本企画について
「噂や評判に、プロの確実な視点を。」をテーマに企業選びや意思決定の支援をする企画です。漠然とした不安には「確度の高い事実」を、意思決定には「キャリアの専門家による視点」を提供することを目指します。
「リコーはやばい」
創業から90年を迎える精密機器のメーカーであるリコーは、主力製品であるプリンターで世界的な売り上げを誇る企業です。そんな大企業でも、実は「市場が縮小している」「2,000人がリストラされた」といった評判があるのです。
その噂は本当なのか、就活の専門家であるキャリアコンサルタントとともに読み解いていきましょう。この記事を読んで、正しい情報をもとに企業の実態を把握する方法を学んでみてくださいね。
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1分でわかるリコー
リコーとは
1936年に設立されたメーカー。複合機やプリンターなどのオフィス向け機器を主力に成長してきたが、近年は「デジタルサービスの会社」への転換を掲げる。企業の働き方改革を支援するITサービスに注力し、事業の柱へと成長させる。
また、商用・産業印刷やサーマル製品、デジタルカメラなどの製造・販売も広く展開、「“はたらく”に歓びを」というビジョンのもと価値創造に取り組む。
| 会社名 | 株式会社リコー |
| 従業員数(連結) | 75,635名(2026年3月31日現在) |
| 本社所在地 | 東京都大田区 |
| 主な事業 | ・デジタルサービス:複合機、プリンター、印刷機、広幅機、FAX、スキャナ、パソコン、サーバー、ネットワーク関連などの機器、および、関連する消耗品、サービス、サポート、ソフトウエア、ドキュメント関連サービス、ソリューションなどの販売 ・デジタルプロダクツ:複合機、プリンター、印刷機、広幅機、FAX、スキャナ、ネットワーク関連などの機器、関連消耗品などの製造・OEM、電装ユニットなどの製造・販売 ・グラフィックコミュニケーションズ:カットシートPP(プロダクションプリンター)、連帳PP、インクジェットヘッド、作像システム、産業プリンターなどの機器、および、関連する消耗品、サービス、サポート、ソフトウエアなどの製造・販売 ・インダストリアルソリューションズ:サーマルペーパー、サーマルメディア、産業用光学部品・モジュール、精密機器部品などの製造・販売 ・その他:デジタルカメラ、360°カメラ、環境、ヘルスケアなど |
| 売上高(連結) | 2兆5,278億7,600万円(前年同期比7.6%増)(2025年3月期) |
| 税引前利益(連結) | 700億6,700万円(同2.7%増)(同期間) |
| 企業HP | https://jp.ricoh.com/ |
| 新卒採用HP | https://jp.ricoh.com/jobs/about |
「リコーがやばい」と言われる4つの理由|プロが読み解く
「リコーがやばい」と言われる4つの理由
リコーがやばいと言われる理由は大きく分けて4つあります。一つひとつに根拠となるデータを紹介しながら説明していきます。また、キャリアコンサルタントのプロ視点のアドバイスも併せて参考にしてみてください。
①複合機市場が縮小しているから
複合機やプリンターを主製品とするメーカーのため、昨今のペーパーレス化やリモートワークの増加によって、市場が縮小しているのではないかと言われているようです。実際に企業内では大量印刷の需要が減少していると述べられており、業績に影響するリスクがあると認識されています(※1)。
そこで、同社は単なるメーカーからデジタルサービスの会社へと変化しながら、より時流に沿ったサービス展開をしていくとしています。具体的には、紙媒体の文書をデジタル化するために同社の新世代複合機を使用して、業務のデジタル化・自動化・省力化を推進しようとしています。
また、中小企業に対する業務効率化のためのパッケージ型ソリューションの販売を伸長させるなど、ペーパーレス化という逆風をあえて活用して新たな成長につなげようとしていると言えます(※2)。
※1 リコー 有価証券報告書 2025年3月期
※2 リコー 有価証券報告書 2020年3月期
プロのアドバイザーはこう分析!全国的にリコーのネットワークがあることが武器になる
リコーのサービス転換は「非常に強い武器(顧客基盤)を持った、勝算の高い挑戦」ですが、ここ数年がまさに正念場と言えると思います。
同社の最大の強みは、全国の中小企業を中心に、すでにオフィスに「リコーの複合機」が設置されているという圧倒的な顧客接点(チャネル)です。
ゼロから新規開拓しなければならないITベンチャーと違い、すでに信頼関係がある状態で「次はオフィスのペーパーレス化やDXを一緒にやりませんか」と提案できるのは、他社からすると喉から手が出るほど欲しい強みです。
変革のスピードに乗れるかどうかが成長のポイントとなる
ただし、順調に伸ばせるかの鍵は「現場の変革スピード」にかかっています。
2024〜2025年の大規模な構造改革を経て、組織のITシフトを急ピッチで進めましたが、単なる「OA機器の販売」から「企業の課題を解決するITコンサルティング」へ、社員一人ひとりがどれだけ早く脱皮できるかです。
この実践型デジタル人材への転換さえクリアできれば、デジタルサービスの会社として再び大きな成長軌道に乗る確度は極めて高いのではないでしょうか。
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自分に合う職業・合わない職業を知ることは、就活において非常に重要です。しかし、見つけるのが難しいという人も多いでしょう。
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②大規模なリストラがあったから
2024年9月12日にリコーから、セカンドキャリア支援制度と呼ばれる大規模な人員調整を見込んでいるという発表がありました(※)。概要としては、国内だけでも1,000人、海外のグループ会社も含めると2,000人もの希望退職者を募るというものです。
確かに何千人もの人員調整をするという報道は、企業が「やばい」と言われる理由になりかねません。過渡期における現場の負担になったことは否めないでしょう。
ただ、この取り組みは単純なリストラというわけではなく、会社の最大の課題である収益性の改善を図った抜本的改革とされています。
デジタルサービス会社となるために必要なスキルや人員の強化、そして各地域での人員体制の適正化を目指すものということを押さえておきましょう。
※ リコー 国内希望退職制度「セカンドキャリア支援制度」実施に関するお知らせ
プロのアドバイザーならこうアドバイス!2,000人という数字に惑わされず本質を知ろう
私が注目すべきだと感じるのは、人員削減の人数そのものよりも、その後の成長戦略に一貫性があるかどうかです。
もちろん、人員削減が組織に与える影響は小さくありません。しかし、2,000人という人数だけで判断するのではなく、その改革によってどのような企業へ変わろうとしているのかまで目を向けることが大切です。
リコーの軌跡を踏まえて企業の取り組みを見てみよう
リコーは、複合機メーカーとして、長年にわたり法人顧客との信頼関係を築き、全国規模の販売網やサポート体制を構築してきました。こうした顧客基盤や営業・保守ネットワークは、同社の大きな競争優位性になっています。
また、同社はまったく異なる分野へ進出するのではなく、既存事業との関連性を持ちながら事業領域を広げる関連多角化を進めてきた企業でもあります。
これは、自社のコア・コンピタンスを活用しながら成長を目指す戦略であり、事業間のシナジーも期待できます。
こうした強みを活かせる土台があるからこそ、今回の施策は単なる縮小ではなく、将来の競争力を高めるための事業再構築としてとらえられるでしょう。
③営業職が激務だから
リコーについて調べてみると、特に営業職は「きつい」「ノルマ」といったワードが出てくるようです。
リコーの営業職では、メインの製品である複合機だけでなく、業務効率化のためのITツールなども提案します。顧客の課題に対して最適な提案をするためには、業界のトレンドや最新ツールについて学ぶ必要があり、その点がきつさの原因になっている可能性があります(※1)。
ノルマの有無については公表されていないようですが、社員へのインタビューを見ると、過度に成果を求めるような過酷な環境ではないと読み取れます。
メンバー同士で協力する姿勢があったり、結果だけでなく頑張りを評価してくれるイベントの開催などを設けていたりするようです。
新卒営業職社員(※2)
「メンバー同士の仲が良く、『みんなで協力して、成果を上げていこう』という温かい風土があるのも魅力のひとつです。」
新卒営業職社員(※3)
「リコージャパンアワードやプロフェッショナル認定制度など、社員の頑張りを確実に評価してくれるイベント・制度が用意されているのも良いところ。」
リコー全体での平均残業時間自体は12.5時間(2024年度)(※4)と、製造業界の平均14.5時間(※5)を下回っていますが、営業職において最大でどこまで忙しくなるのかは、OB・OG訪問や説明会等で確認してみましょう。
※1 リコー 採用情報 社員紹介03
※2 リコー 採用情報 社員紹介01
※3 リコー 採用情報 社員紹介02
※4 リコー データで見る働き方改革
※5 厚労省 毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報
プロのアドバイザーはこう分析!変革期だからこその2種類のきつさを求められる
リコー(おもに国内販売を担うリコージャパン)の営業職が「きつい」と言われる背景には、まさに今の「過渡期ならではの泥臭い業務が必要な点」にあります。
1つ目のケースは「旧ビジネス」と「新ビジネス」の板挟みです。リプレイス阻止のため市場が縮小している既存の複合機のシェアを守りつつ、最新のDXソリューションの数字も作らなければならない時期です。
この新旧両方の目標を追うフェーズは、精神的にも物理的にも負荷がピークに達しやすくなります。
2つ目のケースはITツールの「導入・運用サポート」です。顧客である中小企業のITリテラシーが必ずしも高くない場合、ツールの初期設定や操作説明、トラブル対応に営業自身が現場へ駆けつけ、泥臭く並走せざるを得ない場合があります。
ビジネスの力を磨くチャンスとしてとらえよう
ただ、これは裏を返せば、単なるモノ売りではなく、企業の経営課題に深く踏み込む「本物のBtoB提案力」が若手のうちから身につく環境ということでもあります。
全社平均の残業時間は12.5時間と労働管理は徹底されているため、この「過渡期のカオス」を自分の成長のチャンスととらえられるタフさがあるかどうかが、適性の分かれ目ではないでしょうか。
大企業としての安定した福利厚生を享受しながら、中身は「IT企業への生まれ変わり」という激動のフェーズを経験できるのが今のリコーの面白さだと思います。
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自分の適職や適さない職業を理解して、自信を持って就活を進めましょう。
④若手の離職率が高いから
リコーの新卒社員の入社3年後の定着率は97.1%(2024年度)(※1)とかなり高水準となっています。また、社員の平均勤続年数は20.0年(※2)と、製造業界の平均14.9年(※3)を上回っており、若手から長く働こうと考えている人がいても、見合った環境が整っているということがわかります。
離職率というキーワードがヒットする理由としては、2024年に大規模な人員削減の計画が出されたことが考えられます。今後の成長を見据えた戦略的な取り組みですが、国内外合わせて約2,000人規模の人員整理となったため、離職する人が多いという印象が強かったのかもしれません。
また、口コミサイトでは比較的会社への不満がある人の書き込みが目立つため、同社を辞めた人の発言が取り上げられやすいことも想定されます。
※1 リコー はたらく環境と制度
※2 リコー 有価証券報告書 2025年3月期
※3 厚労省 令和6年賃金構造基本統計調査の概況
プロのアドバイザーはこう分析!働きやすいのに辞める? 世代ごとに感じるギャップや価値観
リコーは長く働きやすい環境が整っている企業ですが、そのうえで離職する人がいるとすれば、年代ごとに理由は異なりそうです。
①若手層:業務内容にギャップを感じた
たとえば若手の場合、「メーカーでモノづくりに携わりたい」と入社したものの、実際には顧客への提案やDX支援にかかわる機会も多く、「想像していた仕事と違った」と感じるケースがあるかもしれません。
②中堅層:キャリアアップを考えた
中堅層は、「より専門性を高めたい」「裁量の大きな環境で挑戦したい」といった理由で転職を考える人は少なくありません。
特にリコーは、デジタルサービス企業への転換を進めており、その変化を成長機会ととらえる人もいれば、自身のキャリアとのズレを感じる人もいるでしょう。
③ベテラン層:環境の変化にギャップを感じた
またベテラン層では、培った経験を別の環境で活かしたい人がいる一方で、事業変革に伴う役割や求められるスキルの変化に戸惑い、「これまでの経験が活かしにくくなった」と感じるケースも考えられます。
長く働ける会社だからこそ、離職理由は労働環境への不満よりも、キャリアの方向性や変化への向き合い方によるものが多いのではないでしょうか。
噂の原因から本当の企業の姿を把握しよう
市場の縮小やリストラなどの情報を聞くと、思わず不安になってしまうものですが、必ずしもすべてが事実というわけではありませんでした。
噂となる原因が何なのかを把握したうえで、実際の企業はどのような状態なのかを考えることで、正しく企業を理解しましょう。
アドバイザーのリアル・アドバイス!リコーの二刀流経営から向き不向きをとらえよう
現在のリコーは、複合機やプリンターだけでなく、DX支援やITサービスにも力を入れており、ものづくり企業とITサービス企業の両方の顔を持っています。
リコーに向いているのは、チームで成果を出すことが好きな人・長期的な成長を重視する人・DXやITに興味のある人です。
一方で向いていないのは、若いうちから高収入だけを追求したい人です。また、個人プレーが好きな人、変化の速いベンチャー企業を求める人などはモノ足りなく感じると思います。
面接に向けて会社に関連する知識・自身の過去の成果について準備しよう
今からできる準備としては、DXやITの基礎知識を学ぶこと、面接対策として、チームで成果を出した経験を整理しておくこと、志望動機の説得力を高めるために業界研究を深めることが望ましいです。
執筆・編集 PORTキャリア編集部
> コンテンツポリシー記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi






3名のアドバイザーがこの記事にコメントしました
キャリアコンサルタント
Arisa Takao〇第二新卒を中心にキャリア相談を手掛け、異業種への転職をサポートする。管理職向けの1on1やコンサルティング業界を目指す新卒学生の支援など年齢や経歴にとらわれない支援が持ち味
プロフィール詳細キャリアコンサルタント/性格応用心理士1級
Minoru Kumamoto〇就職・転職サイト「職りんく」運営者。これまで500名以上のキャリア相談を受けた実績。応募書類や採用面接の対策支援をする他、自己分析の考え方セミナーを実施
プロフィール詳細国家資格キャリアコンサルタント/キャリア・デベロップメント・アドバイザー
Koji Tanii〇大手メーカーで設計、品質管理に従事。キャリアチェンジののち、高校・大学の就職講師として活動。障がい者の就職や恋と仕事の両立を実現させるコンサルティングなど幅広い支援をおこなう
プロフィール詳細