本企画について
「噂や評判に、プロの確実な視点を。」をテーマに企業選びや意思決定の支援をする企画です。漠然とした不安には「確度の高い事実」を、意思決定には「キャリアの専門家による視点」を提供することを目指します。
「出光興産はやばい」
石油の業界において、「出光」という名前を一度は聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。業界の中でも大手として有名な企業ですが、「将来性が低い」「企業文化が独特」という噂もあるようです。
そこで、出光興産は本当に「やばい」のか、具体的なデータを使いながら説明していきます。また、キャリアコンサルタントが就活のプロとして専門的な解説もしているので、一緒に企業の実態を紐解いていきましょう。
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1分でわかる出光興産
出光興産とは
1911年に出光佐三によって創設された、日本発のエネルギー共創企業。国内外で「燃料油」「基礎化学品」「高機能材」「電力・再生可能エネルギー」「資源」の5事業を展開し、暮らしや産業に欠かせないエネルギー・マテリアルを安定供給。
近年は2050年のカーボンニュートラル・循環型社会の実現を見据え、「一歩先のエネルギー」や「スマートよろずや」などの社会実装を進め、次世代を見据えた事業ポートフォリオの転換を推進。
| 会社名 | 出光興産株式会社 |
| 従業員数(連結) | 13,814名(2025年3月期) |
| 本社所在地 | 東京都千代田区 |
| おもな事業 | ・燃料油事業 ・基礎化学品事業 ・高機能材事業 ・電力・再生可能エネルギー事業 ・資源事業 |
| 売上高(連結) | 9兆1,902億2,500万円(前年同期比5.4%増)(2025年3月期) |
| 経常利益(連結) | 2,147億6,400万円(同44.3%減)(同期間) |
| 企業HP | https://www.idemitsu.com/jp/index.html |
| 新卒採用HP | https://www.idemitsu.com/jp/recruit/future/index.html |
「出光興産がやばい」と言われる4つの理由|プロが読み解く
「出光興産がやばい」と言われる4つの理由
出光興産がやばいと言われる理由を4つに分けて紹介します。なぜそのような噂がされているのかを解説するとともに、キャリアコンサルタントから正しい情報の読み解き方も伝授するので、併せて読んでみてください。
①脱炭素化で将来性が低いから
世界で脱炭素(カーボンニュートラル)の動きが高まっていたり、EV(電気自動車)が普及してきたりすることで、石油の需要が減ってしまい、出光興産は将来的に大丈夫なのかという懸念を持たれている可能性があります。
脱炭素(カーボンニュートラル)
温室効果ガスの排出量を削減させて吸収量と均等にさせることで、温室効果ガスの排出を実質ゼロにしようとすること
同社は脱炭素の動きを受けて、2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指すために、「一歩先のエネルギー」「多様な省資源・資源循環ソリューション」「スマートよろずや」の3つの事業領域において変革を進めていくと述べています(※)。
カーボンニュートラルへの取り組み
- ①一歩先のエネルギー
多様で地球環境に優しいCNエネルギーの安定供給 - ②多様な省資源・資源循環ソリューション
産業活動・一般消費者向けのCNソリューション - ③スマートよろずや
地域の暮らしを支える多様なエネルギー&モビリティ拠点
従来の注力事業だけでなく、時代の変化に合わせた事業分野の強化を図ることで、特定の領域に依存せず、将来性を担保していく取り組みをしていると考えられます。
プロのアドバイザーはこう分析!石油で利益を確保しつつ新たに環境面での事業を開始している
脱炭素化に伴う化石燃料の需要減少以外で将来性を左右する要素は、「次世代エネルギー開発の投資回収スピード」と「既存事業の収益力維持」のバランスです。
日本経済新聞の報道によると、同社はベトナムに世界最大級のバイオマス燃料工場を新設するなど環境投資を加速させています。しかし、こうした新事業がグループ全体の収益の柱へ育つまでには一定の時間を要する見込みです。
実際、東洋経済の解説記事でも、世界的な環境規制の不透明感が増すなかで、経営陣が「既存の石油事業で原資を稼ぎつつ脱炭素投資を両立させるバランス経営」の難しさを吐露している事実が報じられています。
新規事業の推進と既存事業の効率化が経営の鍵を握る
つまり、将来性を左右する本質は新事業の進捗だけでなく、ポートフォリオの移行過渡期において、従来の燃料油事業の効率化によってどれだけ安定した原資を稼ぎ続けられるかという点にあります。
この移行期における財務健全性や、投資の現実的な実効性という事実や状況の変化を理解する必要があります。
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②原油価格や為替に影響を受けやすいから
出光興産は原油のほとんどを海外からの輸入に頼っているため、原油の価格や為替が変動することによって業績にも影響が出ると考えられます。
企業側も、2022年からのウクライナ情勢や世界各国の金融政策の動向、アジア圏での石油需要の変動などが、業績に影響を与えると分析しています(※1)。
コロナウイルスの影響が下火になってきた時期に原油の需要が回復し、ロシアがウクライナに侵攻したことも併せて、原油価格は高騰しました。需要が上がって価格が高騰したことで、2022年3月期は前期比2,944億円となる4,345億円の営業利益を計上しました(※2)。
反対に、2025年3月期にはアメリカや中国の景気減速などから原油価格が下落して、在庫評価が悪化したことで、営業利益は前期から53.2%も下回る1,622億円で着地しました(※1)。
原油価格や為替がどう企業に働くかはその時次第のため、一概にやばいと断言することはできないでしょう。
※1 出光興産 有価証券報告書 2025年3月期
※2 出光興産 有価証券報告書 2022年3月期
プロのアドバイザーはこう分析!事業に変化は前提! 柔軟性のある企業かを見極めよう
出光興産は、原油価格や為替の影響を受ける以上、毎年同じように安定した業績が続く会社とは言いにくいかもしれません。
ただ、就活生に見てほしいのは、短期的な業績のブレそのものよりも、ブレがあっても事業を維持し、次の成長に備えられる会社かどうかです。
出光興産は燃料油だけでなく、基礎化学品、高機能材、電力・再生可能エネルギー、資源と複数の事業を持っており、脱炭素の流れを踏まえた事業転換も進めています。
つまり、外部環境に左右されない会社ではないものの、変化を前提にしながら事業の軸を組み替えていける会社と見るほうが自然です。
出光興産は長生きできる力のある企業だと言える
どんな企業や事業であっても外部環境に左右されないわけではありません。長く安定していける会社とは「変化がないこと」ではなく、「変化があっても追従しながら、変化し続ける力があること」だと思います。
その意味でも出光興産は、中長期で長く安定していける企業だと考えられます。
③出光の七不思議という文化があるから
かつて出光興産には「出光の不思議」という創業者である出光佐三氏の経営方法を表した言葉があったとされています。ただ、この言葉は企業が公式に掲げていたものではなく、周囲から呼ばれていたもののようです(※1)。
「労働組合がない」「残業代は受け取らない」など独特な方針を含んでいたために、「やばい」と思われる理由になっていると考えられますが、2026年現在、公式サイトにそのような文言は掲載されていないため、時代とともに変化したととらえられます。
ただし、創業以来受け継がれている価値観もあり、「資本は人なり」「人が中心の経営」という考え方は今も大事にされ、「いかなる場合も会社都合で人員整理を行わない」という基本方針が根付いています(※2)。
※1 出光興産に学ぶ「事業承継の難しさと克服すべき課題」
※2 出光興産 有価証券報告書 2025年3月期
プロのアドバイザーはこう分析!社風は受け継がれながらも変化をしている
出光興産の現在の社風は、一言で言えば「人を大切にする創業者の理念を受け継ぎながら、時代の変化にも積極的に対応しようとしている企業文化」だと感じます。
同社の根底には、創業者である出光佐三氏の「資本は人なり」という考え方があります。これは、企業の成長を支えるのは設備や資金ではなく「人」であるという考え方です。
一方で、近年は「真に働く」という企業理念のもと、「徹底的当事者意識」「誠実・相互信頼」「大胆に挑み続ける」など、新しい行動指針を定めています。
これらから、人を大切にするだけでなく、「一人ひとりが主体的に考え、変化に挑戦しながら組織全体で協力していく」ことを重視している様子がうかがえます。
時代に合わせて柔軟に変わっていける企業である
また、昭和シェル石油との経営統合やカーボンニュートラルに向けた事業転換など、同社は大きな変革にも取り組んでいます。
そのため、「出光の七不思議」からイメージされる独特な会社というよりも、創業者の理念を大切にしながら、新しい時代に合わせた進化を続けている企業ととらえられるでしょう。
④激務で労働環境が良くないから
出光興産の口コミサイトでは「激務」という言葉が見られることもあるため、そのイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。
しかし、出光興産にはあらゆる職種が設けられているため、一概にすべての環境が激務だとは言い切れません。事務系、技術系と二分されたうえ、細かく職務内容が分かれているため、職場環境は担当業務によって異なることが考えられます(※1)。
| 職種系統 | 携わる業務内容 |
|---|---|
| 事務系 | 営業・マーケティング |
| 事業企画・需給・調達 | |
| コーポレート | |
| 技術系 | 研究開発者(R&D) |
| 製造・生産技術 | |
| デジタル・ICT |
公表されている最新の数値として、平均残業時間は21.5時間(2024年度)(※2)と製造業界の平均15.0時間や電気・ガス業界の平均16.4時間(※3)より少し多いものの、有給休暇の取得日数と取得率も業界平均を上回ることから激務とは言い切れず、休みの取りやすい環境があると言えます(※4)。
| 出光興産 | 製造業界 | 電気・ガス業界 | |
|---|---|---|---|
| 平均残業時間 | 21.5時間 | 15.0時間 | 16.4時間 |
| 有給休暇取得日数 | 17.5日 | 12.9日 | 13.2日 |
| 有給休暇取得率 | 85.4% | 70.4% | 70.7% |
※1 出光興産 仕事・職種
※2 出光興産 出光統合レポート
※3 厚労省 毎月勤労統計調査 令和5年分結果確報
※4 厚労省 令和6年就労条件総合調査の概況
プロのアドバイザーはこう分析!石油業界特有の激務となるサイクルがある
全社平均の残業時間は21.5時間と製造業平均に近い水準ですが、職種固有の業務サイクルによって一時的に負荷が高まる局面が存在します。
代表的な局面としては、以下のようなケースが挙げられます。技術系(製造・生産技術職)においては、数年に一度実施される製油所の「大規模定期修理(定修)」の時期です。
日本経済新聞の報道でも、操業を停止して設備を一斉に点検・修繕する期間の現場負担が業界共通の構造的課題として指摘されており、この期間は安全や工程の管理のために現場業務が集中します。
世界情勢にも左右される! 一時的な激務は発生しやすい
また、事務系の需給・調達部門などでは、中東情勢の緊迫化など外的要因で原油価格や為替が急高騰した局面が該当します。国際市況の急変に伴い、調達ルートの変更やコスト試算などの緊急対応が突発的に発生するためです。
従って、常に激務というよりも、大型プラントを維持する製造業特有の定修期や、世界の不確実性に直結した市況急変時などが、多忙を迎えるおもな場面として挙げられます。
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自分の適職や適さない職業を理解して、自信を持って就活を進めましょう。
企業の特徴を知って噂の実態を読み解こう
出光興産の事業や価値観、職種を知ることで、噂の実態に迫ることができました。その企業がどのような企業なのかを理解することで、「やばい」と言われる理由が明確になり、噂の真偽を判断することができるようになるでしょう。
アドバイザーのリアル・アドバイス!変化のある状況でも貢献したい気持ちがある人は向いている
出光興産に適性があるのは、変化の大きな時代の中でも、社会を支える仕事に腰を据えて取り組みたい人ではないでしょうか。
同社は石油元売り企業でしたが、現在はカーボンニュートラルの実現に向けて事業ポートフォリオの転換を進めています。
石油事業で培った基盤を活かしながら、次世代エネルギーや資源循環型社会の実現に挑戦しており、「既存事業を守る」と「新しい事業を育てる」を同時に進めています。
また、創業者・出光佐三氏の「資本は人なり」を軸とした企業文化は、「真に働く」という理念にも受け継がれています。そのため、個人の成果だけを追い求めるのではなく、組織や社会への貢献意識を持つ人との相性が良いでしょう。
不向きな特徴に注意! 時間をかけて成長実感を得られる企業である
一方で、短期間で成果や評価を求めたい人や、個人プレーを重視したい人は、同社の文化に物足りなさを感じるかもしれません。
出光興産の事業変革には長い時間がかかります。だからこそ、社会課題や産業の未来に向き合いながら、長期的な視点で成長したい人にとっては、大きなやりがいを感じられるでしょう。
執筆・編集 PORTキャリア編集部
> コンテンツポリシー記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi






3名のアドバイザーがこの記事にコメントしました
キャリアコンサルタント/性格応用心理士1級
Minoru Kumamoto〇就職・転職サイト「職りんく」運営者。これまで500名以上のキャリア相談を受けた実績。応募書類や採用面接の対策支援をする他、自己分析の考え方セミナーを実施
プロフィール詳細国家資格キャリアコンサルタント/国際コーチング連盟(ICF)ACC
Atsushi Ikarashi〇欧州系日本法人の代表取締役。新卒で日本企業に5年、東南アジア現地法人に12年勤務し、帰国後外資企業に就職。経営者視点でキャリア形成の支援をする。MBA(海外)取得済
プロフィール詳細キャリアコンサルタント / システムエンジニア
Ichiro Komine〇大手電機メーカーでシステムエンジニアとして従事。若者の人生や成長にかかわりたいと思い、キャリアコンサルタントの資格取得。現在はコンサルティングや自己分析支援をおこなっている
プロフィール詳細