
就活は運ゲー? ただし「就活=人生」ではない
「就活は結局運ゲー」
SNSでもよく見かける言葉です。
私は約10年間、人事として新卒・中途採用に携わり、現在はキャリアコンサルタントとして学生や社会人の相談を受けてきました。その立場から率直に言うと、就活には間違いなく運の要素があります。
しかし同時に、「就活=人生」ではありません。
むしろ長いキャリアで見ると、「運に振り回される人」と「運を味方につける人」の違いの方が大きいと感じています。
この記事では、人事の現場で実際に見てきた「運が左右する就活」と、その運とどう向き合えば自分らしいキャリアを築けるのかについてお伝えします。
本コラムのコンセプト
生成AIによる一般的な情報がすぐに手に入る時代。就活生や求職者にいま求められているのは、経験や体験に基づく血の通ったアドバイスではないか。そうした読者のニーズに応えるために、編集部がテーマを選定し、参画するキャリアコンサルタントらに寄稿いただくコラム企画を始めました。自身の経験や実践的なアドバイスをベースに、綺麗事を一切排除した本音の就活対策をお届けします。
就活が運で決まることは実際にある
人事の立場として実際に見た「運ゲー」のエピソードを紹介します。
面接官との相性はどうしても存在する
就活生にとって最も納得しづらい運要素が「面接官との相性」です。同じ受け答えをしても、ある面接官は「主体性がある」と評価し、別の面接官は「自己主張が強い」と受け取ることがあります。
採用基準はもちろんありますが、評価するのは人間です。
価値観や経験が異なれば、評価に多少の違いが出るのは避けられません。
実際に私が人事を担当していた頃も、「評価シート上はほぼ同点」の学生であれば、「この部署で活躍できそう」「一緒に働くイメージが湧く」といった定性的な要素が最後の決め手になることは珍しくありませんでした。
タイミングによって評価は変わる
意外と知られていませんが、面接順も影響します。
たとえば、直前に非常に優秀な学生がいた場合、次の学生が相対的に普通に見えてしまうことがあります。
逆に、その学生が最初の面接だったら高評価だったかもしれません。
これは採用担当者が意図的にそうしているわけではなく、人間の心理として避けにくい現象(心理バイアス)です。学生から見れば理不尽ですが、こうした「巡り合わせ」が起こるのも就活の現実です。
採用人数や会社の事情も大きい
企業側の事情も運要素の一つです。
たとえば、以下のような理由で不合格になるケースもあります。
- 急に採用人数が減った
- 配属予定部署の採用が終了した
- 内定承諾率が予想以上に高く追加募集がなくなった
学生本人の能力とは関係なく結果が変わることは、実際によくあります。
それでも「就活は全部運ゲー」とは言えない理由
たとえば、サイコロの目は運です。しかし、サイコロを1回しか振らない人と20回振る人では、欲しい目が出る確率は大きく変わります。
就活もこれと同じです。運はコントロールできませんが、受かる確率は上げられます。
- 自己分析を深める
- 企業研究をする
- 面接練習を重ねる
- 応募企業を広げる
こうした行動は「運をなくす」のではなく、「運が味方する確率を高める」行動です。
さらに、私自身、人事としてたくさんの応募者を見てきましたが、準備を徹底している学生ほど、最終的には複数社から内定を獲得していました。
これが「受かる学生」の共通点だと感じます。
(編集部追記)就活での「運」を自分の努力でカバーしたい人は以下の就活Q&Aを参考にしてください。
就活って結局、運ゲーですよね?
就活が運ゲーに感じる理由
就活が運ゲーに感じる理由
ではなぜ、就活を運ゲーだと感じてしまうのでしょうか。学生が陥りやすい罠についてお伝えします。
自分では変えられない要素が多い
企業の採用人数、景気、面接官、ほかの応募者など、就活には自分ではどうにもできないことが数多くあります。
人はコントロールできないものが増えるほど、「運ゲーだった」と感じやすくなります。
結果しか見えないから
内定という結果だけを見ると、「受かった」「落ちた」の二択です。しかし、その背景には数え切れないほどの要素があります。
- 企業との相性
- 求める人物像
- タイミング
- 募集状況
- 学生自身の経験
それらが複雑に絡み合った結果が一つの合否です。だからこそ、一社の結果だけで自分自身を評価するのは危険だと私は考えています。
クランボルツの「プランド・ハップンスタンス理論」が教えてくれること
「プランド・ハップンスタンス理論」が教えてくれること
キャリア理論のなかでも、私が特に共感しているのが、クランボルツの「プランド・ハップンスタンス理論(Planned Happenstance Theory)」です。
この理論では、キャリアの約8割は偶然の出来事によって形成されると考えます。
ここで重要なのは、「運任せに生きよう」ということではありません。
5つの姿勢を大切にする
クランボルツは、偶然の出来事をチャンスへと変えるために、次の5つの姿勢が重要だと提唱しています。
偶然をチャンスに変える5つの姿勢
- 好奇心:新しいことや未知の分野に興味を持つ
- 持続性:うまくいかなくても挑戦を続ける
- 楽観性:良い結果につながると前向きに考える
- 柔軟性:状況の変化を受け入れ、考え方や行動を変えられる
- 冒険心:失敗を恐れず、新しい挑戦に踏み出す
これらの姿勢を持って行動する人ほど、偶然の出会いや予期しなかった出来事を、自分のキャリアにつながるチャンスへと変えやすくなります。
実際、私自身も転職や独立、現在の仕事につながったきっかけは、最初から計画していたものではありません。「あの人との出会い」「あの仕事を引き受けたこと」といった偶然の積み重ねが、今のキャリアをつくっています。
偶然を待つのではなく、偶然をつくる
就活も同じです。第一志望に落ちた経験が、新たな企業との出会いや、自分に本当に合う仕事を見つけるきっかけになることも少なくありません。
偶然を完全にコントロールすることはできませんが、その偶然を活かせるかどうかは、間違いなく自分の姿勢や行動次第です。
ABC理論で考えると「運ゲー」の意味が変わる
もう一つ参考になるのがABC理論です。
ABC理論では、以下のような関係で出来事を考えます。
- A:Activating events<出来事>
- B:Belief<その出来事のとらえ方>
- C:Consequences<結果>
たとえば、「落ちた=自分には価値がない」と考えれば、自信を失い行動も止まります。
一方で「今回は縁がなかった。改善できる点を探そう」と考えれば、次の企業への準備が始まります。
つまり、人を苦しめるのは出来事そのものではなく、その出来事の解釈である、という考え方です。
もちろん、落ちた直後に前向きになるのは簡単ではありません。しかし、この考え方を知っているだけでも、就活との向き合い方は大きく変わります。
運ゲーでも確率を上げるためにできること
確率を上げるためにできること
「運ゲー」の確率を上げられるのは自分自身の行動・とらえ方です。確率を上げるための考え方を紹介します。
「受かる企業」ではなく「合う企業」を探す
就活では「人気企業だから」という理由だけで応募する学生も少なくありません。
しかし、人事目線で見ると、本当に評価されるのは企業との相性です。自分の価値観や働き方と合う会社を探した方が、内定率も入社後の満足度も高くなる傾向があります。
一社の結果で自分を否定しない
採用は相対評価になることもあります。つまり、「優秀だから受かる」「優秀ではないから落ちる」という単純な話ではありません。
落ちた理由は企業しかわからないことも多いため、一社の結果だけで自己評価を下げる必要はありません。
行動量を増やす
運は待つものではなく、自分から出会いにいくものです。
- 企業説明会に参加する
- OB・OG訪問をする
- キャリアセンターを活用する
- 興味がある業界を広げる
こうした行動量が増えるほど、自分に合う企業と出会う可能性も高くなります。
(編集部追記)「運ゲーである就活」での行動に悩む人は、ラッパー・YouTuberとして活躍される天竜川ナコンさんへのインタビュー記事を読んで視野を広げてみてください。
「就活は運ゲー」。現実チャンネル・天竜川ナコンがそれでも就活をやり切れた理由
まとめ|就活は運ゲーかどうかは、自分のとらえ方次第
「就活は運ゲーですか?」こう聞かれたら、私はこう答えます。
「就活には運が影響します。しかし、人生は就活だけでは決まりません。むしろ、その結果をきっかけにどんな選択をし、どんな経験を積み重ねるかが、その後のキャリアをつくっていきます。」
第一志望に落ちたこと。思い描いた会社に入れなかったこと。
ショックを受けるのは当然ですが、それらは人生の一場面でしかありません。その経験を「人生終わった」「負けた」ととらえるか、「新しい選択肢が生まれた」ととらえるかで、その後のキャリアは大きく変わります。
就活はゴールではなく、キャリアのスタートラインです。
就活だけでなく、勤務地や昇進昇格など、少なからず運に左右される瞬間は確かにあります。
だからこそ、コントロールできないことを嘆くよりも、今日できる行動を一つ積み重ねることが、結果として自分らしいキャリアにつながるのだと、私はこれまで多くの学生を見てきて実感しています。
執筆・編集 PORTキャリア編集部
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