保健師とは人々の健康や衛生面を管理する仕事です。医療の道を志し、看護師免許を持つ人の中には、保健師への就職を視野に入れている人もいるのではないでしょうか。
しかし保健師のような専門的な仕事では、魅力的な志望動機でライバルをリードできなければ、保健師の資格は取れたとしても思い描いていたキャリアを歩めないかもしれません。
そこでこの記事では、キャリアコンサルタントの柴田さん、平井さん、板谷さんとともに、魅力的な保健師の志望動機の書き方をわかりやすく解説します。保健師の試験勉強ばかりでまだ対策ができていない人や、志望動機の書き方に自信がない人は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
保健師の志望動機は「健康課題にどのように貢献できるか」を明確にすべし
保健師は日常生活のあらゆる場面で人々の健康を支えています。保健師が取り組むべきことがたくさんあるからこそ、志望動機では健康課題に対する考え方を具体的に示すことが大切なのです。
まずこの記事では、保健師の志望動機を書くうえでやっておきたい3つの準備について解説します。いきなり書き始めるのではなく、事前にどんなことをすべきか確認したうえで作成に取り掛かってくださいね。
次に、現代社会が抱える5つの健康課題と保健師に求められていることについて解説します。志望動機で具体的な健康課題への意識をアピールするためにも、どんな取り組みが必要となるのか理解しましょう。
最後は、保健師の志望動機で説得力を出すための方法について解説します。自分の志望動機で人事を納得させられるか不安な人や、説得力のある伝え方を磨きたい人は参考にして、保健師としての自分を最大限にアピールできる志望動機を書きましょう。
いきなり書くのはNG! 保健師の志望動機を作る前にやるべき3つの準備
保健師の志望動機を作る前にやるべき3つの準備
- 志望する就職先での具体的な保健師業務を理解する
- 保健師として取り組むべき健康課題について理解する
- 自己分析で志望動機に必要なアピールポイントを明確にする
どんな仕事の志望動機を書くにしても、いきなり書き始めてしまっては、きれいにまとめることが難しく、アピールすべきポイントを見落としてしまうなどのリスクにつながります。
そのため、ここからは保健師の志望動機を作るときにまずやるべき3つの準備について解説します。なんとなく志望動機を書き始めようとしている人は、3つの準備を完了させたうえで志望動機の作成に取り掛かりましょう。
保健師に限らずどの資格や職種もそうですが、その仕事の本来の責務と現在の社会的なニーズは必ずしも一致しているとは限りません。
現在の保健師に何が求められているのかをよく調べ、また志望先での役割についても理解したうえで志望動機を作成しましょう。
①志望する就職先での具体的な保健師業務を理解する
志望動機とは「なぜほかの仕事ではなく保健師として働きたいのか」を明確にするためのものです。そのため、仕事内容がわからないまま志望動機を書いても、具体的な働き方がイメージできず、志望動機の本来の目的を果たせません。
この記事を読んでいる人の多くは、すでに保健師資格を取得するための勉強で、ある程度の職務内容は頭に入っているでしょう。しかし、保健師は勤め先の機関や都道府県によっても、おもな業務内容や一日のスケジュールが異なります。
志望先の機関ではやっていない業務への興味や意欲を示してしまうと「うちとは合っていない」と判断されてしまいかねないため、志望動機を書く時点でしっかりおさらいしておきましょう。
②保健師として取り組むべき健康課題について理解する
保健師は、病気にかかってしまった人が回復できるようにサポートする看護師とは異なり、健康な人やまだ病気になっていない人が健康を維持できるようサポートするのが仕事です。
そのため、保健師は世の中の健康問題について常に課題意識を持っておかなければ、病気の予防や未病に対して迅速に対処することができません。
入職後に取り組むべき健康課題を見据えられていることが志望動機で示せれば、貢献意欲の高さをアピールすることにつながります。保健師の志望動機を書く際には、健康課題についても事前に研究し理解を深めておきましょう。
未病
発病には至っていないが、軽い症状があったり健康的な状態から遠ざかっている状態のこと
まずはあなたが受けない方がいい職業を確認してください
・楽しく働ける仕事がわからない人
・時間をかけずに自己分析をしたい人
強み・弱みを理解し、自分がどんな仕事に適性があるのか診断してみましょう。
③自己分析で志望動機に必要なアピールポイントを明確にする
志望動機とは「その就職先で働きたい理由」を伝えるものですが、ただそれだけを伝えても、自分の主張に過ぎず、人事が「この人を採用したい」と思う決め手にはつながりません。
そのため志望動機を書く前には、就職先への理解を深めると同時に、自己分析で自分のアピール要素を見つけることも大切です。
「保健師として自分はどのように取り組めるのか」「保健師という仕事にどのくらい熱意があるのか」などを自己分析で洗い出し、魅力的な志望動機を書く準備を完了させましょう。
選考前には「この仕事では自分のどんな良いところを活かせるのか」を説明できるようにしておきたいです。
そのためには自己分析だけでは足りず、仕事分析もセットで必要となります。自己分析と仕事分析を並行しておこないながら、志望動機を深めてみましょう。
まずはおさらい! 保健師に関する基本情報
前述の通り保健師の志望動機を書く前にはまず、保健師として働くイメージを膨らませ、志望する機関と自分とのマッチ度を理解しておかなければいけません。そのためには、保健師の基本的な仕事内容や勤務先の特徴について再度理解を深めておくことが大切です。
ここからは、保健師のおもな就職先や仕事内容について解説していきます。自分が志望する保健師の種類や、具体的な仕事内容をおさらいし、保健師になりたい気持ちも再確認しておきましょう。
①保健師の種類とおもな就職先
保健師の種類には、行政保健師・病院保健師・学校保健師・産業保健師の4つに分けられ、どの就職先に勤めるかによって、仕事の内容や誰を支援するのかが変わってきます。
就職先の割合として、最も多いのは行政保健師です。厚生労働省の令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況によると、行政保健師の就職先である保健所、都道府県、市区町村の3つの就業保健師の数は、全体の70%以上を占めていることがわかります。
行政保健師の場合は、各機関が属する都道府県、市区町村の住民の健康支援が主となるため、老若男女多くの人とかかわる機会が多いでしょう。
ほかにも、産業保健師であれば企業の社員の、病院保健師では患者や医師、看護師の健康をサポートします。
保健師の種類 | おもな就職先 |
---|---|
行政保健師 | 各都道府県、各市区町村の本庁 |
保健所 | |
保健センター | |
病院保健師 | 医療機関 |
学校保健師 | 学校、大学 |
研究施設 | |
産業保健師 | 一般企業 |
学校保健師は「学校や保健室に勤務する保健師」です。必ずしも保健室に駐在しているとは限りません。
一方で養護教諭は、「保健室の先生」です。保健室に駐在してけがの手当てや生徒の相談に乗ったり、学校によっては保健の授業を受け持つこともあります。
②保健師の仕事内容
保健師の仕事内容には以下のようなものがあり、基本的には入職先の職員や地域の人に対して健康指導や健診手続きなどをおこないます。
保健師のおもな仕事内容
- 保健指導
- 入職先職員の健康管理、健診手続き
- 窓口での健康相談
- 訪問による保健指導
- 病気の予防対策
- 感染症の状況調査や分析
保健師の中でも特に多くの人が属する行政保健師では、地域住民への保健指導業務の一つである、訪問による指導があります。乳幼児のいる家庭や介護を必要とする高齢者や身体障害者の家を訪問し、介護や育児に関するアドバイスをおこなうのです。
このように、保健師はマニュアルに従った保健指導や健診手続きなどの業務だけではなく、保健師として対峙する人それぞれの状況を観察し、その人に合った支援を見極めることも求められています。
- 保健師の仕事で特に大変な業務は何ですか?
保健師は個人に合わせて地道な指導をしなければいけない
保健指導は幅広い知識を一人ひとりに併せておこなうので、保健師の仕事の中でも大変な業務といえます。
特に生活習慣への指導は誰でもすぐに改善できるものではないため、地道に寄り添う行為を継続する必要があります。
中には素直に従わず、反抗する人も少なくありません。また、高齢者や何らかの疾患で意思疎通が難しい人を相手にすることもあります。
その相手にも伝わるように工夫をし、健康のための指導をするのは一筋縄ではいかないことも多いでしょう。
かんたん3分!受けない方がいい職種がわかる適職診断
就活では自分に適性がある仕事を選ぶ事が大事です。適性が低い仕事に就職すると、イメージとのギャップから早期の退職に繋がってしまうリスクがあります。
そこで活用したいのが「適職診断」です。簡単な質問に答えるだけで、あなたの強み・弱みを分析し、適性が高い職業・低い職業を診断できます。
・楽しく働ける仕事がわからない人
・時間をかけずに自己分析をしたい人
強み・弱みを理解し、自分がどんな仕事に適性があるのか診断してみましょう。
保健師に求められることとは? 志望動機の題材になり得る5つの健康課題
志望動機の題材になり得る5つの健康課題
記事の最初で、保健師の志望動機には健康問題に対する課題意識や貢献したいという気持ちを示すことが重要と解説してきました。しかし、どのような健康問題に着目すれば、志望動機に活かせるのかわからない人もいるのではないでしょうか。
そこでここからは、志望動機を書く際の題材にもなり得る健康課題5つを詳しく解説していきます。今の日本にはどのような問題があり、保健師にどんな対応が求められているかを理解して、自分なりの考えを明確にして志望動機に盛り込みましょう。
①生活習慣病対策
生活習慣病
食事や運動、喫煙、飲酒などの生活習慣が発症の要因となる疾患の総称。がん・脳卒中・高血圧・脂質異常症・心筋梗塞・狭心症・高尿酸血症・糖尿病・歯周病・アルコール性肝疾患などが該当する
上記の解説の通り、生活習慣病にはあらゆる病気が該当し、誰にでもなり得る病気です。しかし、ほとんどが自覚症状なく進行し、気づかないうちに重症化してしまうケースも多くあります。
保健師には、生活のあらゆる側面から病気の要因を見つけ、予防や改善の呼びかけや正しい知識を周知させることが求められます。
志望動機では「就職先でかかわる人々の生活習慣に対してどんな保健指導をしていきたいのか」「生活習慣病のどの病気に対して特に課題だと感じているのか」などを明確にすることで、人々にとって身近な問題に対する課題意識の強さをアピールできるでしょう。
②児童虐待対策
保健師が未然に防ごうとしているものは身体的な病気だけではなく、精神的なストレスや病による犯罪行為なども含まれます。中でも問題視されているのが児童虐待です。
近年は核家族化が進んだことで近隣の住民との関係が希薄になっていて、子育てをする親の精神的な負担も大きくなっています。令和5年版犯罪白書によると児童虐待に関する相談件数は年々増加傾向にあり、2021年度は過去最高の20万7,660件でした。
保健師は、身近にいる医療従事者としてこうした問題に対し、予防や早期発見、解決に向けた取り組みが求められています。
志望動機で取り上げる場合には、ただ「子どもを守りたい」という抽象的な表現ではなく、子どもやその親に対して「保健師としてどのように接していきたいか」「具体的にどんな取り組みが必要だと思っているか」など、自分なりの考えを示すことがポイントです。
- 保健師は児童相談所とどのような関係性なのですか?
保健師と児童相談所が連携することで問題の早期発見と迅速な対処ができる
保健師は、地域での健診や訪問活動を通じて、児童やその家族と直接接触する機会が多いという特徴があります。
だからこそ、虐待の兆候をいち早く見つけ出し、必要に応じて児童相談所へ情報提供し対応策について相談することができるわけです。
また、児童相談所が虐待の対応に当たる際には、児童相談所からの依頼を受けて保健師が虐待された児童やその家族に対する健康面での支援をおこなうこともあります。
保健師は児童相談所と密接に連携し、児童とその家族への健康支援を通じて虐待の防止や対応をおこなっているのです。
③身体障害者・高齢者のサポート
日本は、65歳以上の高齢者が人口の21%以上を占める超高齢社会であるため、高齢者へのサポートも保健師の重要な役割の一つです。
特に、一人暮らしの高齢者の数も年々増加していて、令和5年版高齢社会白書によると、65歳以上の男女の人口において一人暮らしをしている人の割合は男性が15%、女性は22.1%となっています。
ほかにも、高齢者と同じく身体障害者も日常生活において周囲のサポートが必要な場合があります。保健師には、このような高齢者や身体障害者の状況を把握し、住みやすい環境作りや支援をおこなうことが求められているのです。
保健師として志望動機の中でこの問題を取り上げる場合には「年々増加する一人暮らしの高齢者にどんな支援がしたいか」「身体障害者が住みやすい環境とはどんなものか」などの考えを具体的に示すことで保健師としての貢献意欲が伝わります。
まずはあなたが受けない方がいい職業を確認してください
就活では自分のやりたいことはもちろん、そのなかで適性ある仕事を選ぶ事が大事です。適性が低い仕事に就職すると、イメージとのギャップから早期退職に繋がってしまうリスクが高く、適職の理解が重要です。
そこで活用したいのが「適職診断」です。質問に答えるだけで、あなたの強みや性格を分析し、適性が高い職業・低い職業を診断できます。
まずは強みを理解し、自分がどの職業で活躍できるか診断してみましょう。
・楽しく働ける仕事がわからない人
・時間をかけずに自己分析をしたい人
④感染症対策
保健師として迅速な対応が求められることとして感染症対策が挙げられます。中でも、新型コロナウイルス感染症は2020年頃から日本でも流行し、大きな問題となりました。
こうした感染症の流行に対して、全国各地の本庁や保健所、保健センターに所属する保健師には、相談や問い合わせの対応、感染検査やワクチン接種の手続きなどあらゆる対応が求められます。
また、新型コロナウイルス感染症や後天性免疫不全症候群(HIV)など、世間でも大きな混乱を招く感染症では、誤った認識や対処によって感染が拡大したり差別につながるケースも少なくありません。
そのため、感染症流行時は迅速な疫学調査をおこない、正しい知識や予防方法を周知することも保健師の重要な役割となります。
志望動機では、こうした未曾有の事態が起きた際に「自分なら保健師としてどんな行動が取れるか」を明確にすることができれば、自分の保健師としての活躍をアピールできる内容になるでしょう。
新型コロナウイルス感染症まん延時、保健師の疫学調査の具体的な取り組みは、保健所への業務応援が中心で、電話対応などの問い合わせを通して集団クラスターを発見することが目的です。
問い合わせなどから集団クラスターが発生しているかを見つけだし、早期に対処できる状況を維持することは、保健師の重要な役割といえます。
⑤災害時の健康管理対策
保健師とは、人々の健康をサポートすることが仕事です。そのため、日常生活での保健指導はもちろんですが、災害時などの健康管理が難しい状況でも保健師のサポートが必要とされています。
直近であれば、2024年1月1日の能登半島地震発生時には、石川県からの要請を受け、全国各地の保健師が被災地に派遣されました。
災害のような緊急時には、衛生面や健康などの維持が難しいうえに、一度体調を崩してしまってもすぐに治療ができない場合も多いです。保健師は、こうした緊急時の健康指導や、衛生状況の調査、報告をおこなうことで、その後の迅速な救援活動につなげています。
志望動機で災害時の保健師活動を題材にする場合には、緊急時の健康や衛生面の管理の難しさを理解したうえで「自分が保健師としてどんなサポートがしたいか」を具体的に示しましょう。予期せぬ事態でも自ら考えて行動できる姿勢をアピールすることが重要です。
キャリアコンサルタントに聞く! 保健師の動向や取り組むべき健康課題とは
ここまで、現代社会における5つの健康課題に関して解説してきましたが、こうした問題は時代の移り変わりとともに変化していくものであり、保健師はそうした変化に対応しながら健康支援をおこなわなければいけません。
そこでここからは、あらゆる業界への就職をサポートしているキャリアコンサルタントの柴田さんに、保健師の今後の動向や取り組むべき健康課題について詳しく解説してもらいます。
柴田さんの解説を参考にして、保健師全体でどのようなことが求められているのかを改めて考えてみましょう。
アドバイザーコメント
柴田 登子
プロフィールを見るひきこもり問題でも保健師からの適切な対応が求められている
実は私は保健師とはかかわりを多く持っています。とある公共施設でひきこもりの人などの就職支援面談を担当しているのですが、ときどき保健所の保健師に伴われて来所する人がいます。
ひきこもりの対応についてはまだまだ社会的な整備が充分なされておらず、本人も親もどこに相談すれば良いのかわからないため、まずは保健所を訪問するケースが多いのだそうです。
中には就労は難しい人もいるようですが、そのような判断を医師や保健師がおこない、就労可能と判断すれば、保健師がひきこもりの人のさまざまな就労をサポートする機関につなぎます。
誰かの人生に大きくかかわる可能性のある仕事という意識を持とう
精神疾患が軽度であれば地域若者サポートステーション(サポステ)へ、障害の可能性が大きければ就労移行支援施設につなぐ、というように一人ひとりをどの機関につなげれば確実に就労につながるのかを適切に判断しなければ、ひきこもりの人の社会復帰が遅れてしまうのです。
特に若年層の1年2年の遅れはその後の人生を大きく左右してしまうので、慎重におこなわなければなりません。
ひきこもり問題は今後ますます加速していくと思われます。保健師としての誰かの人生に大きくかかわる可能性のある取り組みについても、よく知っておいてほしいと思いますね。
差がつくポイント! 保健師の志望動機に説得力を出すための3つの自己分析
志望動機では、ただ「保健師になりたい」という願望を示すだけでは、応募先の人事にとって「あなたを採用するメリット」を提示できないため、魅力的な志望動機とはいえません。
人事にとって自分が採用すべき人材であることを証明するには、自分自身への理解を深めたうえで、自分の考え方や人間性をアピールすることが大切です。
そこでここからは、志望動機に説得力を出し、より魅力的に伝えるためにやっておきたい3つの自己分析について解説します。どういった視点で自己分析を進めれば良いのかわからない人は、ぜひ参考にしてみてください。
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自己分析は就活の明暗を分ける重要なポイント。自己分析をするメリットや自己分析のやり方、注意点などをキャリアコンサルタントが解説します。自分に合った自己分析方法を見つけて選考や企業選びに活かしましょう。
記事を読む
①なぜ保健師になりたいのかを明確にする
保健師を採用する人事の担当者は、志望動機の中で「保健師という仕事への熱意」がどの程度あるのかを見ようとしています。
なぜなら、保健師はあらゆる健康課題の解決に取り組まなければならない大変な仕事なため、「健康課題を解決したい」という貢献意欲や、人や社会のために働くことへの責任感がなければ働き続けることが難しい仕事だからです。
そのため自己分析では、自分の中の保健師になりたい理由や思いを具体的に見つけることがポイントとなります。
たとえば、保健師になりたいという自分自身に「なぜいろいろな仕事がある中で保健師を選んだのか」「なぜ看護師になるという道ではなく保健師を選んだのか」など、さまざまな角度から質問を投げかけてみましょう。
そうすることで「病院に来てから支援するのではなく、日常的なサポートであらゆる問題の早期発見に貢献できるから」のように、あらゆる視点で保健師について深掘りされた志望理由を見つけることができます。
②応募先で働きたいと思うに至った経緯を整理する
志望動機は「保健師として働きたい」という理由を述べつつ、自分がどのような人間なのかをアピールすることが目的です。そのため、自己分析で「保健師として働きたい」と考えたきっかけ、つまりは自分の過去の経験を明確にしておくことで、自分の人間性をアピールすることにつながります。
自己分析でエピソードを掘り下げるときのポイントは、その経験の中での自分の考えや行動、結果や学びまで具体的に振り返ることです。
たとえば、ただ「自分が病気になった経験から保健師を目指そうと思った」というエピソードでは抽象的過ぎて、あなただけの体験としての説得力はありません。
この抽象的なエピソードに対し、自分が患者になったことでの気づきや、当時の人とのかかわりや自分の行動によって得られた結果などまで振り返ってみましょう。
そうすることで「自分の病気の原因が生活習慣によるものだったと知り、健康の大切さやありがたみを痛感した。その後、献身的にアドバイスしてくれた保健師さんの影響で、自分も人々の健康を支えたいという思いが強くなり保健師を目指した」のような具体性の高いエピソードになります。
- 保健師を目指すきっかけとなったエピソードがいろいろありすぎて選べません……。
まずは全て書き出してから基準に沿って有効なエピソードを選ぼう
全てのエピソードについてまずは言葉にして書き出してみましょう。
そのうえで、自分自身に大きな影響を与えているものか、将来のキャリアビジョンに合致しているか、独自の体験かどうかを踏まえて、どのエピソードがふさわしいかを検討してみてください。
必ずしも一つに絞る必要はなく、複数のエピソードを自己紹介や志望動機などと関連付けて用意しておくのも有効ですよ。
③保健師として特に注力したい健康問題について考えをまとめる
前述の通り、保健師には難しい健康課題を改善・解決することが求められています。保健師を目指そうとしている人の多くは、そうした問題解決への強い意欲を持っています。
そのため、健康問題に対して深く理解し、解決に向けてどう自分が貢献したいのかを具体的に示した志望動機にしなければ、ほかの熱意あるライバルに見劣りしてしまうでしょう。
そこで自己分析では、自分の価値観や過去の経験をもとに、自分はどんな健康課題に関心があるのかを掘り下げ、保健師としてどんなことが求められるかを考えてみることがポイントです。
皆さんはこれまで保健師を目指すにあたり、さまざまな健康課題についての実態や保健師の取り組み事例を学んできたはずです。実際に、身近なところで健康問題について目の当たりにした経験がある人もいると思います。
その中で、最も自分が衝撃を受けたり、解決への意欲がかき立てられた健康課題について思い返してみてください。そして、その衝撃を受けた健康課題に対し、保健師としての目線でどうすべきかを考えることで、自分が保健師としてどんな健康課題に注力したいのかが見えてくるでしょう。
- 自分の保健師としての能力に自信が持てず、課題の改善に貢献できるかわからないときはどうすれば良いですか?
今以上に保健師という仕事への理解を深めてみよう
もう一度、仕事研究に取り組んでみましょう。目標は、保健師の通常の一日、逆に緊急時、たとえば災害時やパンデミック時の一日を、具体的にイメージできることです。
学校や保健所に実際の仕事を見学させてもらえないか、相談しても良いでしょう。
実際に話を聴かせてもらえる機会があるとより参考になると思います。保健師の仕事のイメージが持てれば持てるほど、自分の良いところが活かせる点を見つけやすくなりますよ。
保健師が取り組む健康課題は多岐にわたるからこそ具体的な貢献意欲が鍵
保健師は、乳幼児から高齢者などあらゆる世代の人の健康を支えるための仕事です。しかし、健康と一口にいっても多くの解決すべき課題があり、人によっても抱えている健康課題は異なります。
求められることがたくさんあるからこそ、保健師の志望動機では「自分は保健師としてどんな健康課題に取り組むのか」という部分を明確にすることが大切です。
そうすることで、保健師としての貢献意欲が伝わるだけでなく、入職後に自分が目指すべき目標や将来像が具体的になり、説得力の高い志望動機になります。
いざ作成へ! 保健師の志望動機で最大限の貢献意欲が伝わる3ステップ
保健師の志望動機で最大限の貢献意欲が伝わる3ステップ
- 結論としてなぜ保健師を志望するのかを最初に述べる
- 結論の根拠となるエピソードを述べる
- 応募先機関においてどのように貢献していきたいのか述べる
志望動機を作成するうえで、最後にとても重要となるのは伝え方です。どんなに魅力的な志望理由や貢献意欲があっても、きちんと手順を踏んで伝えることができなければ、人事に自分の魅力を100%理解してもらえない可能性があります。
そこでここからは、わかりやすく、かつアピールしたいことを最大限に伝える3ステップを解説します。志望動機で書きたいことは見つかったけどうまく組み立てられない人や、自分の志望動機の構成を確認したい人は、ぜひ参考にしてみてください。
①結論としてなぜ保健師を志望するのかを最初に述べる
志望動機では、全体のテーマとなる部分を示すことでその後の説明がわかりやすくなるため、まずは結論である「保健師を志望する理由」を最初に述べましょう。
ここでの結論では、事前の自己分析で掘り下げておいた志望理由を述べることが大切です。
待遇などの表面的な保健師の特徴ではなく、今後保健師としてどうなりたいのかを簡潔に伝えることで、保健師としての熱意や健康課題解決への貢献意欲を示すことができます。
結論を述べる例文
私が行政保健師を目指す理由は、保健師の立場から地元の子育て支援を充実させ、ワンオペ育児や核家族での子育ての負担を和らげたいからです。
志望動機の書き出しについて重点的に対策したい人は以下の記事がおすすめです。序盤から人事の心をつかむための志望動機の書き始めのポイントをキャリアコンサルタントが解説しています。
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例文8選|志望動機の書き出しで本気度を見せ差別化する方法
志望動機の書き出しは、志望動機全体を印象付ける大事な部分です。書き出しのコツは「本気度」を伝えること。書き出しの基本的な考え方や高評価を得るコツ、やりがちな失敗についてキャリアコンサルタントとともに解説します。そのまま使える便利なフォーマットも紹介しているので、参考にしてください。
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②結論の根拠となるエピソードを述べる
結論を伝えるだけでは簡潔すぎて説得力やオリジナリティが出せず、印象に残る志望動機にはできません。そのため結論の次は、最初に述べたことを補足する形で「保健師になりたいと思ったきっかけ」のエピソードを述べましょう。
エピソードを伝えるときは、その当時の時系列や自分の置かれていた状況などは簡潔に述べ、自分の行動や感情の変化、結果や学びは具体的に述べることがポイントです。
エピソードの中での行動や感情というのはあなたにしか語れない要素であるため、エピソードにオリジナリティが出て、自分の人間性をアピールすることにつながります。
エピソードの例文
私が行政保健師を目指そうと考えたのは、姉が市の子育て支援を受けたことがきっかけです。
当時私は高校生で、7歳年上の姉には生まれたばかりの子どもがいました。姉の家は実家から離れた場所にあり、旦那さんも県外出張などが多く、姉は1人で子育てをしている状況でした。
あるとき家族とともに姉を訪ねると、育児疲れから瘦せてしまっていて鬱の症状も出ていました。なんとかできないかといろいろ調べていると、行政機関でも子育てに関する相談ができることを知りました。
そこで担当してくださった行政保健師の方の定期的な家庭訪問によるサポートのおかげで姉も少しずつですが、元気になっていきました。こうした経験から、育児の難しさや近隣住民同士の関係の希薄化などに課題意識を持ちました。
身近な事例から行政保健師としての仕事理解ができたことが詳しく述べられています。
あとはその経験から得られた課題意識をもとに、行政保健師としてあなたがどのような業務に取り組みたいか、目標を掲げているかを伝えられるとさらに好印象が得られるでしょう。
③応募先機関においてどのように貢献していきたいのか述べる
繰り返しになりますが、志望動機は応募先に対し、ただ「保健師として働きたい」という希望だけを伝えるのではなく、人事が採用したいと思えるような決め手を提示する必要があります。
そのため、志望動機の締めくくりでは入職後の自分のビジョンとして「どんな健康課題の解決に貢献したいか」を述べましょう。
保健師が取り組むべきたくさんの健康課題に対して具体的な貢献意欲を示すことで、入職後に活躍できる人材であることがアピールでき、人事からの高評価につながります。
入職後の貢献意欲を示す例文
行政保健師として入職した暁には、育児や日々の生活の中で精神的な悩みを抱える人々に寄り添えるよう、こまめな家庭訪問や丁寧なヒアリングに努めたいと考えています。
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お手本と注意点を見てみよう! 保健師の志望動機のOK例文&NG例文
保健師の志望動機のOK例文
保健師の志望動機のNG例文
保健師の志望動機の対策について具体的な準備や書き方について解説してきましたが、まだ魅力的な保健師の志望動機がどんなものかイメージできていない人もいるのではないでしょうか。
ここからは、すぐに参考にできる保健師の志望動機の例文5つと、採用担当者にマイナスイメージを与えてしまうNG例文2つをキャリアコンサルタントの解説とともに紹介します。
自分の志望動機のレベルを確かめたい人や、まずはお手本を見てみたいという人は参考にして、魅力的な志望動機を作成してくださいね。
OK例文①生活習慣病への意識向上に取り組みたいから
OK例文①生活習慣病への意識向上に取り組みたいから
私が行政保健師を志望する理由は、地域住民の人たちの生活習慣病への意識向上に取り組みたいからです。
その思いに至ったきっかけとしては、高校生のときに父が心筋梗塞で倒れたことにあります。
私の父は、高校生のときに県外の工場に長期出張に行っていたことがありました。慣れない土地での一人暮らしで料理も苦手だった父は、ほぼ毎日外食だったそうです。そんな中、工場で父が倒れたという連絡がありました。倒れたときは周囲に人がいる状況だったためすぐに対処することができ、幸い命に別条はありませんでした。
当時の私は、生活習慣病はもっと年齢を重ねてから起きるものだろうと誤った認識をしていて、当時42歳だった父もまさか自分がなるとは思っていなかったと話していました。
こうした経験から、自分自身や周囲の生活習慣病に対する誤った認識や意識の低さを痛感し、少しでも多くの人に身近な病気の正しい知識を広め、健康でいられる生活習慣の提案をしていきたいと考え保健師を目指しています。
私の故郷である徳島県は糖尿病などの生活習慣病の患者数が全国でも多い県です。
私が行政保健師になった際には、日常的な健康課題に対し、すぐに取り入れられるような運動法や食事などを提案したり、生活習慣病に関するわかりやすい情報発信を心掛け、地域の健康を支えていきたいと考えています。
きっかけになった具体的な出来事、そのときの自分の知識や理解の誤りがよくわかり、説得力があります。
応募先が徳島ならこれで大丈夫ですが、徳島以外に応募する場合は、応募先の機関やその地域の状況に触れて作成するようにしましょう。
OK例文②自己管理が難しい子どもたちの健やかな成長を支えたいから
OK例文②自己管理が難しい子どもたちの健やかな成長を支えたいから
私が学校保健師を志望する理由は、自己管理が難しい子どもたちの健やかな成長を支えたいからです。
このような思いを持った背景には、私の幼少期の経験があります。
私は子どもの頃、身体が弱く体調を崩すことが多々ありました。学校も休みがちで、通えたとしても教室には行けず、保健室で過ごしていました。
その当時、保健室で勤務していた保健師の方にもよくお世話になっていて、身体のしくみについて話を聞いたり健康へのアドバイスをもらう中で、保健師という仕事への興味が湧きました。
その後、成長とともに徐々に体調を崩すことは少なくなり、高校からは運動部にも所属して充実した生活を送ることができていますが、今でも中学の学校保健師の方に教わった保健指導が自身の健康管理に役立っていると感じます。
私はこうした自身の幼少期の経験から、健康で過ごせることのありがたみや素晴らしさを痛感しました。だからこそ私は学校保健師として、自己管理の難しい子どもたちの体調を近くで見守り、ゆくゆくは自分で身体や心のサインに気づけるような保健指導がしたいと考えています。
- 保健師の志望動機の場合、エピソードの時期がかなり前でも大丈夫ですか?
エピソードは時期ではなく今の自分に与えた影響度で選ぶことが大切
エピソードの時期がかなり前であっても大丈夫です。エピソードを作成する上で大切なことは、そのエピソードが現在のあなたの価値観や職業に対する思いにどのように影響を与えているかということです。
今回の例文では幼少期から中学生時代の体験が保健師を志望するに至ったかを説明するうえで説得力を持たせることができています。
また、その体験を踏まえてどのような保健師になりたいのかということに関しても具体的に述べることができています。
OK例文③社員のメンタルヘルスを通じて企業としての成長に寄与したいから
OK例文③社員のメンタルヘルスを通じて企業としての成長に寄与したいから
私が産業保健師を志望する理由は、社員のメンタルヘルスを通じて、御社の成長に貢献したいと考えているからです。
このような思いを持った背景には、私自身の経験があります。
私は大学時代に鬱になりました。きっかけは授業やアルバイト、サークル、インターンなどで忙殺されていたことです。睡眠時間を削るほどやるべきことが多く、この生活が2カ月ほど続いて鬱になってしまいました。
しかし、このような状況で御社の社員の方と話す機会がありました。その方も以前の職場で自分の心を削りながら仕事をしていて、そこから立ち直った経験や人との接し方などを親身にアドバイスしてくれました。
その方とのかかわりの中で御社が社員のメンタルヘルス向上に力を入れていることを知り、私も自身の経験を活かしながら御社の一員として社員のメンタルヘルス向上させ、御社の成長に貢献したいと思い志望いたしました。
OK例文④出産や育児の大変さに寄り添ったサポートがしたいから
OK例文④出産や育児の大変さに寄り添ったサポートがしたいから
私が貴院を志望する理由は、保健師として出産や育児の大変さに寄り添ったサポートをしたいと考えているからです。
このような考えを持った背景には、母の育児や出産を間近で見てきた経験が挙げられます。
私は5人兄妹で、両親含めて7人で生活しています。私は長女であるため、母が弟と妹を出産して育てるのを間近で見てきました。私もできる限りのサポートはしているものの、母の大変さは計り知れないものだと思います。
私のように大家族でなくても、出産や子育ては親にとっての心身の負担が大きいことに変わりはないと考えます。
貴院はほかの病院と比べても妊婦や褥婦へのサポートに力を入れていて、特に父親への保健指導をおこなっている点が強みだと感じました。私も貴院の一員として、出産や育児で苦労する人の負担を少しでも軽くできるようなサポートに努めたいと考えています。
- ほかの人の姿から影響されたエピソードでも良いのですか?
他者の経験でもそこで自分にどんな学びや心境の変化があったかを示そう
大丈夫です。他者の経験から学ぶことを「観察学習」といいます。他者の経験、メディアや本から学んで自分の考えをつくっているのは、素晴らしいことです。
感銘を受けた出来事をわかりやすく伝えること、その出来事をどう解釈して何を感じたのかを伝えることを意識してください。特に後者にはあなたの価値観や判断基準が表れます。その価値観こそが大事なのです。
自分をアピールするエピソードが自分の直接的な経験でないとしても、そこから何を学び取ったのかをしっかり伝えることで、説得力が出るでしょう。
OK例文⑤高齢者や身体障害者が笑顔でいられる時間を増やしたいから
OK例文⑤高齢者や身体障害者が笑顔でいられる時間を増やしたいから
私が行政保健師を志望する理由は、高齢者や身体障害者が笑顔でいられる時間を増やしたいと考えているからです。
このように考えるようになったきっかけには、祖父の友人の存在があります。
私の祖父には毎週会って話す友人がいました。しかし、ある週はその方が来ず、自宅を訪問したところ孤独死をされていました。この経験から、高齢者や身体障害者の孤立問題に目を向けるようになり、課題意識を持つようになりました。
ここ〇〇市でも孤立問題は目を背けられない課題の一つだと思います。さまざまな施策や提案をして、高齢者や身体障害者の方々が笑顔でいられるように貢献したいと考えています。
OK例文⑥災害時でも多くの人の役に立てる仕事がしたいから
OK例文⑥災害時でも多くの人の役に立てる仕事がしたいから
私が行政保健師を志望する理由は、災害時でも多くの人の役に立てる仕事がしたいと思ったからです。
私は富山県出身で、2024年1月1日に能登半島地震を経験しました。私の住んでいた地域は震源地から離れていたため直接的な被災はしていませんが、同じ県に住む人の役に立ちたいとボランティアに参加しました。
ボランティアで訪れた避難所ではトイレが使えなくなっていたり、不衛生な状態で使われていたりするなど、衛生環境の悪さから二次災害が起きてもおかしくない環境でした。
また、能登半島地震だけでなく、これまでの災害時も同様のことが起きていると知り、被災後の衛生問題には迅速な対処はもちろんですが、私たち一人ひとりが正しい衛生管理の知識を持つべきだと感じました。
この経験から、日常生活はもちろん有事の際にも多くの人の役に立てる仕事がしたいと考え保健師を志望しています。保健師として入職した暁には、日常生活での保健指導だけでなく、何かあったときに自分の身体を自分で守れるような衛生管理や健康へのサポートをおこないたいです。
災害時のボランティアで得られた保健師としての使命に対する気づきを具体的に述べ、目標設定までできたことが詳しく述べられています。また、近年重要視されている予防医療に対する意識が高い点をアピールしているのも好感が持てますね。
NG例文①待遇面や働く環境ばかりを推してしまう
NG例文①待遇面や働く環境ばかりを推してしまう
私が行政保健師を志望する理由は、公務員として土日祝の休みが確保されていることに魅力を感じたからです。
私はワークライフバランスを重視して就職活動に取り組んでいます。民間企業であれば土日祝の出勤もあり得ますが、公務員であれば基本は土日祝は休みだと思います。
また、給与も安定していただけるため、趣味にも取り組めるのではないかと思いました。
入庁後は良い待遇・環境に甘んじることなく、地域に貢献できるよう努めてまいります。
どんな仕事においても、働きやすいことは誰もが望むことであり、待遇や福利厚生の良さを就職先選びの条件の一つにしている人もいるでしょう。
しかし、保健師のような仕事では特に、地域の環境や人々の健康といった自分以外のもののために仕事をしなければいけません。そんな中で、趣味や給料、待遇の良さといった自分が得られる利益を押し出した志望動機にしてしまうと「保健師として他者の役に立とうとする意欲が低い」という印象になってしまうでしょう。
志望動機では、素直な自分の気持ちを述べるだけではなく「これから保健師としてどんな貢献ができるのか」というテーマに沿って自分自身をアピールすることが重要なのです。
- 志望動機で待遇面について触れる場合、どうすればマイナスな印象になりませんか?
職場や自分の仕事においてどんなメリットがあるかという視点が大切
志望動機で待遇面について触れる場合、単なる個人的な利益だけではマイナスな印象になってしまいます。
そうならないためには、待遇の良さがどのように自分の成長や職場への貢献、より良い地域社会へと波及していくのかを明確にすることでマイナスの印象を払拭できるでしょう。
NG例文ではワークライフバランスを重視することが述べられていました。
たとえば、ワークライフバランスを重視することが自分や周囲の人がより良い仕事をするための基盤となり、地域の健康促進に貢献できるという言い方にすることができます。
また、趣味の活動を通して視野を広げることで、福祉領域で出会う人達との共通話題や関係構築に役立てることができるなどの視点を伝えることで印象を変化させることができるでしょう。
待遇の一つとして「安定しているから」という理由を志望動機にする場合にも注意が必要です。以下のQ&Aでは、安定していることを志望動機で伝えた人に対して、就活のプロであるキャリアコンサルタントがアドバイスしているため、ぜひ参考にしてみてください。
NG例文②エピソードや健康課題への貢献意欲が具体的でない
NG例文②エピソードや健康課題への貢献意欲が具体的でない
私が病院保健師を志望する理由は、病院保健師への憧れが強いからです。
私には通っている病院があるのですが、そこで働く病院保健師の方がいつも気さくに話しかけてくれます。身体のことだけでなく、学校やアルバイトのことも話せるため友達のような感覚です。
私もこの方のようにいろいろな人と信頼関係を築ける病院保健師になりたいと思いました。御院の一員になれた暁には、いつも元気で明るい対応を心掛け、多くの人が安心して御院を利用できるように努めてまいります。
上の例文では、エピソードの中で自分の行動や感情、得られた学びなどが具体的でないため、あなた自身の人間性や考え方などが見えず、印象の薄い志望動機になってしまいます。
病院保健師として人々とかかわる姿に感銘を受けたことを魅力的に伝えるには、その人とかかわった場面や見聞きした働き方を具体的に振り返り、自分が感じたことや学びまで明確にして志望動機に盛り込みましょう。
そうすることで、あなたの中にしかない感情や考え方がエピソードを通じて浮き彫りになり、志望動機にオリジナリティを出すことができます。
また、このNG例文は「なぜその病院で保健師になりたいのか」という部分が欠けていて、すべての病院に言えてしまう内容です。応募先の病院ならではの魅力や強みを分析し、そこの病院で自分が保健師としてどんな貢献ができるかをアピールすることでさらに説得力が増すでしょう。
- エピソードがうまく膨らませられないときはどうしたら良いですか?
ほかの人にアウトプットする機会を作ってエピソードを膨らませよう
自分の持つエピソードの「いつ」「誰が」「どこで」「どのように」「なぜ」を明確にしながらいったん口頭で誰かに話してみましょう。
相手にはその話の中でわかりづらかった点やもっと聞きたいポイントなどをフィードバックしてもらいます。
それを何度か繰り返していくうちに、エピソードが具体化し、意味付けもできるようになります。
保健師の志望動機は健康に対する自分なりの思いを明確にして突破を狙おう
保健師は、さまざまな健康課題の解決や改善に取り組む、世の中になくてはならない存在です。だからこそ、保健師になるためには健康課題解決に向けた意欲や保健師としての責任感が求められます。
志望動機でも、ただ「人々の健康をサポートしたい」と述べるのではなく「どんな健康課題に取り組みたいか」を具体的に示し、自分なりの貢献意欲をアピールすることがポイントです。
それにはまず、志望動機にどんな要素を盛り込むべきかを把握し、仕事への理解を深めましょう。自己分析をして、自分が保健師を目指したきっかけや健康課題に対する考えを言語化することも忘れてはいけません。
そうした事前の準備をしっかりおこない、正しい手順で志望動機をまとめることができれば、保健師として活躍できる人材であることを説得力を持ってアピールできます。
これから保健師を目指そうと考えている人は、これらのポイントを押さえた魅力的な志望動機に仕上げて、就職成功を目指しましょう。
アドバイザーコメント
平井 厚子
プロフィールを見る保健師の志望動機は「保健活動」の意味をよくかみ砕いてから作ろう
保健師に求められる一番の役割は、地域医療への貢献でしょう。厚生労働省平成26年衛生行政報告例の概況によれば、保健師の勤務先としては自治体の保健センターや役所、保健所が全体の71.2%を占めています。
また、厚生労働省の地域における保健師の保健活動についてには、以下の記載があります。
「保健師は、健康問題を有する住民が、その地域で生活を継続できるよう、保健、医療、福祉、介護等の各種サービスの総合的な調整をおこない、また、不足しているサービスの開発をおこなうなど、地域のケアシステムの構築に努めること」
住民のニーズに合わせてサービスや慣習を変えていくことも求められている
私はこの厚生労働省の保健活動についての文章を読んで、ちょっと感動しました。
「役所や施設にデンと構えているのではなく、住民の中に入り込んで人々の様子を把握しなさい。そして、心身がしんどい人には適切な行政サービスを届けましょう。足りなければ新たなシステムをつくりなさい」と言っているわけです。なんと高らかな宣言でしょうか。
保健師を志望する人には、繰り返しこの文章を読み返してほしいです。そこから必ず自分のやるべきことが浮かんでくると思います。応援しています。
執筆・編集 PORTキャリア編集部
> コンテンツポリシー記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi
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キャリアコンサルタント/2級キャリアコンサルティング技能士
Takako Shibata〇製造業を中心とした大手~中小企業において、従業員のキャリア形成や職場の課題改善を支援。若者自立支援センター埼玉や、公共職業訓練校での就職支援もおこなう
プロフィール詳細キャリアコンサルタント/産業カウンセラー
Atsuko Hirai〇ITメーカーで25年間人材育成に携わり、述べ1,000人と面談を実施。退職後は職業訓練校、就労支援施設などの勤務を経て、現在はフリーで就職・キャリア相談、研修講師などを務める
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Yukari Itaya〇未就学児から大学生、キャリア層まで多様な世代のキャリアを支援。大企業からベンチャー、起業・副業など、幅広いキャリアに対応。ユニークな生き方も提案するパーソナルコーチとして活躍
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