本企画について
「噂や評判に、プロの確実な視点を。」をテーマに企業選びや意思決定の支援をする企画です。漠然とした不安には「確度の高い事実」を、意思決定には「キャリアの専門家による視点」を提供することを目指します。
「業務過多な部署がある」
「たびたびの不祥事発覚」
富士電機について検索すると、そんな口コミ内容も表示されます。マイナス情報だけに不安になりますが、本当のことなのか、客観的な裏付けのない単なる噂話なのかは判然としない面もあります。
この記事では、富士電機への就活を検討している人に向けて、「やばい」「やめとけ」と言われる理由と企業の実態について、できるだけ客観的な情報をもとに解き明かします。プロによるアドバイスも参考にしてみてください。
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1分でわかる富士電機
富士電機とは
創業100年超の歴史を持つ総合重電メーカー。1923年(大正12年)に古河電気工業とドイツのシーメンス社との資本・技術提携により、前身の富士電機製造が誕生。
1990年代以降、環境に優しい新製品や新技術の開発など環境関連事業に注力。2013年には電力を効率的に制御する自社製パワー半導体を開発し、成長著しいデータセンターや電気自動車の需要獲得にも取り組んでいる。
| 会社名 | 富士電機株式会社(FUJI ELECTRIC CO.,LTD.) |
| 従業員数(連結) | 26,955名(2026年3月31日現在) |
| 本社所在地 | 川崎市川崎区 |
| おもな事業 | 安全・安心で持続可能な社会の実現に貢献する主に4つの事業を展開。エネルギー事業は電力インフラを支え、エネルギーの安定供給を実現。 インダストリー事業ではパワーエレクトロニクス応用製品等とIoTを組み合わせ工場の自動化や見える化を推進。半導体事業ではパワー半導体を提供し産業・自動車分野の効率化・省エネを推進。食品流通事業では冷熱技術等にIoTを組み合わせ食の安全・安心を支援。 |
| 売上高(連結) | 1兆2,275億9,500万円(前年同期比9.3%増)(2026年3月期) |
| 経常利益(同) | 1,393億1,000万円(同17.3%増)(同期間) |
| 企業HP | https://www.fujielectric.co.jp/index.html |
| 新卒採用HP | https://www.fujielectric.co.jp/recruit |
富士電機はやばい」と言われる4つの理由|プロが解読
「富士電機はやばい」と言われる4つの理由
なぜ「富士電機はやばい」といわれるのか、できるだけ客観的なデータに基づき理由を考えます。自分にマッチする会社なのかどうか、キャリアコンサルタントのアドバイスも参考に考えてみてください。
①業務過多な部署があるから
富士電機が公表している平均残業時間は18〜20時間程度(※1)と、製造業界の平均14.5時間(※2)と比べると激務と言うほど多くはありませんが、これはあくまで平均値です。
24時間・365日止まることが許されないインフラ系にかかわる総合重電メーカーだけに、部署によっては過酷な現場があっても不思議はありません。
| 対象年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 |
|---|---|---|---|---|---|
| 平均残業時間 | 18.90 | 20.80 | 20.80 | 19.89 | 18.60 |
2019年度以降は、「時間外労働の上限規制」ならびに「年次有給休暇の5日取得義務化」に抵触する社員は「0人」だそうです(※3)。しかし、2019年度以前は現行の上限規制(月間平均80時間超で繁忙期でも100時間まで)を超えた社員がいたという可能性が高いです。
上限規制以内で平均値は短くても、まだ平均値より大幅に長い残業をしている社員がいる可能性は捨てきれないでしょう。
※1 同社HPサステナビリティ・人的資本関連データ
※2 厚労省 毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報
※3 同社HPサステナビリティ・ワークライフバランス推進
プロのアドバイザーはこう分析!インフラを下支えする富士電機が直面する激務のリアル
富士電機含む総合重電メーカーが扱う製品は、発電設備、鉄道、上下水道、工場設備など、24時間365日止めることが許されない社会インフラそのものです。
保守・サービス部門は、これらインフラの安定稼働を最前線で守る使命を担っています。そのため、万が一トラブルや機器の故障が発生した際には、昼夜や休日を問わず、一刻も早い復旧に向けた緊急の駆けつけ対応が求められます。
予定されている定期点検などの通常業務に加え、突発的なトラブル対応が重なることでスケジュールの調整が難しくなり、長時間労働や休日出勤が発生しやすくなります。
社会的意義のある仕事に伴う精神的なプレッシャー
さらに、顧客からの「一刻も早く直してほしい」という強いプレッシャーのなかで、迅速かつ正確に修理をおこなう必要があるため、肉体的な負担だけでなく精神的な重圧も伴うのが実態です。
しかし、人々の当たり前の日常を根幹から支え、顧客の窮地を直接救う社会貢献度の高さは、この職種ならではの大きな誇りとなります。
まずはあなたが受けない方がいい職業を確認してください
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➁評価制度が上司次第だから
人材獲得競争が激化するなかで、多くの会社が公平・公正で納得感のある評価制度と処遇を実現し、優秀な人材を惹きつけようと努力しています。富士電機では、成果実績主義と仕事の価値に応じた処遇を基本軸に改革を進めています(※4)。
技能実務職の一般社員は仕事の習熟度を毎年チェックされ、技能を発揮した成果と合わせて評価を受けます。また企画職の一般社員は職能資格制度を採用し、目標達成度といった成果面だけでなく、そのプロセスも評価に反映されます。
2026年4月からは新たな制度改革も実施し、次世代リーダー育成のため、一般社員の最上位職として「課長補佐」の役職を新設しました。所属グループの労務管理や目標管理といった業務マネジメントの担い役として、ほかの一般社員との明確な報酬差を設定しました(※5)。
※4 同社HPサステナビリティ・人財育成と公正な評価
※5 同社HPニュースリリース
プロのアドバイザーはこう分析!結果がすべてではない? 社員の成長を後押しする評価制度
富士電機の評価制度で特徴的なのは、単に成果を評価するだけではなく、人材育成と一体で運用されている点です。
たとえば、企画職では成果だけでなく行動プロセスも評価対象とし、技能職では仕事の習熟度や改善活動の成果を処遇に反映しています。
また、目標管理制度が整備されており、一方的に評価されるのではなく、成長を支援する考え方が感じられます。
充実した制度に隠れたジレンマ! 富士電機で成長実感と評価がズレる理由
さらに富士電機は、階層別研修や専門研修、DX教育なども充実しており、成長の機会を会社側が用意している点も評価できます。
2026年には「課長補佐職」を新設しており、管理職候補の早期育成にも取り組んでいる点は、大手メーカーのなかでも人材育成が経営課題であるととらえ、継続的に制度改革を進めている企業だと感じます。
一方で、社員数が多く事業領域も幅広いため、制度が充実している反面、部署によって求められる役割やキャリアの描き方に違いがあります。そのため、自分の成長実感と評価が必ずしも一致しないと感じる場面もあるかもしれません。
➂たびたび不祥事が起きるから
2020年に富士電機のIT子会社が、ほかの5社と共に総額240億円以上の架空取引にかかわっていた問題(不正の認識は否定)が発覚しました(※6)。
また、2023年には同じ子会社が、自治体の公文書管理システムに係る電子データを消失する事故を起こしてしまいました(※7)。
さらに、2025年7月には別の子会社の社員が会社の仕事を騙り、工事費名目で金銭をだまし取った詐欺容疑で逮捕されています(※8)。不祥事がたびたび起きていることは否定できません。
内部統制やガバナンスが子会社の現場まで浸透しているかが問われます。
※6 同社HPニュースリリース
※7 同社HPお知らせ
※8 時事ドットコム
アドバイザーからワンポイントアドバイス不祥事が起こる企業には構造的な原因があった
子会社で発生した架空取引やデータ消失、そして社員による詐欺事件など、一見するとそれぞれ異なる事象ですが、巨大な組織構造の中に原因となる温床が潜んでいる可能性もあります。
富士電機に限ったことではありませんが、大企業グループにおいて厳しい業績目標やノルマが課されると、それを達成するために不適切な取引や実体のない売上計上に手を染めてしまう構造的なプレッシャーが生まれがちです。
さらに、親会社から子会社へのガバナンスが形式的なチェックに留まると、専門性の高い現場ほどブラックボックス化しやすく、不正や重大なミスが表面化するまで放置されるリスクをはらんでいます。
企業の価値観が現場に浸透しているかまでチェックしよう
こうした背景を考えると、企業のコンプライアンス体制を評価する際は、本社の華やかな理念だけを確認するのでは不十分です。
子会社や現場の隅々にまで企業倫理やリスク管理が浸透しているか、という実態を見極めることが非常に重要です。
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④採用倍率が上がってしまいそうだから
総合的に見て富士電機は、優良なホワイト企業だと考えられます。業績は好調で、2022年3月期から2026年3月期まで5期連続の増収増益で、売上高も1兆円を超えています(※9)(※10)。社員の平均年収も810万4,009円(2025年3月期:平均年齢44.9歳、平均勤続年数20.5年)となっています(※9)。
| 決算期 | 2022年3月 | 2023年3月 | 2024年3月 | 2025年3月 | 2026年3月 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 910,226 | 1,009,447 | 1,103,214 | 1,123,407 | 1,227,595 |
| 経常利益 | 79,297 | 87,811 | 107,822 | 118,759 | 139,310 |
入社3年後までの離職率は10%前後で(※11)、3人に1人が3年以内に離職する日本の現状(※12)から見ればかなり低く、自己都合離職率が2%以内に収まっている点(※13)も会社の居心地の良さがうかがえます。
| 入社時期 | 2018年入社 | 2019年入社 | 2020年入社 | 2021年入社 | 2022年入社 |
|---|---|---|---|---|---|
| 離職率 | 9.1% | 9.8% | 8.8% | 11.6% | 9.8% |
| 年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 |
|---|---|---|---|---|---|
| 離職率 | 1.3% | 1.8% | 1.9% | 2.0% | 1.9% |
その環境にもかかわらず、採用倍率は男性3.2倍、女性4.3倍(※14)と、いわゆる人気企業というほどの倍率ではありません。一般消費者との接点が少ないホワイト企業に共通する特徴ですが、今後、採用倍率が上昇してしまう可能性があります。
※9 同社HP有価証券報告書2025年3月期
※10 同社HP決算短信2026年3月期
※11 同社HPサステナビリティ・ダイバーシティ推進
※12 厚生労働省「新規学卒者の離職状況」
※13 同社HPサステナビリティ・人的資本関連データ
※14 厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」(富士電機株式会社の企業情報ページより、2026年6月26日確認)
アドバイザーのリアル・アドバイス!倍率が上がりにくいのはBtoBの巨大メーカーであることが関係する
倍率が高くならない最大の理由は、「消費者向け知名度」と「実際の事業規模」の間に生じるギャップです。
就活をする人の多くは日常生活で目にするBtoC企業にエントリーを集中させます。
一方で、世界的なシェアを誇る企業であっても、素材や重電メーカーといったBtoB領域が主力のメーカーは一般からの認知度が低く、規模に対して応募者が殺到しにくい構造があります。
さらに、これらのBtoB大手企業は事業規模に比例して、毎年数百名という巨大な採用枠を持っています。富士電機に関しても毎年250名程度採用されています。応募者が爆発的に増えない中で採用枠が大きいため、実質的な倍率は低く抑えられます。
現場のリアルを知ったうえで価値を感じるかを考えよう
また、社会インフラを支える保守や施工管理など、泥臭い現場業務が含まれることも、華やかな仕事を好む層から敬遠される要因です。
だからこそ、表面的なイメージに流されず、社会を根底から支える仕事の価値を理解できる人にとっては非常に優良な企業と言えます。
富士電機は業績好調で各種改革にも期待ができる
優秀な人材を獲得するため各企業はワークライフバランスの強化や待遇改善などに取り組んでおり、富士電機も例外ではありません。時間外労働の短縮化や評価制度の見直しなどの改革を積極的に進めています。「これからもっと良い会社になる」と期待したいところです。
プロのアドバイザーはこう分析!ニーズの高い事業と働き方改革で将来性を高めている
富士電機の将来性については、比較的明るい見通しを持てる企業だと感じています。その理由は、電力インフラ、工場のFA化、省エネルギー技術、パワー半導体など、今後も需要が期待できる事業を展開しているためです。
特に近年は、データセンターや電気自動車の普及に伴い、電力を効率的に制御する技術へのニーズが高まっており、富士電機が強みを持つ分野には追い風が続くのではないでしょうか。
また、労働環境の面でも、残業時間の管理や評価制度の見直し、人材育成への投資など、改善に向けた取り組みを継続しています。
負荷のかかる泥臭い経験が社会を支える技術者を強くする
もちろん、トラブル対応や納期対応などで負荷がかかる部署はあるでしょう。私自身もメーカーで働いていましたが、設備トラブルや品質問題は予定通りには起きてくれません。
そうした場面で顧客や現場と向き合う大変さはありますが、その経験が成長につながることも少なくありません。
派手さよりも、社会を支える技術や製品に携わりたい人にとって、富士電機は今後も有力な選択肢の一つになるのではないでしょうか。
執筆・編集 PORTキャリア編集部
> コンテンツポリシー記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi






3名のアドバイザーがこの記事にコメントしました
キャリアコンサルタント/ブルーバード合同会社代表取締役
Junichi Suzuki〇1982年宮城県⽣まれ。⼤学卒業後、上場企業の営業・管理部⾨を経験し、家業を継ぐ。2017年にブルーバードを設⽴し、企業の経営支援などを展開する
プロフィール詳細キャリアコンサルタント/性格応用心理士1級
Minoru Kumamoto〇就職・転職サイト「職りんく」運営者。これまで500名以上のキャリア相談を受けた実績。応募書類や採用面接の対策支援をする他、自己分析の考え方セミナーを実施
プロフィール詳細国家資格キャリアコンサルタント
Takuya Takahashi〇人材系スタートアップ企業で採用支援・D&I推進に従事。その後、SIer企業でエンジニア兼研修講師として新人育成に参画。現在はNPOで若者の居場所支援やケアに取り組む
プロフィール詳細