この記事のまとめ
- 就活で提出する研究概要書は研究の要旨・内容などをまとめた資料
- 研究概要書を通じて論理的思考力や考え方などがチェックされる
- 就活で高く評価される研究概要書には5つの特徴がある
おもに理系の就活で必要な研究概要書の作成は、初めて作成する学生にとっては難しいものです。この研究概要書の作成で「何を書いたら良いのかわからない」とつまづいている人もいるのではないでしょうか。
この記事では研究概要書の基本情報や構成・形式と併せて、魅力的な研究概要書に仕上げるポイントやその具体例も紹介します。
自身の研究の要点を簡潔に説明し、自身を魅力的にアピールする秘訣をキャリアコンサルタントの野村さん、隈本さん、吉田さんの見解を交えて解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
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ポイントを押さえた研究概要書の作成で就活を有利に進めよう
理系学生の就活では、魅力的な研究概要書を作成できるかどうかで評価に大きな差が生まれます。自分の研究を簡潔かつ具体的に説明する研究概要書を作成できれば、就活をかなり有利に進められるのです。
ただ、要点を押さえなければ魅力的な研究概要書は作成できません。まずはこの記事の前半で研究概要書の基本的な形式や構成、チェックされるポイントなどの基本情報を押さえましょう。
研究概要書の基本情報を理解できたら、記事後半で魅力的な研究概要書の例や具体的な作成の手順をチェックしましょう。最後まで読み、記事に沿って研究概要書を作成すれば、効率よく魅力的な研究概要書を作成できるようになります。
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前提を確認! 就活における研究概要書の基本情報
まずは研究概要書の基本情報を簡単にチェックしておきましょう。特徴だけでなく、研究概要書を提出する意図や目的までしっかり理解しておけば、ポイントを押さえた研究概要書を作成しやすくなります。
研究概要書はエントリーシート(ES)に組み込まれている場合も多く、理系就活では多くの企業から提出を求められます。
研究概要書作成の基礎となる特徴・目的をしっかり理解して、目的に沿った適切な研究概要を作れるように準備しましょう。
基礎知識なしで研究概要書を作成すると、論理構成の不備や必要情報の記載漏れなどにより、研究の意図が正しく伝わらないリスクがあります。
結果として、記載内容の修正が必要になり、時間と労力を無駄にする恐れがあります。
ESに研究内容について書こうと思っている人は、次の記事をチェックしてみてください。例とともに注意点を解説しています。
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ESで大学時代に取り組んだ研究内容を書く際には、どの程度詳しく記載すれば良いか悩むかもしれません。ESで研究内容を伝えるには、ポイントを押さえて簡潔に伝えることが重要です。何を意識すれば面接官に研究内容が的確に伝わるのでしょうか。
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研究概要書の特徴
研究概要書
自身の研究について、要旨や内容、結果、考察などをまとめた資料。
専門外の人にもわかりやすく伝えるような工夫が必要な点が、学会の資料作成などとは異なります。文字だけのパターンもあれば、図表を用いて表現するタイプの研究概要書もある点も、特徴の一つです。
なお、文系で研究概要書を提出する場合は、ゼミや専門領域をベースに作成するのが一般的です。
企業が研究概要書の提出を求める目的
企業が研究概要書を求めるのは、以下の3点をチェックするためです。
企業が研究概要書の提出を求める目的
- 大学でどの程度本気で研究に取り組んだのかを見極めるため
- 論理的思考力を確かめるため
- 研究内容をどれだけわかりやすく伝えられるかチェックするため
研究内容だけでなく、研究に対する姿勢や物事の考え方も併せてチェックされます。研究概要書の説明や質問への受け答えが曖昧だと研究に本気で取り組んでいないと判断されることもあるため、入念な準備が欠かせません。
また、専門的な知識や研究内容を相手の立場に合わせてわかりやすく言い換える能力もチェックされます。相手の知識レベルに合わせた研究概要書を書くことができれば、企業から高い評価を得られる可能性が高まります。
それぞれの特徴も解説! 就活の研究概要書の3つの種類
それぞれの特徴も解説! 就活の研究概要書の3つの種類
- ①エントリーシート形式:文字だけで記載
- ②ポスター形式:自由形式で表現可能
- ③プレゼン形式:パワーポイントなどでまとめる
就活の研究概要書には3つの形式・パターンが存在します。就活の研究概要書の特徴や目的がわかったら、それぞれの形式もあわせてチェックしておきましょう。
研究概要書の3つの形式への理解を深めておけば、幅広い企業の選考に対応できます。
同じ研究概要書でも、形式によってその特徴は大きく異なります。それぞれのメリットやデメリット、工夫すべきポイントを理解して、安定して自分の魅力をアピールできるよう準備しておきましょう。
①ポスター形式:自由形式で表現
ポスター形式は、研究概要書で最も一般的な形式です。図表をメインにした自由形式でデザインを工夫しやすく、視覚的に内容を伝えやすいのが特徴です。
メリット | デメリット |
---|---|
・図表を利用でき、視覚的に情報を伝えられる ・専門知識がない人にもわかりやすく伝えやすい ・文章の量を自由に調節できる | ・一定のデザインセンスが必要 ・作成に手間がかかる ・簡潔な文章を作成する必要がある |
図表を中心に説明できる分、直感的に理解しやすい研究概要書に仕上げやすいのが大きなメリットです。
一方、分量を絞って視認性を高める必要があるため、情報を深く伝えるには工夫が必要です。少ない文字で効果的に伝えるための試行錯誤や、デザインの構想に手間がかかる点がポスター形式のデメリットといえます。
ポスター形式の研究概要書は、視覚的に情報を伝えやすく、研究内容のポイントを簡潔にまとめられる点が評価されます。
企業は、この形式を通じて、情報を整理し伝える力や視認性の高い資料作成スキルを確認したいと考えています。
②エントリーシート形式:文字だけで記載
エントリーシート形式(ES形式)は文字のみで研究を説明するタイプの研究概要書です。一部図表を利用可能なものもありますが、その場合も文章を中心に研究概要書を作成します。
メリット | デメリット |
---|---|
・研究内容を深く説明しやすい ・文章ベースのためデザインセンスがほとんど必要ない ・ポスター形式に比べて作成に手間がかからない | ・論理的な説明能力や文章能力が求められる ・専門知識のない人にわかるように説明するのが難しい |
ES形式では文章説明がメインになるため、深い情報まで伝えやすいのがメリットです。図表では伝えるのが難しい部分まで細かく説明できるうえ、ポスター形式ほど作成の手間もかかりません。
ただし、図表の利用が制限されるため視認性を高めづらいのがデメリットです。専門知識のない人にも文章で説明する必要があるため、論理的な説明能力がより重視されます。
研究概要書では、研究の目的や成果を端的に示す結論を最初に記載しましょう。
また、採用担当者が必ずしも専門家ではないため、専門用語は適切に用いて、必要に応じて簡潔な説明を加えることで、読み手が理解できるようになります。
③プレゼン形式:図・画像と文字で説明
プレゼン形式は研究を図や画像、文字を用いてスライドにまとめ、プレゼンテーションできる状態に整えて提出する形式です。ポスター形式やES形式よりも採用している企業は少ない一方、プレゼン形式での研究概要書提出を求める企業も一定数存在します。
メリット | デメリット |
---|---|
・ポスター形式同様、視覚的に情報を伝えやすい ・動画や音声の挿入なども可能で、自由度が高い ・レイアウトだけでなく、スライドの順序なども自由に工夫できる | ・作成に手間がかかる ・文章を簡潔にまとめる力が求められる ・情報過多にならないよう注意が必要 ・デザインセンスだけでなく、幅広いセンスが求められる |
プレゼン形式は装飾やスライドの順などを自由に編集できるため、ほかの2つに比べて自由度が高いのが大きなメリットです。工夫次第で大幅に完成度を高められます。また、準備の徹底度で大きく差が出やすいのも特徴的です。
一方で、作成に手間がかかるのが大きなデメリットです。また、デザインセンスに加えて相手に合わせてプレゼンを構成する力や、実際のプレゼンを想定して資料を作成する力も求められます。
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就活の研究概要書で企業からチェックされる4つのポイント
就活の研究概要書で企業からチェックされる4つのポイント
- ①実績や経験を論理的に整理・分析する力
- ②成果や過程をわかりやすく伝える力
- ③課題に取り組む姿勢や物事に対する考え方
- ④専門知識・スキル・独創性など
研究概要書の特徴や形式、目的がわかったら、次は企業がチェックしているポイントを押さえておきましょう。選考で評価されるポイントをチェックしておけば、好印象を残せる研究概要書を作成できます。
企業が研究概要書をチェックする際に見るポイントは、内容のほかに大きく4つです。4つのポイントを事前に理解したうえで資料を作成すれば、ほかの学生に差をつけられる研究概要書を作成できます。
採用経験のあるキャリアコンサルタントの見解も紹介するので、研究概要書作成の参考にしてみてください。
①実績や経験を論理的に整理・分析する力
研究概要書で注目されるポイントの一つが論理的思考力であり、おもに以下の3点で評価されます。
論理的思考力の評価点
- 研究をどれだけ筋道立てて進められているか
- 結果を明解に分析・考察できているか
- 研究全体をどれだけ体系的に整理できているか
研究を進める段階と、それを分析・整理する段階の両方で論理的な思考力を発揮できているかチェックされます。一貫した視点で仮説を立て、それに則って研究を進めたことを説明できれば、論理的な思考力の高さをアピールできます。
論理的な思考力が不十分と判断されると大きく評価が下がるため、準備段階でしっかり対策しましょう。
研究概要書で論理的思考力を重視する理由は、ビジネスシーンへの再現性が高いからです。
膨大な研究をわかりやすく論理的に表現できていると、仕事においても物事を筋道立てて考えられるなと感じますし、論理的でなければそれができないとみなされてしまいます。
②成果や過程をわかりやすく伝える力
どれだけ専門的で高度な研究ができていても、成果や過程を相手にわかりやすく伝えられなければ魅力的なアピールは不可能です。相手に合わせて伝える能力はあらゆる仕事で欠かせないため、ほとんどの企業でチェックされます。
伝える力に関して、研究概要書で特に入念にチェックされるのはおもに以下の3点です。
研究概要書でチェックされる伝える力
- 相手の知識レベルを正確に把握する能力
- 相手に合わせて伝えるべき情報を選別する力
- 知識レベルに応じて表現を変える能力
上記3点を意識して準備すれば、高いコミュニケーション能力を効果的にアピールできます。
逆にどれか一つでも欠けていると、コミュニケーション能力が不十分と評価される可能性が高まるため要注意です。
③課題に取り組む姿勢や物事に対する考え方
企業側が課題解決能力や業務遂行の能力があるかどうかチェックする理由は、研究に対する姿勢や考え方が、入社後の業務に取り組む姿勢を予測するのに有効であるためです。
研究に熱意を持って取り組み、途中で直面した課題にも柔軟に対処したことを伝えれば、課題解決能力、業務遂行能力の高さをアピールできます。
逆に課題解決に本気で取り組んでいなかったり、発生した問題に対して最適な改善策を講じていなかったりすると評価が下がる可能性が高くなるのです。
研究概要書では事実だけでなく研究の背景や自身の考えも具体的に明記し、研究に対する自身の考え・姿勢が伝わるように工夫しましょう。
- 採用担当者は、おもに研究概要書のどのパートから姿勢や考え方をチェックしているのでしょうか?
研究の背景と課題・解決策から応募者の姿勢や考え方を確認している
採用担当者は、研究概要書の研究の背景や研究の課題・解決策のパートを特に重視しています。
理由は、これらのパートから学生がどのように課題に向き合い、解決策を考えたかを確認できるためです。
研究の背景では、研究に取り組む動機や意義が伝わり、学生の問題意識や視点の独自性が把握可能です。
研究の課題・解決策では、困難に直面した際の対応力や柔軟性、思考の深さが読み取れます。
これらの内容が具体的かつ論理的であれば、採用担当者にポジティブな印象を残せる可能性が高まります。
④専門知識・スキル・独創性など
研究内容と志望企業の業務内容が一致している場合、内容も大きな評価ポイントとなります。ここまで紹介した能力的な側面に加えて、専門知識やスキル、その分野における独創性の高さなども入念にチェックされます。
具体的には、以下の3点がおもなチェックポイントです。
研究と企業の業務内容が一致する際にチェックされるポイント
- 研究内容自体が企業にとってどれほど価値があるか
- 研究内容から得た独創的な気づきが、企業にどれほどの価値をもたらすか
- その研究をおこなった学生の採用がどれほどの企業にとって有益か
研究内容・研究から得た気づき・研究をおこなった人材の3つが企業にとって価値があると示せれば、好印象を残せます。研究内容と企業の業務内容が一致する場合は、企業分析も入念におこなったうえで研究概要書を作成しましょう。
- 企業の事業領域と自身の研究領域が異なる場合、研究内容は評価の対象になるのでしょうか?
企業の事業領域と自身の研究領域が異なっていても評価の対象になる
研究を通じて培った論理的思考力、課題解決力、データ分析力、結果を導くための粘り強い行動力などは、多くの業務で求められるスキルです。
特に、研究での試行錯誤や仮説検証のプロセスは、ビジネスシーンでの問題解決にも応用できます。
そのため、研究概要には研究テーマそのものの内容だけでなく、研究を通じて得たスキルや経験をどのように業務に活かせるかの明確な記載が重要です。
たとえば、「研究で得たデータ分析力が市場調査や商品開発に役立つ」など、志望先の業種や希望職種の実務と絡めると、企業の関心を引きやすくなります。
就活で提出する研究概要書の構成
構成がない状態で書き始めると、自分の伝えたいことが相手にうまく伝わりません。巨大なビルを建てる際に、しっかりとした骨組みや土台が欠かせないのと同じです。
そこでここからは、研究概要の実際の構成を順にチェックしていきます。
研究概要書の全体像を押さえて、スムーズに作成に移れる状態にしておきましょう。好印象を残す書き方もあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
①タイトル
タイトルは書類の最上部に記載する、研究概要書の第一印象を決める重要な要素です。読んだだけで研究の大枠が想像できるようなわかりやすいタイトルを設定しましょう。
多くの学生が学校の研究で使ったタイトルや教授が設定したタイトルをそのまま利用しますが、おすすめな方法ではありません。なぜなら、研究概要書は専門知識のない人も読む可能性が高いためです。
研究概要書には、研究をわかりやすい単語で言い換えたタイトルを使用しましょう。
NG例
熱の分子運動論から要請される,静止液体中に浮かぶ小さな粒子の運動について
OK例
液体中の微粒子運動の理論的解析 – 熱運動の観点から
上記は「熱の分子運動論から」という部分を「熱運動」に、静止液体中に浮かぶ小さな粒子の運動を「液体中の微粒子運動」に言い換えています。
後者はこの研究が微粒子運動の「解析」であることが即座に理解できるタイトルになっています。
②研究の概要
研究の概要は緒言とも呼ばれていて、研究全体を1〜2文で総括した文章です。研究内容と展望を端的に伝え、読み手に全体像をイメージさせるために設置します。
研究概要もタイトル同様、研究概要書の印象を大きく左右する重要な要素です。研究全体を正確にイメージできるよう、推敲を重ねて最適な概要を作成しましょう。
研究概要の例文
気体分子の熱運動によって引き起こされる液体中の微小粒子のランダムな運動(ブラウン運動)は、分子運動論の正当性を実験的に証明する重要な現象である。
本研究では液体の粘度と温度を変化させながら、微小粒子の運動の大きさをあらわす「平均二乗変位」と時間の関係を定量的に解析し、さまざまな環境下でアインシュタインの分子運動論から導かれる理論値との整合性を検証した。
なお、研究概要でも専門用語を避けたり、わかりやすい説明を付与したりして専門知識がない人でも読めるように工夫してください。
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③研究の背景
研究の背景は、自分の研究に対する姿勢や考えを伝える重要なパートです。
前述の通り、研究に対する姿勢や課題解決への取り組みは、評価ポイントとして特に注目されています。以下の3点を明確に示し、研究の背景を相手に伝えましょう。
研究の背景で伝えるべき内容
- なぜその研究に取り組んだのか
- 既存研究とどのように異なるのか
- その研究にどのような意義があるのか
自分が抱える問題意識や、研究を通じて実現したい未来などをわかりやすく言語化して伝えることが重要です。既存研究との違いも簡単に述べることで、研究の独自性やその研究をおこなう意義を相手に効率良く伝えられます。
「なぜ?」という自問をすることで深掘りされる個人の価値観や行動の動機は研究概要書だけでなく、志望動機や自己PRの際にも重要視される重要なポイントです。準備段階でしっかりと深掘りし、説得力のある理由を伝えられる状態にしておきましょう。
④研究の内容
研究内容のパートでは実際の研究手法や過程などを具体的に記載します。専門的な知識がない人が読むことを念頭に、わかりやすく研究をステップごとにまとめましょう。
研究内容は、ステップごとに以下の3点を中心にまとめるのが効果的です。
研究内容をうまくまとめるポイント
- なぜその過程が必要なのか
- 他でもないその手法をとる理由は何か
- 具体的な手法・研究の流れはどのようなものか
上記3点を意識して研究内容をまとめれば、専門知識のない人にも伝わりやすい研究概要書を作成できます。
ただし、すべてのステップで上記をまとめていると冗長になる可能性があります。説明すべき部分と省いても問題ない部分をチェックして、簡潔かつ具体的に研究内容をまとめましょう。
⑤研究の課題・解決策
研究を進めるなかで当初予定していなかった課題が発生した場合、その課題と具体的な解決策も併せて記載しましょう。研究途中で発生した課題を交えて研究概要を説明することで、臨場感のある研究概要書に仕上げられます。
研究中に新たに出た課題に対して効果的な解決策を提示できたことを伝えられれば、自分の課題解決能力の高さを効果的にアピールできます。
柔軟かつ迅速に問題に対処する能力は入社後の業務にも欠かせないため、アピールできればグンと評価を高められます。
課題と解決策の提示例
研究を進めるなかで、理論値と実値が大きくズレるケースが何度か発生しました。
検証を重ねた結果、液体の濃度によって大きく粘度が異なるものがあることを発見。それらのイレギュラーケースを別途分析しながら正確な研究結果を得られました。
課題が途中で発生しなかった場合は、研究過程で着手した関連研究について記載しましょう。
研究の課題・解決策を述べる際は、課題の具体的な内容、解決策の選択理由、得られた成果や教訓の3点に絞ることが重要です。
余計な背景説明や詳細すぎる技術的要素は省き、簡潔かつ論理的にまとめることで本筋を外れずに伝えられます。
⑥研究の結果・成果
具体的な研究内容を述べたら、内容のまとめとして研究結果や成果を明示しましょう。内容を総括しつつ要点を再度明確にすることで、よりわかりやすい研究概要書が完成します。
結果や成果を記載する際は、具体的に伝えることが重要です。以下の工夫を参考に、研究内容を説得力ある形で総括しましょう。
説得力がでる研究結果・成果のまとめ方
- 数値を用いて結果を描写する
- 直感的に結果を理解できる図表をもとに解説する(図表が認められている場合)
- 結果だけでなく、結果からわかることもあわせて説明する
なお、結果・成果を書いた後、タイトルや研究概要と整合性が取れているかを必ずチェックしてください。矛盾を排して、一貫性のある研究概要書に仕上げましょう。
⑦考察・今後の展望
研究の総括を述べた後は、その研究がどのように先につながるのかを示しましょう。研究内容を論理的に分析し、そこから考えられる可能性や気づきをまとめます。
考察内容を述べる際は、その研究を今後どのように活用できるのか、併せて示しましょう。そもそも研究概要書では論理的思考力が試されているため、研究内容を論理的に分析するこのパートは評価に直結します。
企業が考察でチェックしているのは、おもに以下の3点です。
考察・今後の展望で企業がチェックしているポイント
- 結果・成果を論理的に深掘りして、妥当な分析ができているか
- 研究の意義を正しくとらえ、今後の活用可能性を模索できているか
- 研究に基づいて、新たな論点や研究の広がりを明示できているか
一つの研究だけにとどまらず、論理的に研究を深掘りして新たな可能性を示すことが重要です。分析にもとづいて研究の活用可能性を明示し、論理的思考力をアピールしましょう。
- 今後の展望は、どの程度まで詳細に記載すると良いのでしょうか?
初見の採用担当者がイメージできる内容を記載する
詳細さはその研究の進み具合や個人の状況にも異なりますが、基本的には採用担当者が読んである程度具体的にイメージできるレベルに落とし込むことが必要です。
実現可能性、中長期的な時間軸、今後の価値や方向性といったポイントを抑えながら、初見の採用担当者が読んでもある程度納得感のある内容にまとめましょう。
自信がなければ身近な社会人や研究室の教授、先輩などにアドバイスをもらってみてください。
⑧研究から学んだこと
研究概要書の最下部には、自分の個人的な学びも記載します。研究を深く分析するだけでなく、研究を通じた自分の学びや成長、改善点などを総合的に分析しましょう。
企業は、学生が自社にマッチするかどうかや業務内容に適性があるかをチェックしています。そのため自分の価値観や考え方を示すこのパートは研究概要書のなかでも特に重要なパートなのです。
自分の特徴を魅力的にアピールするためにも、研究から学んだことは簡潔かつ具体的に示してください。
想定した結果が出なかった場合や、研究概要書作成段階で研究が終了していない場合でも、深く研究を分析して学びや自身の成長を記述しましょう。
研究から学んだことのパートは、研究を通じた成長や思考の深さを示す重要な部分です。
過去の印象的だった事例では、課題解決の過程から仮説検証の重要性を学び、業務への応用策を具体的に述べた学生が高評価を得ました。
具体例も交えて解説! 就活で評価される研究概要書の特徴
具体例も交えて解説! 就活で評価される研究概要書の特徴
就活で評価される研究概要書には共通した特徴があります。まずは以下の研究概要書の例文を読んでみてください。
専門知識のない人でも理解しやすい研究概要書の具体例(研究の背景)
生体内分子のブラウン運動を情報通信技術へ応用しようと考えた理由は、従来の半導体デバイスで課題となっていたノイズ制御の問題を解決できると考えたためである。
実際、生物はノイズを効果的に活用している。
この研究では、バクテリアが菌体から伸びる鞭毛を回転させて推進力を発生させる仕組みである「鞭毛分子モーター」のような生物の分子メカニズムをモデルにした。
ブラウン運動による乱数的な動きを、研究で使用する分子デバイスやセル・オートマトン(※)に実装。ここで発生する「ゆらぎ」を活用することで、一つのプロセッサで複数の処理を可能にし、小型で安価なコンピュータの実現を目指した。
※セル・オートマトン:セル・オートマトンとは、グリッド上のセルが周囲の状態に基づいて変化するシステム。単純なルールから複雑なパターンを生み出せる。
上記は理解のしやすく、簡潔な文章で、かつ情報が整理された研究概要書であり、企業側から高い評価を得られる可能性が高いといえるのです。
この研究概要書の具体例は、Automata 2008:EPSRC Workshop on Cellular Automaton Theoryでベストペーパーに選ばれた論文の概要を参考に作成しています。
研究内容を専門知識のない人に伝えるための具体的な言い換え方法をチェックしたい人は、論文の概要もあわせてチェックしてみてください。
ここからは、上記の例文のような評価される研究概要書の特徴解説します。事前に評価につながる要素を把握しておけば、スムーズに研究概要書を作成できるようになります。
ここまで紹介した研究概要書の情報とあわせてチェックして、魅力的な研究概要書のイメージを膨らませましょう。
自己PRが思いつかない人は、ChatGPTを活用して自己PRを完成させよう
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簡単な質問に答えていくだけでChatGPTが自動で魅力的な自己PRを作成します。
作った自己PRは選考で活用できるものになっているので、ぜひ活用して採用される自己PRを完成させましょう。
(リーダーシップが強みの場合)
①簡潔かつ明快にまとめられている
就活で評価される研究概要書は、簡潔な文章で書かれているケースが多いです。意味が曖昧な部分もなく、明快に書かれているため、担当者がストレスなく読み進められます。
簡潔な文章で研究概要書を作成する際は、以下のポイントを意識しましょう。
意識すべきポイント
- 一文に書く内容を一つだけに絞る
- なくても意味が通じる単語は省く
- 接続語・修飾語を極力使わない
- 一文で同じ単語を何度も使わない
- 指示後を極力避ける
- 箇条書きや注釈で視認性を高める
上記を意識して文章を綴ることで、読み手にストレスがかかりづらい簡潔な文章を作成できます。
また、明快な文章にするためには、複数の意味に取れる単語や文章の使用を避ける、意味が曖昧な文章をなくすなどの工夫が必要です。
研究概要で省いて良い部分は、表面的・具体的な情報です。なくても伝わるものは省いてしまって構いません。
一方で、本質的な部分は省いてしまうと概要そのものが伝わらなくなってしまうため、省いてはいけません。
②専門知識がなくても理解できるように工夫されている
読み手が専門知識を身に付けていなくてもスムーズに理解できることも、高く評価される研究概要書の条件の一つです。専門用語や難しい表現を簡単な単語に言い換えたうえで論理的に説明すれば、自ずと採用担当者からの評価も高まります。
とはいえ「どこまでの専門用語を言い換えるべきなのか」と疑問を持つ人もいると思います。結論、中学・高校の内容で習う専門用語以外は言い換えるのがベストです。
中学・高校で習う範囲であれば、専門知識のない採用担当者でもスムーズに理解できるためです。また、言い換えが難しい場合は説明文をつけたり、注釈で意味を説明したりする工夫を施しましょう。
- 言い換え・括弧書き・注釈の3つはどのように使い分ければ良いのでしょうか?
それぞれ役割が異なり場面に応じた使い分けが必要
言い換えは、難しい専門用語を一般的な言葉に置き換える方法です。
たとえば、「ニューラルネットワークを用いた画像認識モデルの構築」は「AIが画像を見て判断できる仕組みを作る」と表現できます。
括弧書きは、専門用語を使いつつ簡潔に補足する際に使用され、「自然言語処理(AIが文章を理解し、適切な応答を生成する技術)」のように使います。
文脈が崩れないため、相手が読みやすいというメリットがあります。
一方、注釈は文章の流れを保ちつつ詳しく補足する際に役立ちます。
「畳み込みニューラルネットワーク(CNN)※1」のようにし、脚注で「画像の特徴を自動で抽出し、識別するAIの仕組み」と説明します。
これにより、専門知識がなくても用語の意味を理解しやすくなります。
③事実と意見を切り分けてわかりやすく整理されている
研究概要書で多くの学生がやりがちなミスの一つが、事実と意見の混同です。特に、意見を事実のように語ってしまう学生が多くいます。事実と意見が混同されていると、相手に情報が正確に伝わりません。
たとえば、ある実験によって「20」という研究結果が得られたとします。これは結果であるため、紛れも無い「事実」です。
一方、この「20」という数値が大きいか小さいかは、研究者の感覚や専門知識の有無によって異なります。つまりこの場合、大きい・小さいという表現は「意見」なのです。
20という事実を書く際、大きい・小さいという意見を伝えると、客観的な研究概要書ではなくなってしまいます。そして、相手に専門知識がある場合は、混乱させてしまう恐れもあるのです。
研究概要書を作成する際は、事実を伝えるべき部分と意見を述べるべき部分を切り分けておきましょう。適切なパートで、適切な情報を提供することが重要です。
④文体・フォントが統一されている
研究概要書では読みやすさや視認性の高さも重要な評価ポイントです。文体やフォントは読みやすいものに統一して、読み手がストレスなく読める研究概要書に仕上げましょう。
文体は大きく分けて、ですますとである調の2つがあります。企業からの指定がある場合はそれに統一しますが、指定がない場合はどちらでも構いません。
ただし、必ずどちらか一方に統一しましょう。統一していない文章はリズムがバラバラになるため、読みにくくなります。
フォントとは書体のデザインを指し、代表的なものにはゴシック体や明朝体などがあります。フォントが統一されていなければ見栄えも悪く、見る人にストレスがかかるため、必ず統一しておきましょう。
こだわりがない場合は、読みやすくクリアな印象を与える明朝体系のフォントがおすすめです。
⑤図表やグラフなどを交えてわかりやすく解説できている
ポスター形式、プレゼン形式の場合は、図表やグラフを交えて効果的に視覚化できているかも評価を分ける大きなポイントです。
図表やグラフがあるだけで、専門的な知識がない人でも理解しやすい研究概要書に仕上げられます。適切な視覚化をおこなえば、専門知識のない人でも格段に読みやすくなるため、必然的に評価が高まります。
効果的に図表を活用できるおすすめの方法は、実際に専門知識のない知り合いに読んでもらって、わかりづらい部分を指摘してもらいながら研究概要書を仕上げる方法です。
提出前に専門知識のない知り合いに何度か研究概要書を読んでもらい、必要な部分に図表が挿入されているかチェックしましょう。
研究概要書の図表で意識すべきポイントは、初見でも概要がわかりやすく伝わるかどうかです。
特に概要書の場合、研究の経験がない人事や、若手採用担当、二回り・三回り年齢の高い役員が見る可能性があります。
そういった研究に縁もゆかりもないが人が見てもわかりやすいことがポイントです。
キャリアのプロが実体験をもとに解説! 研究概要書のNG例
実はここまで解説してきた要素を網羅できていても、採用担当者に評価されない研究概要書も存在します。論理が破綻していたり、結果の記載が抽象的だったりすると、低い評価を付けられる可能性が高まります。
研究概要書は選考での評価や面接の素材としても非常に重要な資料であるため、評価されないと選考で非常に不利になってしまうのです。
ここからは採用経験のあるキャリアコンサルタントの野村さんに、研究概要書で避けるべきNG例を解説していただきます。
せっかくのアピールチャンスを無駄にしないよう、研究概要書の作成に取り掛かる前に必ずチェックしておきましょう。
アドバイザーコメント
野村 芳克
プロフィールを見る5つのことに注意して好印象を持たれる研究概要書を作成しよう
研究概要書は学生の論理的思考力や研究への姿勢を評価する重要な資料であり、以下のポイントに注意が必要です。
専門用語や難解な表現の多用
専門知識を持たない採用担当者にもわかるように説明することが重要です。専門用語は、簡単な言葉に置き換えたり、注釈を加える工夫が求められます。
結果の記載が抽象的
「大きな成果を得られました」のような抽象的表現はNGです。具体例を交え、「効率を10%向上させた」など、成果を明確に示しましょう。
論理性が欠けている
研究の背景、目的、結果が一貫していないと論理的思考力を疑われます。「なぜこの研究をおこない、どのような結果を得たのか」を明確に伝えることが重要です。
本筋から外れた記述
研究に関係のないエピソードを長々と述べるのは避け、スペースを効果的に活用しましょう。
フォーマットや指定条件の無視
文字数や形式の指定を守らないことは注意力の欠如と捉えられます。提出前に条件を確認してください。
これらを避け、簡潔で明確な研究概要書を作成することで、採用担当者に好印象を残せられます。
就活で研究概要書が必要な場合は早めにテンプレートを使おう

魅力的な研究概要書の要素と注意すべきポイントを理解できたら、実際に研究概要書を作成してみましょう。
ただ、企業ごとに研究概要書を作成するのは手間がかかります。まずは研究概要書のテンプレートを作成し、企業ごとにカスタマイズできる状態にしておくのがおすすめです。
ほとんどの場合、A4用紙1〜2枚のポスター形式もしくはES形式での研究概要書の提出が求められます。
ここまでの解説をもとに、研究概要書のテンプレートを作成しましょう。
テンプレートをもとにした研究概要書の作成方法5ステップ
テンプレートをもとにした研究概要書の作成方法5ステップ
研究概要書のテンプレートが完成したら、企業ごとにテンプレートをカスタマイズしましょう。
企業の業務内容や重視する要素によって、研究概要書に記載すべき内容は異なります。企業ごとに書く内容を最適化すれば、それぞれの企業の選考をより有利に進められるようになるのです。
一方、どの企業も一緒くたにしてテンプレートを使いまわしていては、高く評価される研究概要書に仕上げるのは困難です。そこで以下の5ステップを参考に、志望企業に最も魅力的に映る研究概要書を作成しましょう。
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・大手志望で就活準備をしている
①企業分析でその企業が重視する要素をピックアップする
研究概要書を作成する前に、まずは志望企業の分析から始めましょう。
志望企業が自身の研究領域に知見があるのか、どのような価値観を重視しているのかを正確に把握しなければ、その企業で高く評価される研究概要書は作成できません。
以下の3ステップで企業を分析し、各企業の特徴を正確にとらえましょう。
ステップ | 詳細 |
---|---|
1.企業分析で集めるべき情報を知る | ・会社概要 ・事業領域 ・事業の詳しい内容 ・具体的な商品 ・サービス ・取引先やターゲット ・採用情報など |
2.実際に企業情報を集める | ・企業のホームページを確認する ・就職情報サイトを活用する ・企業の情報がまとまった記事や書籍を読む ・会社説明会に参加するインターンシップに参加する ・OB・OG訪問するなど |
3.集めた情報をもとに他社と比較・分析する | 上記のステップで集めた複数企業の情報を比較し、各企業独自の特徴を把握する。 |
重要なのは情報収集自体ではなく、集めた情報を活用して企業理解を深めることです。必ず集めた情報を比較して、それぞれの企業の特徴を把握するところまでセットでおこないましょう。
まず企業情報を収集する目的とゴールを明確にしておきましょう。
企業情報は調べだすとキリがなく、実は大企業であれば一社員が知っている情報も一部分だったりします。
そのため、自分が何の目的で企業研究をして、どこまで知る必要があるのかを明確にしておくことで企業研究がスムーズになります。
企業分析については以下で詳しく解説しています。具体的な企業分析のやり方をステップごとに詳しく知りたい人は、以下の記事もチェックしてみてください。
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企業分析には自分に合った企業が見つかるなどのメリットが多くあります。また集めた企業情報をうまく活用することで、就活を効率的に進めることができますよ。この記事では、企業分析の正しいやり方から効率化のコツまでキャリアコンサルタントとともに徹底解説します。
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②企業分析の内容をもとにテンプレートから必要な部分を抽出する
企業分析で各志望企業の特徴を明らかにしたら、企業ごとに最適な研究概要書を作成します。必要な部分を抽出する際は、以下のような観点で作業を進めましょう。
必要な部分を抽出する際の着眼点の例
- 企業の業務領域と自分の研究領域は一致しているか
- 採用担当者は専門知識を持っているか
- どのような企業風土が根付いているのか
比較・分析によって企業風土や企業の重視する価値観などを理解して、それに合う自分の特徴を伝えられるパートを抽出しましょう。
業務領域と研究領域が一致している場合や、採用担当者が専門知識を持っている可能性が高い場合は、研究のより深い部分まで抽出するのがおすすめです。自分の専門性の高さや、知見の深さを示して、自身の価値をアピールできます。
③抽出した要素をもとに研究概要書の骨組みを作る
企業ごとに必要な部分をテンプレートから抽出できたら、それをもとに研究概要書の骨組みを作成しましょう。
始めから完璧な研究概要書を作ろうとせず、まずは骨組みを作ることで、後から大きな修正が必要になる事態を避けられます。
骨組みを作る際は、まず研究概要書の各パートで確実に伝えるべき情報をピックアップしましょう。確実に伝えるべきポイントのみで一度研究概要書の骨組みを作成してチェックすれば、重要なポイントの抽出漏れも防げます。
なお、必ず伝えるべきパート以外の部分は、必要に応じて使用するか判断しましょう。
研究概要書の骨組みを作る際は、「結論→根拠→具体例」の流れを意識すると、相手に伝わりやすくなります。
まず研究の目的や成果によって得られる意義を明確にし、それらを支えるデータや理論を整理しましょう。
④企業分析をもとに研究概要書の骨組みを肉付けする
研究概要書の骨組みが完成したら、企業分析をもとに肉付けしてボリュームのある研究概要書を作成しましょう。企業が重視するポイントにしっかりボリュームをかけてアピールすれば、高く評価される研究概要書を作成できます。
たとえば事業領域と研究領域が一致している場合、専門知識・スキル・独創性を伝えられるパートのボリュームを特に大きくすべきです。
一方、企業が論理的思考力や分析能力の高さを重視している場合、研究の背景や考察のボリュームを増やしてしっかりと解説するのが効果的です。
なお、自身の研究領域と業務領域が一致している場合でも、細かい分野に分かれている場合が多く、採用担当者が必ずしも理解しているとは限らないため、なるべく専門用語を使わず説明することを心がけましょう。
⑤文字数指定をもとに推敲する
骨組みを肉付けして研究概要書が完成したら、企業からの指定をもとに最適な形に整えましょう。文字数や形式の指定がある場合、指定を厳守する形で全体を整えます。指定形式を守らなければ、どんなにクオリティが高くても高評価の獲得はできません。
推敲する際は、以下の順序でおこなうのがおすすめです。
推敲の順序
- 仕上げた研究概要書を自身で推敲する
- 複数の人に読んでもらい、良い点と改善すべき点をまとめる
- まとめた内容をもとに推敲する
- 企業の指定に従って全体を調整する
先に推敲し、その後企業の指定に従って調整するという順を徹底しましょう。先に調整することで、推敲時に再び企業指定の文字数・形式からズレる事態を防げます。
研究概要書を提出する前に確認! 最終チェックすべきポイント4選
研究概要書を提出する前に確認! 最終チェックすべきポイント4選
- ①簡単に説明できる専門用語を含めていないか
- ②ただの成果報告になっていないか
- ③面接を想定した内容になっているか
- ④指定された内容や条件を守っているか
ここからは、提出前に最終チェックすべき4つのポイントを解説します。ここで解説するポイントを漏れなくチェックすれば、ケアレスミスによって自身の評価を下げるリスクを最小限に抑えられます。
「わずかなミスであれば大丈夫と思っている人もいるかもしれません。ただ、就活ではそのわずかなミスで内定を逃すことも多いです。
完成したらすぐ提出するのではなく、一度時間を空けて、再度以下のポイントを確かめて提出しましょう。
①簡単に説明できる専門用語を含めていないか
まずは、専門知識のない人でもストレスなく読めるかどうかチェックしましょう。専門用語がある場合は、以下のいずれかの方法で言い換えます。
専門用語を言い換える方法
- より簡単な単語に置き換える
- 括弧書きで簡単な説明を付す
- 注釈を使って説明を付す
簡単な単語に置き換えられる場合は、専門知識がなくても理解できる単語に言い換えましょう。言い換えられる単語がない場合、括弧書きや注釈で簡単な説明を加えるのが効果的です。
なお、中学までで習う知識で理解するのが難しい単語は、言い換えるのがベストです。
逆に、中学までで習う用語まで言い換えていると冗長になるため、言い換えすぎも控えましょう。
②ただの成果報告になっていないか
最終チェック時には研究概要書がただの成果報告になっていないか、併せてチェックしましょう。
前述の通り、企業が就活で研究概要書の提出を求める目的は、研究への取り組み姿勢や論理的思考力をチェックするためです。
研究成果の報告自体に価値があるのではない点には、留意しておきましょう。
企業側の目的を果たすためには、研究の背景・研究の課題と解決策・考察などのパートで、しっかり自分の論理的思考力をアピールする必要があります。
事実だけでなく、自分の意見や考えを展開して、思考の深さや研究への熱意を見せましょう。
また、研究から学んだことを述べるパートも、自身の考え方や着眼点を示す重要なパートです。研究概要書を通じて事実を述べるだけになっていないか、提出前に必ずチェックしましょう。
③面接を想定した内容になっているか
研究概要書は、出して終わりではありません。面接ではほとんどの場合、研究概要書の内容をもとにした質問が投げかけられます。
そのため研究概要書は、面接を見越して作成する必要があるのです。
具体的には、以下のような質問が投げかけられることを想定して研究概要書を作成しましょう。
投げかけられる質問の例
- 既存のものとは違うあなたの研究独自のポイントは何か
- この研究から学んだことのうち、企業に還元できる学びは何か
- この研究に改善すべきポイントはありますか
- この研究をもとにもう一つ実験するなら、どのような研究にしますか
上記に対する返答や、その返答への深掘り対策をしておくことで、面接でスムーズに受け答えできる可能性が高まります。
面接を想定した研究概要書作成のポイントは、質問に応じた深掘りを考えることです。
たとえば、研究独自の強みや学んだことの活用法などを説明できる内容に仕上げましょう。これにより、具体的な会話が可能になります。
④指定された内容や条件を守っているか
ここまで紹介した内容のチェックが済んだら、指定された内容に則っているか再度チェックしましょう。内容を修正したことで、指定された内容・条件から逸れている場合があるためです。
また、このときに再度全体を読み、内容チェックもおこないましょう。チェックは以下の2回に分けておこなうのがおすすめです。
チェックすべきタイミング
- 推敲後すぐ
- 推敲から1〜2日後
書き上げてすぐのタイミングでは自然に自分の知識を補って研究概要書を読んでしまうため、ミスや伝わりづらい点に気づきづらいです。
一方、1〜2日経ってから読むと、自然に客観的な視点で読めるため、改善すべき点や伝わりづらい点を見つけやすくなります。
企業から指定された条件を守っているか確かめる際には、併せて全体の内容もチェックして万全の状態で提出できるようにしておきましょう。
就活で魅力的な研究概要書を作成して内定を勝ち取ろう
この記事では、研究概要書の特徴や目的だけでなく、採用担当者が見ているポイントや高評価を得るための工夫についても解説しました。
解説したポイントに沿って研究概要書を作成すれば、採用担当者に高く評価される資料を作成できます。
また、後半で紹介したテンプレート作成や、企業別に研究概要書をカスタマイズする方法もぜひ取り入れてみてください。
早い段階で研究概要書のテンプレートを作成し、企業分析に則ってカスタマイズすれば、内定を一気に引き寄せて、志望企業への入社を実現しましょう。
アドバイザーコメント
隈本 稔
プロフィールを見る研究概要書の内容を論理的に説明できるよう準備しておこう
研究概要書は単なる研究の説明ではなく、あなたの論理的思考力や研究に向き合う姿勢をアピールする重要な書類です。
何を書くべきか迷うこともありますが、本文で紹介しているポイントを押さえて作成すれば、企業に自分の強みを伝えられます。
作成する際は、研究の目的や意義を明確にし、応募先企業の業界や希望職種と関連づけることを特に意識しましょう。
企業は、研究の内容そのものよりも「どのように取り組んだか」「どのように考え、工夫したか」といったプロセスを重視します。
そのため、自分の研究の背景や課題設定、アプローチ方法、得られた成果を整理し、論理的に説明できるようにしましょう。
誰にでもわかる表現で確実に伝えられる研究概要書を作成しよう
また、研究概要書の内容は面接で確認されるため、記載内容と矛盾のない説明ができるよう、事前に想定問答を準備しておく必要があります。
加えて、採用担当者が必ずしも専門知識を持っているとは限らないため、専門用語の使用を控え、分かりやすい表現を心がけることも重要です。
提出前には研究に詳しくない第三者に読んでもらい、正しく伝わるかどうかをチェックしてより伝わりやすい文章にブラッシュアップしましょう。
執筆・編集 PORTキャリア編集部
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記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi
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キャリアコンサルタント/性格応用心理士1級
Minoru Kumamoto〇就職・転職サイト「職りんく」運営者。これまで300名以上のキャリア相談を受けた実績。応募書類や採用面接の対策支援をする他、自己分析の考え方セミナーを実施
プロフィール詳細キャリアコンサルタント/キャリアシンク・オフィス代表
Yoshinori Nomura〇IT業界・人材サービス業界でキャリアコンサルタントの経験を積む。培ったノウハウをもとに、その後はNPO支援団体として一般企業人の転職相談・就活生への進路相談を担う
プロフィール詳細キャリアコンサルタント/就活塾「我究館」講師
Hayato Yoshida〇東証一部上場の人材会社で入社2年半で支店長に抜擢。これまで3,000名以上のキャリアを支援。現在はベストセラー書籍「絶対内定」シリーズを監修する我究館でコーチとして従事
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