本企画について
「噂や評判に、プロの確実な視点を。」をテーマに企業選びや意思決定の支援をする企画です。漠然とした不安には「確度の高い事実」を、意思決定には「キャリアの専門家による視点」を提供することを目指します。
日本製鉄はグループ売上では10兆円を超える、世界的を舞台に活躍する日本の大手鉄鋼メーカーです。
しかし、「買収で負荷がかかっている」「業績悪化によるリストラ」など、「日本製鉄はやばい」と感じてしまうような噂もされています。
そこで、日本製鉄は本当に「やばい」企業なのかを紐解いていきます。噂の具体的な根拠や、就活のプロであるキャリアコンサルタントからの解説を通して、企業の実態を理解していきましょう。
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1分でわかる日本製鉄
日本製鉄とは
日本最大手かつ世界トップクラスの鉄鋼メーカー。「常に世界最高の技術とものづくりの力を追求し、優れた製品・サービスの提供を通じて、社会の発展に貢献します。」という企業理念を掲げる。
鉄鋼製品を製造・販売する中核の「製鉄事業」を中心に、「エンジニアリング」「ケミカル&マテリアル」「システムソリューション」の4つの事業分野を展開。現在は「総合力世界No.1」を目指し、国内基盤の強化、グローバル事業の拡大、カーボンニュートラルやDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に注力。
| 会社名 | 日本製鉄株式会社(NIPPON STEEL CORPORATION) |
| 従業員数(単体) | 113,845名(2025年3月31日現在) |
| 本社所在地 | 東京都千代田区 |
| 主な事業 | ・製鉄事業 ・エンジニアリング事業 ・ケミカル&マテリアル事業 ・システムソリューション事業 |
| 売上高(連結) | 8兆6,955億2,600万円(前年同期比1.9%減)(2025年3月期) |
| 経常利益(連結) | 5,479億6,000万円(同29.6%減)(同期間) |
| 企業HP | https://www.nipponsteel.com/ |
| 新卒採用HP | https://www.nipponsteel.com/recruit/newgraduate/ |
「日本製鉄がやばい」と言われる4つの理由|プロが読み解く
「日本製鉄がやばい」と言われる4つの理由
日本製鉄がやばいと言われる理由について4つにまとめています。なぜそのような評判が挙がってくるのか、具体的なデータを元に解説します。さらに、キャリアコンサルタントからも専門的なアドバイスをしてるので、参考にしてみてください。
①USスチールの買収で負荷が大きいから
2023年12月、日本製鉄はアメリカの大手鉄鋼メーカーであるUSスチールを約141億米ドルで買収することを決定しました(※1)。また、買収をするうえで必要となる資金調達のため、約2兆円の借入額が発生したことも述べられています(※2)。
この買収にともない、米国の競争法上の懸念を解消すべく、アルセロールミッタルとの合弁事業における持分を譲渡しました(※2)。これにより、2025年度の連結決算において約2,300億円の損失を負うこととなりました(※3)。
大規模な買収をおこなったことで1兆円単位の貸し借りや、億単位の損失が出たという事実から、企業への負荷がかかっていると思われているようです。
※1 日本製鉄 有価証券報告書 2024年3月期
※2 日本製鉄 有価証券報告書 2025年3月期
※3 日本製鉄 2025年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)
プロのアドバイザーはこう分析!目先の負担は心配無用! 世界一へ躍進するシナリオは極めて盤石である
大規模買収に伴う資金調達や損失計上の事実から財務負担を懸念する声は自然です。
実際に経済紙の報道等でも、米政府に一定の拒否権を与える「黄金株」の発行や国家安全保障協定の締結といった異例のプロセスを経て買収が完了したこと、市場の先行きへの懸念が客観的に指摘されています。
一時的コストの先には巨額の黒字! 2027年には千億規模の利益を生み出す
経営トップの今井社長は「USスチールを真にグローバルな競争力を持つ『世界の日本製鉄』への成長ドライバーとする」と公に明言しており、一時的な買収コストが一巡した後の2027年3月期には同事業単体で約1,000億円の利益貢献が見込めるという試算も公表されています。
環境変化や海外での競争も計算通り! 勝ち抜く攻めの姿勢は健在である
同社はさらに、国内の需要縮小や脱炭素化を見据え、グリーンスチール(低炭素鋼)への投資や、成長市場である米国・インドでの主導権を握るための布石を打っています。
目先の財務的な負担のみにとらわれるのではなく、世界トップクラスの収益力と技術力を目指す明確なグローバル成長戦略を実行している企業であると言えます。
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②業績悪化でリストラをおこなったから
業績悪化と言われる理由として、2020年3月期の連結決算において4,315億円という赤字を計上したことが考えられます。
日本製鉄は、アメリカとの貿易摩擦による中国国内での景気減速、新型コロナウイルス感染症の拡大による世界規模での経済活動の縮小などが原因と分析しています(※)。
また、リストラについても、2020年2月に瀬戸内製鉄所の呉地区の全設備、関西製鉄所の和歌山地区の一部設備を休止するなど、拠点の効率化という形でリストラを実施しています(※)。
しかし、業績悪化は特定の時期の市場や世界情勢に影響を受けているものであり、またリストラも決して赤字工面のためだけではなく、国内の鉄鋼需要の縮小化、老朽化した設備といった課題に対する抜本的な改革とも説明されていることを押さえておきましょう(※)。
プロのアドバイザーはこう分析!「人員削減」ではなく未来への進化! リストラの真意をとらえよう
「リストラ」という言葉は、会社の先行きや自分の将来を考えるうえで、とても気になるはずです。今後も日本製鉄が設備の集約や生産体制の見直しを進める可能性はありますが、それは必ずしも「人を減らすこと」だけを意味するものではありません。
鉄鋼業界は、国内需要の縮小に加え、老朽設備への対応、脱炭素投資、海外展開など、大きな変化への対応を求められています。
そのため、会社にとっても、そこで働く人にとっても、新たな成長や変革の機会となる面があります。
単なる縮小ではなく強化! 時代に合わせたポジティブな組織改革といえる
「リストラがあるかもしれない」という言葉だけで必要以上に怖がるのではなく、その背景にある社会の変化や、それに対応しようとする会社の考え方を見ることが大切です。
単なる縮小なのか、それとも将来を見据えた再編や成長なのかで、意味は大きく異なります。
イメージで恐れず面接で実態を確かめて納得の選択をしよう
説明会や面接では、今後の重点事業、若手に期待される役割、配属後の育成方針などを確認してみてください。
不安を持つこと自体は悪いことではありません。その不安があるからこそ企業をより深く見ることができ、納得感のある企業選びにつながります。
③残業や夜勤で激務だから
日本製鉄での鉄鋼生産に必要なプロセスとして、高炉を24時間365日稼働させることが求められます。そのために、従業員は4組3交替勤務で操業しており、そのなかで夜勤が発生することがあります(※1)。
実際に激務かどうかについて、公表されている最新値としては、同社の平均残業時間は24.9時間(2024年度)(※1)となっています。同時期の製造業界の平均14.5時間(※2)を超える労働時間が発生しているため、比較的多忙になる傾向はあるようです。
ただし、同社は有給休暇取得率について、業界平均70.4%(2024年度)(※3)を上回る80.0%(※1)という実績を出していたり、24時間対応可能な保育所を設けたりと、社員のワークライフバランスを確保する動きは取っているようです。
| 日本製鉄 | 製造業界の平均 | |
|---|---|---|
| 月残業時間 | 24.9時間 | 14.5時間 |
| 有給休暇取得率 | 80.0% | 70.4% |
※1 日本製鉄 統合報告書 2025
※2 厚労省 毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報
※3 厚労省 令和6年就労条件総合調査の概況
アドバイザーのリアル・アドバイス!激務は事実! 24時間稼働が生む現場のタフなリアルがある
24時間高炉を稼働させる鉄鋼業の性質上、全社平均残業時間(月24.9時間)が国を挙げる製造業平均を上回ることは公の事実です。
突発的なトラブルや定期メンテナンス、納期対応が重なる時期は時間的・体力的な負荷が高まり、客観的に見ても「激務」と感じる瞬間があることは否定できません。
単なるハードワークではない! 全員で一体となって支え合っている
一方で、実際の社員の口コミ等を見ると、「安全最優先の規律正しい風土で、全員で操業を支える責任感が強い」「泥臭さはあるが、チームで巨大な設備を動かす熱量がある」といった独自の企業文化が語られています。
オフの充実も万全! タフな働き方をカバーする手厚い支援体制がある
「業務を調整すれば有休は確実に消化できる」「独身寮や社宅をはじめ福利厚生の恩恵が大きい」という生の声も多く、公表されている有休取得率8割や男性育休77%、主要製鉄所への24時間保育所設置といった手厚いサポート体制が、社員の安心感やメリハリのある働き方を支えている実態が窺えます。
タフな環境と手厚い支援の両面を理解したうえで、自身の目指す働き方と重ね合わせてみてください。
あなたが受けないほうがいい職業を診断しましょう
就活を進めていると、自分に合う職業がわからず悩んでしまうことも多いでしょう。
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自分の適職や適さない職業を理解して、自信を持って就活を進めましょう。
④脱炭素に向けて投資が莫大になるから
日本製鉄は鉄鋼業界に含まれる企業のため、生産の過程で発生するCO2を削減しようとする脱炭素(カーボンニュートラル)の動きが求められます。この取り組みには莫大な費用が必要となるため、その点がやばいと言われる所以と考えられます。
脱炭素(カーボンニュートラル)
温室効果ガスの排出量を削減させて吸収量と均等にさせることで、温室効果ガスの排出を実質ゼロにしようとすること
同社は「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」を掲げて、脱炭素に向けたさまざまな取り組みをおこなっており、そのためには約5,000億円の研究開発費用と4~5兆円規模の設備費用が必要とされているようです(※)。
日本製鉄の脱炭素への取り組み事例
- 大型電炉での高級鋼製造
- 高炉での水素還元(COURSE50~Super COURSE50)
- 100%水素直接還元プロセス
同社はカーボンニュートラル実現のために、政府からの4,499億円の援助(※3)や、総額500億円の社債発行(※4)による自社での資金調達などを通して、必要な費用を集めているようです(※2)。
※1 日本製鉄 統合報告書 2021
※2 日本製鉄 統合報告書 2022
※3 日本製鉄 統合報告書 2025
※4 日本製鉄 統合報告書 2023
プロのアドバイザーはこう分析!莫大な資金で一時的な重荷になるリスクをはらんでいる
日本製鉄の脱炭素投資は最大5兆円規模に及ぶとされており、中長期的に財務負担が増す可能性があります。
鉄鋼業の脱炭素は、既存設備の改良だけでは対応が難しく、水素還元製鉄や大型電炉導入など、製鉄プロセスそのものを刷新する必要があります。
そのため、今後も長期間にわたり巨額投資が続く構造です。鉄鋼需要の低迷や資源価格高騰が重なった場合には、営業キャッシュフローだけで投資を賄いきれず、借入負担が増加するリスクもあります。
直近の資金難は心配無用! 圧倒的なブランド力と信頼でカバーできる
ただし、現時点で直ちに資金繰りが悪化する可能性は高くないと考えられます。
同社は高級鋼分野で高い競争力を持ち、一定の価格転嫁力と収益力を維持しているほか、国内有数の信用力を背景に高い資金調達力を有しているためです。
最大の鍵はコストの転嫁! 市場の理解と周囲の支援が未来を握る
一方で、中長期的な最大の課題は、「脱炭素コストを誰が負担するか」にあります。
脱炭素鋼は従来鋼材より製造コストが高くなるため、政府のGX支援や補助金に加え、環境価値を価格へ反映するグリーンプレミアムが市場に定着するかが、将来の収益性を左右する重要なポイントになると考えられます。
あなたが受けないほうがいい職業を知っておこう
就活を成功させるためには、自分に合う職業・合わない職業を早めに知ることが不可欠です。しかし、それがわからずに悩む人も多いでしょう。
そんな人に活用してほしいのが「適職診断」です。簡単な質問に答えるだけで、あなたに合う職業・合わない職業を特定できます。
早いうちに自分に合う職業・合わない職業を知って、就活を成功させましょう。
日本製鉄は業界の動きに合わせて対応している
業界の動向によって業績に影響があったり、莫大な資金がかかったりするなかでも、日本製鉄は取り組み方を考えて経営をしています。
また、買収や激務といった断片的な情報からも「やばい」と判断するのではなく、深く読み解くことで、企業の正しい姿を見極めましょう。
アドバイザーのリアル・アドバイス!「有名だから安心」は危険! 入社後のリアルを具体的に想像しよう
日本製鉄を目指す就活生が見ておくべきポイントは、「大手で安定していそう」という印象だけでは見えにくい、実際の働き方や配属後の違いを、できるだけ具体的にイメージしておくことです。
そして、その働き方が自分に合いそうかどうか、自分の気持ちに照らして考えてみることが大切です。
勤務形態や職場で環境は激変! 現場ごとのギャップに目を向けよう
たとえば、職種によっては24時間操業を支える夜勤や交替勤務があり、生活リズムや体力面でギャップを感じる可能性があります。
また、拠点や配属先によって仕事内容、忙しさ、現場の雰囲気がかなり異なるため、自分なりの納得感がないまま入社すると、「思っていた仕事と違う」というミスマッチにつながることもあります。
知名度だけで選ぶのは卒業! 自分が無理なく続けられるかを見極めよう
さらに、鉄鋼業界は景気の変動や脱炭素対応などの影響を受けやすく、会社としても変化への対応が求められる場面が多いです。
就活生としては、給与や知名度だけでなく、夜勤の有無、勤務地、配属の考え方、現場で求められる役割などを具体的に確認し、自分がその環境で無理なく働き続けられそうかという視点で見ておくことが大切です。
執筆・編集 PORTキャリア編集部
> コンテンツポリシー記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi






3名のアドバイザーがこの記事にコメントしました
国家資格キャリアコンサルタント/国際コーチング連盟(ICF)ACC
Atsushi Ikarashi〇欧州系日本法人の代表取締役。新卒で日本企業に5年、東南アジア現地法人に12年勤務し、帰国後外資企業に就職。経営者視点でキャリア形成の支援をする。MBA(海外)取得済
プロフィール詳細キャリアコンサルタント/キャリアシンク・オフィス代表
Yoshinori Nomura〇IT業界・人材サービス業界でキャリアコンサルタントの経験を積む。培ったノウハウをもとに、その後はNPO支援団体として一般企業人の転職相談・就活生への進路相談を担う
プロフィール詳細キャリア・デベロップメント・アドバイザー/キャリアドメイン代表
Kenichiro Yadokoro〇大学でキャリアデザイン講座を担当した経験を持つ。現在は転職希望者や大学生向けの個別支援、転職者向けのセミナー、採用担当者向けのセミナーのほか、書籍の執筆をおこなう
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