
この記事で得られること
- どんな人に読んでほしい?
新卒就活で外資系か日系企業か悩んでいる人
外資に興味があるけど、なんとなく怖さを感じている人
外資でキャリアを歩みたい人 - このオピニオン記事で得られること
外資系で向いている人に欠かせない2つの条件
無数にある外資系企業の中で、より自分に合った企業の選び方がわかる
本コンテンツは、PORTキャリアに参画するアドバイザーによるオピニオンコンテンツです。アドバイザー自身の一次的な実体験や、これまでの具体的な支援実績に基づいた「その人にしか語れない」独自の知見をお届けします。
※ 記事内で紹介する事例は、関係者のプライバシー保護とキャリアコンサルタントとしての守秘義務の観点から、個人が特定されないよう細心の注意を払って編集・構成しています。
インタビュー・執筆:團祥太郎(PORTキャリア編集部)
「成果主義・実力主義で評価されたい!」
「得意の英語力を活かしたい」
「あいまいなコミュニケーションが苦手」
そうした気持ちで、外資系就活に興味を持つことは間違いではありません。外資20年のキャリアを持つ私自身も「英語を使える仕事がしたい」という純粋な気持ちが始まりでした。しかし、そこからが要注意。イメージで飛び込み、「こんなはずじゃなかった」と後悔する人をたくさん見てきました。
外資歴20年以上で現在キャリアコンサルタントをつとめる私が絶対に必要だと考えるのは、2つ。
「自立心」「理不尽耐性」。
すぐに外資に向いている人の特徴を知りたい人はこちら
「2つの絶対条件」をクリアするだけで、「入ってみて、きつい! しんどい!」という根本的なギャップを感じることはかなり減ると考えています。私自身の実体験とキャリアコンサルタントとしての支援経験に基づき、外資に向いているか・キャリアを自分らしく積んでいけるかをアドバイスします。
木村さんの外資キャリア:「なぜ木村さんは外資系に?」
木村さんが外資キャリアを歩んだきっかけは、「英語を使った仕事がしたい」という比較的ざっくりとしたもの。
日系のビジネスホテルのフロント業務を経て、「英語をコミュニケーションツールとして使いたい」という強い思いを持ち、英語が必須の環境を求めて、日系IT企業の貿易事務の仕事に転職。もっと英語力を高めたい、専門性を身に付けたいという思いから、数年間働いて留学資金を貯め、バイリンガルセクレタリー(日英秘書)を目指して留学。
留学後、現地で就職活動をしていた際、日本で貿易事務をしていた時の元上司がアドビ(Adobe)に転職しており、その紹介で同社に入社することに。日本市場向け製品の品質管理(QA)アシスタントが外資系正社員としてのスタート。
「外資系に入りたかった」というよりは、「英語でのコミュニケーション能力が必要な職場」を探し続けた結果、自然と外資系企業がキャリアの中心になっていきました。
わたしは外資向き? 外資に興味がある人が知ってほしい大前提
知っておいてほしい大前提は、「外資系だから」といって、どの企業も同じ特徴を持つわけではないということです。もちろん、平均としては正しい傾向ですが、実態は千差万別ということです。
日本企業でも年功序列や総合職採用など大雑把なくくりができますが、濃淡があるのは当たり前ですよね。それは外資も同じ。「年功序列」「メンバーシップ採用(ゼネラリスト育成)」が日本企業でよくいわれる特徴ですが、極端な話、外資の方が年功序列やメンバーシップ採用が色濃いパターンもあるのです。

外資でひとくくりは危険! まずは押さえておきたい会社の種類
資本が外資なだけで、働いている人は全員日本人、仕事の進め方も日本企業とまったく変わらない、という会社も実際に存在します。
逆に、本社の意向がものすごく強く、常に本国とやり取りが必要で、日本市場の事情を説明しても「そんなことは関係ない」と一蹴されてしまうような会社もあります。
まずは会社の出資形態や会社の方針を把握し、そのうえで外資の特徴を知ることが重要です。
外国企業の日本法人(100%子会社)
外国と日本の合弁会社
- 海外と日本の企業が共同出資して設立された会社。出資比率によって、企業文化が異なる
企業例:モルガン・スタンレーMUFG証券、ジェットスター・ジャパン
外国企業の日本支社
- 海外の本社の一部門として日本に設置される拠点。法人格は海外本社
企業例:社名に日本支社・日本支局などが付くケースが多い
外資系についてより詳しく知りたい人はこちら
外資系と日系の違いとは? 働く際のメリデメや早期の選考対策も紹介
就活の軸を決める際には下記のコラムが参考になります
就活の軸一覧90選! 納得できる企業選びの基準の見つけ方も解説
千差万別なら外資に「何を求めるか」が重要
成果主義やさっぱりしたコミュニケーション。そうした「外資への憧れ」を否定するものではありません。しかし、もう一歩考えてみて、どうして? と問いかけてください。
自分が求めるものを明確にしないまま、「外資系」という大きな括りで入社すると、「こんなはずじゃなかった」というミスマッチが起こるのです。
外資に何を求めているかの問いかけ例(PORTキャリア編集・制作)
- 英語を使いたい
→どの程度活かしたい? 日常業務で必須の環境か、たまにメールで使えれば良いか? - 「成果主義」を求めるのか?
→ 年齢に関係なく評価されたいのか、明確な評価基準で判断されたいのか? - 「ストレートなコミュニケーション」がしたいのか?
→ 曖昧な指示が嫌なのか、ロジカルな議論がしたいのか?
外資系を迷っている人は一般的にいわれている理由はこちらで整理しています
外資系やめとけと言われる理由7選|向いている人の特徴も徹底解説
英語に興味がある人は外資のほかに英語を使った仕事を下記でまとめています
英語を使った仕事40選! レベル別に合う職種や未経験で就職するコツ
外資に向いている人の2つの特徴【木村さんが厳選】
ここからが本題。外資に向いている人の特徴では、よく一覧リストが紹介されますが、ここで紹介したいのは、もっと根本的な部分です。
さまざまな外資系企業を見てきた私の経験上、「外資系」という環境、特に本社の意向が強く反映されるタイプの企業で活躍できる人には、共通する2つの絶対条件があります。
一般的にいわれる「外資に向いている人」の特徴一覧
(PORTキャリア編集部・制作)
- 「マインドセット・価値観」
成果・実力主義で評価されたい人
変化や競争を楽しめる人
リスクを恐れないマインドを持つ人 - 「仕事への向き合い方・実務能力」
自立心があり、主体的に行動できる人
スピード感を持って効率よく仕事を進められる人
論理的思考力がある人 - 「コミュニケーション・適応力」
ビジネスレベル以上の英語力がある
自分の意見を主張できる人(アサーティブネス)
多様性や異文化への理解がある人
外資系に向いている人の特徴をより詳細にまとめている記事はこちら
外資系に向いている人は特別なスキルがある? 企業が求める人材も解説
①「自立・自走」できる精神|指示待ちの人は絶対に向いていない!
外資系企業に向いている人の絶対条件、その1つ目は「自立精神」です。もっと言えば「指示待ちの人は絶対に向いていない」ということです。
自分で考えて、自分で決断して、行動に移せる人。間違ってもいいからやってみよう、という気持ちを自然に持てる人でないと、本人も周りもつらくなります。
なぜでしょうか。理由の一つが、外資系企業の多くが「ジョブディスクリプション(職務記述書)」によって、個人の役割・責任範囲を明確にしているから。
ジョブディスクリプション(職務記述書)
業務内容や責任の範囲、必要なスキル・資格を明文化した文書のこと。日本で主流となっているメンバーシップ採用と対照的な「ジョブ型採用」における契約の基礎となる。
日系企業のように「グレーゾーン」の仕事が少なく、「あなたの仕事はここまで」という役割分担がはっきりしています。そのため、「誰かが手取り足取り教えてくれる」という文化は、日系企業に比べると少ないと思った方がいいでしょう。
自分の役割を完遂するのが大前提。その上で、チームや会社にどう貢献するかを自分で考えて動くことが求められます。
「自己主張が強い」は大きな勘違い
よく「外資は自己主張が強い」と言われますが、これは「何でもかんでもワガママを言えばいい」ということでは全くありません。
本当に必要なのは、「自分の意見をちゃんと持っていて、必要な時に、適切に発言し、議論できる」能力です。 自分の役割を果たすために、言うべきことはしっかり言う。それが外資系での「自立」です。
②「理不尽」へのポジティブな耐性|変化・方針変更が当たり前と捉える
2つ目の絶対条件は、少しドキッとするかもしれません。「理不尽さや不確実性への耐性」です。
特に本社の意向が強い外資系企業では、変化のスピードが非常に速いです。
私自身、IT業界が長かったこともありますが、昨日まで全社を挙げて進めていたプロジェクトが、急な本社の方針転換で「今日からポシャりました(中止です)」みたいなことは日常茶飯事でした。 現場としては「ふざけんなよ!あとちょっとだったのに!」と思いますよね(笑)。
しかし、これは経営判断が早いがゆえの「当たり前」でもあります。
この「理不尽」とも思える急な変化に対し、
マインド①
「あんなに頑張ったのに、なんでだよ…」と感情的になって落ち込み続ける人
マインド②
「はい、次。じゃあ今できることは何かな?」とすぐに頭を切り替えられる人
どちらが外資系でやっていけるかは、明らかですよね。 「外資ってそういうもんだよね」と割り切り、状況の変化を前向きに受け入れ、どうすればいいかを考えられるポジティブマインドが不可欠です。
自分に「耐性」があるか見極めるには?
「理不尽への耐性なんて、働いてもいないのに分からない」と思いますよね。 その場合は、自分の過去の経験を振り返ってみてください。
“理不尽”耐性があるのかの問いかけ例(PORTキャリア編集・制作)
- 部活動で、自分のせいではない理由(例:先輩の不祥事)で大会に出られなくなった。
- サークル活動で、自分が進めていた企画が先輩の一声でひっくり返った。
- コロナ禍で、楽しみにしていた留学やイベントがすべて中止になった。
誰かのせいにして、ふてくされて辞めてしまったか? 落ち込みながらも、じゃあ今できることは何か、と別の楽しみを見つけたり、次の目標に切り替えたりしたか?
こうした「自分ではどうにもできない理不尽」に直面した時、あなたはどう感じ、どう行動しましたか?
そこに、あなたの「理不尽」への向き合い方、つまり「耐性」が表れているはずです。 もしネガティブな感情を引きずってしまうタイプだと思うなら、本社の意向が強く、変化の激しいタイプの外資系企業は避けた方が賢明かもしれません。
外資に向いていない人は?
向いていない人の特徴①自立心がない
- 具体的な指示がないと行動できない
- 手厚い研修やOJT(教育)を期待している人
- 役割の範囲外の課題に気づいても動かない人
向いていない人の特徴②理不尽への耐性がない
- 決められたことを着実に進めたい人
- 感情の切り替えが遅く、ネガティブなことを引きずる人
- 「安定」や「予測可能性」を最優先する人
外資系に向いていない人の特徴は以下のQAコンテンツでもキャリアコンサルタントが解説しています
外資系に向いてない人の特徴は何ですか?
実際の「外資系を辞めたい」という悩みとその回答は以下のQAコンテンツで確認できます
外資系企業を辞めたいけど決断できません……。
失敗しない「外資」の選び方|企業分析でやってほしい3つの問いかけ
では、どうやって「自分に合った外資系企業」を見極めればいいのでしょうか。 「外資」という括りではなく、それぞれの企業をしっかり研究することが重要です。
以下の3つの視点で企業分析をしてみてください。
①本社の意向は強いか? 日本の裁量は大きいか?
・製品ラインナップや広告キャンペーンは、世界共通のものが多いですか?
・それとも日本独自のものが活発ですか?
後者であれば、日本法人の裁量が大きい(=日系企業に近い働き方)可能性があります。
②日本支社に求められている機能は何か?
・本社の商品を日本で売るための「営業機能」がメインの会社ですか?
・それとも、日本に「開発拠点」や「研究拠点」がある会社ですか?
機能によって、求められる人材や社風は全く異なります。特に営業機能がメインの場合、本社の意向が強く反映される傾向があります。
③社内で使われている言語は?(英語力は必要か?)
「英語力を生かしたい!」と思って入社したのに、社内公用語は完全に日本語で、本社とのやり取りも一部の人だけ…という会社も山ほどあります。
もちろん、キャリアアップを目指すなら英語は必要ですが、「新卒時点」でどの程度のレベルが求められるかは、会社によります。
外資キャリアを歩みたい人が学生時代にできること
「外資に向いている素質を、学生のうちからどう高めればいいか」という質問もよく受けます。 日常的にトレーニングできることは3つあります。
外資に向けて準備ができる3つのこと
- 英語力: 英語力はあるに越したことはありません。ただし、急には上達しないのでコツコツとやることが大切
- ロジカルシンキング(論理的思考):自分の意見を「なぜそう思うのか」を筋道立てて説明する力
- ディスカッション能力:自分の意見を一方的に主張するのではなく、相手の意見を聞き、議論の「キャッチボール」ができる能力。これは特に英語での会議などで非常に重要
【編集部・編】木村さんに質問!外資希望者が知りたい 2つの疑問
Q. 結局、「英語力」は必須ですか?
A. 必須・不要な会社があるが、マネジメントを目指すなら最終的にはマスト
木村さんのアドバイス通り、これは企業によります。日本法人が設立されていて、本社とのやり取りは一部の管理職だけ、という会社であれば、新卒時点では全く英語力が問われないことも多いです。
ただし、「将来的に外資系で高い地位(マネジメントなど)を目指したい」のであれば、英語は必須のツールになります。英語力がないからと諦める必要はありませんが、自分のキャリアプランと、受ける会社の「英語が必要なフェーズ」を見極めることが重要です。
Q. 外資は本当に「成果主義」なんですか?
A. 組織によってかなり異なる
「成果主義」と聞いて期待して入社しても、その「成果」を測る評価基準が明確に設定されていなかったり、給与体系が日本企業の水準に合わせて調整されていたりするケースも多々あります。
「成果主義だから評価されたい」という動機で入社する場合、その会社があなたの望む「成果主義(=明確な評価基準や報酬体系)」を持っているかどうかは、入社前に慎重に見極める必要があります。
まずは「自分」を知り、外資に何を求めているかを棚卸ろしすることから
外資系企業への就職は、魅力的なキャリアの一つです。 しかし、「かっこいいから」「お金が稼げそうだから」といった漠然とした憧れだけで選ぶと、ミスマッチが必ず起こります。
この記事でお伝えした「自立精神」と「理不尽への耐性」。 この2つを自分は持っているか、あるいは、そういう環境に身を置きたいと心から思うか。
そのうえで、あなたが外資系企業に「何を求めているのか」を徹底的に自己分析すること。 それが、あなたに合った企業を見つけるための一番の近道です。
編集後記●外資系は「明日から会社にこなくていい!」といった厳しいイメージがあり、新卒の就活を思えば、外資は選択肢から外していました。また、外資を目指す人は、エリート感があってかっこいいというイメージを持っていました。平均という点では、イメージを持つのは良いことかもしれませんが、就活という人生の選択肢というシーンでは「イメージ先行は危険!」と如実に実感したインタビューでした。(團)
執筆・編集 PORTキャリア編集部
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