「逆質問がないと面接は落ちる」って本当? 人事経験者が語る面接官の心理

この記事の執筆者 人事経験もあるキャリアコンサルタントが書き下ろしました
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高尾 有沙
国家資格キャリアコンサルタント
Arisa Takao〇第二新卒を中心にキャリア相談を手掛け、異業種への転職をサポートする。管理職向けの1on1やコンサルティング業界を目指す新卒学生の支援など年齢や経歴にとらわれない支援が持ち味。コンサルタント、マーケティング、人事、広報、営業を経て、現在はベンチャー企業のコミュニティマネージャーとしても活動。個人でもキャリア相談やコミュニティ運営、メディアへの寄稿をおこなっている。

はじめに:逆質問の時間を「アピール合戦」にするな

「何か質問はありますか?」

面接の終盤に必ずやってくるこの時間。

就活サイトを開けば「逆質問は自己アピールのチャンス!」「質問がないと熱意がないとみなされて落ちる!」といった強迫観念めいたアドバイスが並んでいます。

その結果多くの学生が、ネットで拾ってきたようなコピペ質問を繰り出すことになります。たとえば「御社の今後の海外展開における課題は何ですか?」「御社の中長期的な展望はどんなものですか?」といった、身の丈に合わない壮大な質問です。

(そういった事例を、人事としても、キャリアコンサルタントとしても、よく聞きます。)

しかし、結論から言うと「逆質問がない=熱意がないから落ちる」というのは、かなり解像度の低い一般論です。

私はこれまで、キャリアコンサルタントとして学生さんの相談に乗り、また人事としても面接にかかわってきました。その立場から見れば、中身のないコピペ質問をされるくらいなら、「現時点では特にありません」と堂々と言ってくれたほうが、よほど好印象です

今回は、既存の就活バイブルが教えてくれない「逆質問の時間の本当の設計意図」と、面接官の心をグッとつかむためのアプローチについてお話しします。

本コラムのコンセプト

生成AIによる一般的な情報がすぐに手に入る時代。就活生や求職者にいま求められているのは、経験や体験に基づく血の通ったアドバイスではないか。そうした読者のニーズに応えるために、編集部がテーマを選定し、参画するキャリアコンサルタントらに寄稿いただくコラム企画を始めました。自身の経験や実アドバイスをベースに、綺麗事を一切排除した本音の就活対策をお届けします。

そもそも、企業はなぜ「逆質問」の時間を設けるのか?

逆質問の時間が設けられる理由を、逆質問の正体と人事の本音という観点からお伝えします。

「評価する/される」から「対等な対話」への切り替えスイッチ

面接の大部分は、企業が学生を「評価する」時間です。

もちろん、就活というのは本来対等に選び合うものではあるものの、選考という形式上どうしても「企業が評価する」というベクトルが主になることを避けられない側面はあります。その結果、学生側はどうしても受け身になり、緊張感も高まります。

しかし、企業が本当にしたいことは「一方的な品定め」ではなく、自社という組織とあなたという固有の存在がガチッと噛み合うかどうかの「マッチング」です。

そのため、最後の数分間に逆質問を設けることで、面接のパワーバランスを極力対等(5:5)に戻そうとしているのです

「ここからはあなたの時間です。気になることがあれば、対等な立場で何でも聞いてくださいね」という、企業側からの歩み寄りのサイン。それが逆質問の正体です。

人事の本音:ネットのコピペ質問は一瞬で見抜きます

しかし、多くの学生はこの時間を「最後の減点回避テスト」だと勘違いしています。

「何か素晴らしい質問をして、有能だと思われなきゃいけない」と焦るあまりに、企業のHPを見れば載っているようなニュースを無理やり引っ張ってきて、小難しい質問をしてしまうのです。

厳しい現実をお伝えすると、人事はそうした「借り物の質問」を何百回と聞き飽きています。 質問の言葉づらがどれだけ立派でも、そこに「あなた自身の好奇心や気持ち」が乗っていなければ、プロの目には一瞬で「あ、ネットのコピペだな」とバレてしまいます。

形骸化したアピールは、むしろあなたの印象の解像度を下げてしまう可能性がある、ということです。

(編集部追記)もっと人事の本音を知りたい人は以下の記事からキャリアコンサルタント67名によるアンケート結果をチェックしてみてください。
面接で聞いてはいけない逆質問7選! ミスを避けるコツとOK例文も

「逆質問をしないと落ちる」の嘘と本当

逆質問なしで受かる人の特徴:面接内で対話を完結させている

実際に、私の周りでも「最後の逆質問は特にありません」と答えて、トップ企業の内定をかっさらっていく学生はたくさんいます。

彼らに共通しているのは、面接の途中段階ですでに濃密な対話を完結させているという点です。

たとえば、面接官から「学生時代に頑張ったこと」を聞かれている際に、「私は当時こう考えて行動していたのですが、御社の現場でもこういったアプローチは通用するのでしょうか?」と返すなど、面接のキャッチボールのなかで自然に質問を消化しています。

このように、面接全体が双方向のコミュニケーションになっていれば、最後に「何か質問は?」と聞かれて「これまでの対話のなかで、私が知りたかったことはすべて解像度高く理解できましたので、現時点ではこれ以上ありません」と答えるのは、きわめて自然で論理的なことです

逆に、無理やり絞り出した質問で「落ちる」パターン

最悪なのは、「ない」と言ったら落ちる恐怖から、面接の流れを無視した質問をねじ込むケースです。

たとえば、先ほどまでお互いの価値観について熱く語り合っていたのに、最後に「御社の財務諸表のここが気になったのですが……」と突然毛色の違う質問が飛び出すこと。

これは面接官から見れば、「会話の文脈を読めない人」「対話ではなく、自分が用意してきたスクリプトを消化したいだけの人」という評価になります。結果として落とされる要因になってしまう可能性があります。

(編集部追記)逆質問がない人に対する印象に関する就活QAは以下からチェックしてみてください。
面接で逆質問がないとやはり落ちますか?

劇的に刺さる「You」を主語にした逆質問のアプローチ

では、面接官が思わず前のめりになり、「この人と一緒に働きたい」と感じるような良い質問とはどのようなものでしょうか。

私がキャリア面談でいつも伝えている、究極のアプローチがあります。

それは、「会社(It)」に聞くのをやめて「目の前のあなた(You)」を主語にして聞く、ということです

ネットに転がっている質問は「It」が主語のケースが多い

というのも、学生がやりがちな失敗質問は、すべて「会社(It)」に向けられています。

「It」を主語にしてしまっている質問例

  • 御社(It)の強みは何ですか?
  • 御社(It)の今後のビジョンを教えてください

これらは、経営企画の資料を読めば書いてある最大公約数の情報しか引き出せません。面接官も、会社の公式見解をロボットのように答えるしかなくなり、対話は死んでしまいます

そもそも、ネットで調べたら載っている以上のことは、人事の口からはお伝えできないことも多いのです。

「You」を主語にすると、唯一無二の情報が引き出せる

そうではなく、あなたの目の前に座っている、その面接官という「一人の人間(You)」にフォーカスするのです。

「You」を主語にした質問例

  • 〇〇さん(You)が、この会社でこれまで一番「やった!」と達成感を感じた瞬間はどのようなときですか?
  • 〇〇さん(You)の視点から見て、入社1年目で頭角を現す人に共通する「OS(思考の癖)」はどのようなものだと思いますか?
  • 今日、〇〇さん(You)とお話ししてすごく楽しかったのですが、〇〇さんが一緒に働いていて一番刺激を受けるのはどんなメンバーですか?
  • 〇〇さん(You)はとても外向的で視点の高い方で素敵だなと思ったのですが、実際現場にはどんな性格や気質のメンバーが多いのでしょうか?

主語を「You(あなた)」に変えた瞬間、面接官は「会社の代表」という仮面を脱ぎ、「一人のビジネスパーソン」として、自分のリアルな経験や本音(一次情報)を語ってくれます

一般的に人間は、自分の経験や価値観について興味を持たれて嫌な気持ちになることはありません。

この「You」を主語にした質問は、面接官の感情を動かし、「この学生との会話は心地良かったな、もっと話したいな」というポジティブな印象を残せます。

どうしても逆質問が思い浮かばないときの「伝え方」

とはいえ、どれだけ準備をしても、面接が完璧にスムーズに進み、本当に逆質問が思い浮かばない瞬間はあると思います。そのときは、無理に搾り出す必要はありません。

ただし、「特にありません」の一言だけで終わらせるのは、少しもったいない

そんなときは、「今日の面接を通じて、自分のなかで何が解決したのか」をポジティブに伝えてみてください。

おすすめの伝え方の例

本日の面接で、〇〇さんが対話を通じてガクチカから「思考のプロセス」を丁寧に引き出してくださいました。また御社の現場でのリアルな働き方についてもお話しいただけたので、現時点で気になっていた疑問はすべてクリアになりました。

質問というより感想になってしまうのですが、今日のお話を通じて、御社の「不確実性を楽しむ文化」が自分のOSにすごくフィットしていると改めて確信できました。本当にありがとうございました。

「ない」という事実を、「今日のあなたとの丁寧な対話のおかげで、解像度が上がったから必要なくなった」というポジティブな意味づけに変換して差し出す

これだけでも、あなたのメタ認知能力(客観的に状況をとらえる力)と素直さが面接官に伝わり、最高の締めくくりになります。

最後に:面接の最後の1秒まで、「自分の言葉」で語り合う

就活サイトに溢れる「逆質問のテクニック」に惑わされないでください。何度も言うように、面接はあなたを品定めするテストではなく、あなたと企業が未来を一緒に作れるかを探る、地続きの「会話」なのです

最後の最後まで、借り物の言葉や、AIが作った無難な質問で自分を武装する必要はありません。

目の前にいる面接官は、どんな生き方をして、どんな仕事に命を燃やしているのか。その「一人の人間」に対する純粋な好奇心を、「You」という主語に乗せてぶつけてみてください。

その1分間の本音のキャッチボールこそが、あなたを「その他大勢の就活生」から、「打てば響く、おもしろいビジネスパーソン」へと引き上げる、最強の逆質問になるはずです。

執筆・編集 PORTキャリア編集部

明日から使える就活ノウハウ情報をテーマに、履歴書・志望動機といった書類の作成方法や面接やグループワークなどの選考対策の方法など、多様な選択肢や答えを提示することで、一人ひとりの就活生の意思決定に役立つことを目指しています。 国家資格を保有するキャリアコンサルタントや、現役キャリアアドバイザーら専門家監修のもと、最高品質の記事を配信しています。

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記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi

高校卒業後、航空自衛隊に入隊。4年間の在籍後、22歳で都内の大学に入学し、心理学・教育学を学ぶ。卒業後は人材サービスを展開するパソナで、人材派遣営業やグローバル人材の採用支援、女性活躍推進事業に従事。NPO(非営利団体)での勤務を経て、「PORTキャリア」を運営するポートに入社。キャリアアドバイザーとして年間400人と面談し、延べ2500人にも及ぶ学生を支援。2020年、厚生労働大臣認定のキャリアコンサルタント養成講習であるGCDF-Japan(キャリアカウンセラートレーニングプログラム)を修了

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