人生そんな簡単に終わらない
就職活動を頑張っている真っ最中は、どうしても頭の中がそれ一色になりますよね。
周りの友人や、面接で会う他大学の学生を見ては焦る。自分だけが取り残されているような気がする。親や周囲から「どう?」と聞かれるたびに気が滅入る。
気づけば、「就職」だけにとらわれてしまって、視野がどんどん狭くなってしまうものです。
「このまま就職できなかったらどうしよう」「新卒カードを無駄にしたら人生終わりかもしれない」就活支援をしていると、そんな言葉を聞くことがよくあります。
でも、4,000人以上のキャリア支援をしてきた立場から、言わせてもらいます。人生は、そんな簡単に終わりません。
今は70歳、75歳まで働く時代です。第一志望に入れなかった。就活が思うようにいかなかった。それで終わるほど、人生って薄っぺらくないのです。
私は新卒の就活支援だけではなく、企業で働く人のキャリア支援、管理職の育成、さらにはリタイア後のセカンドキャリアまでかかわっています。
今ご支援している企業の中には、80代でまだ働いている方もいます。そうやって長い人生を見ていると、皆さんの年齢での「就職がうまくいかなかった」という出来事が占める割合は、実はそんなに大きくないのを感じます。
皆さんが希望している企業の倍率は何倍でしょうか。安定した大手企業なら激戦かもしれないですね。当然、不採用の人の方が多いかもしれません。でも、その人たち、人生終わっていますか? そんなことないですよね。
そもそも、人生の目的は就職することでしょうか? 就職は目的ではなく手段です。追い詰められてくるとここを見失いやすいので、少し立ち止まって考えてみてほしいです。
本コラムのコンセプト
生成AIによる一般的な情報がすぐに手に入る時代。就活生や求職者にいま求められているのは、経験や体験に基づく血の通ったアドバイスではないか。そうした読者のニーズに応えるために、編集部がテーマを選定し、参画するキャリアコンサルタントらに寄稿いただくコラム企画を始めました。自身の経験や実アドバイスをベースに、綺麗事を一切排除した本音の就活対策をお届けします。
最初から理想の道を歩く人の方が少ない
もちろん、私自身も最初からやりたいことが明確だったわけでもなく、理想の道を歩んできたわけでもありません。
今でこそ会社を経営していますが、最初から独立したいなんてまったく思っていませんでした。
むしろ実家が自営業だったので、「私は絶対に大きい会社に入って、安定した生活をするんだ」と思っていたくらいでした。私が就職した頃は、いわゆる就職氷河期でしたから、やりたいことよりも、できそうなことを優先して就職を目指していました。
そして最初に入ったのは、老舗の菓子製造会社です。
でも、入ってみたら思っていたのと違う。一日の営業時間も長く、元旦から営業している。希望していた部署への異動も難しそうでした。そしてアッサリ2年で転職を決意。
最初の会社は早々に辞めて、次の仕事、その次の仕事へ。一直線に現在に辿りついたわけではありません。
20年以上の会社員生活の中で、販売、事務、営業、そして管理職も経験しましたが、今、現在の人材採用や定着を支える仕事とは直接つながらないように見えるキャリアばかりです。
ただ、いろいろな業界や職種にかかわったからこそ、机上の理想ではなく、自分にとって楽しくやるがいのある仕事は何か、できることは何かを、考えるきっかけになり、自分の方向性が見えてきたのです。
ゼミやバイトやサークル、留学経験から自分のやりたいことや強みを掘り下げて就職先を探すと思いますが、実際に理想だと思っていた業界や職種に就いてみたら、自分には向いていないことに気づいたという人達も多くいます。やってみないとわからない。
たとえば、私は2社目の会社で、営業事務で入社して、営業もやることになりました。人と話すのも得意じゃないし、正直やりたくなかった。
でも、実際にやってみると大変だけど、楽しいことも多く、何よりお客様に喜ばれることのやりがいを体感することとなりました。私はトークスキルで勝負する営業ではなく、お客様の話をちゃんと聞いてニーズをくみ取る営業が得意だと知りました。これもやってみたから気づけたことです。
失敗という概念はない
やってみないとわからないことって本当に多いんです。
「第一志望に落ちた」「思っていた会社じゃなかった」「入社したけど、合わなかった」。
それは失敗ではなくて、うまくいかない方法を確認しただけだと思っています。どう捉えるかどうかは自分次第なのです。
私はファーストキャリアも決してうまくいったとは言えませんが、仕事で本当にしんどかったのは3社目で30代後半から40代にかけてでした。
管理職になり、複数の支店をまたいで働き、責任の重さと期待に応えたい気持ちから、足りない能力を時間で埋めようとして毎日残業していました。
その結果、メンタルダウンしてしまったのです。クリニックに通うようになりました。あの時は、正直「人生終わったかもしれない」と思いました。
でも、今だから言えるのは、絶望した瞬間こそ、次のステップに進みやすいということです。
うまくいかないから、本気で自分と向き合う。このままでいいのかを考える。
明日世界が終わるとしたら、この生き方で自分は納得できるのか考えました。そこから、自分の強みや、本当にやりたいことが見えてきました。
だから私は、壁にぶつかる度に「人生終わった」ではなく今後に活かせる強みを一つ仕入れたと思うようにしています。
人生は偶然でできている
人生にとって、無駄なことは一つもないのです。
私は、菓子業界、宝飾業界、設備メンテナンス業界を経て、今こうして人材育成の仕事をしています。
会社員として悩んでいた当時は「わたしのキャリアはバラバラで一貫性がない」と思って自信もありませんでしたが、今はその全てが役立っています。
経験の点と点は、後からつながる。最初から、全部計画通りになんていかないのです。
現場の苦労も、営業の大変さも、管理職の孤独も知っている。だからこそ、いろいろな人の話がわかる。全部、ネタになるし、共感も得られるのです。
キャリア理論に「計画された偶発性理論(プランド・ハップンスタンス)」というものがあります。
キャリアの8割は、予想していなかった偶然でできている、という考え方です。つまり、全部を完璧に決めてから動く必要なんてない。むしろ、全部計画を立てたところで、その通りにならないわけです。
予期せぬ異動や転勤、倒産や合併、ライフステージの変化で言えば、結婚・出産、介護、など、自分だけではどうにもできないことが起こりうるのが人生です。
勤務先が2回も倒産した方は、精神的にも経済的にも追い込まれつつも、それをきっかけに資格取得の学びをされて転職を果たしています。
第一志望の会社に新卒では入れなかったけれど、中小企業で経験を積み、数年後にその会社へ中途採用で入った人もいます。
新卒カードだけで勝負しなくてよいのです。
思い通りにいかなかったとき、どう動くかで、人生は変わります。偶然を味方につけるのです。
家で寝ているだけでは、偶発性は起きない
失敗したくないという思いから行動が鈍ることがありますが、私たちにできるのはただ粛々と今の状況を乗り越えるために動き続けるしかないと思っています。
動いた先にある経験、そして出会う人が人生を変えることが多い。
私も、キャリアに悩んだ会社員の時に、札幌から東京まで毎月学びに行ったことがきっかけで今があります。そこで出会った人達からのアドバイスで世界が広まりました。学びの場で出会った人にスカウトされて転職につながる人もいました。
ただし、大事なのはここです。予期せぬ事態になった時に、誰かがどうにかしてくれるのではないかと待っているだけでは、何も起きません。
家で寝ているだけでは、偶発性は起きないのです。ですから、日頃から好奇心や興味を持つことを忘れずにいてください。
趣味でも、アルバイトでも、ボランティアでも、何でもいいので外に出る。人に会う。まずは行動してみる。それが偶然をつかむきっかけになります。
考えることは大切です。でも、考え込んで動けなくなるのはもったいない。
やってみないと、自分に何が向いているかなんてわからない。やっているうちに、面白くなることもあります。
だから、「人生終わりだ」と感じた時こそ、ちょっと立ち止まって休んだら、次は行動してみましょう。
就職できなくても、人生は続く
だから今、就職できなかったとしても、人生は終わりません。むしろ、あなたのキャリアの最初の一歩で視野が広がったともいえるのです。
皆が横並びで4月入社する必要が本当にあるのかという気づきも生まれていませんか?
最近は通年採用を取り入れる企業も増えました。新卒で入れなかった会社も、第二新卒や経験者採用で入れることも、普通にあります。
だから歩みは止めないでください。就職に直接関係ないことでも良いのです。会いたい人に連絡してみる。気になる場所に行ってみる。興味があるものについて学んでみる。趣味に没頭する。
できそうなことからやってみませんか?
たとえ就職浪人したとしても、その期間に何をしたのか。どんなことに興味を持って、どう動いたのか。それが、あたなと強みになります。
人生は、そんな簡単に終わりません。むしろ、面白がった人が勝ちです。
ぜひ、次の一歩を、踏み出してください。
応援しています。
執筆・編集 PORTキャリア編集部
> コンテンツポリシー記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi




