェックする際に見るべき4つのポイント

固定残業代制の正当性をチェックする際に見るべき4つのポイント

  • 固定残業の時間を過ぎた際に超過分が支払われるか
  • 固定残業代は割増賃金になっているか
  • 固定残業代を引いた基本給が低くないか
  • 社員の勤続年数は長いか

ここまで固定残業代制の概要や、ホワイトではないといわれる所以をチェックしてきました。ただし、固定残業代制を導入しているからといってブラック企業というわけではなく、きちんと法律に則って運用している企業もあります。

そこでここでは、企業の固定残業代制に正当性があるか、より詳しくチェックする方法を4つ紹介します。

企業に入ってから残業代のトラブルで悩まないよう、事前にチェックしておきましょう。自身で企業の合法性を的確に判断できれば、トラブルを未然に防止できます。

①固定残業の時間を過ぎた際に超過分が支払われるか

必ずチェックすべきポイントは、固定残業の時間を超えた際に超過分の残業代が支払われるかどうかです。超過分への残業代が支払われない場合、その時点で違法となります。

固定残業代制とは、一定時間の残業を毎月おこなったとみなして、その分の残業代を支払う制度です。定められた時間以上の残業が発生した場合、労働者はその分の残業代を追加でもらう権利があります

そして、固定残業を超過した分の追加支払いを正しくおこなうには、正しい残業時間の計算が不可欠です。

正しい残業時間が計算されていないと、当然正しく残業代が支払われないでしょう。固定残業代制だからといって残業時間を計算していなければ、そこは働きやすいホワイト企業とはいえません。

入社してから正しい残業時間の計算がおこなわれていないとわかった場合、対処する方法はあるのでしょうか。

板谷 侑香里

プロフィール

正しい残業時間を把握し労働基準監督署に是正勧告を求めよう

対処する方法はあります。出退勤のタイムカードやパソコンの電子記録などをもとに実際の労働時間を把握し、自分自身でも記録に残しておくことです。

そのうえで、残業時間について上司や担当部署に確認してみましょう。

会社が適切な対応をおこなわない場合には、労働基準監督署に相談・申告することで、会社に対しての是正勧告を出してもらうことが可能です。

残業代請求の時効は3年あります。弁護士に相談して法的手段を進めることもできます。

ただし日本では、自らサービス残業をおこなうケースや、関係性構築手段としてサービス残業をしていることも多く、是正勧告や法的手段をとる人はあまり多くいないのが現状です。

②固定残業代は割増賃金になっているか

固定残業代が基本給とは別に「固定残業手当」として支払われる場合、固定残業代が割増賃金になっているかを必ずチェックしましょう。固定残業代は「1時間当たりの賃金×固定残業時間×割増率1.25」で支払われる必要があるためです。

基本給に固定残業手当が追加される場合の計算式

「固定残業代=(給与総額÷月平均所定労働時間)×固定残業時間×1.25(割増率)」

(例)
1ヵ月の賃金20万円・月平均所定労働時間160時間・固定残業時間30時間の場合

固定残業代=200,000÷160×30×1.25
      =46,875円

また休日出勤や深夜残業などイレギュラーな勤務があった場合、割増率は以下のように設定されています。

固定残業代の割増率

  • 法定休日の勤務:1.35以上
  • 22~5時の深夜勤務:1.25以上
  • 法定労働時間を超過した勤務:1.25以上

一方、固定残業代が基本給に組み込まれている場合、固定残業代は以下の式で算出されます。

基本給に組み込まれている場合の固定残業代の計算式

「基本給÷{月平均所定労働時間+(固定残業時間×1.25)}×固定残業時間×1.25」

(例)
基本給20万円・月平均所定労働時間160時間・固定残業時間30時間の場合

固定残業代=200,000÷{160+(30×1.25)}×30×1.25
     =38,000円

この固定残業代を労働時間で割った時間給が、都道府県の最低賃金を下回ると違法です。これらの指標を用いて、正しい固定残業代が支払われるかをチェックしましょう。

まずはあなたが受けない方がいい職業を確認してください

就活では自分のやりたいことはもちろん、そのなかで適性ある仕事を選ぶ事が大事です。適性が低い仕事に就職すると、イメージとのギャップから早期退職に繋がってしまうリスクが高く、適職の理解が重要です。

そこで活用したいのが「適職診断」です。質問に答えるだけで、あなたの強みや性格を分析し、適性が高い職業・低い職業を診断できます。

まずは強みを理解し、自分がどの職業で活躍できるか診断してみましょう。

こんな人に「適職診断」はおすすめ!
・志望業種をまだ決めきれない人
・楽しく働ける仕事がわからない人
・時間をかけずに自己分析をしたい人

③固定残業代を引いた基本給が低くないか

固定残業代が基本給に組み込まれている場合、必ず基本給の額をチェックしましょう。基本給を時給換算した額が都道府県の最低賃金を下回る場合、その賃金は法律に反しています。

また基本給+固定残業代の金額が最低賃金以上でも、基本給が単体で最低賃金を下回る場合は法律に反する点にも注意しましょう。

現在、厚生労働省が固定残業代を除いた基本給の額の表示を働きかけていますが、いまだに賃金を「基本給+固定残業代」の合計額で記載している企業もあります。この固定残業代を含めた賃金を基本給と勘違いして入社し、トラブルに発展するケースもあるのです。

勘違いで入社しても、基本給が最低賃金以上の場合は、企業にその責任を追求するのは難しいのが現状です。

④社員の勤続年数は長いか

社員の勤続年数も働きやすい企業かを見極める一つの指標となります。社員が定着していることは、社員が快適に働いていることの証ともいえるためです。

社員が長く働く要因としては、以下のような理由が考えられます。

社員が定着するおもな理由

  • 企業が法令を遵守し、適切な労働環境を整備している
  • 適切な人事評価制度を導入している
  • 長時間労働がなく、有給取得率が高い

ただし、必ずしも「社員の勤続年数が長い=優良企業」ではない点には留意しておきましょう。特に創業から間もないベンチャー企業やスタートアップ企業では、必然的に平均勤続年数も短くなりがちです

社員の勤続年数は、あくまで一つの目安にとどめておいてくださいね。

谷所 健一郎

プロフィール

社員が長く働いているブラックな企業はあまりありませんが、残業時間が長くても給与が高い企業であれば、長く働く社員が一定数います。

頻繁に募集をおこなっているわけではなく、同年齢と比較して極端に待遇が良い場合は、長く働いている社員がいても、労働時間などがブラック企業並みの可能性があるため注意しましょう。

企業がブラックかどうか見極める方法を知りたい人は、以下の記事も確認してください。ブラック企業を見分ける具体的な方法を解説しています。

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固定残業代にはメリットもある! 社員にとっての4つのメリットとは? 

固定残業代制が持つ社員にとっての4つのメリット

  •  実際の残業時間が短くても一定の残業代を受け取れる
  • 仕事を効率的にこなすモチベーションが発生する
  • 社員間の給料に公平感が生まれる
  • 毎月の給料が安定し計画を立てやすい

ここまで固定残業代制の合法性やその見極め方について議論してきたように、固定残業代は注意すべき制度のようにとらえられがちですが、実はメリットも数多く存在します。

制度を正しく理解してうまく活用できれば、効率良く収入を高められるかもしれません。ここでは固定残業代制のメリットを4つ解説するので、ぜひ目を通してくださいね。

①実際の残業時間が短くても一定の残業代を受け取れる

固定残業代の大きなメリットは、実際の残業時間にかかわらず一定時間分の残業代を受け取れる点です。残業をせずとも残業代が支払われるため、稼働時間以上の収入を得られます。

もし自分のすべき業務を就業規定時間内にすべてこなせれば、残業時間0時間でも規定残業時間分の残業代を受け取れるのです。

ただし、基本的に固定残業代制を導入する企業は「残業が必要」と考えて制度を組み込んでいます。残業がなければお得に残業代をもらえるとはいえ、残業が必要になる程度の業務量はあることを理解しておきましょう

②仕事を効率的にこなすモチベーションが発生する

前述のとおり、固定残業代制の下では残業時間が少ないほど労働者が有利に残業代を受け取れます。仕事を素早く捌くほど残業時間を削れるため、効率的に仕事をこなすモチベーションが高まるでしょう。

残業してもしなくても同じ給料がもらえるのであれば、残業なしのほうが好ましいはずです。そのため残業を減らすべく全体の士気も上がり、チーム単位での業務が効率化されることも期待できます。

効率よく仕事をこなせれば残業時間も削れて早く帰宅できるうえに、残業代も手に入れられます。常に高いモチベーションで仕事に取り組む習慣ができるのも、固定残業代制の大きなメリットです。

残業が発生しないように仕事を早く進めても、追加で業務を頼まれると思います。その場合、ただ仕事が増えるだけだと思うのですが……?

渡部 俊和

プロフィール

「なるべく働かずに残業代をもらいたい」という考えは通用しない

固定残業を基準に損得を考えると混乱すると思いますが、結局は規定の労働時間内に必要な仕事をこなすという点では、通常勤務と何ら変わらないと考えてください。

週40時間のなかでも手が空いたら仕事を頼まれます。固定残業の範囲でも手が空いたら仕事は頼まれます。

報酬をもらって働いているのだからそれは当たり前のことであって、対価は得ているのだから問題ないはずです。

もともと残業があるから固定残業代制にしているので、定時で帰ることが目的化してしまうとおかしな考えになります。仕事をするための制度であることを忘れないでください。

単純に損得だけで「なるべく働かずに残業代をもらいたい」という考えであればその懸念は理解できますが、それは仕事をするうえで適切な考え方ではありません。

ここまで読んで、「ワークライフバランスを重視してはいけないの?」と感じた人もいるかもしれません。以下のQ&Aでも同様の疑問にプロが回答しているので、併せて参考にしてみてください。

あなたが受けない方がいい職業を確認しよう!

職業選択においてやりたいことはもちろんですが、その中でも適性がある仕事を選ぶ事が大事です。適性が低い仕事に就職すると、イメージとのギャップから早期退職に繋がってしまうため適職への理解が重要です。

そこで活用したいのが「適職診断」です。質問に答えるだけで、あなたの強みや性格を分析し、適性が高い職業と低い職業を診断できます。

まずは強みを理解し、自分がどの職業で活躍できるか診断してみよう!

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③社員間の給料に公平感が生まれる

固定残業代制が導入されると、社員間の給料の不公平感もなくなります。なぜなら一定時間以下であれば、残業をしてもしなくても同じ給料をもらえるためです。

一般的な残業代制度では残業した分に給料がつくため、同じ量の業務に時間をかけるほうが多くの給料を受け取れます。つまり業務量が同じでも、能力の低い人のほうが多く給料をもらえるという問題があるのです

その点、固定残業代制の下では、長く残業してもまったく残業しなくても給料は同じです。能力が高い人が少ない時間で業務をこなしても、残業した人より給料が低くなることはありません。能力が高い人が快適に仕事をしやすい点も、固定残業代制の大きなメリットです。

④毎月の給料が安定し計画を立てやすい

毎月一定の残業代が支給されるため、毎月の給料にばらつきが出にくいのも固定残業代の魅力です。毎月の給料が安定していると支出の予定も立てやすく、金銭面での不安も軽減されます。

また働き方改革によって、なるべく残業を抑えるように指示される企業も多いです。残業をしてでも成果を挙げたり、経験値を高めたりしたいのに、満足に残業できないと感じる人も増えています。

一方、固定残業代制では一定の残業が発生することが初めから想定されているため、所定の時間内であれば基本的に残業することができ、残業代も毎月安定して得られます

時間を気にせず仕事を頑張って実績と安定収入を得たいと考える人には、固定残業制を導入する企業が向いているかもしれません。

固定残業代制の会社に入るのは結局おすすめ? アドバイザーの見解を紹介

固定残業代制の良い側面と、注意すべき側面について紹介してきました。ここまでの解説を読んで「固定残業代制の会社って、結局おすすめなの?」と疑問に思っている人もいますよね。

ここではキャリアアドバイザーの谷所さんに、固定残業代制の企業がおすすめなのか否かを、プロの視点から解説してもらいます

キャリアの専門家の意見をチェックして、理想の進路選択の参考にしてみてください。

アドバイザーコメント

固定残業代はメリットもあるが長時間労働が常態化しやすい点に注意

固定残業代制の企業は、決められた業務を遂行すれば、残業時間が短くても固定残業代が支払われる点がメリットです。

残業代が別途支払われる企業の給与は、毎月の残業時間によって給与が変動しますが、固定残業代であれば、安定した収入が見込める点もメリットの一つです。

しかし、固定残業代制を設けているのは、あらかじめ残業を前提としているからであるため、残業が極端に少ないことはあまりないといえます。

そのためワークライフバランスを考えて仕事をしたい人にとっては、労働時間が長くなることがデメリットになるかもしれません。

また、固定残業時間に達するまで追加の残業手当が支給されないため、モチベーションを高めて仕事ができないことや、長時間労働が常態化する可能性があることもデメリットでしょう。

待遇重視の学生にはおすすめだが定時退社を求める学生にはおすすめしない

労働時間より待遇面を重視し、固定の給与で仕事がしたい場合は、残業代を含めた給与が提示されている固定残業代制の企業へ就職しても良いと思います。

その場合、固定残業代の残業時間数が明記されているか、固定残業時間の残業時間数が自分にとって多い数字ではないかを見極めましょう。

一方、できれば定時に退社したいと考えている人には、固定残業代制の企業はおすすめできません。

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固定残業代以外で企業がホワイトかを見分けられる3つの方法

固定残業代以外で企業がホワイトかを見分ける3つの方法

  • 企業が安定して成長しているか
  • 研修制度や福利厚生は充実しているか
  • 多様性を尊重しさまざまな人の働きやすさに配慮がなされているか

前述のとおり、固定残業代制が合法である以上、制度の採用有無のみで企業がホワイトかブラックかを見分けるのは困難です。

そこでここでは、固定残業代制の有無意外で企業がホワイトかどうかを確かめるための3つのポイントを解説します。

ただし、「ホワイト」の基準は人それぞれです。あくまで「働きやすいと感じられる可能性がある」企業の特徴として参考にしてみてくださいね。

①企業が安定して成長しているか

企業が安定して成長している場合、その企業はホワイトである可能性が高いといえます。なぜなら企業の成長により、正の循環が発生していると考えられるためです。

成長企業の正の循環

  1. 企業の成長により利益が発生する
  2. 利益が給料や福利厚生として社員に還元される
  3. 社員のモチベーションが高まる
  4. 社員がさらなる企業の成長に貢献する
  5. 企業の成長が促進される

また、企業が安定して成長していれば給料が上がるだけでなく、福利厚生の整備や労働環境の整備もどんどん進みます。その結果、社内環境や職場の雰囲気は良くなり、さらに社員がモチベーション高く働けるようになるのです

この意味で、安定成長している企業は働きやすいと感じやすいといえます。

渡部 俊和

プロフィール

一般的に企業の成長の尺度は売り上げ、利益、客数の増加率などで判断されます。

安定成長は、数字の多寡よりもまず財務が健全であり、一時的な流行や特殊要因を除いた本業の事業活動で、長期にわたり数字を伸ばしていることといえます。

ホワイト企業の特徴はこちらの記事でも詳しく解説しています。おすすめの企業例も紹介しているので、併せてチェックしてみましょう。

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おすすめ企業40選| ホワイト企業の特徴を業界・職種別に徹底解説

ホワイト企業といってもさまざまな会社があります。記事では、キャリアコンサルタントと社労士とともに、ホワイト企業の定義や条件を解説します。そのうえで、自分に合ったホワイト企業を探せるよう見つけ方を説明します。さらに、実際のホワイト企業の例を紹介するので、企業選びの参考にしてくださいね。

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おすすめ企業40選| ホワイト企業の特徴を業界・職種別に徹底解説

②研修制度や福利厚生は充実しているか

研修制度や福利厚生の拡充は、従業員の心身の健康維持への貢献とも言い換えられます。そのためこれらが充実している企業も、従業員を尊重するホワイト企業である可能性が高いです。

一般的に人材の育成には莫大なコストと時間がかかります。離職率が高まっている昨今の状況で人材育成に力を入れるのは、リスクが高い投資なのです。

それでも企業が人材育成に力を入れる理由は、人材の健康や成長が企業成長の基盤ととらえているためです。リスクをとってでも従業員を大切にしている時点で、その企業はホワイトだと判断できます

研修制度や福利厚生は公式ホームページ(HP)などでチェックできます。企業を比較検討する際は業務内容だけでなく、研修制度や福利厚生にも注目してみましょう。

板谷 侑香里

プロフィール

研修の期間は企業によってさまざまであり、研修期間の長さと研修の充実度にあまり関係はないため注意しましょう。

たとえば製薬メーカーのMRは一般的に10カ月程度の研修がありますが、大企業やITなどの技術系企業の場合は、3カ月程度の研修が平均的です。

中小企業は1週間~1カ月程度の研修の後、現場でのOJTに移行することが多いですね。

企業選びの際に注目すべき福利厚生は、こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひ併せて活用してください。

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③多様性を尊重しさまざまな人の働きやすさに配慮がなされているか

常に社員の意見に耳を傾け、多様性を受け入れながら最適な職場環境を追求し続ける企業はホワイト企業の可能性が高いといえます。

具体的には女性が働きやすい制度や環境が整っていたり、マイノリティの人々が気を遣わずに活躍できる環境が整っていたりする企業は、従業員一人ひとりを尊重しているといえるでしょう。例として以下のような特徴が挙げられます。

働きやすい企業の特徴の例

  • 出産や育児の支援制度が充実している
  • 有給休暇の取得率が高い
  • 女性やマイノリティの人が多く役職についている
  • 社内に託児所がある
  • 当日でも急遽休みを取らせてもらえる

働きやすい環境が整っているかをチェックする際は、口コミサイトを利用したり、求人サイトで検索条件を絞り込んだりする方法が効果的です

女性が高い給料を得られる企業を探している人は、以下の記事も参考にしてみてください。女性の給料が高い仕事をランキング形式で紹介しています。

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絶対にホワイト企業で働きたいという人は、以下のQ&Aでキャリアコンサルタントがアドバイスしているので、併せて参考にしてみてください。

固定残業代制のみで判断せず労働条件などで企業を比較して理想の企業を見つけよう! 

固定残業代制には注意点もあるものの、働く人にとってメリットもあります。そのため固定残業代制を導入しているからといって、ホワイト企業ではないと決めつけるのは短絡的です。

記事で解説した固定残業代制を正しく運用しているかの見極め方や、ホワイト企業の特徴を参考に、志望する企業が自分にとって働きやすいのか判断することが大切です。

固定残業代制の有無にとらわれず、企業の実態を正しく判断して理想のキャリア設計に存分に活かしましょう。

アドバイザーコメント

固定残業代に縛られすぎず自身の成長可能性に着目して仕事選びをしよう

そもそも労働時間は法律で変わってきたものです。日本の法定労働時間が週40時間になったのは1987年で、猶予期間を経て中小企業にまで完全実施されたのは1997年なので、割と最近の話です。

この法定労働時間を超えると「残業」になるわけですが、それまで法定労働時間は週48時間でした。この差の8時間は現代では「残業」です。一方それまでは、その8時間も「法定労働時間内」だったわけです。

働く人も仕事も変わらないのに、法律が変わっただけで扱いが変わる程度のものです。

私はこの「固定残業代制」というテーマは会社選びや職業選びにおいてそれほど重要なものだとは思いません。あくまでも副次的な要素と考えて欲しいですね。

スキルや経験を重視して自身の進む道を選択しよう

今の社会は少子高齢化で、なかなか将来の明るいイメージが描けない時代です。

景気は不透明で、将来年金がもらえるかどうかもわからないような状況なので、若い世代は自分自身の成長やスキルアップを自分で設計していく必要があります。

幸い人口減少で競争は減っています。どこも人手不足で、一定のスキルや経験のある人材には選択の自由がある世の中になっていきます。

残業の扱いよりも、仕事の中身や自分自身の成長可能性に着目した会社選び、仕事選びをして欲しいと思います。

執筆・編集 PORTキャリア編集部

明日から使える就活ノウハウ情報をテーマに、履歴書・志望動機といった書類の作成方法や面接やグループワークなどの選考対策の方法など、多様な選択肢や答えを提示することで、一人ひとりの就活生の意思決定に役立つことを目指しています。 国家資格を保有するキャリアコンサルタントや、現役キャリアアドバイザーら専門家監修のもと、最高品質の記事を配信しています。

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記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi

高校卒業後、航空自衛隊に入隊。4年間の在籍後、22歳で都内の大学に入学し、心理学・教育学を学ぶ。卒業後は人材サービスを展開するパソナで、人材派遣営業やグローバル人材の採用支援、女性活躍推進事業に従事。NPO(非営利団体)での勤務を経て、「PORTキャリア」を運営するポートに入社。キャリアアドバイザーとして年間400人と面談し、延べ2500人にも及ぶ学生を支援。2020年、厚生労働大臣認定のキャリアコンサルタント養成講習であるGCDF-Japan(キャリアカウンセラートレーニングプログラム)を修了

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