私の経験上、履歴書の性別記載が選考に影響するかどうかは、職種や業種によって異なると感じています。

たとえば、重い荷物の運搬や高所作業をするなど、体力を要する業務で性別が採用基準の一つとなるケースが依然として見られます。

特に、名前が中性的な場合、採用担当者が性別を判断しにくいこともあるので、記載しておいた方が企業側との認識の齟齬が生じにくいでしょう。

企業の慣習も理解し柔軟な対応をしよう

一方、私がこれまで見てきたなかでは、クリエイティブ系の職種などでは、比較的問われないことが多いようです。

これらの仕事は体力よりも技術や感性が重視されるため、性別にかかわらず、多様な感性を持つ人が重宝される傾向にあると私は考えています。

いまだ「なぜ記載しないのか」と疑問に思われる可能性はありますが、それが直接的に選考基準で男女を限定するということにはつながりにくくなってきていると思います。

ただし、大手企業では、従来の慣習が残っている場合もあるので、どうしてもその企業に入りたいという場合は、社会通念に従い記載することも一つの選択肢です。

私が以前、厚生労働省関連の仕事をしていたとき、一緒に仕事をしていた人が性別を変更したばかりの人でした。

その人の話を聞くなかで、性別というものに対してさまざまな思いがあることを理解しました。

書かずに済む業界を選ぶのも一つ ですし、大手のように記載が必要な場合は、一時的に状況に合わせて対応することも検討されてはいかがでしょうか。

正直なところ履歴書の性別欄の取り扱いは、応募先の企業によるとしか私からは言えません。

私のこれまでの人事としての経験からあえて判断基準をあげるとすれば、上場企業か非上場企業かという点が一つかもしれません。

一般的に、法令遵守に対する意識が高い企業ほど、性別欄の記載については慎重な傾向があると私はみています。

たとえば、建設業界など、比較的ジェンダーバイアスが強いとされる一部の業界では、何らかの指摘を受ける可能性もゼロではないでしょう。

しかし、それを一般論として普遍的に記載するのは適切ではないと私は考えています。

基本的には、その企業が法令や倫理規範をどの程度重視しているかによります。

意図せずネガティブイメージを残してしまう可能性もある

私が少し懸念するのは、履歴書に性別を記載しないことに対して、応募者が過度に神経質になっていると企業側にとらえられてしまう可能性です。

SNSなどで「性別欄に丸を付けなかったら落とされた」といった発信を見かけることもありますが、企業側からすると「少し対応に手間がかかる応募者かもしれない」という印象を抱く可能性も否定できないと、私の経験からは感じます。