本企画について
「噂や評判に、プロの確実な視点を。」をテーマに企業選びや意思決定の支援をする企画です。漠然とした不安には「確度の高い事実」を、意思決定には「キャリアの専門家による視点」を提供することを目指します。
「JFEは業績低迷で将来不安」
「残業が過酷で転勤も避けられない」
就活に際してJFEスチールに関する検討材料をネット上で探すと、そういった「やばい」情報も目に飛び込んできます。これは不安材料ですが、ネット上の噂や口コミ情報の全部が本当とは限りません。
この記事では、JFEスチールを検討している人たちに向けて、「やばい」「やめとけ」といわれる理由と、企業の実態について、確かなデータとプロの意見を交えながら解説します。
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1分でわかるJFEスチール
JFEスチールとは
日本鋼管と川崎製鉄が2002年に統合して誕生した巨大企業グループのなかの中核事業会社。持株会社のJFEホールディングスを親会社とし、鉄鋼メーカーであるJFEスチールをはじめJFEエンジニアリング、JFE商事の3つの事業会社で構成される。
JFEスチールの粗鋼生産量は日本製鉄に次ぐ国内第2位で世界では第14位(204年実績)。高い技術開発力と長年にわたる鉄鋼生産で培われた製造技術、操業ノウハウを活かし、高機能・高品質な鉄鋼製品を提供。
| 会社名 | JFEスチール株式会社(JFE Steel Corporation) |
| 従業員数(連結) | 41,386人(2025年3月期) |
| 本社所在地 | 東京都千代田区 |
| おもな事業 | 鉄鋼一貫メーカーとして各種鉄鋼製品の製造・販売。電気自動車の高性能モーターに欠かせない無方向性電磁鋼板や、洋上風力発電用の大単重鋼板、自動車用ハイテン材といった高付加価値商品も数多く生産。 海外事業の拡大にも注力しており、インドの大手鉄鋼メーカーで世界12位の粗鋼生産量があるJSW社をアライアンスパートナーとして自動車分野での提携を強化。成長著しいベトナムの鉄鋼メーカーにも出資。 |
| 売上高(単独) | 2兆5,681億5,500万円(前年同期比7.3%減)(2025年3月期) |
| 経常利益(同) | 328億500万円(同期間) |
| 企業HP | https://www.jfe-steel.co.jp |
| 採用HP | https://www.jfe-steel.co.jp/saiyou/index2.html |
「JFEスチールはやばい」と言われる4つの理由|プロが読み解く
「JFEスチールはやばい」と言われる4つの理由
「JFEスチールはやばい」といわれる理由を客観的なデータから紐解きます。キャリアコンサルタントのプロ目線の説明も加えているので、対象企業が自分にマッチするのかを考えながら読み進めてください。
①業績低迷が続いているから
業績低迷は否めません。JFEホールディングスの連結決算の推移を見ると、2021年3月期は赤字で、その後は回復に向かいましたが、2024年3月期から再び減収減益傾向で、売上高は2026年3月期まで3期連続、税引き前利益は2年連続で減少しました。
JFEスチールの単独業績も売り上げが伸び悩み、2021年3月期と2025年3月期は赤字となっています。


コロナ禍による世界的な景気低迷により赤字に転落し、コスト削減等で業績が持ち直したものの、2024年下期からは中国が廉価な鋼材を大量に生産し市況が低迷したうえにトランプ関税の影響も加わり、経営環境が悪化したことが背景にあります。
JFEホールディングスの北野嘉久社長は今年の年頭挨拶で、国内需要の減少、関税政策などの保護主義の流れの加速、中国材の輸出拡大をリスク要因に挙げたうえで「JFEグループ発足以来、最大の危機的状況である」と認めています(※1)。
プロのアドバイザーはこう分析!収益状況と経営戦略から紐解く企業の現状
外部環境の悪化による大幅な減益と、他社と異なる投資戦略の進捗状況は、同社の現状をとらえるうえで重要な事実です。
公表された連結決算を基にすると、中国製鋼材の大量輸出に伴う市況低迷などが響き、JFEの連結純利益は前期比23.6%減の701億円と厳しい局面にあります。北野社長が最大の危機と言及する通り、足元の業績低迷は重い事実です。
企業研究で見落としてはいけない構造改革の進捗
一方で、海外での巨額買収を急ぐ日本製鉄に対し、同社の戦略は対照的です。
日本経済新聞の報道によれば、インド鉄鋼大手JSWスチールの子会社へ約2,700億円を投じて、50%を出資する合弁事業を本格稼働させました。国内高炉の休止によるスリム化を進めつつ、成長市場をピンポイントでとらえる路線を採っています。
最新の財務データでは、2027年3月期について純利益1,500億円へのV字回復を見込んでおり、就活生は目先の減益という結果だけでなく、市況変動に耐える筋肉質化と海外成長拠点の確保を実直に進めている「構造改革の進捗」に注目する視点が重要です。
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➁鉄鋼メーカーの将来に不安があるから
脱炭素化の動きを受けて、鉄鋼メーカーであるJFEスチールは、製造工程で排出するCO2の削減に向けた取り組みが必要となり、莫大なコストがかかることが想定されています。
また、中国を始めとした海外との価格競争、国内の人口減少による市場の減少、原燃料やエネルギー価格の高騰など、業界的に苦戦を強いられていることが、将来性の不安を感じさせる要因となっていることが考えられます。
同社は「JFEビジョン2035」という生産体制の再構築を開始しており、既存のビジネスモデルからの脱却によって、より効率的な生産を目指しています。もし、改革が成功した場合、JFEスチールの反転攻勢が始まると考えれば、必ずしも将来が不安とはならないでしょう。
上智大学の上妻義直名誉教授は、ビジョンの実現を前提にJFEの将来性に言及し、鉄鋼事業の脱炭素化が進み、社員の成長が会社の成長と連動する人的資本マネジメントが進化することで成長軌道を取り戻すと評価しています(※2)。
アドバイザーのリアル・アドバイス!自分の成長可能性にフォーカスして企業を選ぼう
JFEスチールの将来性を考えるとき、就活生がまず押さえたいのは、鉄そのものの需要がなくなるかといった視点ではなく、この会社で長く働いたときに、自分の専門性や市場価値を高めていけるかという視点です。
鉄は価格競争に巻き込まれやすい素材ですが、実際のキャリアでは、汎用品で消耗戦をする会社か、高付加価値材や海外提携、脱炭素対応に活路を見出せる会社かで、仕事の中身も成長機会も大きく変わります。
「現状が厳しい」という印象で終わらせない! 就活生が持つべき視点がある
JFEは厳しい事業環境に置かれている一方で、高機能材へのシフトや生産体制の再編を進めています。
将来性を左右するのは、こうした改革が利益につながるかだけでなく、その変化の中で、社員としてどんな経験を積み成長できるかです。
就活生としては、「今は苦しい会社か」だけでなく、「これから何で勝とうとしていて、自分はその中で何を身に付けられるか」といった視点で見たい企業ですね。
➂配属先や転勤先が思うようにならないから
JFEスチールは、仙台、千葉、神奈川、愛知、兵庫、岡山、広島など全国に生産拠点や研究所を展開しており、支社・営業所も全国14カ所あります。また海外についても23カ国・地域に117拠点を展開しています。
初任の勤務地については製鉄所・研究所が中止になり、仕事の基礎を身に付けることになります。その後も転勤などのローテーションがある(※3)ため、働く場がどこになるのかは明確ではありません。
ただし、どの地域に転勤となっても大手企業らしい充実した福利厚生の恩恵を受けられる安心感があります。各配属地の近隣地には独身寮を完備しているほか、既婚者が賃貸住宅を借りる場合は会社が家賃の一部を負担(月額最大10万円)する借上社宅制度もあります(※3)。
プロのアドバイザーはこう分析!所得アップに手厚い原資! JFEがもたらす一生モノの経済的ゆとり
JFEスチールの福利厚生は、可処分所得を押し上げる住居支援に留まらず、人生の各ステージを支えるトータルパッケージとして高い水準にあります。
特筆すべきは、企業型確定拠出年金や持株会による「資産形成支援」の原資の厚さです。若いうちから複利効果を活かした長期的な資産形成が半自動的におこなえる仕組みは、将来の安心感に直結します。
また、男性の育休取得率が非常に高い水準にあることや、事業所内保育所の設置などは、単に制度があるだけでなく、周囲の理解や代替要員の確保といった利用できる組織風土が現場に定着している証拠と言えます。
年収だけでは決まらない! 企業の価値を測るリアルな事情
ただし、製鉄所という現場の性質上、交代勤務の有無や事業所ごとに制度の使い勝手に温度差が生じる可能性は否定できません。
企業選びでは「額面年収」に目がいきがちですが、こうした充実した福利厚生の「実質的な価値」を正しく見積もることが重要です。ぜひOB・OG訪問などを通じて、自分の配属予定部署でのリアルな活用度を主体的に確かめてみてください。
あなたが受けないほうがいい職業を診断しましょう
就活を進めていると、自分に合う職業がわからず悩んでしまうことも多いでしょう。
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自分の適職や適さない職業を理解して、自信を持って就活を進めましょう。
④残業が多く業務負担が重いから
JFEスチールの平均所定外労働時間は26.4時間(2024年度)(※4)と公表されていますが、これはあくまで平均値です。
同社は一般事業主行動計画(※5)で「法定時間外労働と法定休日労働の合計時間を30時間未満にする」としており、30時間以上残業する社員も多いことがうかがえます。
また製鉄所は24時間・365日稼働ですから、生産オペレーター職は1日3交替制で夜間勤務もあり得ます。
こうした勤務実態が必ずしも過酷だと感じられるかは待遇や価値観によっても変わります。たとえば、生産オペレーター職の場合、入社5年目の30歳(キャリア採用)で常昼勤務・時間外毎月20時間・年間賞与100万円で530万円の年収例が挙げられています。(※6)。
| 職種 | 年収 |
|---|---|
| 生産オペレーター(入社5年目の30歳)※昼勤務・時間外毎月20時間 | 530万円(年間賞与100万円) |
| 土木建築系職(京浜地区) | 600~1,200万円 |
| 生産管理職(京浜地区) | 500~1,100万円 |
| 本社営業職(京浜地区) | 500~1,100万円 |
これに対して会社全体の離職率は1.9%(※7)と、製造業界の平均8.8%(※8)と比較するとかなり低いため、仕事の内容と待遇や職場環境のバランスは良好と考えることもできます。
ただし、1点注意する必要があるのは、ネットで見られる「JFEは平均年収1,264万円の高年収」という情報です。これは6万人以上いるグループ連結従業員数のうち、わずか55人しかいない「JFEホールディングス」社の少数精鋭社員の平均年収(2025年3月現在)(※9)ということは正確に理解しておく必要があります。
※4 JFEホールディングスHP ESGデータ集
※5 JFEスチールHP 一般事業主行動計画
※6 JFEスチール採用HP
・生産オペレーター職
・土木建築系職
・本社営業職
※7 JFEホールディングスHP ESGデータ集
※8 厚労省 令和6年雇用動向調査結果の概況
※9 JFEホールディングスHP 有価証券報告書
アドバイザーからワンポイントアドバイス信ぴょう性のあるデータから読み解く! 職種で変わる給与構造
ネット上の多様な労働環境データや年収の噂については、公開されている実態数値をもとに職種ごとの構造を見極める必要があります。
就職四季報のデータによれば、総合職単体の平均年収は1,070万円(平均42.2歳)と大台に乗る一方、公式の採用情報や社員のクチコミによれば、工場の現場技能職の年収ボリュームゾーンは30歳前後で450万〜530万円台となっています。
ただし、現場職の場合は三交替などの交代勤務手当の有無によって年収に大きく差が出る構造です。
残業時間や定着率の数値から自分との適性を見極めよう
また、労働環境面でも違いが顕著であり、本社営業などの事務系総合職の残業時間は月平均30時間程度であるのに対し、現場職は突発的なトラブル対応の負荷がある反面、会社側は残業時間を「30時間未満」に抑える目標を掲げています。
全社離職率が1.9%という極めて低い水準にある現状から、就活生は職種ごとに異なる高い待遇と、夜勤や残業負荷といった業務責任とのバランスを社員自身がどう評価して定着しているか、自身の志向に照らし合わせて見極める視点が重要です。
企業の現状と将来の見込みを合わせて判断しよう
厳しい競争を強いられている世界の鉄鋼メーカーですが、JFEスチールも業績低迷に苦しんでいるようです。しかし生産体制の再編や、高性能・高品質製品へのシフト等の改革を進めており、その成否次第で将来性は変わってきそうです。
うまくいけば大企業としての高水準の福利厚生と好待遇を得て、世界中を相手にするダイナミックな仕事に就ける期待が高まります。
プロのアドバイザーならこうアドバイス!変革期のなかでも社会基盤を支えたいと思う人は向いている
JFEに向いている人は、変革期の不安定さを必要以上に恐れず、短期的な派手さよりも、腰を据えてものづくりの力を磨いていける人だと思います。
鉄鋼業は、市況や外部環境の影響を受けやすい一方で、社会インフラや自動車、エネルギーを支える土台でもあります。
だからこそ、厳しい局面でも会社が何を変えようとしているかを見ながら、自分もそのなかで成長していこうと思える人のほうが相性が良いと思います。
また、配属や勤務地の柔軟性、現場に近い仕事への理解も必要になりますね。
安定志向はミスマッチ? 会社の現状に共感できるかがポイントになる
逆に、最初から勤務地や働き方を細かく固定したい人、変化より安定だけを求める人にはミスマッチが起きやすいでしょう。
JFEは完成された会社というより、変わりながら立て直そうとしている会社です。その過程に自分のビジョンや目標が重なり、意味を感じられるかどうかがフィットするかどうかの分かれ目になると思います。
執筆・編集 PORTキャリア編集部
> コンテンツポリシー記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi






3名のアドバイザーがこの記事にコメントしました
国家資格キャリアコンサルタント/国際コーチング連盟(ICF)ACC
Atsushi Ikarashi〇欧州系日本法人の代表取締役。新卒で日本企業に5年、東南アジア現地法人に12年勤務し、帰国後外資企業に就職。経営者視点でキャリア形成の支援をする。MBA(海外)取得済
プロフィール詳細キャリアコンサルタント / システムエンジニア
Ichiro Komine〇大手電機メーカーでシステムエンジニアとして従事。若者の人生や成長にかかわりたいと思い、キャリアコンサルタントの資格取得。現在はコンサルティングや自己分析支援をおこなっている
プロフィール詳細国家資格キャリアコンサルタント/国家検定2級キャリアコンサルティング技能士
Yuichi Hirano〇主体的なキャリア形成にて代表取締役を務める。福商実務研修講座にて講師を担当するほか、人材サービス会社などで実践を重ねる。18年間で1万人以上の面談実績あり
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