就活で「そもそも働きたくない」と感じるのはなぜ? 専門家による心を楽にする考え方と対処法

この記事の執筆者 幅広い業界での経験とキャリア支援実績がある専門家が書き下ろしました
平野 裕一
平野 裕一
国家資格キャリアコンサルタント/国家検定2級キャリアコンサルティング技能士
Yuichi Hirano〇株式会社主体的なキャリア形成にて代表取締役を務める。商工会連合会賃上げ応援専門家を拝命するほか、人材サービス会社などで実践を重ねる。20年間で1万人以上の面談実績あり。相談者が納得のいく就活への価値提供を大切にしている。

はじめに

「みんなと同じようにリクルートスーツを着て、自己分析をして、インターンに行く。でも、その先に何があるの? 先輩たちも『仕事がだるい』と愚痴ばかり。何のために自分の時間と体力を削るのか、1ミリも納得がいかない。」

あなたは、こう考えていないでしょうか。「働きたくない」と立ち止まるのは、怠けではなく、未知の就活への不安から心が自分を守ろうとしているのかもしれません

周囲の熱量に焦らなくて大丈夫。まずはその気持ちを否定せず、「不安になるのも当然」と受け止めてみましょう。

無理に熱意を作るより、本音の背景を小さく紐解くこと。そこから納得のいくキャリアが始まります。

本コラムのコンセプト

生成AIによる一般的な情報がすぐに手に入る時代。就活生や求職者にいま求められているのは、経験や体験に基づく血の通ったアドバイスではないか。そうした読者のニーズに応えるために、編集部がテーマを選定し、参画するキャリアコンサルタントらに寄稿いただくコラム企画を始めました。自身の経験や実アドバイスをベースに、綺麗事を一切排除した本音の就活対策をお届けします。

「そもそも働きたくない」と考えてしまうのはなぜか

就活以前に「働きたくない」と考えてしまう理由を紐解き、ヒントとなる第一歩を紹介します。

やりたいことが見つからない

「やりたいことがないから働きたくない」と悩む方は多いですが、最初から明確な目標がある人は少数派といわれています。

まずは「これだけは避けたい」という「やりたくないこと」を整理してみましょう。違和感を書き出すことで、進むべき方向性が見えてくることがあります。そのうえで、まずは1社だけ調べてみるなど、小さな行動を起こしてみてください。

実際に動くことで見えてくる「合う・合わない」の感覚が、納得のいくキャリア選びの一歩になります。

就活の情報量と選択肢が多すぎる

SNSを含め、情報が溢れる現代の就活では、選択肢も多く、身動きが取れなくなる傾向が見られます。その結果、「働きたくない」と感じてしまう方が少なくないようです。

選択肢の多さは一見自由に思えますが、実際には判断の負荷を増やし、迷いや不安につながることがあります。

すべてを網羅しようとする必要はありません。まずは自分にとって「これだけは譲れない」という条件を12個に絞り込むことが、迷いから抜け出す第一歩になっていきます

働くことへの恐怖がある

「働きたくない」の正体は、労働そのものへの拒絶ではなく、「自分の時間を犠牲にして心身をすり減らす働き方」への恐怖ではないでしょうか。この本音を隠したまま就活を進めると、早期離職に至るケースが少なくありません。

大切なのは世間体に自分を合わせることではなく、人生の舵を自分で握る「主体的なキャリア形成」です。「週3日は在宅で黙々と働きたい」「推し活の時間を最優先したい」など、自分の本音を否定せずに言語化して初めて、自分に合った「無理のない働き方」が見えてきます

拒絶反応は、自分を守るための一つのセンサーとしてとらえ直せるかもしれません。

そもそも働きたくない時の対処法

働きたくないと感じたときに実践してほしい対処法を紹介します。

いったん就活をやめてみる

「そもそも働きたくない」という本音を無視し、義務感だけで就活を進めても、心がすり減るばかりです。そんな時は、思い切って「いったん就活から距離を置いてみる」ことも一つの選択肢です。

心のエネルギーが枯渇した状態では、納得のいく選択はできません。可能であれば数日から1週間ほど就活情報から離れてみましょう。ただし内定期限が迫っている場合は、無理のない範囲で調整してください。

「働きたくない」という気持ちは、他人の価値観で自分を見失っているサインかもしれません。一度立ち止まることで、「自分はどう生きたいか」という主体的な問いに向き合う余白が生まれます。焦らず、自分の軸を見つめてみてください。

働きたくない理由を考える

「働きたくない」という感情に、罪悪感を覚える必要はありません。大切なのはその拒絶反応を無視せず、なぜそう思うのか理由を考えてみることです。

多くの相談現場を見てきた経験から言えば、「働きたくない」の本質は労働そのものへの嫌悪ではなく、「満員電車が苦痛」「理不尽な人間関係が怖い」といった具体的な要因であるケースが少なくありません

過去に「社会に出て毎日働くなんて無理」と就活を拒んでいたAさんがいました。話を聞いていくと、恐怖を感じていたのは業務そのものではなく、「毎朝、満員電車に乗って通勤すること」だと判明。幼少期から人混みが苦手だった彼は、耐えられないと絶望していたのです。

そこで、「通勤」という要素を排除した就活に切り替え、フルリモートが中心のWebマーケティング企業に絞って挑戦。結果、実家で高いパフォーマンスを発揮し、ストレスなく働いています。

このように感情を細かく分解していくと、自分が何に怯え、何を大切にしたいのかという「譲れない軸」が見えてきます。理由の言語化によって、他人の目を気にした「やらされる就活」から、自分に合う環境を選ぶ「主体的な就活」へ変わる可能性が広がります。

制約を外して最も好きなことをする

「内定のために自分を会社に合わせる」という就活の枠組みに縛られていると、エネルギーは枯渇していきます。そんな時こそ、「お金や時間の制約が一切なかったら何をするか」を考え、好きなことに没頭してみてください

多くの相談現場では、義務感から離れて自分の「好き」を突き詰めた瞬間に、就活の突破口が見つかるケースも少なくありません。ゲームでも旅でも、制約を外した偏愛に、「自分が何に心を動かされ、どう生きたいか」というキャリアの原動力が隠れています。

世間の「正解」に自分をあてはめるのをやめ、心の欲求に素直になること。それが、あなただけのブレない軸につながっていきます。

(編集部追記)就活時も就職後も「働きたくない」という気持ちはつきものです。自分なりの対処法を見つけたい人は以下の記事も参考にしてください。
もう働きたくない! 自分が納得できる道を見つける4つの方法

就活を楽に進める方法

ここからは、就活を楽に進める方法を知って、少しでも心を軽くしていきましょう。

完璧主義を手放す

「完璧な志望動機」や「非の打ち所がない自己PR」を目指して、自分で自分の首を絞めていませんか? 完璧な就活生など、実はどこにもいません。

多くの企業の人事担当者と接してきた経験から言えるのは、求められているのは「作られた優等生」ではなく「等身大の人間」であるケースが多いということです。就活を楽に進める学生ほど、100点を狙うのではなく、多少の不器用さも素直に見せています。

他人が作った「理想の就活生像」を演じる必要はありません。完璧主義を手放し、自分の弱さを受け入れた瞬間に、肩の力が抜けて「主体的な魅力」が伝わり始めます。まずは「これくらいで十分」と、自分を許すことから始めてみてください。

周りと比べすぎずに自分自身を守る

「友人の内定」や「SNSの優秀な同期」と自分を比べ、焦って心をすり減らしていませんか? 他人の進捗に振り回されて絶望する必要はありません。

多くの相談を受けるなかで、他人の基準で選んだ会社に合わず、苦しくなってしまう人を見てきました。会社や世間、周囲の仲間は、あなたの人生の責任まで背負ってはくれません。

あなたを守り、幸せにできるのは、最終的にはあなた自身です。周りのペースに惑わされず、「自分はどう生きたいか」という主体的な軸に集中してみてください。他人の目を少しずつ手放していくことで、就活は楽になっていきます。

将来どんな人生を歩むと楽しそうか? を考えてみる

「どの会社に入るか」という手段ばかり考えて就活が嫌になっているなら、少し視点を変えてみましょう。会社選びはいったん脇に置き、「将来どんな人生を歩むと楽しそうか?」を自由に思い描いてみてください

就活で行き詰まる人の多くは、「働くこと」自体を目的にしがちです。しかし仕事は、理想の人生を叶えるための手段の一つでもあります。

「平日に趣味を満喫したい」「数年後に地方へ移住したい」など、何でもかまいません。楽しいと思える生き方のイメージを起点にすることで、それを実現するための働き方が見えてきます。

人生の主導権を企業任せにせず、自分の未来を主体的にデザインしてみましょう。

(編集部追記)どうしても周りが気になってしまう人は「働きたくない」と同じ意見を持つ学生の就活Q&Aを参考にしてみましょう。
就活中ですが、そもそも働きたくないです……。

就職をしない選択肢もある

世のなかには「就職をしない」という選択肢もあります。就職をしなかった人の事例とともにリスクも知っておきましょう。

まずデメリットを十分に理解しておこう

新卒で一斉に就職することだけが正解ではありません。フリーターや起業など、あえて就職しない選択肢を選ぶ自由は誰にでもあります。

ただし、この道を選ぶなら、社会的信用の得にくさ、収入の不安定さ、将来的な選択肢が狭まる可能性といった「デメリット」も直視しておく必要があります。

「就活が嫌だから」という理由だけでリスクから目を背けてしまうと、後で苦しくなることもあります。デメリットまで理解したうえで、「それでもこの道で生きていく」と自分の意志で決めること。その覚悟があれば、どんな選択肢であっても、それは立派なキャリアの一歩になっていきます。

学生起業塾で学び、起業し楽しく働いている人もいる

就活の枠を飛び越え、「起業」で自ら理想の環境を構築するのも一つの選択肢です。学生起業塾でビジネスを学び、若くして起業し、イキイキと働いている方も実際にいます。

私が面談した学生Bさんは、就活にどうしても違和感があり、大学3年時に学生起業塾へ入塾しました。そこで経営を学び、約2年後には自身の得意分野だったAI(人工知能)を活かし「AI企業導入支援」のビジネスで月商60万円を達成。現在は会社に縛られず、自分の裁量でイキイキと働いています。

ただし、冷静な事実もお伝えします。経営の仕組みやリスクを学ばないまま、勢いだけでおこなう起業はきわめてハイリスクです。知識のない挑戦は、自由どころか大きな負債や挫折を招きかねません。

「就活から逃げるための起業」ではなく、リスクを見据えて徹底的に学び、勝負すること。その覚悟を持った挑戦が、キャリアを切り開く力になっていきます。

将来の目的があるならフリーターという選択肢もある

画一的な新卒一括採用に無理に合わせる必要はありません。明確な目的を見据えたフリーターという選択には、私も賛成です。「将来カフェを開業したい」という目標のもと、まずアルバイトで接客や店舗運営を学び、イキイキと働いている方も実際にいます。

Cさんは、あえて就職を選ばず、地元の有名カフェで3年間アルバイトをしながら開業準備を進めました。原価管理や仕入れの実務を学び、独自の事業計画書を作成して日本政策金融公庫から融資を受け、自家焙煎カフェを開業しました。現在はオーナーとしてイキイキと店舗を切り盛りしています。

ただし、直視すべき現実もあります。一般的に、正社員とフリーターでは生涯年収に大きな差がつくと言われています。

そのため、「就活が嫌だから」という理由だけで流されるように選ぶと、後で苦しくなることもありるのです。経済的リスクという現実を理解したうえで、「それでもこの道を選ぶ」と覚悟を決めること。その意志があって初めて、その選択は後悔のないキャリアへと進化していきます。

最後に

「働きたくない」という本音は、決して怠けではありません。世間の「正解」や周囲のペースに押しつぶされそうになりながら、心が発した大切な防衛サインです。

多くのキャリア相談に向き合い、企業の人事担当者とも長年向き合ってきた経験から、最後に伝えたいことがあります。就活とは、どこかの会社に自分を無理やり合わせるための「義務」ではなく、これからの人生をどう生きたいかを自分で決めるための「手段」にすぎません

いったん立ち止まって理由を考えても大丈夫です。デメリットを理解したうえで、就職以外の道を主体的に選んでも良いのです。どんな道を選ぶにしても、他人の目を手放し、自分の未来を自分でデザインする覚悟さえあれば、それは前向きなキャリアの一歩になるはずです。

あなたの人生の舵を握るのは、最終的にはあなた自身なのです。

執筆・編集 PORTキャリア編集部

明日から使える就活ノウハウ情報をテーマに、履歴書・志望動機といった書類の作成方法や面接やグループワークなどの選考対策の方法など、多様な選択肢や答えを提示することで、一人ひとりの就活生の意思決定に役立つことを目指しています。 国家資格を保有するキャリアコンサルタントや、現役キャリアアドバイザーら専門家監修のもと、最高品質の記事を配信しています。

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記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi

高校卒業後、航空自衛隊に入隊。4年間の在籍後、22歳で都内の大学に入学し、心理学・教育学を学ぶ。卒業後は人材サービスを展開するパソナで、人材派遣営業やグローバル人材の採用支援、女性活躍推進事業に従事。NPO(非営利団体)での勤務を経て、「PORTキャリア」を運営するポートに入社。キャリアアドバイザーとして年間400人と面談し、延べ2500人にも及ぶ学生を支援。2020年、厚生労働大臣認定のキャリアコンサルタント養成講習であるGCDF-Japan(キャリアカウンセラートレーニングプログラム)を修了

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