本企画について
「噂や評判に、プロの確実な視点を。」をテーマに企業選びや意思決定の支援をする企画です。漠然とした不安には「確度の高い事実」を、意思決定には「キャリアの専門家による視点」を提供することを目指します。
明治時代に創業された老舗製薬企業の塩野義製薬は、CMなどでも名前を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。しかし、企業について調べると、「特許が切れると将来性がない」「過去にリストラがあった」などの「やばい」噂がされているようです。
そこで、この記事では、ネガティブな噂は本当なのかを検証します。正確なデータと就活のプロであるキャリアコンサルタントの解説をもとに、客観的視点で企業の実態を読み解いていきます。
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1分でわかる塩野義製薬
塩野義製薬とは
明治11年に和漢薬を販売する薬種問屋として創業された製薬会社「SHIONOGIは常に人々の健康を守るために必要な最もよい薬を提供する」という基本方針を掲げ、医療用医薬品の研究開発、製造、販売をおもな事業とする。
研究開発型のグローバル企業として、革新的で有用性の高い新薬を継続的に創出することを目指すとともに、近年はデジタルセラピーなど新たな領域にも取り組む。
| 会社名 | 塩野義製薬株式会社 |
| 従業員数(連結) | 6,223人(2026年3月期) |
| 本社所在地 | 大阪市北区 |
| おもな事業 | 医薬品、臨床検査薬・機器の研究、開発、製造、販売など |
| 売上高 | 4,996億7,700万円(前年同期比14.0%増)(2026年3月期) |
| 経常利益 | 1,667億2,500万円(同6.5%増)(同期間) |
| 企業HP | https://www.shionogi.com/jp/ja/ |
| 新卒採用HP | https://www.shionogi.com/jp/ja/recruit/newgraduates.html |
「塩野義製薬がやばい」と言われる4つの理由|プロが読み解く
「塩野義製薬がやばい」と言われる4つの理由
塩野義製薬がやばいと言われるおもな理由を4つ紹介します。キャリアコンサルタントが客観的な視点から企業の実態について解説をしていますので、ぜひ企業研究の参考にしてみてください。
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①特許が切れると将来性がないから
2028年頃にHIV製品の特許が切れることでパテントクリフが起きることが予想されています(※1)。HIV製品は同社の主力製品であるため、特許の有効期間が過ぎた後は、将来性がないのではないかと懸念されているようです。
パテントクリフ
おもに製薬業界において、新薬の特許が切れることで、企業の売上や利益が崖から落ちるように急激に減少すること
2010年にも、売上高全体の約35%を占めている医薬品2種類について、2016年以降に特許切れが訪れた際の業績への影響が指摘されていました(※2)。しかし、対策として第三次中期経営計画を立てたこともあり、特許失効後も売上高が激減することはありませんでした(※3)。
同社は2028年以降のパテントクリフを乗り越えるために新中期経営計画として「Shionogi Transformation Strategy 2030(STS2030)」(※1)を策定しました。革新的パイプラインの開発促進や、多様なビジネス構築による事業の成長を通して、業績の低下を防ごうと取り組んでいます。
※1 塩野義製薬株式会社 SHIONOGI歴史館
※2 塩野義製薬株式会社 有価証券報告書 平成22年3月期
※3 塩野義製薬株式会社 有価証券報告書 各年
プロのアドバイザーはこう分析!抗HIV薬の特許切れが招くリスク! 主力事業が会社に与える影響
同社はロイヤリティ収入が売上全体の約50%を占めており、さらにその多くを抗HIV薬が占める収益構造を持っています。
抗HIV薬のうち、今回特許期限切れを迎える「ドルテグラビル」が売上のどの程度を占めているかは公開されておらず、具体的にどれほどの売上が減少するかは不透明です。
ただ、主力の収益源である以上、将来性への影響を懸念する声が出るのは自然なことです。
特許切れの穴を埋める次の一手! 企業の戦略を見極めよう
しかし、製薬企業はこうしたパテントクリフを想定して動いています。同社も、すでに長時間作用型の新薬「カベヌバ」などを上市し、特許期限切れの製品の売上減少をカバーしていく戦略を進めています。
単に「今の主力薬の特許が切れるからやばい」という表面的なリスクだけを見るのではなく、次の新薬のパイプラインがどの程度準備されているのかが大事です。
あるいは売上構成をどのように変えていくのかといった同社の具体的な経営戦略を見てみましょう。
②過去にリストラがあったから
リストラに関する噂については、塩野義製薬が発表した特別早期退職プログラム(※)が原因と推測されます。2023年10月31日、50歳以上かつ勤続年数5年以上の社員を対象に、約200人の募集をかけたところ、結果として301人から希望があったと発表されています。
ただし、この退職プログラムは決して強制的なリストラではなく、中期経営計画を達成するための人材強化の一環としての取り組みになります。
新しいキャリアを考える社員への支援を目的として、退職金に加えた特別転身支援金を支給したり、退職者への再就職支援サービスを提供したりと、事業の成長と社員のサポートを両立させた取り組みであるととらえられます。
※ 塩野義製薬株式会社 特別早期退職プログラムの実施結果に関するお知らせ
プロのアドバイザーはこう分析!リストラがやばいは誤解? 退職希望が殺到した裏にある魅力
特別早期退職プログラムはベテラン従業員にとって、魅力ある制度と考えられるため、プラスにとらえて良いでしょう。
しかも対象者が50歳以上で、本人の意思を尊重したキャリア支援策として実施されています。
そこに予定よりも多くの人数が応募した事実は、制度そのものが受け入れられた証拠です。会社の構造改革がおこなわれたと見るべきでしょう。
人材戦略の一環! 塩野義製薬が広げる次世代の活躍枠
注目したいのは、塩野義製薬が事業構造の変化に合わせて人員構成を見直した点です。
医薬品業界は研究開発や市場環境の変化が激しいため、人材戦略も時代に応じて変化します。会社の理想の人員構成はピラミッド型と言われていますが、歴史の長い塩野義製薬ではそうもいきません。
50代以上の従業員に魅力的な退職制度を用意し、その分若手が活躍できる受け皿を維持しているようです。
自分たちも入社後に努力を重ねれば、50代になったときにはこのような選択肢が用意される会社だととらえるほうが実情に近いでしょう。
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就活を進めていると、自分に合う職業がわからず悩んでしまうことも多いでしょう。
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自分の適職や適さない職業を理解して、自信を持って就活を進めましょう。
③業績が不安定で読みづらいから
塩野義製薬の業績について、確かに順調に右肩上がりというわけではなく、時期によって不安定であることがわかります。2019年から2021年3月期にかけては減少傾向にあり、2024年3月期以降の直近3年間は業績が上がり続けています(※)。

業績低下の原因としては2021年3月期の有価証券報告書によると、コロナウイルス感染症の拡大による市場の縮小や受診抑制、薬価改訂などの影響があったとされています(※)。
また、2026年3月期に過去最高の実績を出せた要因として、鳥居薬品の連結子会社化やJT医薬事業の吸収分割が挙げられます。くわえて、海外事業の伸びや抗インフルエンザウイルス薬の販売好調なども貢献したと述べられています(※)。
そのため、確かに製薬業界における情勢の変化や、製品の需要による業績の変化はあるものの、そのなかでも戦略を練って成長している企業だと言えます。
プロのアドバイザーはこう分析!業績が良くても安心できない? 流行に左右される医薬品ビジネス
直近の業績が順調に右肩上がりとなっているのを見ると、今後もこのまま安定して成長し続けるのではないかと思い込みがちです。
しかし、急性感染症などの医薬品ビジネスは、ウイルスや病気の流行、人々の感染対策の動向によって需要が左右されやすいです。
そのため、企業が今後も安定的な成長を維持できるかを見極めるためには、さまざまなウイルスの興隆に常に薬を供給できるか、流行の波に左右されにくい事業にも多角的に取り組んでいるかに注目することが大切です。
特許切れに負けずに安定的に収益を得られる構造に目を向けよう
同社の場合も、「3つのウイルス薬と4つの地域」に取り組み、3つのウイルスのなかの一つが4地域のどこかで流行すれば、毎年、安定した収益を得られる仕組みを考えています。
また、特許切れの依存度が低く収益の変動が小さいOTC医薬品事業やCDMO事業、あるいはワクチン事業の拡充といった経営戦略を打ち出しています。
直近の好業績という結果だけにとらわれず、外部環境に振り回されないための今後の経営戦略や製品パイプラインの拡充状況にまで目を向け、その成長が持続可能であるかを見極めてみましょう。
④不祥事があったから
2014年9月12日、塩野義製薬は大阪国税局から再編取引に関する申告漏れがあるとして指摘を受けました(※)。
国税局は同社に対して追徴課税をおこないましたが、同社はこの処分を不服として提訴しました。結果的に、2020年3月11日の一審、2021年4月14日二審と塩野義製薬の主張が認められたことで勝訴し、課税処分は取り消されることとなりました。
インターネットなどで「不祥事」や「申告漏れ」という言葉が出てくるために、企業にネガティブなイメージを持っている人がいるかもしれませんが、詳細とその後の結果について確認することが重要です。
※ 塩野義製薬株式会社 大阪国税局からの更正処分に対する取消請求訴訟の判決について
プロのアドバイザーならこうアドバイス!噂と事実を切り離して企業分析! 税務トラブルの実態
塩野義製薬は2014年、大阪国税局から約405億円の申告漏れを指摘されましたが、2020年の東京地裁、2021年の東京高裁でいずれも全面勝訴し、課税処分は取り消されています。
「国税庁から指摘を受けた」という事実だけを見ると不安に感じるかもしれませんが、調査した限り、この件が株価急落やアナリスト評価の引き下げにつながったことを示すデータは見当たりませんでした。
有価証券報告書でも大きく取り上げられておらず、経営の根幹を揺るがすような問題ではなかったと考えられます。
噂に惑わされずに一次情報から読み解く納得の企業選びをしよう
就活では「不祥事や訴訟=危険な会社」と短絡的にとらえがちですが、大切なのは指摘の性質(悪質な不正か、制度解釈上の見解の相違か)と、その後の対応・結果です。
今回のケースは、事前に国税局へ照会までしたうえでの見解の相違であり、裁判所も会社側の主張を認めています。
表面的なニュースの見出しだけで企業を判断せず、一次情報にあたって背景まで確認する姿勢が、納得のいく企業選びにつながります。
あなたが受けないほうがいい職業を知っておこう
就活を成功させるためには、自分に合う職業・合わない職業を早めに知ることが不可欠です。しかし、それがわからずに悩む人も多いでしょう。
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早いうちに自分に合う職業・合わない職業を知って、就活を成功させましょう。
塩野義製薬は信頼できる柔軟な経営をしている
塩野義製薬は特許の失効や情勢に変動があっても業績を伸ばしてきました。また、リストラは強制でなかったり、不祥事については裁判で勝訴していたりと、噂と実態が一致していないこともわかりました。
そのため、企業に対する評判は、詳細に調査をすることで事実が確認できるため、信頼できる情報源をもとに企業研究を進めていきましょう。
プロのアドバイザーはこう分析!塩野義製薬が求める目先の結果にとらわれない真の人物像
塩野義製薬に向いているのは、人々の健康に長期的な視点で貢献したい人です。
新薬の研究開発は成果が出るまで何年もかかり、途中で計画が変更・中止になることも珍しくありません。そのため、目先の結果にとらわれず、粘り強く課題に取り組める姿勢が求められます。
また、製薬会社は研究職だけで成り立っているわけではありません。開発、製造、品質保証、営業、管理部門など、多くの専門職が連携することで初めて一つの医薬品が患者に届きます。
自分の専門性を高めながら、周囲と協力して社会的意義の大きな仕事に取り組みたい人には魅力的な環境でしょう。
短期的な成果を求める人はNG? 研究開発型ならではの適性がある
一方で、短期間で目に見える成果だけを求める人や、変化に柔軟に対応することが苦手な人は、研究開発型企業の仕事の進め方に戸惑う可能性があります。
塩野義製薬は、あくまでも新薬を生み出す研究開発型の製薬会社です。薬を開発して売ることを第一義として考えられる人に向いています。
会社はデジタルセラピーをはじめとする新しいヘルスケアを提唱していますが、根底には健康を維持したいという思いがあることを押さえておきましょう。
執筆・編集 PORTキャリア編集部
> コンテンツポリシー記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi






3名のアドバイザーがこの記事にコメントしました
国家資格キャリアコンサルタント
Takuya Takahashi〇人材系スタートアップ企業で採用支援・D&I推進に従事。その後、SIer企業でエンジニア兼研修講師として新人育成に参画。現在はNPOで若者の居場所支援やケアに取り組む
プロフィール詳細2級キャリアコンサルティング技能士/全国経理教育協会 社会人常識マナー検定2級
Tomohiro Morita〇理系大学院修了後に企業で勤務。その後、キャリア支援・セミナー講師・文章制作などマルチに活躍。就職・転職に関する情報整理や書類作成、意思決定支援をおこなう
プロフィール詳細国家資格キャリアコンサルタント
Gaku Baba〇製造メーカーやITベンチャーの企業人事に従事する傍ら、キャリアエージェントとして数多くの転職希望者の支援も実施。幼児教育事業も展開するなど、幅広い年代のキャリア支援に携わる
プロフィール詳細