非上場企業って何? 知っておきたい上場企業との違いや入社する魅力

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  • キャリアコンサルタント/性格応用心理士1級

    Minoru Kumamoto〇就職・転職サイト「職りんく」運営者。これまで300名以上のキャリア相談を受けた実績。応募書類や採用面接の対策支援をする他、自己分析の考え方セミナーを実施

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  • キャリアコンサルタント/2級キャリア技能士

    Misako Sugihara〇石川県金沢市を拠点に15年にわたり就職支援に携わる。2年前からは転職支援も手掛けている

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    Yukari Itaya〇未就学児から大学生、キャリア層まで多様な世代のキャリアを支援。大企業からベンチャー、起業・副業など、幅広いキャリアに対応。ユニークな生き方も提案するパーソナルコーチとして活躍

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この記事のまとめ

就活の企業研究をしていると「上場企業」「非上場企業」という言葉を聞く機会はあるでしょう。

非上場企業と聞くと「規模が小さそう」というマイナスイメージを持つ人もいるかもしれませんが、実は「非上場企業=中小企業」というわけではありません。

上場企業と非上場企業それぞれの違いについてしっかり理解しておかないと、就職してから後悔する可能性があります。

そこで本記事ではキャリアアドバイザーの隈本さん、杉原さん、板谷さんのアドバイスも交えつつ、非上場企業と上場企業の違いや、非上場企業で働く魅力について解説するので、企業選びの参考にしてみてくださいね。

目次

非上場企業とは何かを理解することで企業選びの視野が広がる!

上場企業と聞くと大手企業を想像し、逆に非上場企業は「規模が小さい」「給与が低い」というイメージを抱いてはいませんか。

しかし、非上場企業でも規模が大きく給与が高い企業は多くあります。最初から上場企業のみに絞ってしまうと応募の選択肢が減ることになるので、まずは非上場企業の正しい知識を身に付けましょう。

本記事では、前提を理解するため、まず非上場企業と上場企業の特徴について解説します。また、それぞれの企業で働くメリット・デメリットについても触れるので、自分がどちらで働きたいか想像してみてください。

後半では自分に合った非上場企業を見極める方法についても紹介します。非上場企業が選択肢に入ったら、しっかりチェックして内定を獲得するための準備を進めてくださいね。

今さら聞けない! 非上場企業と上場企業の違い

非上場企業と上場企業という言葉は知っていても、実際にどう違うのか詳しく理解している人は少ないのではないでしょうか。今さら人に聞くのも少し恥ずかしいですよね。

しかし、就活においては正しく理解していないと、就職してからの働き方に影響が出る可能性があります。

正しい知識がないまま就職して後悔しないように、まずはそれぞれの違いについてしっかりチェックしておいてくださいね。

上場企業とは

上場とは自社の株式を公開し、証券取引所が運営する株式市場で売買できるようにすることです。一定の基準をクリアしたうえで、証券取引所の審査を経て資格を得た会社が上場できます

証券取引所は東京、札幌、名古屋、福岡の4か所があり、東京では特に多くの上場企業の株式を取り扱っています。

また、証券取引所の中でも市場の種類が分かれており、たとえば東京は2022年まで「東証一部」「東証二部」「JASDAQ」「マザーズ」という4つの市場がありました。

なお2022年4月4日からは、新たに「プライム」「スタンダード」「グロース」の3つの市場に再編されています。

非上場企業とは 

非上場企業は証券取引所に自社の株式を上場していない企業を指します。証券取引所に公開されている上場企業の株式は世界中どこからでも買うことができるのに対し、非上場企業の株式は「非上場株」「未公開株」と呼ばれ、なかなか買うことができません

売り手と買い手が合意すれば非上場企業の株を買えますが、個人投資家が株式を買う機会はほとんどないでしょう。

また日本には500万社を超える企業があるといわれますが、日本取引所グループの「上場企業の推移」のデータによると、上場企業は2023年時点で3,933社しかなく、ほとんどの企業は非上場企業です。

非上場企業の株を買うメリットには何があるのでしょうか?

資産運用にも企業への影響力にもメリットがある

非上場企業は成長の初期段階にあることが多く、投資によって大きなリターンを得られる可能性があります。特に、将来的に上場を目指している企業に投資する場合は、上場時の株価上昇によって大きな利益を得られるかもしれません。

また、非上場企業の株は流動性が低いですが、投資家にとって長期的な資産形成の一環として考えられているため、市場の短期的な変動に左右されにくい特徴があります。

これにより、安定した資産運用を目指す投資家にとっては、有望な投資先となりえるのです。

さらに、非上場企業の株主は少数の場合が多く、投資家としての意見や提案が企業戦略に反映されやすい環境が整っています。

そもそもなぜ上場を目指すの? 企業が上場するメリット・デメリット

非上場企業と上場企業の違い

上場を目指す企業は多くありますが、そもそも企業はなぜ上場を目指すのでしょうか。一方で、会社の規模は大きくても上場しない企業もあります。

企業によって上場の判断が分かれるのは、上場にメリットとデメリットがあるからです。ここからは、それぞれどんなものがあるのか具体的に解説していきます。

このメリット・デメリットは社員の働き方にかかわる点もあるので、頭に入れておきましょう。

企業が上場するメリット

企業が上場すると、おもに以下のようなメリットがあります。

企業が上場するメリット

  • 社会的信用が得られる
  • ブランド力が高まり、優秀な人材が集まる
  • 資金調達がしやすくなる

上場できる企業は条件を満たして証券取引所の審査に通過する必要があります。実際に上場できている企業はごく一部で、審査を通過したということは会社の経営体制が健全であることが証明されています

そのため、資金調達がしやすくなるなど、企業の社会的信用が得られます。在勤している従業員も、ローンを組みやすくなるなどのメリットが享受できるでしょう。

また、上場すると知名度が上がるため、良い人材が集まりやすくなるメリットもあります。良い人材を集められれば、企業のさらなる成長につながります。

企業が上場するデメリット

上場するメリットは大きいですが、一方で企業にとっては以下のようなデメリットもあります。

企業が上場するデメリット

  • 経営情報を競合他社に知られる
  • 株価の変動に経営が左右されるようになる

上場した企業は情報開示の義務が発生するため、競合他社にも経営情報を知られることになります。情報を知られることにより、秘密情報を知られるリスクも発生します。

また、経営が株価の変動に左右されるようになるため、短期的な利益を求めなければならなくなるのもデメリットです。株主は短期に確実な利益を見込める戦略を要求するため、中長期的な経営戦略を描きづらく、事業の自由度は減るでしょう。

ほとんどの企業が上場を目指しますが、企業にとっては上場した方がメリットが大きいのでしょうか?

板谷 侑香里

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メリットとデメリットのどちらを重視するかは経営者次第

企業にとって上場すると、資金調達がしやすくなったり、企業の信用度が高まったり、社員にストックオプションを渡すことでモチベーションが向上したりといったメリットがあります。

しかし、必ずしもメリットばかりという訳ではなく、株主へ向けて短期的な利益や結果を出し続けないといけなかったり、敵対的買収の危険性、経営陣の自由度が下がったりといったデメリットもあります。

経営者が上場を一つの目標にすることもある一方で、あえて非上場のままでいるということもあります。経営者のビジョンや思いに左右されることなので、上場が絶対的なメリットとは言えません。

上場企業に負けない魅力がある! 非上場企業で働くメリット

上場企業に負けない魅力がある! 非上場企業で働くメリット

  • 新しいことにチャレンジしやすい
  • 社内での意思決定が迅速
  • 上場企業にはない福利厚生が準備されているケースがある

近年の就活では大手志向、上場企業志向の就活生が増える傾向にありますが、非上場企業には上場企業に劣らぬ魅力があります。

「非上場企業だから」とチェックを怠ると、魅力的な企業との出会いの機会が少なくなってしまいます。

ここからは非上場企業で働くメリットを3つ紹介するので、自分の就活の軸に合うかどうかしっかりチェックしてくださいね。

①新しいことにチャレンジしやすい

非上場企業は成長途中の企業も多く、新しいことにチャレンジしやすい環境があります。上場企業は株主から短期的な利益を求められるため、中長期的な戦略がなかなか取れません。

たとえば、何か新しいプロジェクトにチャレンジしたくても、株主から「利益が見込めない」と却下されてしまったり、既存のプロジェクトを縮小するように要求されたりすることも考えられます。

その点、非上場企業は経営者が多くの裁量権を持つので、目先の業績にとらわれることなく中長期的な戦略を選べます

「○○にチャレンジしたい」という打診をして、それが短期的な利益にならなかったとしても、将来性を考えて案が採用されることもあるでしょう。

杉原 美佐子

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創業から間もない企業は、新しいことにチャレンジしやすいかと思います。

成長途中の企業であったり、経営者が比較的若かったりすると、規制枠を打ち破ろうとするので自由な雰囲気があるでしょう。しかし、好き勝手ができるという意味ではありません。

②社内での意思決定が迅速

非上場企業は株主の意見に左右されないため、社内での意思決定が迅速です。

上場企業では不特定多数の株主に意見を求める必要があるので、意思決定まで時間を要します。また、事業によっては株主への配慮も必要です。

たとえば、5大新聞社(朝日読売日経毎日産経)のような大手の新聞社は上場していません。これは、経営の自由度を阻害されるリスクを考慮してのことだと推察されます。

株主に不利な記事を掲載することになると、トラブルに発展しかねません。また、一つひとつの記事に対して株主に配慮していては、掲載までに時間がかかり情報の新鮮さが失われてしまいます。

非上場企業ではこうしたリスクを抱えずに済むため、比較的自由な働き方が可能です。

板谷 侑香里

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意思決定が迅速だと、急激な環境変化が起きた際、それに対応した新しいプロジェクトや取り組みに着手することができます。また、成果や結果を感じるサイクルも早くなるでしょう。

加えて、シンプルな指示系統であれば、無駄に感じる業務も少なく、全体的なモチベーションが上がります。

③上場企業にはない福利厚生が準備されているケースがある

上場するためには福利厚生も審査の対象となるので、上場企業では平均的に福利厚生が整っています。

しかし、非上場企業の福利厚生が整っていないかというと、そんなことはありません。むしろ、上場企業にはないユニークな福利厚生が準備されているケースもあります。

たとえば、好きなキャラクターや人物の記念日に休暇を取得できる「推しメン休暇」、自社のキッチンや食材を自由に使って「まかない」が作れる制度など、特徴的な福利厚生を採用する企業は後を絶ちません。

ユニークな福利厚生は上場企業だと株主の理解を得られず、なかなか採用しづらいという現実があります。ユニークな福利厚生を受けてみたい、という人は非上場企業を検討してみましょう。

非上場企業の福利厚生で実際に魅力に感じたものはありますか?

杉原 美佐子

プロフィール

福利厚生は上場しているかではなく会社ごとに決まっている

上場企業か非上場企業かで福利厚生に大きな差があるわけではありません。上場する・しないはあくまでも経営判断で、福利厚生についても同じです。

福利厚生には法律で定められているものと、企業が独自に設けるものの2種類があります。

法定福利厚生は健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険、介護保険、子ども・子育て拠出金の6種類です。

一方、企業独自の福利厚生で代表的なものには、スポーツクラブの利用、持ち株会、通勤・住宅手当などがあります。近年ならばiDeCoが注目株でしょうか。

利用しない福利厚生が手厚くてもあまり意味がありません。福利厚生は給与・賞与以外で従業員に与える利益を意味するので、企業によって異なります。自分にとってメリットとなる福利厚生は何かを考えましょう。

非上場企業で働くデメリットも理解しておこう!

非上場企業で働く魅力は多いですが、上場企業と比べてデメリットもあります。デメリットについて知らないまま入社してしまうと、入社前に思い描いていたイメージとのギャップを感じて早期離職につながってしまいます。

入社して後悔しないためにも、正しい知識を身に付けてから応募を検討しましょう。

①ワンマン経営になる場合がある

非上場企業は外部から経営方針への影響を受けにくいというメリットがありますが、それは一方で経営陣の意思決定力が強いということでもあります

そのため、悪くするとワンマン経営になってしまい、社員の意見が通りにくい状況に陥るでしょう。

株主からの監視があるわけでもないため、こうした状況はなかなか是正されません。結果として不満を持った社員や優秀な社員が次々に辞めていき、残るのは経営陣にとって都合の良い人材ばかり、といった企業は残念ながら一定数あります。

ワンマン系の企業に入社するのを避けるためには、入念な企業研究が必要です。

ワンマン経営の良い点は、意思決定のスピードが早い点です。トップダウンによる指示が直接反映されるため、変化に柔軟に対応しやすく、企業の方向性がぶれにくい傾向にあります。

また、強いリーダーシップにより、組織のビジョン共有が図りやすい点もメリットです。

②会社規模によっては業務がマニュアル化されていない仕事もある

上場企業では業務が細かくマニュアル化されており、初めての部署や仕事でも業務を理解しやすい環境が整っています。

一方、企業によっては業務がマニュアル化されていない場合があるので覚悟が必要です。業務がマニュアル化されていないのは、成長途中であるため日々業務内容も変化しておりマニュアル化が間に合わない、マニュアルを作る時間がないなどの理由があります

マニュアルがあることによって社員がマニュアル通りにしか動かない、モチベーションが上がらないといったデメリットもありますが、これから入社を検討している人にとってマニュアルがないのは不安材料でしかありませんよね。

入社後の研修体制に不安を感じるなら、説明会や面接で確認しておくのが無難です。

マニュアルの有無をうまく聞く方法はありますか。

板谷 侑香里

プロフィール

成長意欲や業務への熱意に紐付けて質問しよう

業界にもよりますが、非上場企業だとしてもそれなりに歴史や人数規模のある企業であれば、大まかなマニュアルなどは用意されていることがほとんどなので、安心してください。

それでも気になる場合は、「入社した後、新しい業務を学ぶ際に通常どのような手順で進めていますか?」と尋ねるのが良いでしょう。

または、面接官がどのように新しい業務を学んでいるかを質問したり、「業務の進め方について、参考にできる資料はありますか?」と聞いたりするのも有効だと思います。

このほかには、「業務手順や情報を共有するためのシステムやツールはありますか?」とたずねるのも良いかもしれません。

キャリアコンサルタントに聞いた! 非上場企業で活躍できる人の特徴は?

「非上場企業が気になるけど、どんな人が活躍できるかわからない……」と不安を抱いている人もいるでしょう。

一度きりの就活なのに、いざ入社してみて向いていなかったら取り返しがつきませんよね。

そこでここからは、多くの就活生のサポートをしてきた隈本さんに、非上場企業で活躍できる人の特徴について伺いました。コメントの内容と自己分析の結果を照らし合わせて、自分に適性があるか確認してみましょう。

アドバイザーコメント

非上場企業で多様な業務に挑戦すると早い成長が可能

ある相談者Aさんは、新卒で非上場企業に就職しました。この企業は成長著しいITスタートアップであり、Aさんは初期メンバーとして採用されました。企業の規模が小さかったため、Aさんは幅広い業務に携わることができ、多くのスキルを身に付けました。

特に、新しいプロジェクトの立ち上げに関与したことで、リーダーシップを発揮する機会を得ることができ、同年代の中では比較的早い昇進を果たしています。Aさんの成功例は、非上場企業における多様な経験と、企業の成長を共にすることで得られる大きなメリットを示しています。

ミスマッチを防ぐために入社前のすり合わせは慎重におこなおう

一方、別の相談者Bさんは、非上場の中堅製造メーカーに転職しました。Bさんはこの企業の安定的な成長に魅力を感じて転職を決意したものの、入社後にワンマン経営の実態に直面しました。

社長の決定が絶対という環境であり、社員の意見や提案はほとんど聞き入れられませんでした。自分のアイデアを実現する場がないことでBさんのモチベーションは低下しました。

転職を決意して活動を始めたものの、勤務先での成果のアピールが難しく、2度目の転職には1度目よりも苦労しました。Bさんの例は、ワンマン経営のリスクと、非上場企業の不透明な将来性を表しているといえます。

かんたん3分!受けない方がいい職種がわかる適職診断

就活では自分に適性がある仕事を選ぶ事が大事です。適性が低い仕事に就職すると、イメージとのギャップから早期の退職に繋がってしまうリスクがあります。

そこで活用したいのが「適職診断」です。簡単な質問に答えるだけで、あなたの強み・弱みを分析し、適性が高い職業・低い職業を診断できます。

こんな人に「適職診断」はおすすめ!
・志望業種をまだ決めきれない人
・楽しく働ける仕事がわからない人
・時間をかけずに自己分析をしたい人

強み・弱みを理解し、自分がどんな仕事に適性があるのか診断してみましょう。

逆に上場企業で働くメリットは? 3つの観点で理解しよう

逆に上場企業で働くメリットは? 3つの観点で理解しよう

  • 会社の情報が公開されているため社会的信用が高くなる
  • 給与や福利厚生など働きやすい環境が整っている
  • 将来的にキャリアアップしやすい

ここまで非上場企業で働くメリット・デメリットについて紹介してきましたが、上場企業で働くメリット・デメリットについて興味を持った人も多いでしょう。

いままで上場企業にあまり興味のなかった人も、自分にとって魅力が大きければ検討してみたいですよね。

そこで以下では上場企業で働くメリットについて3つ紹介するので、ぜひチェックしてみてくださいね。

①会社の情報が公開されているため社会的信用が高くなる

上場企業は情報を開示することが法律で義務付けられており、あらゆる人が健全性を確認できます。そのため、非上場企業よりも社会的信用が高くなる傾向です。

社会的信用が高いと、クレジットカードやローン、住居の審査に通りやすくなります。審査に通りやすいと車や家など大きな買い物をする際に便利です。

また、情報を得やすいのは就活においてもメリットがあります。就活における企業研究では、企業の安定性や事業の将来性を見極めるのも重要です。

その点、情報開示されている上場企業は未上場企業に比べて安定性や将来性が見極めやすくなっています。情報から、面接や説明会で聞いておきたい疑問も考えやすくなるでしょう。

杉原 美佐子

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社会的信用とは、言い換えると「安心感」です。一般的な知名度の高い会社の名前を聞くと、それだけで人は妙に納得します。知っていることがポイントなのです。

人は情報量が多いほど安心し、知らない場合は疑ったり恐れたりします。

②給与や福利厚生など働きやすい環境が整っている

上場企業になるには会社の収益はもちろんのこと、健全性や働きやすい環境づくりなど多くの条件を満たす必要があります。

なかでも給与や福利厚生、労働時間などの労務管理体制については厳しく審査されるため、上場企業には働きやすい環境が整っているといえます。

もちろん非上場企業の中にも労働環境整備が充実している企業もありますが、上場企業は「審査を通過して上場している」というだけで箔がついているため、入社を検討している人にとっての安心感は上場企業の方が上でしょう

板谷 侑香里

プロフィール

働きやすさを高めるために、リモートワークやフレックスタイム制を導入している企業もあります。

また、部署間の交流イベントやキャリア開発支援、有給休暇の取得促進やノー残業デーの設定などを積極的におこなうのも、働きやすい環境を作る取り組みといえます。

③将来的にキャリアアップしやすい

上場する企業では評価制度も整備されており、社員の昇給・昇進の基準が明確です。

そのため努力の方向性がわかりやすく、将来的にキャリアアップしやすいといえます。また、働くうえで「○○の努力をしたら評価されるから頑張ろう」というようにモチベーション維持にもつながるでしょう

転職してキャリアアップするのであれば、上場企業で勤務していた経験は有利にも不利にもなります。応募者が上場企業の出身だと充実した研修を受けて基礎能力を高めているため、採用担当者はそのポテンシャルに期待します。

また、規模の大きい企業でしかできないような大きなプロジェクトの経験や、組織構成への理解も魅力です。

一方で、業務が細分化されている大企業では経験業務の幅が狭いのではないか、といった懸念を抱く採用担当者もいます。

上場企業在籍者は、人材市場での市場価値が高い傾向にあります。

上場企業での経験がそのまま高度な業務スキルや業界知識を示し、厳しい競争環境での実績が評価されやすいためです。また、上場企業のブランド力や信頼性も価値を高めます。

こんな点には注意!上場企業で働くデメリット

こんな点には注意!上場企業で働くデメリット

  • 業務に対するプレッシャーや責任が大きい
  • コンプライアンスや社内規定が厳しい
  • 若手のうちは裁量権が小さい場合が多い
  • 上場企業だからホワイトというわけではない

上場企業はメリットが多いイメージを持つ人もいるかもしれませんが、上場企業ならではのデメリットもあります。以下で紹介するデメリットに適応できないと、働くモチベーションが保てず離職につながるかもしれません。

就職して後悔しないために、デメリットについても理解して自分との相性を確認しましょう。

①業務に対するプレッシャーや責任が大きい

規模の大きな上場企業ではプロジェクトの規模も大きく、業務に対するプレッシャーや責任が大きくなります。

また上場企業は株主の権限が大きく、株主は短期的な利益を追求するので、限られた期間で結果を出せなければ厳しい評価を下される可能性もあります。

日々プレッシャーからくるストレスを感じながら仕事をしていると、仕事のモチベーションが下がるだけでなく、心身ともに悪影響が出るかもしれません

こうした重圧を苦痛に感じる人は、上場企業や大企業で働くのは向いていないでしょう。

②コンプライアンスや社内規定が厳しい

上場企業は厳しい条件を満たして証券取引所の審査を通過しているため、透明性の高い経営をおこなっているといえます。

その反面コンプライアンスや社内規定が厳しいので、働き方に制限がかかって窮屈に感じる人もいるでしょう。

コンプライアンスや社内規定が厳しいのは一見すると良いことばかりのように思えますが、実際に働いてみると仕事の柔軟性やスピードが失われるというデメリットもあります

さらに従業員は「会社から縛られている」と感じ、愛社精神も育みづらくなります。チャレンジしたい人は自由度の高い企業へとどんどん離脱してしまうため、企業にとっても従業員にとってもメリットばかりではないのです。

③若手のうちは裁量権が小さい場合が多い

上場企業は規模が大きく従業員数も多いため、業務が細分化されています。そのため若手のうちは裁量権が小さい場合が多く、人によってはやりがいを感じにくいでしょう。

やりがいの少ない仕事を何年も続けるのは大変なことのように思いますよね。

ただ、プロジェクトの規模は大きいので、裁量権を持つことができればその分やりがいも大きく、中小企業ではできないような経験ができます

忍耐力があり、将来達成したい目標のために地道に努力できる人は上場企業での勤務に向いているでしょう。

杉原 美佐子

プロフィール

裁量のある仕事ができるようになるまでに、新卒社員は6~10年はかかるでしょう。

一人前になるのに3~5年、そこから経験値を上げるまでにさらに3~5年くらいの時間を要します。それでようやく一人で判断できるようになると思います。

しかし、裁量が与えられるということは、その分の責任も背負うことになります。

④上場企業だからホワイトというわけではない

上場企業は厳しい審査をクリアしているでのホワイト企業のイメージを持つ人も多いでしょう。しかし、上場企業だからといって必ずしもホワイトなわけではありません。

確かに上場するためにはコンプライアンスを厳しく管理し、給与や福利厚生を充実させる必要があります。

それでも実態は残業時間が多い、給与が少ないなどブラックと言えるような企業も中にはあるようです。

ブラック企業に入社してしまわないためにも、上場企業だからと言って信用し切るのではなく、企業研究を入念にしたうえで応募してくださいね

まずはあなたが受けない方がいい職業を確認してください

就活では自分のやりたいことはもちろん、そのなかで適性ある仕事を選ぶ事が大事です。適性が低い仕事に就職すると、イメージとのギャップから早期退職に繋がってしまうリスクが高く、適職の理解が重要です。

そこで活用したいのが「適職診断」です。質問に答えるだけで、あなたの強みや性格を分析し、適性が高い職業・低い職業を診断できます。

まずは強みを理解し、自分がどの職業で活躍できるか診断してみましょう。

こんな人に「適職診断」はおすすめ!
・志望業種をまだ決めきれない人
・楽しく働ける仕事がわからない人
・時間をかけずに自己分析をしたい人

就活の前に確認しておきたい! 自分に合う非上場企業を見極める方法

就活の前に確認しておきたい! 自分に合う非上場企業を見極める方法

  • 志望先の理念に共感できるか確認する
  • 口コミサイトやSNSで評判や実態をチェックする
  • 実際に志望先の職場見学に行く

非上場企業は情報開示されている上場企業に比べて情報を得にくいという問題点があります。そのため、比較的少ない情報の中で自分に合っているかどうかを見極めるためには、正しい手段を取らなければなりません。

以下では効率の良い見極め方を3つ紹介するので、すべて実践して入念に企業研究し、後悔のない選択をしてください。

志望先の理念に共感できるか確認する

まず確認しておきたいのが、企業と自分との相性です。就活において相性はもっとも重要と言っても過言ではありません。

自分の大切にする価値観や就活の軸と企業の経営方針や業務がマッチしていなければ選考も通過しにくく、たとえ内定を獲得できたとしても入社後のミスマッチにつながってしまいます

非上場企業は上場企業に比べて情報が少ないかもしれませんが、企業のホームページ(HP)を見れば大まかな概要はつかむことができます。

企業の求める人物像もHPや求人票から読み解けるので、漏れのないよう入念にチェックしておきましょう。

口コミサイトやSNSで評判や実態をチェックする

企業のHPは企業の顔とも言えるような存在であり、書いてある内容は基本的に良いことばかりです。

ただ、企業選びにおいては良い点だけでなく悪い点も知っておかねば就職してから後悔することになりかねません。

実際の客観的評価を知りたいなら、口コミサイトやSNSで評判や実態をチェックしましょう。

ここで注意したいのが、「口コミを過信しない」ということです。特に口コミサイトは退職者からの口コミが多く、企業に良いイメージを持っていない人が書き込んでいることが多々あります

あくまでも必要なのは客観的意見なので、マイナスな口コミに流され過ぎず、実態のみを捉えることを意識してチェックしましょう。

板谷 侑香里

プロフィール

企業の口コミサイトやSNSをチェックする際は、投稿時期や投稿者の勤続年数、情報そのものの具体性を確認しましょう。

また、業界全体の特性を知るために同業他社の口コミと比較検討することも有効です。

実際に志望先の職場見学に行く

企業の実態を確かめるのに最も効果的な方法は、「自分の目で見て確かめる」ことです。「百聞は一見に如かず」という言葉があるように、HPや口コミサイトを見るよりも実際に体験してみた方が自分との相性がわかります。

新卒採用においてはほとんどの企業が説明会やインターンをおこなっているので、門戸は広いといえます。

短期のインターンや1日のみの説明会で得られる情報はそれほど多くないので、志望度の高い企業は長期インターンに参加するのが最も良いでしょう

また、OB・OG訪問があれば実際に働く社員の声を直接聞けるので、こちらもおすすめの方法です。

職場見学やインターンではどんなポイントを見れば良いですか?

入社後にいきいき働く自分が想像できるよう多角的にチェックしよう

職場見学やインターンで会社を訪れた際には、まず、職場の雰囲気を観察しましょう。社員同士のコミュニケーションや社員の表情や態度を見て、自分がその環境で働く姿を想像できるかが重要です。

次に、実際の業務内容を確認し、自分のスキルや興味に合致しているか、挑戦しがいがあるかを見極めてください。

さらに、キャリアアップやスキル向上のためのサポート体制や教育プログラムが充実しているか、企業が社員の成長を重視しているかなどもチェックが必要です。

また、社風と価値観も見逃せないポイントです。企業のミッションやビジョン、価値観が自分の考え方や働き方に合っているかを確認し、企業文化が自分に合うかどうかを判断しましょう。

非上場企業への理解を深めて自分に合っている企業か見極めよう!

非上場企業は上場企業と比較するとさまざまな違いがありますが、非上場企業ならではの魅力も多くあることが理解できたでしょうか。

就活で重要なのは企業の大きさではなく「自分に合っているか」どうかです。

自分に合った企業で自分らしく働けることが今後の社会人としての人生で幸せをつかむカギになるので、本記事を参考にして企業のステータスにとらわれず、後悔しない選択をできるようになってくださいね。

アドバイザーコメント

非上場企業か上場企業かで企業の実態までは判断できない

就職に際して、非上場と上場企業の差はあまり考えなくても良いと思います。
上場するしないは経営判断です。最近では、ローソンがプライム市場での上場を廃止しました。2024年3~5月期の最終利益は過去最高の169億6,700万円(前年同期比5.4%増)なので、業績が悪いからではありません。

上場には維持費がかかり、プライム市場なら時価総額に応じて年間96~456万円を上場料として支払わなければいけません。ほかにも、開示書類の作成、株式事務代行機関への委託、顧問弁護士、監査などに費用がかかります。

上場企業にはそうした費用を賄える体力があるという見方もできますね。

ブランドではなく自分の価値観で就職先を決めよう

しかし、非上場企業だからといって体力がない、あるいは企業として劣っていると考えるのは間違っています。

製造業だと、従業員100人、資本金1億円規模の企業は中小企業になりますが、100人の雇用を維持し、毎月給料を支払っていることはすごいと思いませんか。それを創業から何十年と続けている企業はたくさんあります。

上場一流企業や有名企業といったブランドを過信するのはやめましょう。誇りを持って働ける企業に入社できるよう、しっかりと企業研究をおこなってください。

執筆・編集 PORTキャリア編集部

明日から使える就活ノウハウ情報をテーマに、履歴書・志望動機といった書類の作成方法や面接やグループワークなどの選考対策の方法など、多様な選択肢や答えを提示することで、一人ひとりの就活生の意思決定に役立つことを目指しています。 国家資格を保有するキャリアコンサルタントや、現役キャリアアドバイザーら専門家監修のもと、最高品質の記事を配信しています。

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記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi

高校卒業後、航空自衛隊に入隊。4年間の在籍後、22歳で都内の大学に入学し、心理学・教育学を学ぶ。卒業後は人材サービスを展開するパソナで、人材派遣営業やグローバル人材の採用支援、女性活躍推進事業に従事。NPO(非営利団体)での勤務を経て、「PORTキャリア」を運営するポートに入社。キャリアアドバイザーとして年間400人と面談し、延べ2500人にも及ぶ学生を支援。2020年、厚生労働大臣認定のキャリアコンサルタント養成講習であるGCDF-Japan(キャリアカウンセラートレーニングプログラム)を修了

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