本企画について
「噂や評判に、プロの確実な視点を。」をテーマに企業選びや意思決定の支援をする企画です。漠然とした不安には「確度の高い事実」を、意思決定には「キャリアの専門家による視点」を提供することを目指します。
資生堂は数多くの美容製品を手掛けており、日頃から利用している人にとっては身近な企業だと感じる人も多いのではないでしょうか。しかし、企業について調べてみると、「赤字」や「リストラ」という不安になるようなワードがヒットします。
ただし、企業に関するネガティブな噂がすべて正しいとは限らないため、この記事では客観的な視点で実態を読み解きます。美容業界での経験が豊富なキャリアコンサルタントによる解説も交えているので、資生堂について理解を深めていきましょう。
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1分でわかる資生堂
資生堂とは
1872年に東京・銀座で日本初の民間洋風調剤薬局として創業した、150年以上の歴史を持つ日本発のグローバルビューティー企業。企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」のもと、独自の価値創造をグローバルに展開。
現在は2030年に向け、スキンビューティーとウェルネスを融合した「Personal Beauty Wellness Company」の実現を目指す。
| 会社名 | 株式会社資生堂(Shiseido Company, Limited) |
| 上場 | 東京証券取引所プライム市場 |
| 従業員数(連結) | 26,330人(2025年12月時点) |
| 本社所在地 | 東京都中央区 |
| おもな事業 | ・化粧品事業 ・レストラン事業 ・美容室事業 ・教育事業 ・保育事業 |
| 売上高(連結) | 9,699億9,200万円(前年同期比2.1%減)(2025年12月期) |
| 経常利益(連結) | 288億円(同3.0%減)(同期間) |
| 平均年収 | 708万304円(2025年12月期) |
| おもな福利厚生 | ・資生堂ハイブリッドワークスタイル ・フレックスタイム制度 ・在宅勤務制度 ・育児休業制度 ・有給の短期育児休業 ・事業所内保育所など |
| 企業HP | https://corp.shiseido.com/jp/ |
| 新卒採用HP | https://recruit.shiseido.com/ |
「資生堂はやばい」と言われる4つの理由|プロが読み解く
「資生堂はやばい」と言われる4つの理由
資生堂がやばいと言われている4つの理由を、信頼性の高い情報を用いて読み解いていきます。キャリアコンサルタントからもプロの視点で解説をしているので、ぜひ企業研究の参考にしてみてください。
①約400億円もの赤字を出したから
資生堂は2025年度に米州事業におけるのれんの減損損失を計上したことで、407億円の赤字を記録しました。加えて、昨期も108億円の赤字を記録したため、2期連続での最終赤字という結果になりました(※1)。
| 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 当期利益 | 469億円 | 342億円 | 217億円 | ▲108億円 | ▲407億円 |
| コア営業利益(前年比) | 426億円 (-%) | 513億円 (+21%) | 398億円 (-22%) | 364億円 (-9%) | 445億円 (+22%) |
赤字の状況でも、2025年12月期の本業の稼ぐ力を示すコア営業利益は前年比+22%とV字回復を遂げました。注力しているブランドへの選択と集中、270億円の構造改革などで効果を出せたことが影響したようです。
そのため、赤字が続いている状況だからといって、「やばい」と断定するのは早計だと言えます。細かい数値まで確認することで、企業の将来性を読み解きましょう。
※1 資生堂 統合レポート 2025
※2 資生堂 有価証券報告書 各年
②リストラがあったから
資生堂は2024年4月17日に、日本事業の収益の早期回復を目指した経営改革であるミライシフトNIPPON 2025の一環として、早期退職支援プランを実施しました(※1)。結果として、2024年9月30日付けで1,477人が希望退職したと報告されました(※2)。
また、2025年11月10日にも同様の希望退職プログラムが発表され、2026年3月31日付けで257人が退職しました(※3)。これらの一連の取り組みが、リストラという噂になっていると考えられます。
しかし、複数回の人材調整は会社の成長を目的としたものです。希望者を募ったうえで退職金や再就職支援のサービスなどを提供する制度であるため、強制的に辞めさせられるリストラとは分けて考えるべきでしょう。
※1 資生堂 資生堂ジャパン「ミライシフトNIPPON 2025」
※2 資生堂 当社子会社 資生堂ジャパン株式会社におけるビジネストランスフォーメーション「ミライシフト NIPPON 2025」での早期退職支援プランの実施結果に関するお知らせ
※3 資生堂 当社および国内一部子会社における
希望退職プログラム「ネクストキャリア支援プラン」の実施結果に関するお知らせ
アドバイザーのリアル・アドバイス!資生堂の退職支援を正しく評価するための視点
資生堂の退職支援のような人員調整は、単純に良い悪いで判断するのではなく、その目的と実施方法を見極めることが重要だと考えます。
資生堂のような大企業では、市場環境の変化や事業構造の見直しに対応するために人員最適化をおこなうこと自体は、経営上必ずしも否定的なものではありません。
退職支援制度の妥当性を見極めるポイントがある
ただ、従業員は企業の重要な資産であり、単にコスト削減の対象として扱われるべきでないことは周知の事実です。
その点、退職金の上乗せや再就職支援などを整備し、本人の選択を尊重する形で実施される退職支援制度は、整理解雇と比べれば配慮のある対応と評価できます。
さらに現代は、雇用の流動化が求められ、企業間の移動に注目が集まっています。これまで身に付けたスキルを、ほかの企業、または起業などをして市場で活かすことに挑戦してみたいという人材側のニーズがあることも考えられます。
③手軽に買える商品が減ったから
資生堂は2021年2月にCVC Capital Partnersと譲渡契約を締結したことで、パーソナルケア事業を手放しました(※1)。そのため、TSUBAKIやSENKAといった消費者が低価格で買える日用品が減ることになりました。
ただし、いわゆるプチプラ商品が減ったからといって、経営状況が傾くわけではありません。同社の中核を担うのは中~高価格帯であり、高付加価値型経営モデルを確立するために、低価格帯事業を譲渡する選択を取りました(※1)。
実際に、パーソナルケア事業を譲渡してからの同社の売り上げですが、1兆円前後を推移しており、大きく業績が落ち込んだ期間はありません(※2)。そのため、体制が変わっても安定的に経営を続けているという事実が見て取れます。

※1 資生堂 INTEGRATED REPORT 2021
※2 資生堂 有価証券報告書 各年
プロのアドバイザーはこう分析!低価格帯の切り捨ては吉と出るか? 資生堂の新戦略の行方
身近な商品が資生堂の傘下を離れたことで、消費者が商品に触れる機会や、若い世代における認知度が低下する可能性はあります。
低価格帯の商品は購入頻度が高く、将来、中~高価格帯の商品へ移行する顧客との接点にもなるため、その役割を失ったことは課題です。
ただし、譲渡後の「TSUBAKI」や「SENKA」の売上は資生堂の連結業績に含まれないため、その後の販売状況が資生堂の収益に直接影響するわけではありません。
資生堂は経営資源を「SHISEIDO」「クレ・ド・ポー ボーテ」「NARS」など、利益率や成長性が期待できるブランドへ振り向けています。
この戦略が成功すれば、販売数量が減っても、ブランド当たりの収益力を高められます。新たな顧客層を着実に開拓できるかどうかも重要です。
新規ユーザーの獲得が鍵! リスクも背負った資生堂の選択
今後、ECやSNSを活用し、若い世代が高価格帯ブランドを知り、試せる接点を増やす必要があります。既存顧客の単価向上に加え、新規顧客を獲得できるかが中長期的な成長を左右するでしょう。
ただし、価格帯や顧客層を絞ることで、景気後退や中国など特定市場の変化による影響を受けやすくなる面もあります。
④新卒の就職難易度が高いから
資生堂は化粧品業界でもトップクラスの売上を誇り、就活生からも人気の企業となっています。そのうえ、同社は従来の採用プロセスを見直し、世界のトップタレントを採用するための「決して妥協しない高い採用基準」の実現を目指しています(※)。
統合レポートでも、変化への適応力や学習意欲、業界の競争をリードできるセンスやスキルなど、高い能力が必要となることが述べられています。
資生堂が求める人材(※)
- 変化の激しい消費市場へ「適応力」と「俊敏性」を有している人材
- グローバル・ビューティー競争をリードできる「センス」と「スキル」を有している人材
- 期待を超える成果創出に向けた「学習」と自己成長への「情熱」を有している人材
- 企業価値向上に対する自らの「決意」と「責任」を有している人材
アドバイザーからワンポイントアドバイス顧客に価値をわかってもらうことが最大の役目
顧客に寄り添い「価値を伝えること」を大切にする姿勢が、資生堂の社員に求められる本質だと感じています。
美容部員として入社して間もない頃、なかなか成果が上がらず伸び悩んでいた私に、先輩がこのような言葉をかけてくれました。
「私たちの仕事で大事なのは、売ろうとすることではなく、『この化粧品を使うとキレイになりますよ』という価値を伝えること。その想いが伝われば、売上は自然についてくるものだよ。」
その言葉に感銘を受け、意識と行動を変えたところ、成果にもつながっていきました。
資生堂社員の仕事は、顧客の「なりたい自分」に寄り添い、その実現をサポートすることだと、現場で学びました。
顧客視点を大切にして入社後の将来像を描いてほしい
就活生には、顧客に対し、どう役に立てるかという視点を大切にしてほしいと思います。その姿勢こそが、資生堂らしい働き方につながるのではないでしょうか。
資生堂に向いているのは○○な人
資生堂に関する噂には、事実とそうでないものがありました。信頼のおける情報源から得た内容をもとに、企業と自分自身とを照らし合わせ、納得できる企業選びを目指しましょう。
最後に、資生堂に向いている人・向いていない人の特徴をまとめました。企業選びのうえでぜひ参考にしてください。
向いている人の特徴
・自律的にキャリアを切り拓き、学び続けたい人
・多様性を尊重し、チームで最高のシナジーを生み出せる人
・リスクを恐れず、自ら動き変革を起こせる人
向いていない人の特徴
・キャリア形成や成長機会を「会社任せ」にしたい人
・均一・同質な環境を好み、他者の多様な価値観を受け入れられない人
・変化を嫌い、現状維持や安定した前例踏襲を最優先にしたい人
・個人主義に終始し、チーム全体のハーモニーを軽視する人
アドバイザーのリアル・アドバイス!受け身な姿勢はNG! 自分の希望と職種の理解を明確にしよう
資生堂のような大企業では、職制によって役割が異なるため、自分の希望がかなう採用ルートかを見極めて応募する必要があります。「入社後に考える」という受け身の姿勢では通用しません。
同社には製造、販売、PR、経営といった役割があり、時代に合わせて組織も変化しています。総合職や一般職、美容部員など採用窓口も多岐にわたるため、事前の企業理解が不可欠です。
ビジョンの有無でギャップを感じることを考慮しておこう
私自身の話ですが、高倍率を突破し本社の研究室に美容師として採用されましたが、入社後のビジョンを持てませんでした。
結果として日々の厳しいスキル評価の意図を理解できず、研究や広報へと続くキャリアパスがあったにもかかわらず早期離職してしまいました。
本社別館のビルだけで1,000人以上が働き、常に同期20人が定期的なスキルチェックを受け、その結果がランク付けされる日々でした。
私はその意図が理解できずつらくなり、いずれは研究部門か広報部門で働くというキャリアパスがあったにもかかわらず、数年で離職してしまいました。
今なら「切磋琢磨させたい」という会社の意図は想像できますが、二十歳そこそこの自分には、理解できませんでした。
具体的な採用は、総合職や一般職のほか、販売をする美容部員、顧客対応のお問い合わせセンタ―のオペレーターなど複数になると考えられます。
自分は何をしたいのか、そのためにどんな経験をしてきたのかということを、考えてみてください。
執筆・編集 PORTキャリア編集部
> コンテンツポリシー記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi





プロのアドバイザーはこう分析!赤字に惑わされない! 資生堂が目指す黒字化の道のり
キャリア・デベロップメント・アドバイザー/キャリアドメイン代表
谷所 健一郎
プロフィールを見る資生堂の経営が直ちに行き詰まる可能性は低いものの、将来を楽観できる段階でもありません。
2025年度の損失には、買収時に計上した資産価値を引き下げる減損など、一時的な要因が大きく影響しています。
現金が同額流出する損失ではないため、最終赤字だけで事業の継続性に問題があると判断するのは適切ではありません。実際、2026年度上期は営業利益や最終利益が前年同期を上回り、通期でも黒字転換を見込んでいます。
低迷から脱却できるか? 資生堂のブランド力が試されている
一方、売上高の伸びは弱く、中国市場の変化やトラベルリテールの低迷、米州ブランドの立て直しなどの課題は残っています。
コスト削減による利益改善だけでは持続的な成長につながらないため、重点ブランドへの投資が売上拡大や収益性向上に結び付くかが重要です。
同社は世界的なブランド力、研究開発力、アジアでの販売基盤を持ち、回復の余地はあります。
今後は売上高、コア営業利益率、営業キャッシュフローに加え、中国・米州事業の回復状況を確認する必要があります。赤字の有無だけでなく、成長戦略が成果を上げているかまで見極めましょう。