この記事のまとめ
- 退職理由に一身上の都合が当てはまるのは4パターン
- 就活の専門家が退職理由に一身上の都合が問題ないかを解説
- 「一身上の都合」という理由を伝える場面と例文も紹介
会社に「一身上の都合」を使用して退職理由を伝える際、「曖昧な理由に聞こえるのでダメなのでは?」と考える人も多いのではないでしょうか。たしかに、退職理由を具体的に伝えなければ、会社側が納得せずに退職させてもらえないのではないかとイメージする人も少なくありません。
しかし、退職理由に一身上の都合を使用するのは問題なく、決してダメではありません。重要なのは、自身が退職に踏み切った状況が一身上の都合に該当するのかを理解して、適切に使用することです。
記事を読んで、一身上の都合の意味を把握し、自身の退職理由に該当するかを判断していきましょう。
この記事では、社会保険労務士の涌井さん、キャリアアドバイザーの杉原さん、谷所さん、永田さんのアドバイスを交えつつ、退職理由に一身上の都合を使用しても良いのか、また該当する退職理由を解説します。
退職理由を聞かれたときの対処法と一身上の都合を使うときの例文まで解説するので、揉めごとにならずに会社を退職したい人はぜひ参考にしてくださいね。
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退職理由に一身上の都合がダメかどうかは自身の状況によって変わる!
会社を退職しようと検討した時、退職理由の一つに「一身上の都合で退職します」というワードを聞いたことがある人も多いでしょう。しかし、自身が使用するとなると「退職理由は具体的に説明しないとダメではないのか?」と感じた人もいるのではないでしょうか。
たしかに曖昧な理由のように聞こえますが、決して退職理由に使えないわけではありません。使用する前には、一身上の都合がどのようなケースに該当するのか理解しておきましょう。
記事では、まず一身上の都合の意味と該当する退職理由を説明します。自身の状況と照らし合わせれば、該当するかが判断できますよ。
その後、退職理由を伝える場面や例文も紹介するので、最後まで読み進めて一身上の都合の使いどころを理解して、スムーズに退職手続きを進めましょう。
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また、どのような職業を選んだらいいか就活軸も見つかるため、これから就活を始める今に取り組むのがベストです。
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そもそも「一身上の都合」とは? 意味を理解しておこう
「一身上の都合」とは、個人的な事情や理由を指す言葉です。退職理由を伝えるときに使われ、自身の都合で退職するため自己都合退職に該当します。
自己都合退職には、たとえば家庭の事情や健康上の問題、キャリアアップのための転職など、さまざまな個人的事情が含まれますが、退職に一身上の都合の表現を使うことで具体的な退職理由を明かさずに退職の意思を伝えられるのです。
ただし、理由によっては、この表現が使えないケースも出てきます。一身上の都合を理由に退職する場合は、退職理由が本当に個人的な事情かどうかを理解しておかなければいけません。
労働者には退職の自由がありますが、理由もなく突然辞めるのは非常識です。やはりきちんと事情を説明しなければいけません。
とはいえすべてを伝える必要はないので、「一身上の都合」はそうした点を曖昧にする便利な言葉といえます。
当てはまるか確認しよう! 一身上の都合になる自己都合の退職理由
自己都合退職をする際、具体的な理由を言いたくないときに使用できるのが「一身上の都合」と説明しましたが、どのようなケースまで該当するのかわからない人もいるでしょう。
前述したように、自己都合とは家庭の事情や健康上の問題が当てはまりますが、理由によっては会社内の問題も当てはまるのです。
意味を理解せずに使用してしまうと、会社側から退職理由を詮索されたり、退職を引き止められたりとスムーズに退職に進めないかもしれません。
ここからは、一身上の都合が該当する4つのケースを説明します。一身上の都合を退職理由に使えるかを判断する部分になるため参考にしてください。
家庭の事情:引っ越し・介護・育児
家庭の事情は、一身上の都合として認められる退職理由の一つであり、結婚や育児、引っ越しや介護などで仕事との両立が困難になったケースが含まれます。たとえば、配偶者の転勤にともなう引っ越しで勤務地が遠くなったり、家族の介護や育児で仕事に行く時間が確保できなくなったりすることも該当します。
しかし、なかには家庭の事情を詳しく説明したくない人もいるでしょう。プライベートな内容を退職時に話す必要はないため、一身上の都合を退職理由に使うのは問題ありません。
ただし、事情を話すことで会社側が特別休暇をくれたり、勤務地を変えてくれたりと対応してくれるケースもあります。そもそも退職するかどうかを会社の規定を確認したうえで、判断しましょう。
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健康上の理由:自身や家族の病気やケガ
自身の病気やケガ、家族の看病が必要で仕事を続けることが困難になった場合も一身上の都合に該当します。
具体的には、長期の治療や療養が必要な病気にかかったときや、事故によるケガで仕事の継続が困難になった場合です。
また、健康上の理由には、うつ病や身体的な疲れ、メンタルの問題も含まれますが、原因が会社のパワハラや労働環境の問題の場合は自己都合ではなく、会社都合になる可能性があります。
退職後の失業保険の給付タイミングが変わったり、退職金の額に影響が出たりするため、原因が会社側の場合は、会社の労務や労働問題の相談窓口に相談して一身上の都合ではなく会社都合として処理できるかを判断してもらいましょう。
- 揉めずに退職したいとは考えていますが、体調不良の理由によっては会社都合退職として辞めることはできるのでしょうか?
体調不良の場合は基本的には「自己都合退職」になる
会社での業務が原因で体調を崩した場合であって会社がそれを認めた場合には会社都合とできる場合もありますが、基本的には自己都合になるでしょう。
揉めたくないということであれば、揉めたときのために事前に労務関係に詳しい弁護士にあらかじめ相談しておくことで、トラブル時にすぐに対応できるかと思います。
しかし実際には、上司に話してみて意外とあっさり退職が認められたというケースも多々あるので、取り越し苦労という可能性もあるかもしれません。
健康上の理由といってもどの程度が退職理由に該当するのか判断は難しいものです。こちらのQ&Aでキャリアコンサルタントが体調不良は退職理由になるのかを解説しているので、自身の状態が退職に値するかわからない人は参考にしてみてください。
会社内の問題:仕事に対する不満・人間関係のトラブル
仕事内容への不満や職場での人間関係のトラブルなど、会社内で起きた問題が原因で退職したい場合も、会社都合ではなく一身上の都合に含まれるケースがほとんどです。
これはたとえば、入社した後に「考えていた業務内容と違っていた」と感じた、上司や同僚と考えが合わずに退職をしようとしているなどの場合が該当します。
上記の理由は、会社に関する問題なので会社都合退職の扱いになると勘違いする人もいますが、基本的には会社都合退職にはならず一身上の都合として扱われます。社内で感じた不満から個人的な判断で仕事を辞める場合にも、一身上の都合は適用されるのです。
職場でパワハラなどの精神的なダメージを受けた場合は、企業側に辞めなければならない原因があったと見なされ、会社都合の退職になる可能性があります。
離職票で会社都合なのに自己都合で処理されている場合は、企業に修正を求めるか、ハローワークに異議を申し出ましょう。
その他:キャリアアップのための転職
これまで家庭の事情や健康面、会社都合扱いにならない社内の不満など、問題が起きたことで一身上の都合を退職理由にできると伝えてきました。しかし、以下のようなポジティブな理由で退職したいときにも一身上の都合は使えます。
一身上の都合が使えるそのほかの退職理由
- キャリアアップのための転職
- 大学院への進学
- 海外留学
このような今の会社では得られないスキルを身に付けるため、もしくはより自身の希望に合った職種に就くために転職する場合など、前向きな理由も当てはまるのです。
また、働いてはみたものの、特定の分野を勉強するために進学したり、海外留学したりするケースも該当します。前向きな理由とはいえ、退職理由を詳しく説明したくない人は一身上の都合を利用しましょう。
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労働の専門家に聞く! 退職理由を一身上の都合だけで押し通しても問題ない?
ここまで、一身上の都合を退職理由に使用できることや、該当する退職理由を説明しました。しかし「本当に具体的な理由を言わなくても良いのか?」や「一身上の都合だけで会社側は納得するのか?」と不安に感じてしまいますよね。
そこで「退職理由を一身上の都合のみで押し通しても問題ないのか?」という疑問を解決するため、労働や社会保険の専門家である社労士の涌井さんに適切な伝え方や注意すべき点はあるかを聞いてみました。
できるだけ揉めずに、円満に退職するためにも参考にしましょう。
アドバイザーコメント
涌井 好文
プロフィールを見るそもそも退職の理由に制限はないことを知っておこう
どのような理由によるものであっても、退職届を提出し、2週間が経過すれば会社側の承諾の有無を問わず、労働契約の解除、つまり退職が可能です。
極端なことを言ってしまえば、「仕事が嫌になった」や「上司が気に入らない」などの理由であっても、問題なく退職できます。そのため、「一身上の都合」は何ら問題のない退職理由であるといえるでしょう。
退職理由を伝える際は誠実さを持つことが大切
なるべく穏便に、後にしこりを残さない形で退職をしたいのであれば、なぜ自分が退職という選択肢を選んだのかを誠実に伝えることが必要となります。
具体的な退職理由を伝える義務はないとはいえ、「なぜ?」と聞いても、一身上の都合としか答えないのであれば、会社側も納得しづらいでしょう。
単に一身上の都合ではなく、「家族の介護のため」といったやむを得ない理由であれば、会社側の理解も得やすくなります。ただし、どのような退職理由であっても、嘘をつくことは推奨できません。誠実な態度で臨みましょう。
退職理由に一身上の都合が当てはまらない2つのケース
退職理由に一身上の都合が当てはまらない2つのケース
- 会社都合退職の場合
- 会社との契約期間が満了になる場合
一身上の都合に当てはまるケースを把握できた後は、どのような理由が該当しないのかも理解を深めましょう。個人的な事情が一身上の都合に該当するとはいえ、すべての理由が当てはまるわけではありません。
退職に踏み切った理由が会社側の問題であるときは、扱いも変わってきます。また、会社からの雇用期間が満了切れの場合も同様に扱いが変わるのです。
ここからは退職理由に一身上の都合が当てはまらない2つのケースを説明するので、自身が該当するかを判断しましょう。
①会社都合退職の場合
会社都合退職とは、自分都合ではなく会社側の事情で退職することであり、以下のようなケースが当てはまります。
会社都合退職の例
- 会社の倒産やリストラ
- 給与の未払い
- 早期退職制度による退職
- ハラスメント
会社の倒産でのリストラや給与の払い込みがないなど、明らかに会社側に不備がある場合は、基本的には一身上の都合ではなく会社都合退職として扱われます。パワハラやセクハラが原因で辞めるときも同様です。
ただし「会社の経営が危ない」や「倒産する前に辞める」など、自身で判断して退職する場合は自己都合扱いになるので注意しましょう。
- 会社都合退職にしたことで揉めごとに発展してしまうケースはあるのでしょうか?
会社側に都合が悪いことから認めないケースも多くある
リストラやパワハラ、セクハラを受けたことなどを理由とする退職は、会社都合退職となります。退職する社員側にとって、退職理由が自己都合ではなく、会社都合となることに一切のデメリットはありません。
むしろ失業手当が有利な条件で受給できるなど、メリットしかないといえるでしょう。
ただし、会社が会社都合による退職であると認めないケースは多く見られます。明らかに会社都合によるべきにもかかわらず、自己都合退職とされるような場合もあるため、よく退職理由を確認しましょう。
もし退職理由に納得がいかない場合は、ハローワークに相談することで正しい退職理由に変更できる場合もあります。
②会社との契約期間が満了になる場合
契約社員で雇用期間が決まっていた場合、契約期間満了による退職は、一身上の都合には該当しません。この場合は「契約期間満了による退職」となり一身上の都合や会社都合とはならないのです。
しかし、契約期間が満了していない時点で退職する場合は、一身上の都合に該当します。また、リストラなどであれば理由によっては会社都合にできるため、何が原因で辞めることになったのかを明確にし、会社都合ではないかどうかの判断も忘れないようにしましょう。
具体的に上司に問われた際に正直に答えられれば良いのですが、あまり具体的に理由を言いたくない場合には一身上の都合とすることが多いでしょう。
デメリットとしては、事実とは違うことを噂されてしまう懸念が挙げられます。
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退職理由として一身上の都合を伝える3つの場面
退職理由として一身上の都合を伝える3つの場面
- 上司に退職の意志を伝えるとき
- 退職願や退職届を書くとき
- 退職をメールで伝えるとき
自身の状況が一身上の都合に当てはまると判断できても、「どのような場面で退職理由として伝えるのか?」と疑問に思ったり、口頭や文面など伝え方が気になる人もいるでしょう。
退職理由として一身上の都合を伝えるのは、上記3つの場面です。
会社によっては伝える必要のない場面もありますが、自己都合での退職時には何かしらの形で一身上の都合を使用することになります。伝える場面ごとに適切なタイミングも合わせて解説するので、退職理由を伝えるときのために事前に確認しておきましょう。
①上司に退職の意志を伝えるとき
会社を退職すると決めたときには、直属の上司に退職の意志を伝える必要があります。この時、一身上の都合を退職理由にして伝えましょう。
タイミングとしては、退職希望日の1〜2カ月前には伝えてください。退職するとはいえ、引き継ぎの準備や後任を用意する時間を確保する必要があるためです。
具体的な伝え方は「申し訳ありませんが、一身上の都合により退職させていただきたいと思っています」といった形で話を切り出してみましょう。
あくまでも退職の意志を伝える段階なので、上司によっては退職理由の詳細を聞いてくるかもしれません。「別の業種にもチャレンジしたくなりました」や「家庭の事情で退職します」など個人的な事情で退職することを伝えて、深く詮索されないようにしましょう。
退職を上司に相談する際に気を付けるポイントは、以下の記事で解説しています。トラブルなく退職手続きを進めたい人は併せて確認しておいてくださいね。
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②退職願や退職届を書くとき
口頭だけでなく、退職願や退職届の文面でも一身上の都合は利用できます。
退職願は、退職の意思を会社に伝えて相談する役割を持ちます。渡すタイミングは、前述した上司に退職の意志を伝えるときに一緒に持参しても問題ありません。ただし、会社によっては口頭で済む場合もあるため、退職願が不要なケースもあります。
一方、退職届は退職が決まった後に提出する書類で、確定した退職日を正式に伝えるときに提出します。
どちらの書類にも、退職理由として一身上の都合が使用可能です。しかし、前述のとおりで退職願は退職の意志を伝えるためのものなので、会社によっては引き止められたり、詳しい理由を聞かれたりする可能性があるので答えられるように準備しておきましょう。
退職が決定事項なら、退職届は早く渡したほうが良いでしょう。上司への確認は念のためおこないますが、渡す時期を引き延ばす必要はありません。
会社としても、早く退職の手続きができるうえ、場合によっては人材の補充や確保もしないといけないので、連絡は早くもらえるほうが良いのです。
会社側から引き止められて退職させてくれないのは違法ではないのか気になった人は、以下の記事を読んでみましょう。退職を成立させるための手続きを紹介しています。
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③退職をメールで伝えるとき
退職日が決まったら、社内や取引先など関係各所に退職の挨拶メールを送る場面が出てきます。退職することをメールで伝えるときも「一身上の都合により退職いたします」と退職理由に使用して問題ありません。
退職をメールで伝える3つのパターン
- 会社内:最終出勤日に社内メールで送信(全社員や部署内)
- 会社内:退職日より前に個別メールにて送信
- 取引先:日頃やり取りをしていた取引先にメールを送信
どのパターンでメールを送るかは勤めている会社や部署によって異なります。取引先にメールするときは自身の退職だけでなく、後任担当者の引き継ぎ情報を伝えて、今後の業務に支障がないように配慮することを忘れないようにしましょう。
- 退職をメールで伝えることで失礼に感じ取られてしまうことはないのでしょうか?
ルールやマナーを守れば失礼に感じ取られることはない
取引先に退職を伝える際は、勝手に伝えるのではなく、上司に相談をしてから伝えるようにしましょう。
メールで取引先に伝える場合は、後任の社員の名前や連絡先を伝えます。取引先によっては、後継者の紹介を含めて対面で挨拶するほうが良い場合もあります。
社内における退職の挨拶メールについて、退職日に伝えるなど会社によってはルールがあるので、事前に確認をしておきましょう。また同僚などは対面での挨拶や、メールであればエピソードなどを盛り込み個別に挨拶すると良いでしょう。
事前にイメージしておこう! 退職理由を追及されたときの対処法
ここまで、一身上の都合を退職理由に使用するのは問題ないことや、詳しい理由を話す必要はないと説明してきました。しかし、会社によっては退職理由の詳細を聞いてくるケースも考えられます。
ただ「一身上の都合なので」と退職理由を話さないことで、揉めごとに発展するのは避けたいですよね。
ここからは、退職理由を追及されたときの対処法を紹介するので、円満退職となるように適切な伝え方を理解しておきましょう。
建前上の理由を考えておく
退職理由を正直に伝えるのが難しい場合は、建前上の理由を考えておき、追及されたときにスムーズに答えられるようにしておきましょう。建前上の理由には以下の具体例があります。
建前上の理由に使う例
- 家族の病気や介護
- 配偶者の転勤
- キャリアアップの転職
- 他業種への挑戦
建前上の理由は、自身にしか確認できないものを選ぶようにしましょう。たとえば、「キャリアアップのため」や「ほかに興味のある仕事が見つかったため」といった理由は、本人しかわからない情報なため、企業側が確認することは難しく、詮索もされにくいものです。
もし詳細を聞かれたときにうまく答えられないでいると、会社側から怪しまれてしまい、円満退職とはならないかもしれません。建前として使う理由には、話の矛盾がないように答えられる内容を選ぶようにしましょう。
建前上の理由として一番良いというものはありませんが、よくあるのは「親の仕事の手伝い」「引っ越しのため」「親の介護」などが挙げられます。
あくまで個人的理由の建前なので、たとえ事実と異なることであっても会社はさほど詮索してこないでしょう。
マイナスな理由で伝えにくいならポジティブに変換する
退職の理由が、会社への不満や人間関係のトラブルなどネガティブなものが原因の場合は、そのまま伝えずにポジティブな表現に変換して伝えるようにしましょう。
ポジティブに変換する例
①退職理由
・仕事がつまらない
・人間関係が合わなかった
・裁量権が欲しい
↓
②ポジティブに変換
・仕事がつまらない→もっとスキルを身に付けたい
・人間関係が合わなかった→新しい環境で挑戦したい
・裁量権が欲しい→もっと多くの仕事をこなしたい
↓
③入社後のビジョンも付けてまとめる
スキルを身に付け、新しい環境下で多くの仕事に挑戦していきたい
マイナスな理由をそのまま伝えてしまうと、原因となった人と揉めたり、会社側と険悪な雰囲気のまま退職したりすることになるかもしれません。
そのため、たとえば「ほかに興味のある仕事が見つかった」や「新しい環境で異なるスキルを身に付けたい」など、何か新しいことをしたいという前向きな意欲を理由に伝えるのが良いでしょう。
前向きな理由であれば、会社側から引き止められる可能性もなく、トラブルにも発展しないためポジティブな表現で伝えるようにしましょう。
アドバイザーコメント
谷所 健一郎
プロフィールを見るポジティブに変換した退職理由は円満退職につながることが多い
建前上の理由でも辻褄が合う内容や事実が判明しなければ問題ありませんが、追及をされて本心ではないとわかれば、良い印象を持たれず円満退職は難しいでしょう。建前だととらえられれば、本当の理由を伝えるように追求されることもあります。
また家族の病気や介護といった建前の理由は、テレワークなど労働環境を改善すれば引き止められると考える上司もいます。
やりたいことを実現するための理由であれば応援してもらえる可能性がある
ポジティブに変換した退職理由として、たとえば仕事がつまらないといった不満を未経験の仕事にチャレンジしたいといった表現に変換すれば、やりたいことの実現といった前向きの退職理由になります。
現職でできないことのチャレンジであれば、引き留められることはあっても否定はされないはずです。上司などの理解を得られ、応援してもらえることもあります。
自己都合の退職であれば、自分のとらえ方で退職理由は変えられます。お世話になったことへの感謝の気持ちと引き継ぎをしっかりとおこなう意志を示したうえで、やりたいことを実現したいといったポジティブに変換した退職理由を伝えましょう。
一身上の都合を退職理由に使うときの例文
一身上の都合を伝える場面や聞かれたときの対処法を理解できたら、次は実際に退職理由として伝える例文を見ていきましょう。
ここでは退職願と退職届の文書で伝える場合と、メールで伝える場合の2つの場面に分けて解説します。どの例文も退職を伝えるものですが、細かい部分の表現で違いがあるので、自身が伝える場面に当てはまりそうな例文を参考にして、退職を伝えるときのイメージを固めましょう。
退職願と退職届の例文
退職願の例文
退職願
〇年〇月〇日
〇〇
代表取締役 〇〇 殿
営業部 〇〇 〇〇
このたび、私事ですが、一身上の都合により、〇〇月〇〇日をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。
在職中は大変お世話になり、心より感謝申し上げます。何卒ご了承くださいますよう、お願い申し上げます。
退職届の例文
退職届
〇年〇月〇日
〇〇
代表取締役 〇〇 殿
営業部 〇〇 〇〇
このたび、私事ですが、一身上の都合により、〇〇月〇〇日をもって退職いたします。
在職中は大変お世話になり、心より感謝申し上げます。
どちらの文にも「一身上の都合により退職」と記載しますが、退職願は退職の意志を伝えるための文なのでお願いする文面で記載します。
一方、退職届はすでに決まっている退職を正式に申し出るため、言い切る形で記載して問題ありません。
会社にルールがない限りは、手書きやパソコンなど記載形式に決まりはありませんが、記載した文書は封筒に入れて提出するようにしましょう。
上記の例文では、敬称に気を付けましょう。「代表取締役 ○○殿」の○○に個人名が入るなら敬称は「様」です。「殿」を使う場合は個人名を使わず役職名だけの場合です。
また、「私事ですが」を「私事でございますが」に直すとより丁寧な印象になります。
退職届のタイミングがイメージできないという人は、こちらの記事も併せて確認しておきましょう。
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メールの例文
一身上の都合を使用したメールの例文:会社内の場合
TO〇〇〇〇@theport.jp
CC
件名退職のご報告(港 太郎)
〇〇部の皆様
お疲れ様です。〇〇部の港 太郎です。
突然のご連絡となり恐縮ですが、この度一身上の都合により、〇月〇日をもちまして退職させていただくこととなりました。
本来であれば、直接ご挨拶に伺うところ、メールでの挨拶となり申し訳ありません。
在職中にお世話になった皆様に心から感謝するとともに、今後の皆様のご活躍をお祈り申し上げます。
最後になりましたが、今後のご健勝とご活躍を心よりお祈り申し上げます。
〇〇部 港 太郎
件名は、内容がわかるように「退職のご報告」と記載します。社内の関係者に一斉送信する場合や個人宛に送るケースもあるため、送信先に合わせて一文目の宛名は変更しましょう。
また、メールの相手が取引先の場合、宛名の変更だけでなく後任者の情報を追加する場合があります。今後の取引に支障がないように付け加えておきましょう。
一身上の都合を使用したメールの例文:取引先の場合
TO〇〇〇〇@theport.jp
CC
件名退職のご挨拶(港 太郎)
〇〇
〇〇様
いつもお世話になっております。〇〇の港 太郎です。
突然のご連絡となり恐縮ですが、この度一身上の都合により、〇月〇日をもちまして退職させていただくこととなりました。
本来であれば、直接ご挨拶に伺うところ、メールでの挨拶となり申し訳ありません。
今後の業務につきましては、後任の〇〇が担当します。後任者の連絡先は以下の通りです。
後任者: 〇〇 〇〇
メールアドレス: 〇〇〇〇@〇〇.co.jp
電話番号: 〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇
最後になりましたが、貴社のさらなるご発展とご活躍を心よりお祈り申し上げます。
港 太郎|Minato Taro
〇〇 営業部
電話: 〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇
メール: minato.taro@〇〇.co.jp
退職の挨拶の際は、普段のメール以上に丁寧な表現を意識しましょう。
また、引き継ぎの場合は、後任者の氏名と連絡先だけでなく、改めて後任者から連絡を入れることを記載しておくと良いでしょう。
退職するとき以外にも! 一身上の都合は転職時の履歴書にも使える
「一身上の都合」という表現は、退職時だけでなく、転職活動時の職務経歴書の退職理由欄にも「〇〇:一身上の都合により退職」と記載できます。
転職先によっては、面接で退職理由を具体的に聞かれることがありますが、家庭の事情や健康上の理由など、実際の退職理由を話しても問題ありません。
ただし「会社からの評価に満足できなかった」のようにマイナスな要因の場合は、正直な理由を伝えるのは避けましょう。理由によっては「入社した後も同じ不満を持つのでは?」と面接官が感じる可能性があるためです。
そのため「御社で新しいスキルを得て、貢献していきたい」のように、前向きな理由で答えつつも、転職先に貢献できるとアピールも含めて話すと印象も良くなりますよ。
- 家庭の事情や健康上の理由はどこまで詳しく話すものなのでしょうか?
退職に合理性があると認められるかがカギになる
相手が退職に納得するかどうかの問題だと思います。普段から介護や通院のために会社を休んだりしているのであれば詳しく説明しなくても、理解してくれるでしょう。
一方、退職の自由があるといっても一切の説明がなく退職するならそれは非常識といえます。
また、すべてを正直に話したとしても会社にとっては不必要な情報が多く含まれます。どこまで話すかは、やはり自分で判断するしかないですね。
そして転職の際は、退職理由は聞かれたら答えるにとどめましょう。そこで退職せざるを得ない合理的説明ができるかどうかが重要です。
同時に、相手に不安を与えないために、家庭の事情であれ健康上の事情であれ、どのような配慮があれば勤務を続けられるのかを伝えましょう。
履歴書のほかの項目の書き方が気になった人は下記の記事を参考にしましょう。失敗しない書き方をプロが伝授してくれます。
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一身上の都合は退職理由としてダメではない! スムーズに退職手続きを進めよう
一身上の都合を退職理由に使用するのは、決してダメではありません。「本当の理由を話したくない」や「理由を話したことで会社と揉めたくない」と考えたときは、一身上の都合を退職理由に使用することで角を立てずに退職の意志を伝えられます。
ただし、自身の状況次第では、一身上の都合には当てはまらないため、退職に踏み切った状況や原因を理解しておくことが重要です。
すべての理由で使えるわけではないので、状況を理解し正しく使用して、円満に退職手続きを進めてください。
アドバイザーコメント
永田 修也
プロフィールを見る「一身上の都合」は状況を見て使って問題ないかを考えよう
一身上の理由は、使うべきシチュエーションや状況など人によっては適さない場合もあるかもしれません。一般的な認識としては「退職届に書く決まり文句」というのが通常で、直接上司や会社に報告する際に口頭で伝えるものではないというのが実際のところです。
やはり退職する理由として「なぜ退職するのか」ということは最低限伝える必要があるので、その際は「一身上の都合」ではなく、建前だとしても何かしらの理由を伝えるようにしましょう。
理由はなんであれ「どうして辞めようと思ったのか」ということは会社側は知るすべはないので、そこまで突っ込んで聞いてくることはさほどないと考えて良いと思います。
退職理由を伝える際はそこまで気負いする必要はない
一身上の理由でなんとか押し通す場合は、トラブルとまではいかないまでも、それなり会社から引き止められたり上司に何か言われたりする場合があります。その際は多少の覚悟が必要かもしれませんね。
とはいえ、退職することをあまり大きく考えすぎずに、誰にでも起こりうる「人生の転機」としてとらえ、下を向かずに堂々としていることも大事ですよ。
執筆・編集 PORTキャリア編集部
> コンテンツポリシー記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi
4名のアドバイザーがこの記事にコメントしました
キャリア・デベロップメント・アドバイザー/キャリアドメイン代表
Kenichiro Yadokoro〇大学でキャリアデザイン講座を担当した経験を持つ。現在は転職希望者や大学生向けの個別支援、転職者向けのセミナー、採用担当者向けのセミナーのほか、書籍の執筆をおこなう
プロフィール詳細キャリアコンサルタント/メンタル心理カウンセラー
Syuya Nagata〇自動車部品、アパレル、福祉企業勤務を経て、キャリアコンサルタントとして開業。YouTubeやブログでのカウンセリングや、自殺防止パトロール、元受刑者の就労支援活動をおこなう
プロフィール詳細社労士/涌井社会保険労務士事務所代表
Wakui Yoshifumi〇平成26年に神奈川県で社会保険労務士事務所を開業。企業の人事労務相談や給与計算などを請け負う。また、関与先企業の社員のキャリアプランなどに関してアドバイスをしている
プロフィール詳細キャリアコンサルタント/2級キャリア技能士
Misako Sugihara〇石川県金沢市を拠点に15年にわたり就職支援に携わる。2年前からは転職支援も手掛けている
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