本企画について
「噂や評判に、プロの確実な視点を。」をテーマに企業選びや意思決定の支援をする企画です。漠然とした不安には「確度の高い事実」を、意思決定には「キャリアの専門家による視点」を提供することを目指します。
「三菱重工業はやばい」
企業について調べたときにそのような評判を目にしてしまうと、思わず焦ってしまうものです。確かに、三菱重工業は「SpaceJetの開発を中止した」「離職率が高い」といったことから、「やばい」という噂があるようです。
しかし、噂から企業を「やばい」と言い切っても良いのか、情報の解釈の仕方をこの記事で解説します。キャリアコンサルタントからも就活の専門家としてのアドバイスをもらっているので、併せて参考にしてみてください。
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1分でわかる三菱重工業
三菱重工業とは
1884年の創立以来、エンジニアリングとものづくりのグローバルリーダーとして社会課題の解決に取り組んできた企業。発電用タービン、CO2回収プラント、造船、航空、防衛、宇宙から、身近なエアコンや交通システムまで、500以上の幅広い製品・技術を保有。
近年は、長年培った技術力と最先端の知見を融合し、カーボンニュートラル社会に向けたエナジートランジションや社会インフラのスマート化などにも注力。
| 会社名 | 三菱重工業株式会社(Mitsubishi Heavy Industries, Ltd.) |
| 従業員数(連結) | 78,793人(2026年3月31日時点) |
| 本社所在地 | 東京都千代田区 |
| おもな事業 | エナジー、プラント・インフラ、物流・冷熱・ドライブシステム、 航空・防衛・宇宙 |
| 売上高(連結) | 4兆9,741億6,800万円(前年同期比14.1%増)(2026年3月期) |
| 事業利益(連結) | 4,322億1,800万円(同21.8増%)(同期間) |
| 企業HP | https://www.mhi.com/jp |
| 新卒採用HP | https://www.mhi.com/jp/recruit/shinsotsu/ |
「三菱重工業がやばい」と言われる4つの理由|プロが読み解く
「三菱重工業がやばい」と言われる4つの理由
三菱重工業がやばいと言われる4つの理由を紹介します。企業や国が公表しているデータを用いながら、キャリアコンサルタントの視点を交えて正しい情報の読み解き方を解説します。企業研究の参考に、ぜひ最後まで読んでみてください。
①SpaceJetの開発を中止したから
2023年2月7日、三菱重工業の連結子会社である三菱航空機は、SpaceJet(リージョナルジェット機)の開発中止を発表しました。同社は関連事業で大きな損失を出したと公表する一方で、開発中止による業績への影響は軽微だと説明しています。(※1)。
同社はSpaceJetに関連する事業で大きな損失を出したことを語っていますが、企画の中止による業績への影響自体は軽微だと説明しています。ただ、一部の社債格付け機関からは格付けを引き下げられるといった、市場からの厳しい目線はあったようです(※2)。
財政状況を立て直すために、経営陣と事業部門が一体となって収益性の改善と運転資本の効率化に取り組みました。その甲斐もあり、三菱重工業は2024年度に過去最高の売上収益、事業利益、フリー・キャッシュ・フローを達成しました。(※3)。
※1 三菱重工業 当社SpaceJet開発活動の中止に関するお知らせ
※2 三菱重工業 MHI REPORT 2024
※3 三菱重工業 MHI REPORT 2025
プロのアドバイザーはこう分析!開発中止によって周囲からの見られ方や企業自身の視点が変わった
SpaceJetの開発中止は、三菱重工業にとって大きな痛手だったのは間違いありません。社外からは「巨額投資の失敗」と見られ、社内でも大型案件の進め方や採算の見方に、以前より厳しい目が向くようになったはずです。
特に、技術的に実現できるかだけでなく、事業として成立するか、途中でどこまで軌道修正できるか、撤退判断をいつ下すかといった視点は、以前より重くなったと考えられます。
失敗から成長を得た企業の姿をどのようにとらえるか
ただ、それを「失敗があった会社」ととらえるだけではなく、「大きな経験を経て、開発の進め方や経営の精度が成長した会社」ととらえることもできます。実際、その後は収益性改善や資金効率の見直しを進め、業績を立て直しています。
華やかな挑戦を続ける会社というだけでなく、挑戦を事業として成立させる難しさまで学んだ会社と見るのが実態に近いでしょう。大きな失敗を経ても立て直せる組織力があるという点も、この会社の強さだと言えます。
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②離職率が高いから
三菱重工業について検索すると、離職率の高さに関する声が散見されます。
同社が公表しているデータによると、離職率は3.8%(2024年度)(※1)となっており、製造業界の平均8.8%(※2)より抑えられています。また、平均勤続年数も18.9年(※1)と、同業界の平均14.9年(※3)を上回る社員の定着率を誇っています。
| 三菱重工業 | 製造業界の平均 | |
|---|---|---|
| 離職率 | 3.8% | 8.8% |
| 平均勤続年数 | 18.9年 | 14.9年 |
2017年度から社員を対象に意識調査をおこない、社長や経営幹部も参加した重点課題の改善に取り組んでいます(※2)。また、育児や介護に配慮した制度を拡充し、仕事と家庭を両立しやすい環境を整えているなど、社員の定着率を上げる施策をおこなっています(※5)。
※1 三菱重工業 SUSTAINABILITY DATABOOK 2025
※2 厚労省 令和6年雇用動向調査結果の概況
※3 厚労省 令和6年賃金構造基本統計調査の概況
※4 三菱重工業 MHI REPORT 2025
※5 三菱重工業 MHI REPORT 2023
アドバイザーのリアル・アドバイス!圧倒的な定着率の裏側! 強固な雇用環境を生む幹部主導の改革
大企業ならではの高い定着率の背景にある組織構造と、個人の求めるキャリア開発のスタイルについては、実績数値と制度運用の実態からとらえる必要があります。
開示されている実績数値を基にすると、全社離職率3.8%、平均勤続年数18.9年というデータは、製造業界平均を遥かに下回る抜群の安定性を示しています。
公式のレポートによれば、定期的な社員意識調査や育児支援の拡充を経営幹部主導で進めており、雇用環境の健全さは極めて強固です。
数字だけでなく大企業で働くことへのマッチ度にも目を向けよう
この環境下で早期離職する特徴を紐解くと、社会インフラを支える巨大なプロジェクトが主軸であるゆえに、個人の短期的なスピード成長や即座に大きな裁量を求める性質との時間軸のギャップが挙げられます。
大企業としての丁寧なステップアップを実直な積み上げととらえるか、慎重さととらえるかによる適性の違いが存在します。
就活生は、数字の安定性だけに目を奪われることなく、大きな組織基盤のなかで腰を据えて専門性を磨いていく働き方が、自身の望む生き方に合致するか本質を見極める視点を持つことが重要です。
③仕事が長時間で激務だから
詳細な残業時間は公表されていませんが、三菱重工業の口コミサイトには労働時間が長引くことや、激務となるという意見が見られます。
コアタイムなしのスーパーフレックスタイム制や在宅勤務制だけでなく、1時間単位で休暇を取得できる制度を導入しています。また、有給取得率は77.7%(2024年度)(※1)と製造業界の平均72.8%(※2)を超えており、従業員が休みを取りやすい環境が整っていると言えます。
さらに、会社側は「労働時間に関する委員会」を定期的に開催しており、休みを確保するだけでなく、長時間労働自体を削減しようとしていることもわかります。
※1 三菱重工業 MHI REPORT 2025
※2 厚労省 令和7(2025)年就労条件総合調査の概況
プロのアドバイザーはこう分析!多忙な時期が続くわけではない! 三菱重工業における激務の正体
三菱重工業で激務と感じやすいのは、毎月ずっと残業が多い状態というより、大型案件の節目やトラブル対応で一時的に仕事が集中する場面だと思います。
たとえば、納期前の追い込み、設計変更への対応、顧客や官公庁との調整、海外案件との時差対応などが重なると、時間的にも心理的にも負荷は高まりやすいでしょう。
責任の重さや休みの取りやすさなどから読み解くリアルな働き方
ただ、その大変さは単なる消耗ではなく、社会インフラや防衛、航空宇宙のようなスケールの大きい仕事を支えている実感につながりやすい面もあります。
トラブルの影響が大きい分、緊張感はありますが、そのぶん自分の仕事が社会に与える重みや達成感も大きいはずです。
制度上は休みを取りやすい会社だからこそ、日常は働き方を整えつつ、要所では大きな責任ある仕事に向き合える会社と見るほうが実態に近いと思います。
あなたが受けないほうがいい職業を診断しましょう
就活を進めていると、自分に合う職業がわからず悩んでしまうことも多いでしょう。
そんな時は「適職診断」がおすすめです。簡単な質問に答えるだけで、あなたの強みや性格、価値観を分析して適職や適さない職業を特定してくれます。
自分の適職や適さない職業を理解して、自信を持って就活を進めましょう。
④将来性が低いから
三菱重工業の将来性がやばいと言われることにはいくつかの要因が考えられます。
まず、主力事業の一つである火力発電システムの事業は、化石燃料を消費することから、世界的な脱炭素の動きに対応しにくいという点が挙げられます。また、近年は中国製品が台頭してきたことで、競争が激化していることも要因の一つです(※1)。
しかし、同社の業績を見てみると、年々右肩上がりで伸長していることがわかります。2020年3月期に一時的に利益が下がったものの、そこから復調して2025年3月には過去最高の成績を上げています(※2)。
| 2019年3月期 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(億円) | 4兆783 億円 | 4兆413 億円 | 3兆6,999 億円 | 3兆8,602 億円 | 4兆2,027 億円 | 4兆6,571 億円 | 5兆271 億円 |
| 事業利益 | 2,005億円 | ▲295億円 | 540 億円 | 1,602 億円 | 1,933 億円 | 2,825 億円 | 3,831 億円 |
※1 三菱重工業 MHI REPORT 2025
※2 三菱重工業 有価証券報告書 各年
プロのアドバイザーはこう分析!防衛・AI(人工知能)特需の裏に潜む中長期的な経営リスク
外部環境の変動がもたらす業績への影響と今後の将来性については、短期的な好況の裏にある中長期的な経営リスクのシナリオから構造をとらえる必要があります。
日本経済新聞の報道によれば、同社は2027年3月期に過去最高益を見込むなど、防衛予算の増額やAI需要に伴う高効率ガスタービンの引き合いが現在の業績を牽引しています。
しかし、将来性が危ぶまれる具体的な可能性について、有価証券報告書などではリスクの開示がされています。
世界的な脱炭素規制が想定以上の速度で急進した場合に、火力発電関連事業の縮小が加速するリスクや、水素・アンモニアなどへの巨額投資が計画通り収益化しないリスクが挙げられます。
また、国策に依存する防衛事業は、政策動向による受注のボラティリティを抱えるほか、主力事業への依存度が高く次なる成長事業の育成が途上の段階にあります。
目先の業績だけで選んではいけない! 就活生に求められる企業選びの本質
就活生は目先の好業績のみを断片的に受け取るのではなく、中長期的な環境の変化や多様な外部要因があることを意識する必要があります。
その環境においても、最先端技術に挑む風土が自身の望む生き方や将来像に合致するか、本質を見極める視点を持つことが重要です。
関連するデータから実態を読み解く必要がある
三菱重工業の噂についてピンポイントで回答が見つからないこともあります。離職率や残業時間のようなデータが公表されていない場合は、企業が社員の定着率向上に向けて実施していることや、休暇制度の詳細などから、実態を推測することができます。
企業のネガティブな噂については、多角的なデータ情報を活用し、客観的な視点で読み解くことが大切です。
アドバイザーのリアル・アドバイス!噂に惑わされない! 失敗から成長を遂げた企業である
三菱重工業を目指すなら、「やばい」という評判だけで判断せず、その背景まで理解することが重要です。
SpaceJetの開発中止は大きな話題となりましたが、その経験を踏まえて事業ポートフォリオを見直し、収益性を改善した結果、過去最高業績を達成しました。このように、同社は失敗を分析して次の成長につなげる企業です。
三菱重工業が求める人物像と面接対策を押さえて選考に臨もう
選考では、困難な状況でも粘り強く課題に向き合い、改善を積み重ねた経験を具体的に伝えられる人が評価されやすいでしょう。
また、防衛・エネルギー・航空宇宙・脱炭素など幅広い分野で事業を展開しているため、志望動機では、三菱重工業だからこそ実現したいことを明確にすることが大切です。
面接では、事業理解だけでなく、社会インフラを支える企業としての使命感や、長期的な視点でものづくりに携わりたい理由も問われます。
さらに、多くの人と協力して進める仕事が多いため、部活動や研究、アルバイトなどで周囲と連携し、目標達成に取り組んだ経験を伝えることも有効です。
企業の変革や事業の方向性を理解し、自分の経験と結び付けて語れることが選考突破のポイントになるでしょう。
執筆・編集 PORTキャリア編集部
> コンテンツポリシー記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi






3名のアドバイザーがこの記事にコメントしました
キャリアコンサルタント / システムエンジニア
Ichiro Komine〇大手電機メーカーでシステムエンジニアとして従事。若者の人生や成長にかかわりたいと思い、キャリアコンサルタントの資格取得。現在はコンサルティングや自己分析支援をおこなっている
プロフィール詳細国家資格キャリアコンサルタント/国際コーチング連盟(ICF)ACC
Atsushi Ikarashi〇欧州系日本法人の代表取締役。新卒で日本企業に5年、東南アジア現地法人に12年勤務し、帰国後外資企業に就職。経営者視点でキャリア形成の支援をする。MBA(海外)取得済
プロフィール詳細キャリア・デベロップメント・アドバイザー/キャリアドメイン代表
Kenichiro Yadokoro〇大学でキャリアデザイン講座を担当した経験を持つ。現在は転職希望者や大学生向けの個別支援、転職者向けのセミナー、採用担当者向けのセミナーのほか、書籍の執筆をおこなう
プロフィール詳細