はじめに
こんにちは。元ハローワーク職員の柴田です。ハローワークで就職相談を受けているなかで、「就活を諦めたい」という方を多く見てきました。
書類で落ち続けて心が折れかけている学生さん、卒業間際に「もう無理です」と相談に来る方、いったん就活から離れて数年後に再スタートを切る方。さまざまな「諦めた」「諦めたい」という感情に向き合ってきました。
その経験から先にお伝えしたいのは、「就活を諦めること自体は、人生の終わりでも失敗でもない」ということです。ただし、「何も知らずに諦める」のと「選択肢とリスクを知ったうえで一度離れる」のとでは、その後が大きく変わってきます。
本コラムのコンセプト
生成AIによる一般的な情報がすぐに手に入る時代。就活生や求職者にいま求められているのは、経験や体験に基づく血の通ったアドバイスではないか。そうした読者のニーズに応えるために、編集部がテーマを選定し、参画するキャリアコンサルタントらに寄稿いただくコラム企画を始めました。自身の経験や実アドバイスをベースに、綺麗事を一切排除した本音の就活対策をお届けします。
就活を諦めた人からの相談事例
窓口で特に多かったのが、こんな相談です。
「就職する意思はあるんです。でも、何社エントリーしても書類選考で落ちてしまう。面接にすらたどり着けない。もう自分は社会に必要とされていない気がして、就活を諦めました」
この方は、決して怠けていたわけではありません。むしろ何十社も応募し続けていた努力家です。それでも不採用通知が積み重なると、「落ちたのは応募書類」ではなく「否定されたのは自分自身」だと感じてしまう。ここが就活のつらいところです。
私の経験上、書類で落ち続ける人の多くは「能力がない」のではなく、自分の伝え方がまだ見つかっていないだけです。実際、書類の書き方と自己分析をやり直しただけで、面接に進めるようになった相談者を何人も見てきました。
就活を諦めてしまうのはどうしてか
そもそも、なぜ人は就活を諦めたくなるのでしょうか。窓口で相談を重ねるうちに見えてきた、共通する原因をお話しします。
「漫然と学生生活を送ってきた」という自己否定
諦めの理由として圧倒的に多いのが、「アピールポイントがない」というものです。
「サークルもバイトもなんとなくやってきただけ。ガクチカと言えるものがない。自分ならではの強みがないから、自己PRのネタが何もないんです」
こう話す学生さんは本当に多いものです。そして「書類が書けない→出しても落ちる→ますます自信を失う→就活そのものを諦める」という悪循環に入っていきます。
「強みがない」のではなく「言語化できていない」だけ
ただ、10年以上支援をしてきた立場から言わせてください。本当に何のアピールポイントもない人に、私は会ったことがありません。
「漫然と過ごした」と言う人でも、話を聞けば「バイトを3年続けた」「留年せずに卒業見込みまで来た」「友人関係を維持してきた」など、継続力や協調性の材料は必ず出てきます。
強みがないのではなく、それを「強み」と認識できていない。ここが本当の原因なのです。
就活を諦めたいときの対処法・次の選択肢
就活を諦めたいときの対処法と選択肢
「もう続けられない」と感じたとき、取るべき道は一つだけではありません。ここでは、無理をしないための考え方と具体的な選択肢を紹介します。
「入りたくない会社」に無理に入るのが一番危ない
世間では「とにかく卒業までに一社は内定を」と言われがちです。しかし私は、無理をして入りたくもない会社に入るのはおすすめしません。
なぜなら、納得しないまま入社した人は短期離職につながりやすいからです。実際、「とりあえず内定が出たから入った」新卒の方が数カ月で退職し、疲れ切った状態でハローワークを訪れるケースを何度も見てきました。
短期離職そのものが悪いわけではありません。ただ、「なぜ辞めたのか」を説明する負担が、次の就活に上乗せされるのは事実です。
どうしても諦めたいなら「就活浪人」も立派な選択肢
「もう限界」というときは、いったん立ち止まって就活浪人(就職留年、または卒業後に既卒として再挑戦すること)を選ぶのも一つの手です。
「新卒一括採用の波に乗るのは諦めた」という考えも、良いと思います。世間は「新卒カード(新卒者だけが持つ就職上の有利さ)を捨てるな」とプレッシャーをかけがちですが、今は既卒や第二新卒(学校卒業後おおむね3年以内で就業経験の浅い人)の市場が活発です。しかも人手不足の状況なので、「若さそのもの」が評価されて採用されるチャンスも大いにあります。
ハローワークでも、新卒時は就活を諦めたものの、その後に「やりたいこと・できること」が見えて、既卒として新たな道で就業をスタートした人をたくさん支援してきました。
大切なのは「逃げる」のではなく、「次のために一度離れる」と自分で決める姿勢です。
(編集部追記)就活浪人を検討している人向けに、面接での準備期間の伝え方を解説した就活Q&Aは以下から確認してみてください。
就活浪人した理由を面接で聞かれた際は、どのように言い訳したら良いでしょうか?
就活を諦める前後に知っておきたいリスクと回避策
就活を諦める前後に知っておきたいこと
諦めるにしても続けるにしても、判断の前に知っておいてほしいことがあります。ここでは、諦める前に見直したい思い込みと、既卒になる場合に備えておきたいリスクの両方をお話しします。
そもそも企業は、新卒に「即戦力」を求めていない
諦める前に、ぜひ知っておいてほしい事実があります。それは、多くの大学生は即戦力(入社後すぐに成果を出せる人材)ではないし、企業もそれをわかったうえで採用しているという点です。
新卒採用は、即戦力を買う場ではなく、長期的に育成する前提の採用活動です。だからこそ、学生生活で特別に力を入れたことがなくても、焦る必要はありません。企業が見ているのは「完成された実績」より、「この人は入社後に伸びそうか」「一緒に働けそうか」という点なのです。
この前提を知らずに「実績がない自分はダメだ」と諦めてしまうのは、あまりにもったいないと感じます。
諦める場合のリスクは「空白の説明」
一方で、既卒になる場合のリスクも正直にお伝えします。それは、ブランク期間について「何をしていたか」を問われる点です。
回避策はシンプルで、資格の勉強でもアルバイトでも短期の職業訓練でも、「この期間にこれをやった」と語れる材料を一つ作っておくだけです。方向性で悩んだら、ハローワークの職業訓練や既卒向け支援(※)を活用するのも有効です。
※既卒向け支援の例:新卒応援ハローワーク(卒業予定の学生及び卒業後約3年以内の方が対象)や、わかものハローワーク(正社員就職を目指すおおむね35歳未満の方が対象)
(編集部追記)就活を諦めた際のリスクについてもっと知っておきたい人は以下の就活Q&Aを参考にしてください。
就活を諦めたらどうなりますか?
就活を諦めない場合にまず始めたいこと
「もう少し頑張ってみよう」と思えたなら、その気持ちを結果につなげるための準備があります。応募を再開する前に押さえておきたいことを、順番に紹介します。
応募の再開より先に、「人生の目的」から逆算する
次の応募の前にやってほしいことがあります。それは、これまでの人生観の振り返り、つまり自己分析と目的の明確化です。
就活を立て直すには、まず「なぜ働くのか」「自分は何をやりたいのか」を明確にし、自分の強みを理解する必要があります。ポイントは、目の前の求人からではなく、人生の目的から逆算して仕事を選ぶことです。
「なぜこの仕事を選ぶのか?」という面接での定番の問いに、自分の人生の目的とつなげて筋道立てて答えられる人は、採用側に「この人なら入社後も活躍してくれそうだ」という安心感を残します。先行きの見えない時代だからこそ、自分の頭で考え、自分の言葉で語れる人材は魅力的に映るのです。
自己分析を通じて「働く理由」や「自分らしい軸」を言語化できると、「自己PRのネタがない」という悩みも自然と解消されていきます。書類で落ち続けていた相談者も、この作業をやり直したことで通過率が変わっていきました。
伸びている仕事・業界を狙う
戦う場所を選ぶことも、同じくらい大切です。おすすめは、伸びている仕事・業界を選ぶこと。成長している業界は求人数が増える傾向にあり、求人が多ければ応募のチャンスも多く、内定に至る確率も高まるからです。
これはコロナ禍のハローワークの窓口で、私自身が痛感したことでもあります。あの時期、多くの企業は「採用したい気持ちはあるが、先が見えないので一旦様子見」と採用活動を止めていました。
そのなかでも求人を出し続けていたのは、コロナ禍でも業績が好調な企業か、景気に関係なく慢性的に人手が足りない業界でした。つまり、求人票の動きを見るだけで「今どこに追い風が吹いているか」はある程度読めます。
頑張る方向を間違えないためにも、応募の前に業界の勢いを一度確認してみてください。どのような業界で需要があるのかわからない場合、就職・転職市場に詳しいキャリアの専門家と相談しましょう。
プロ(就職アドバイザー)から情報を聞く
就職支援のプロに話を聞くことも有効です。特に既卒として動く場合、新卒の就活とは進め方や使うサービスが異なります。独学で手探りするより、一度プロに聞いてしまったほうが圧倒的に近道です。
アドバイザーからは、「企業が求める人材像」や「評価基準」といった採用側の視点を知ることができます。これを知るだけで、独りよがりの自己PRが「相手に届く自己PR」に変わります。
さらに、自分では考えてもいなかった業界や職種と出会うきっかけになる場合も珍しくありません。窓口でも、「その仕事、視野に入れたことがなかったです」という一言から道が開けた相談者を何人も見てきました。
公共職業訓練で「手に職」をつける
そしてもう一つ、ハローワーク職員だった私がおすすめしたいのが、公共職業訓練の受講です。
公共職業訓練には、3カ月程度の短期コースから、2年近くかけてじっくり学べる長期コースまで幅広い種類があります。特に2年近く学べるコースは、私がハローワークにいた頃、修了者の就職率がほぼ100%でした。
受講料は無料で実費のみの負担で済むため、コストを抑えながら専門的な技能が身につき、そのまま就職に結びつきやすい国の制度です。
「アピールポイントがない」と悩んでいても、訓練を通じて堂々と語れる専門性を手に入れるケースを何度も見届けてきました。「学び直してから働きたい」という人には、まず検討してほしい選択肢です。
まとめ:「諦めた」は終わりではなく、選び直しの始まり
就活を諦めたくなるのは、あなたが弱いからではありません。伝え方がまだ見つかっていないだけ、あるいは少し休む時期が来ただけです。
就活を続けるにしても、一度離れるにしても、ハローワークをはじめ、あなたと一緒に考える支援者は必ずいます。
「諦めた」その先も、道はちゃんと続いています。自分自身が主体となって、納得のいく活動を進めてください。
執筆・編集 PORTキャリア編集部
> コンテンツポリシー記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi




