「就活したくない」は甘え? 仕事の本質から紐解く就活の原点|専門家解説

この記事の執筆者 幅広い業界での経験とキャリア支援実績がある専門家が書き下ろしました
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渡部 俊和
人材開発・育成コンサルタント/合同会社渡部俊和事務所代表
Toshikazu Watanabe〇会社員時代は人事部。独立後は大学で就職支援を実施する他、企業アドバイザーも経験。採用・媒体・応募者の全ての立場で就職に携わり、3万人以上のコンサルティングの実績

「就活したくない」は甘え? 現実逃避?

ときおり学生から、就活が面倒、就活のモチベーションが沸かない、といった相談が寄せられることがあります。私はそういう相談の意味が昔はよくわかりませんでした。

大学を卒業して自立して生計を立てるためには、ほとんどの人は働かなくてはならないのが事実です。就活は働くための活動ですから、「それをしないでどうやって生きていくつもりなのだろう?」と逆に聞きたくなる気持ちでした。

しかし、相談をいろいろ聞いていくうちに、「就活」という言葉が人によっていろいろなとらえ方をされていることに気付きました。情報の氾濫によって、型通りにやらなければならないと感じてしまう人がいるほか、就活が形式化・儀式化されたもののようになっている実態もあります。

こうして、あらゆる異なるものが「就活」という言葉でくくられてしまっている危険性を認識しました。

この記事を読んでいる人には、そもそもの「就活」の原点に立ち戻って、改めて自分主体で考えてほしいと思っています。

本コラムのコンセプト

生成AIによる一般的な情報がすぐに手に入る時代。就活生や求職者にいま求められているのは、経験や体験に基づく血の通ったアドバイスではないか。そうした読者のニーズに応えるために、編集部がテーマを選定し、参画するキャリアコンサルタントらに寄稿いただくコラム企画を始めました。自身の経験や実アドバイスをベースに、綺麗事を一切排除した本音の就活対策をお届けします。

「就活したくない」の背景

卒業までに仕事を決めること自体は必要なことだと多くの学生はわかっていると思います。

それなのに、「就活したくない」という気持ちになるのはなぜなのか。いくつかピックアップしてみたいと思います。

「就活」イベントの複雑化と長期化

昔に比べ就活自体が長期化しており、選考過程も複雑化して、学生も企業も非常に負担が増えている状況になっています。 早期インターンシップや会社説明会の前倒しなど、就活がイベントとして長期化・早期化していることが、就活に嫌気がさしている一因かもしれません。

本来は学生生活の最後に計画的に準備して就職先を決める、というだけのことが、就職支援サービスが充実したことによって早い時期の学生生活や私生活のスケジュールを過度に圧迫する一大イベントに膨張してしまいました

周囲の人からのプレッシャー

保護者、アドバイザー、キャリアコンサルタントなど、就活支援をする立場の人は、ありとあらゆることを「できればやったほうが良い」と言います。

それは支援者の立場からみると「成功してほしい」ということが目標なので「やらなくても大丈夫」と言うよりは「やっておけ」と言うほうがリスクが少ないと考えるからです。

ただ、あれもやれ、これもやれ、と言われてストレスを感じることや、キャパシティを超えた要求にうんざりしてしまうこともあるでしょう

仕事や会社が怖い

未経験のことに対する怖れというものは人間の本能です。

まだ実社会で本格的に働いたことが無い人であれば、怖れを抱くのは当然です。それを「甘え」と一言でくくることはできないと思います。

そもそもなぜ働かなくてはならないの?

多くの学生は学生時代の多くの時間を勉強に充てています。その分、保護者に学費や生活費の全部または一部を負担してもらっていると思いますが、卒業すれば、基本的には自分の力で生計を立てる必要があります。

実家が裕福などで一時的に働かなくても生活できる人もいますが、それは永遠には続きません。人間はいつか死ぬ生き物であり、それは保護者も同様です。

仮に多額の財産を相続したとしても高額な税金がかかります。最近でも、数十億円の財産を相続したが税金が払えずに相続放棄せざるを得ないニュースがありました。税金はすべて現金決済なのに対し、相続財産はすぐに現金化できないということがあります。

つまり、どんなにお金持ちであろうと、生きている間ずっと誰かに頼るのは現実的ではないのです。私たちはどこかで自立しなければならず、そのために「働く」ことが重要になります

そして、年を重ねるほど、異なる環境に適応する能力が落ちていくということも念頭におかなければなりません。

なるべくなら、気力も体力もある若いときに「働く」ことに取り組み、仕事をして価値を生み出し報酬を得る経験をしないと困ったことになりかねないのです。

仕事って何だろう?

もしかしたら、「就活が嫌だ」という人のなかには、学生時代が終わったら仕事以外のことをしたい、という人もいるのかもしれません。趣味と仕事は何が違うのでしょう。

一橋大学ビジネススクールの楠木建先生が、以前講演のなかでこんな趣旨の話をしていらっしゃいました(聞いた内容なので一つ一つの言葉は正確ではありません)。

「私は趣味でバンドをやっているのですが、全然お客さんが入らない。でもそれは当たり前なんです。自分たちが好きでやっているバンドなんて、お客さんにとってはまったく価値がないからです。

でも仕事は違います。相手にとって価値を提供するのが仕事であって、価値があるから報酬がもらえるんです」

つまり誰かに何らかの価値を提供するのが仕事であって、価値を創造できるから報酬を得て自立できるということになります

これに対して、学生はまだ学費を払って学んでいる、つまり知識や情報を与えてもらってそれを買っている立場です。その学費や生活費も多くの場合保護者が負担しているのであれば、それはまだ自立ができていない状態ということになります。

(編集部追記)自立の第一歩である仕事。その選び方については以下の記事を参考にしてください。
仕事の選び方は? 自分に合う仕事が見つかる9つの方法を解説

原点に戻ってみよう

原点に戻って考えてみると、大学を卒業する時点で、私たちの多くは社会に出て自分で生計を立てる必要に迫られます。それを計画的に進めていく活動が「就活」といえます。

簡単にいえば、卒業してから「仕事としてどこで何をするか」を決めることです。わざわざ「仕事として」と書いたのは、生計を立て自立するためには「仕事」でないといけないからです。

社会に出て仕事に就くということは、「買う立場から売る立場になる」こと、または「与えられる立場から与える立場になる」こと、と言い換えることもできます。この転換が自立するためには重要なのです。

就活イベントのすべてに付き合う必要はない

極端な話をすれば、近所で良い会社を見つけて、求人の看板を見て飛び込みで応募して採用してもらえたら、それで就活は終了です。良い仕事が見つかったのなら、インターンシップもナビサイトも必要ありません。

前述したように、就活を支援する人は「できるならあらゆる準備をやっておいたほうが良い」と言わざるを得ないのですが、「できるなら」の範囲は人によって違います。他人の指導の通りにしなくたってかまいません。

ただ、もっと良い仕事はないかと思うから、情報収集をしていろいろなイベントに参加して納得できるまで就活をするわけです。それは見方を変えれば自分自身の不安の裏返しでしかありません。

結局、あなたが覚悟を決めてそこで働こう、と思えればそれで良いのです。

あまりに就活のプレッシャーが大きかったり、悩みすぎて動けなくなってしまったりしたら本末転倒なので、本当に就活がつらいなら必要最低限の活動に絞ってもかまいません。

行動の結果についてはすべて自分の責任

私たちはたくさんの情報に囲まれて生活しています。就活の情報については学生の不安を煽るネガティブなもののほうが多いかもしれません。

ただ、自分の行動を決めることができる自由は誰にでもあります。就活のような定型的なイベントも、同調圧力はあれど、基本的に誰かに強制されたり制約されて行動しているわけではないということを再確認してほしいと思います。

そもそも「良い仕事」や「良い会社」も人や時代によって基準が違い、変化もしています。追求してもきりがなく、同時に複数の会社に入れるわけでもないのです。就活をどこまでやるかも自由、どこでやめるかも自由です

そして結果については誰かのせいではなく100%自分が負います。その点さえわきまえていれば、就活はそんなに難しく考えるものではなく、期限の決まっている宿題のようなものだと思います。

「就活したくない」という気持ちのなかに、「誰かにやらされている」という意識はないでしょうか? 仕事や働くことの意味をいろいろ書いてきましたが、よく考えてもらえれば、それは自分自身のために必要なことであり、すべては自分の意思に委ねられていることも理解していただけると思います。

(編集部追記)本当に就活がつらくて悩んでいる人は以下の就活Q&Aも参考にしてください。
就活でうつ状態になるのは甘えですか?

執筆・編集 PORTキャリア編集部

明日から使える就活ノウハウ情報をテーマに、履歴書・志望動機といった書類の作成方法や面接やグループワークなどの選考対策の方法など、多様な選択肢や答えを提示することで、一人ひとりの就活生の意思決定に役立つことを目指しています。 国家資格を保有するキャリアコンサルタントや、現役キャリアアドバイザーら専門家監修のもと、最高品質の記事を配信しています。

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記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi

高校卒業後、航空自衛隊に入隊。4年間の在籍後、22歳で都内の大学に入学し、心理学・教育学を学ぶ。卒業後は人材サービスを展開するパソナで、人材派遣営業やグローバル人材の採用支援、女性活躍推進事業に従事。NPO(非営利団体)での勤務を経て、「PORTキャリア」を運営するポートに入社。キャリアアドバイザーとして年間400人と面談し、延べ2500人にも及ぶ学生を支援。2020年、厚生労働大臣認定のキャリアコンサルタント養成講習であるGCDF-Japan(キャリアカウンセラートレーニングプログラム)を修了

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