本企画について
「噂や評判に、プロの確実な視点を。」をテーマに企業選びや意思決定の支援をする企画です。漠然とした不安には「確度の高い事実」を、意思決定には「キャリアの専門家による視点」を提供することを目指します。
「ニデックはやばい」
世界でもトップシェアを誇る自動車メーカーであるニデックですが、企業について調べると、「不適切な会計」「激務できつい」など、ネガティブなキーワードがヒットするようです。同社への就職を目指している人にとっては不安を感じる要素になりかねません。
そこで、この記事では気になる噂の実態を読み解いていきます。就活のプロであるキャリアコンサルタントからのアドバイスも紹介しているので、記事を読み込んで企業への理解を深めていきましょう。
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1分でわかるニデック
ニデックとは
京都に本社を置く1973年創業の「世界No.1の総合モーターメーカー」。精密小型から超大型まで幅広いモータ事業を軸に、車載、家電・商業・産業用、機器装置、電子・光学部品などをグローバルに開発・製造・販売。
積極的なM&Aによる事業拡大で急成長を遂げ、連結売上高は約2.6兆円、従業員数は連結で10万人を超えます。「回るもの、動くもの」に特化した製品で、世界中の人々の生活や社会インフラに不可欠なソリューションを提供。
| 会社名 | ニデック株式会社(NIDEC CORPORATION) |
| 従業員数(単体) | 1,714名(2025年3月期) |
| 本社所在地 | 京都府京都市 |
| おもな事業 | 精密小型モータ、車載及び家電・商業・産業用モータ、機器装置、電子・光学部品、その他の開発・製造・販売 |
| 売上高 | 2,532億9,900万円(前年同期比14.0%増)(2025年3月期) |
| 経常利益 | 601億1,500万円(同63.5%減)(同期間) |
| 企業HP | https://www.nidec.com/jp/ |
| 新卒採用HP | https://job.axol.jp/bx/s/nidec_27/entry_5225580008/agreement |
「ニデックがやばい」と言われる4つの理由|プロが読み解く
「ニデックがやばい」と言われる4つの理由
ニデックがやばいと言われる理由について、大きく4つ分けて紹介します。根拠となる具体的なデータをもとに解説するとともに、就活の専門家であるキャリアコンサルタントからも情報の読み解き方をアドバイスしているので、参考にしてみてください。
①不適切な会計があったから
2025年7月22日、ニデックの子会社であるニデックテクノモータ株式会社の中国子会社、ニデックテクノモータ(浙江)有限公司が不適切な会計処理をおこなった疑いがあるとの報告がありました(※1)。
さらに、同じく子会社であるニデックエレシス株式会社が、中国への輸出取引における申告価格について、正当な理由なく低い金額で関税申告をした疑いや、スイス連結子会社が必要な手順を踏まずに取引をおこなっていた事案が指摘されたりしています。
同社はこれらの事態を受けて、5つの柱に沿った抜本的な改革を実行しています(※2)。既存の役員の辞任や、組織体制の改善など、内部から大きな変革をもたらすことで、信頼回復に努めているようです。
| 対応事項 | 内容 |
|---|---|
| ①調査報告書を受けての対応 | ・主要役員が辞任 ・社長(CEO)が報酬を返上 ・法的責任の追及 |
| ②計画策定・業績管理の適正化 | ・ボトムアップ型計画の導入 ・評価基準の刷新 |
| ③経理機能・会計方針の強化 | ・経理組織の独立性確保 ・会計方針の厳格な統一 |
| ④企業風土の刷新 | ・「Culture Transformation Lab」による変革 |
| ⑤ガバナンス・内部統制の抜本的強化 | ・取締役会の多様化 ・是正力の確立 |
※1 ニデック 有価証券報告書 2025年3月期
※2 ニデック 改善・対策ついて
プロのアドバイザーはこう分析!ワンマン経営の弊害が出たことで株価が急落した
市場での信頼や評価に大きな影響がありました。複数回にわたる不正の発覚は、市場における同社への信頼を大きく傷つける結果となっています。
株価や上場への影響も否定できず、時価総額の急落という形で、投資家からの評価が数字に表れています。
「品質のニデック」として長年培ってきたブランドイメージへの打撃も深刻です。
また、今回の一連の問題は、創業者のカリスマ的なリーダーシップに依存してきたワンマン経営の弊害、つまりガバナンス不全の典型例とも言えます。
創業から50年以上が経過したいま、その構造的な問題がついに表面化した、と見ることができます。
不正一つでの判断は禁物! 長い目で企業を見ていこう
ただし、感情的に判断するのは早計です。同社が持つ技術力の蓄積は本物であり、それは不正があったからといって消えるものではありません。
改革が組織の体質を本当に変えるものであれば、復活の可能性は十分にあります。
就活生の人には、調査結果や新体制の動きを継続的に追いながら、冷静に見極めてほしいと思います。
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②品質における不正行為があったから
2026年5月13日のニデックからの発表によると、同社およびグループ会社が製造する製品に関して、顧客の確認を取らないでおこなわれた不適切行為があった疑いがあると指摘されています(※1)。
本事例については、同日に改善に関するリリースがされており、調査委員会の設置、信頼回復に向けた取り組み、新体制の発表など、迅速な対応をおこなっていることがわかります(※2)。
2026年5月現在、直近でおこった事象のため、今後の動きを含めて判断する必要がありそうです。
※1 ニデック 当社及びグループ会社における品質に関する不適切行為の疑いと外部専門家で構成される調査委員会の設置に関するお知らせ
※2 ニデック 再生に向けて
アドバイザーのリアル・アドバイス!現段階の情報では企業の善し悪しは判断できない
近年の一連の報道を見聞きし、企業としてのあり方に不安を感じている学生も少なくないと思われます。
今回の事案は単なる局所的な問題にとどまらず、これまでの経営体制やガバナンスのあり方、組織風土そのものにかかわる構造的な課題を内包している可能性が考えられます。
現時点では外部専門家による調査委員会が設置された段階であり、まだ全容が明らかになったわけではありません。
新しくなった企業の動向を追って判断しましょう
そのため、就活生が注意して見ておくべきは、今後の調査報告書において原因がどこまで抜本的に究明され、真の自浄作用や変革への姿勢が示されるかという点ではないでしょうか。
ニュースの印象だけで判断を急がず、創業者退任後の新体制のもとで、組織全体が過去の体質からどのように脱却し、信頼回復を進めていくのかを考えましょう。
こうした過渡期にある企業だからこそ、今後の報道や2026年8月末をめどとされる調査報告書において開示されるファクトを多角的に追いかけながら、慎重に見極めていく姿勢が大切になりそうです。
③激務を強いられる社風だから
ニデックについて調べると、口コミサイト等で激務やパワハラについての意見が見られます。
同社は創業以来、三大精神と呼ばれる行動指針を軸として経営してきました(※)。その価値観には「情熱」「ハードワーキング」という言葉が含まれており、人によっては激務を強いられていると感じたり、パワハラと認識したりすることが考えられます。
ニデックの三大精神
- 情熱・熱意・執念
- 知的ハードワーキング
- すぐやる・必ずやる・できるまでやる
また、同社は「儲けてくれる人が一番偉い」「会社によい変化をもたらしてくれる人がその次に偉い」といったポリシーを掲げており(※)、熱意を持って仕事に向き合える人ではないとカルチャーマッチしづらいことが想定されます。
プロのアドバイザーならこうアドバイス!3つの視点が備わった人が必要とされている
ニデックが求めているのは決して「盲目的に長時間働く人」ではありません。大切にされているのは、創造性・自律性・先見性という3つのキーワードです。
たとえば、開発現場などでは「難しいから、面白い」という精神が根付いています。これは単なる精神論ではなく、世界一の技術を目指す過程で直面する困難を、自律的な「楽しみ」としてとらえられるかどうかが適性の鍵だということです。
医療機器などの分野でQOL(生活の質)向上に貢献したいという明確な情熱があれば、それは大きな原動力になります。
自分が求めるものが企業にあるかで見てみよう
昨今「働きやすさ」が重視される傾向にありますが、一方で「若いうちから手応えのある仕事をしたい」と願う学生も増えています。
アドバイスとしては、まずは自分がどんな課題に対してワクワクするかを深掘りしてみてください。
世界を相手に「見ることの素晴らしさ」や「社会課題の解決」に挑む姿勢があれば、そこには最高の成長環境が待っています。
あなたが受けないほうがいい職業を診断しましょう
就活を進めていると、自分に合う職業がわからず悩んでしまうことも多いでしょう。
そんな時は「適職診断」がおすすめです。簡単な質問に答えるだけで、あなたの強みや性格、価値観を分析して適職や適さない職業を特定してくれます。
自分の適職や適さない職業を理解して、自信を持って就活を進めましょう。
④創業者が退任したから
ニデックの創業者であり、名誉会長だった永守重信氏が2026年2月26日付で退任したという発表がありました(※1)。また、前述した役員陣の辞任も相まって、会社の経営体制が揺らいでいると思う人もいるかもしれません。
有価証券報告書によると、同社の継続的な成功は永守氏の能力と手腕に依存してきたと述べられており、新たなリーダーが輩出されなければ、今後の経営に悪影響が出ると分析されています(※2)。
同社は後継者発掘のためにサクセッションプラン(後継者計画)を策定し、重要な役職においては指名委員会を設置して、人材育成に注力しているようです。
※1 ニデック 名誉会長辞任に関するお知らせ
※2 ニデック 有価証券報告書 2025年3月期
アドバイザーのリアル・アドバイス!生まれ変わったニデックでは社風も移り変わっていく
新体制となり、社風が大きく変化する可能性は十分にあります。退任後も影響力を持ち続ける創業者は少なくありません。
しかし、ニデックの場合、完全に役職を退いたことは、単なる世代交代ではなく、これまでの社風そのものを変えるための意思表示と受け取ることができます。新体制のもとで、ハードワークを是とする文化が見直されているようです。
人々の日常に根差した強力な事業基盤に目を向けよう
一方で、同社の事業の強みは、難しい言葉で語られがちですが、実はとても身近なところにあります。
スマートフォンの振動、冷蔵庫・エアコン・掃除機のモーター、そのどれにも同社のモーターが使われています。車載用モーターをはじめ、現代の産業に欠かすことのできない製品群を世界トップクラスのシェアで供給しているようです。
この底力があるからこそ、ガバナンス改革が本物であれば、復活の可能性は高いと言えます。
新生ニデックを内側からリードしていく人材が求められています。就活生には、変革期だからこそのやりがいという視点も持って、同社を見てほしいと思います。
社風が特徴的なためカルチャーマッチが重要となる
ニデックがやばいとされている理由を掘り下げましたが、そこで大切なのは自分自身との適性を見極めることです。
噂を聞いただけで会社を判断するのではなく、噂の実態を理解したうえで、どのような人が向いているのかを考えることで、より深く企業について理解することができるでしょう。
アドバイザーのリアル・アドバイス!マイナス面以外にも世界レベルの強みを持つ点にも注目しよう
現在はガバナンスの抜本的な見直しを迫られている局面であり、組織カルチャーへの懸念が注目されやすい時期であることは間違いありません。
しかし、そうした課題とは別に、同社の最大の強みは、特定の製品や国内市場に依存しない「圧倒的なグローバル展開力」にあると考えられます。
これまでに築き上げてきた世界トップシェアの事業基盤という客観的なファクトは、製造業界の中でも独自の強みとして存在していると見受けられます。
売り上げの大部分を海外が占め、世界各国に製造・開発の拠点を展開しているため、世界経済のダイナミズムを肌で感じながらキャリアを積める環境が整っていると言えます。
主力の精密小型モータをはじめ、現代の省エネに不可欠な製品群において、同社は世界屈指の供給体制とM&Aを原資とした高い技術力を有しています。
早期から世界と戦える経験に魅力を感じるかがポイントになる
組織の大きな転換期であるという前提を理解したうえで、同社が持つ世界的なシェアや技術的な存在感に魅力を感じるかどうかです。
ハードワークという側面が注目されやすいですが、それは裏を返せば、若手のうちから世界標準のタフなビジネスの最前線に身を置き、同業他社では得られないスピード感で圧倒的な経験値を積める環境があるともとらえられます。
自身のキャリアの軸と照らし合わせて考えるのが良いと考えます。
執筆・編集 PORTキャリア編集部
> コンテンツポリシー記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi






3名のアドバイザーがこの記事にコメントしました
2級キャリアコンサルティング技能士/全国経理教育協会 社会人常識マナー検定2級
Tomohiro Morita〇理系大学院修了後に企業で勤務。その後、キャリア支援・セミナー講師・文章制作などマルチに活躍。就職・転職に関する情報整理や書類作成、意思決定支援をおこなう
プロフィール詳細国家資格キャリアコンサルタント
Gaku Baba〇製造メーカーやITベンチャーの企業人事に従事する傍ら、キャリアエージェントとして数多くの転職希望者の支援も実施。幼児教育事業も展開するなど、幅広い年代のキャリア支援に携わる
プロフィール詳細国家資格キャリアコンサルタント/国際コーチング連盟(ICF)ACC
Atsushi Ikarashi〇欧州系日本法人の代表取締役。新卒で日本企業に5年、東南アジア現地法人に12年勤務し、帰国後外資企業に就職。経営者視点でキャリア形成の支援をする。MBA(海外)取得済
プロフィール詳細