向いていない仕事を続けた結果|遠回りが教えてくれたこと

この記事の執筆者 幅広い業界での経験とキャリア支援実績がある専門家が書き下ろしました
古田 文子
古田 文子
キャリアコンサルタント/上級心理カウンセラー
Fumiko Furuta〇キャリアに関する記事の執筆・監修や、転職フェアの講演、キャリア相談、企業や学校でのセミナー講師など幅広く活動。キャリア教育に関心があり、学童クラブの支援員も務める。フミコ人材育成研究所代表。保有資格:キャリアコンサルタント、心理相談員、メンタル心理カウンセラー、上級心理カウンセラー、チャイルドカウンセラー、不登校訪問支援カウンセラー、調理師。

「仕事の向き不向きについて」は多い相談の一つ

私のところに来る人の中でも多いと感じる相談がいくつかあります。その一つが「自分にどんな仕事が向いているかがわからない」です。

在職中の人は現在の仕事にそう感じて働き続けるかどうかを迷い、転職活動中の人は仕事選びに悩んだ末、溺れまいと必死に藁を掴む思いで相談に来ます。

本コラムのコンセプト

生成AIによる一般的な情報がすぐに手に入る時代。就活生や求職者にいま求められているのは、経験や体験に基づく血の通ったアドバイスではないか。そうした読者のニーズに応えるために、編集部がテーマを選定し、参画するキャリアコンサルタントらに寄稿いただくコラム企画を始めました。自身の経験や実アドバイスをベースに、綺麗事を一切排除した本音の就活対策をお届けします。

そのまま向いていない仕事を続けるとどうなるのか

私も過去に、向かない仕事を我慢し続けたある朝、目が覚めてもずっと天井を見つめたまま動けなくなってしまったことがあります。そう考えると、私のところに相談に来る余力があるだけましなのかもしれません。

「そんな仕事なら辞めちゃえば?」と思うでしょう?

しかし、この悩みを抱える人にとっては言うほど簡単なことではないのです。

簡単に辞められない

在職中のクライエント(=相談者)のほとんどが、迷い悩みながらも辞める選択をしないのには理由があります。よく聞くのは「収入が途絶えると困る」「(社内外の)人に迷惑をかける」「家族に反対される」といったことです。

こうしたクライエントには抜け落ちている視点が多々あると感じますが、迷路の中をさまよう人には、自分に何が抜け落ちているかなど知る余裕もないのです。

身体が先に悲鳴をあげる

そうしたクライエントからは、次のような自覚症状が出るという話をよく聞きます。

クライエントが訴えた自覚症状

  • 眠れない、起きられない
  • 食欲がない、ご飯がおいしくない
  • 頭痛や腹痛をはじめ、身体のあちこちが痛い
  • 寝ても疲れがとれない
  • 勝手に涙が流れてくる、感情が麻痺してくる

なぜこうなるのか原因がわからないことも、ストレスの一因になっているようです。

普段と異なる感覚がある

話を進めていくと、「いつもと違う」ことも増えてくるという話を聞きます

普段と異なる行動の例

  • 身支度をして玄関から外に出るまで時間がかかる
  • 同僚、上司の視線や表情が過剰に気になる
  • 評価や期待に敏感になる
  • 人と「会う」「話す」が億劫になる
  • 仕事中にぼーっとすることが増える
  • 何もしていないのに休日があっという間に終わる

些細なミスが増えて、上司に呼び出される回数が増えていくことに自己嫌悪する人もいます。

考え方や価値観にも影響が出始める

このテーマの相談を受ける際に、クライエントからよく出てくるセリフです。

クライエントからよく出る言葉

  • 評価されたのは、たまたまです。
  • 誰でもできる仕事しかしていません。
  • 自分が役に立っていると思えません。
  • まわりはできているのに、なんで私だけできないのでしょうか。
  • 自分は甘えています。もっと頑張らないと。

向いていない仕事に就いたことと因果関係があるかはわかりませんが、最初からこんなに自己評価が低い人が、そもそも採用されるでしょうか。

向いていない仕事は辞めたほうがいい?

向いていない仕事は辞めたほうがいい?

  1. 辞めたほうがいい場合
  2. 継続するほうがいい場合

結論から言うと、辞めたほうがいい場合と、継続したほうがいい場合があります。

向かないと思う原因によるところが大きいので、一概に「辞めるのが正解」と言えないのが悩ましいところです。

辞めたほうがいい場合

その仕事が、身も心も削られるだけなら辞めたほうがいいと思います。

人生は長いようであっという間。向いていないのに結果を出すための努力をし続ける時間と労力は、いつまで保てるでしょうか。

向いている人に任せたほうが効率的、且つ生産性もあがるという考え方をするなら、引き際というのも大切かもしれません

継続するほうがいい場合

就職・転職活動には時間と労力がかかります。簡単にほいほいできるものではありません。

せっかく縁があって就職したのですから、向かない原因を突き止めて、自分で変えられるところがあるなら変えるのも一つの解決策です

退職と継続、どちらにせよ、岐路に立たされた時ほど、「今できる選択肢には何があるか」と、「選択するメリットとデメリット」を書いてみるようアドバイスしています。

「向かない」と知ることも一つの学びです。同じ轍を踏まないためにも経験から得られたことを言語化して整理してみましょう。決めるのはそれからでも遅くありません。

そもそも仕事の向き不向きは、どうやって判断するの?

クライエントと話していると、向いている仕事かどうかを判断する前に、仕事に何を求めているのかが曖昧な人が多いと感じます。

みなさんはどのタイプですか?

向いている向いていない
ライスワーク ※1できる・続けられる・稼げる成果が出ない・疲れすぎる・続けられない
ライフワーク ※2やりがい・成長・意味を感じられる価値観が合わない・意味が感じられない
できることベース強み・得意を活かせる苦手を補い続ける

※1 ライスワーク・・・「ライス(お米)」=食べるための仕事
※2 ライフワーク・・・「ライフ(人生)」=人生を通して取り組みたいこと

ライスワークとライフワークを両立させたい人もいますし、食べるためと割り切る人や、できることベースに仕事選びをする人もいます。何を重視して仕事を選ぶかで、向き不向きの捉え方は変わってきます。

向き不向きは仕事内容だけにとどまらない

向き・不向きの判断方法

上の図も参考にしてください。仕事内容だけでなく、働く環境や人間関係も向き不向きに影響しています。

たとえば、担当業務そのものは楽しくできるけど、職場環境や人間関係、社風が合わないだけで、「この仕事、向いてないかも」と感じることもあります

向いていない仕事をし続けて悪い方向に行ってしまうことも

向いていない仕事をし続けて悪い方向に行ってしまうことも

  1. 体調を崩してキャリアが停滞する
  2. 人間関係の悪化から依存症になることも

向かない仕事を辞めることもできずに苦しむ人の中には、本人が望まない方向へ行ってしまう人もいます。

私がこれまで出会った人の中にも様々な人がいました。

体調を崩してキャリアが停滞する

体調を崩すと一言で言っても症状は様々です。わかりやすいのは「適応障害」「うつ状態」などです。

その結果、休職して入院したり自宅療養したりを繰り返して退職し、無職のまま引きこもる人もいました

人間関係の悪化から依存症になることも

向かない仕事を続けた結果、イライラすることが多くなり、家族や友人、会社の人と会うのがしんどくなり、孤立する人もいます。

孤立する人の中にはアルコールやギャンブル、買い物、ゲームなどの依存症になる人も少なくありません。

私は地元にあるダルク(依存症回復施設)でもセミナーやカウンセリングをしていますが、回復のためとは言え、ブランクが長くなればなるほど、再就職が難しくなります

向いていない仕事をし続けて良い方向に行った人もいる

「入社時の担当業務は嫌で仕方なくやっていたけど、部署異動して担当業務が変わったら、前の部署での経験が活かせた」という人に会ったことがあります。

また、「向いていないと思ったけど、資格を取得して管理職になったら、仕事が楽しくなってきた」という人もいました。

現時点では向いていないと感じていても、継続した先の状況が、良い方向へ変わることもあるのです

私の経験:遠回りが教えてくれたこと

私が体調を崩すほど向いていなかった仕事は、とある事務でした。

簡単に言えば、私でなくても誰でもできるような作業であり、私が退職しても誰も困らないような職場でした。

私は、天井を見つめるだけの朝が来るまで、心も身体も静かに削られていたことに気づかなかったのです。

けれど、その遠回りと思えるような経験は、自分が「私じゃなきゃできないこと」「現場で役に立っている実感がある」「社会貢献していると感じられる」ような仕事じゃないとやりたくない人間だと教えてくれました

加えて、「生活のため」と割り切って仕事ができないタイプなのだということを知った、するべき経験だったのだと今なら思えます。

向いていない仕事の経験は、あなたの人生を遠回りさせるようでいて、本来のあるべき自分に戻るための道標かもしれません。

迷い悩んでいる今こそ、そのサインを見逃さず、後悔の少ない人生を送ってほしいと思います。

執筆・編集 PORTキャリア編集部

明日から使える就活ノウハウ情報をテーマに、履歴書・志望動機といった書類の作成方法や面接やグループワークなどの選考対策の方法など、多様な選択肢や答えを提示することで、一人ひとりの就活生の意思決定に役立つことを目指しています。 国家資格を保有するキャリアコンサルタントや、現役キャリアアドバイザーら専門家監修のもと、最高品質の記事を配信しています。

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記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi

高校卒業後、航空自衛隊に入隊。4年間の在籍後、22歳で都内の大学に入学し、心理学・教育学を学ぶ。卒業後は人材サービスを展開するパソナで、人材派遣営業やグローバル人材の採用支援、女性活躍推進事業に従事。NPO(非営利団体)での勤務を経て、「PORTキャリア」を運営するポートに入社。キャリアアドバイザーとして年間400人と面談し、延べ2500人にも及ぶ学生を支援。2020年、厚生労働大臣認定のキャリアコンサルタント養成講習であるGCDF-Japan(キャリアカウンセラートレーニングプログラム)を修了

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