この記事のまとめ
- 人手不足だからと退職を認めないのは違法行為
- 引き止めのパターンを把握して事前に対策をしておこう
- 人手不足で悩まずに済む会社へ転職するためのコツを押さえよう
- 自己分析ツール
たった3分で面接で使える"あなたの強み"がわかる!
この記事を読んでいる人におすすめ
「仕事を辞めたい」と伝えたにもかかわらず、人手不足を理由に会社が適切に取り合ってくれないケースがあります。人手不足は本来会社が責任を持つべき問題なので、すでに退職の意思が固いのであれば、自身の将来を優先するための行動を取っていきましょう。とはいえ、強引な行動に出て会社とトラブルになるのも避けたいですよね。
この記事では、社員が持つ退職の権利や、退職までの基本的なフロー、人手不足を理由に引き止められた場合の対処法を紹介します。退職にまつわる基本的なルールを知り、「人手不足だから」と会社がルールを飛び越えた対応をおこなった場合に適切な行動を取れるようになりましょう。
社員と会社の間のトラブルに詳しいキャリアアドバイザーの村谷さん、永田さん、板谷さんとともに、どうすれば人手不足の会社をより早く穏便に辞めることができるかを解説していくので、人手不足の会社からの退職を考えている人はぜひ最後まで目を通してください。
人手不足を理由に退職を認めないのは違法! 適切な意思表示で円滑に退職しよう
前提として、会社が社員の退職を認めないのは違法です。民法第627条1項で、社員は会社にいつ辞職の意向を伝えても良く、かつ2週間後には退職ができると定められています。つまり、人手不足などの問題があったとしても、会社は社員の退職を認めなくてはならないと法律で決まっているのです。
しかし会社も、ここまで一緒に働いてきた社員の流出は避けたいと考えています。記事の前半では、そういった会社が抱える事情について解説します。会社の本音を知ることで、引き止めのパターンに応じた適切な対処法が見えてきます。ケース別に引き止めへの対処例も紹介するので、併せて参考にしてください。
後半では、退職が決まってからの社内での過ごし方や、退職までに済ませておくべきこと、同じような環境に転職しないための会社選びについて説明します。退職に伴うさまざまなトラブルを未然に防ぎ、すっきりとした気持ちで再スタートを切りましょう。
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人手不足で仕事を辞めさせてくれない会社の本音は? よくある4つの事情
人手不足で仕事を辞めさせてくれない会社の本音は? よくある4つの事情
- あなたの担当業務を引き継げる人がいない
- あなたに期待して責任の大きい業務を任せている
- すでにギリギリの人数なので辞められると仕事が回らなくなる
- 新たな人材を育成する余裕がない
先述のとおり、人手不足を理由に社員の退職を拒むのは法律違反です。それでもなお会社が退職しようとする社員を引き止めるのであれば、会社なりの事情があるはずです。
ここでは人手不足の会社が抱えがちな4つの事情を解説します。例を参考に、自分の会社がどのような理由で社員の離職に強い危機感を感じているのかを考えてみましょう。そうすることで、スムーズな退職のために必要な準備が見えてくるだけでなく、会社から引き止められた場合への備えができます。
会社とのいさかいを生まずに退職するための、適切な行動計画を立てましょう。
①あなたの担当業務を引き継げる人がいない
人手不足の会社は社員数と業務量がつり合っていないため、社員一人ひとりが手一杯になりやすく、つまりお互いが担当する業務について適切に把握しているのが担当者本人のみという状態になりやすいのです。
そうなると、一人の社員に「仕事を辞めたい」と言われた時、会社はその人の担当業務を誰にどのように引き継ぐべきかの見通しを立てられません。加えて、その人の分の業務を担う余裕のある人材もいないので、結果として引き止めたり退職を受け入れなかったりといった行動に出てしまうことがあります。
このような状況への対処として、自分の業務をブラックボックスにしないことが挙げられます。どのような業務をどのように進めているのかを可視化することで、情報共有ができるだけでなく、担当業務の引き継ぎもスムーズにおこなえるという2つのメリットがあります。
あなたが受けない方がいい職業を確認してください
就活では自分に適性がある仕事を選ぶ事が大事です。適性が低い仕事に就職すると、イメージとのギャップから早期の退職に繋がってしまうリスクがあります。
そこで活用したいのが「適職診断」です。簡単な質問に答えるだけで、あなたの強み・弱みを分析し、適性が高い職業・低い職業を診断できます。
強み・弱みを理解し、自分がどんな仕事に適性があるのか診断してみましょう。
・楽しく働ける仕事がわからない人
・時間をかけずに自己分析をしたい人
②あなたに期待して責任の大きい業務を任せている
人手が足りない会社では、責任の大きな業務を若手に回すことがしばしばあります。その業務を担うのに最適な経歴を積んだ人材がいない、あるいはそういった人材がすでに手一杯だからといった理由で、伸びしろのある若手に期待を込めて大きな仕事を任せるのです。
しかし、その社員のポテンシャルに期待して仕事を任せるのであれば、本来サポート体制も同時に整える必要があります。人手不足によるサポートの手薄さは、仕事を割り振られた側に「突然大きな仕事を丸投げされた」といったプレッシャーを感じさせます。
そういった不安や不満の積み重ねが退職の申し入れにつながった時、会社は「期待していたのにどうして」と混乱します。上司や先輩に悩みを相談して認識をすり合わせられると良いのですが、周囲の人も業務に追われているのが人手不足の職場です。
日々の業務報告や定期面談、それらで足りなければ社内の相談窓口を活用して、自分の状況を周囲に伝えるところから始めましょう。
- 不安や負担について相談しても「もう新人じゃないんだから」と真剣に取り合ってもらえません。
目的を明確にして論理的に相談の仕方を考えよう
そのような場合は少し戦略的に考えていく必要があると思います。最終的なゴールとしては「会社に自分の負担を軽減してもらう」や「会社に自分の負担の重さを理解してもらう」になりますよね。
まず大事になってくるのが、感情論ではなく論理的に物事を考えていくことです。
具体的には「どうして自分の気持ちをわかってくれないんだ」と悲観的になるのではなく「自分のつらい気持ちを共感してもらうためにはどうすれば良いだろう」というように、辿り着きたいゴールから逆算して考えるようにしましょう。
そのようにすると、まずは友人に話すべきなのか、はたまた先輩社員に相談すべきなのか、上司にそれとなく伝えるべきなのかなどやることが定まってくるかと思います。
現在の仕事に対するプレッシャーが苦しいと感じる人は、ぜひこちらの記事も参考にしてください。退職や転職をおこなうにも時間や労力が必要です。自分に合ったストレス解消法を知り、心身の健康を保ちながら新しい環境を探しましょう。
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また、現在の労働環境が自分に合わず、働くこと自体がつらいと感じている人は以下の記事も参考にしてください。
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③すでにギリギリの人数なので辞められると仕事が回らなくなる
全社員が手一杯の状態で働き続けている会社は、一人の社員に退職された途端、ほかの業務も立ち行かなくなる可能性があります。小さい会社の場合はともすれば、会社の利益が減少するかもしれません。
会社は一人ひとりの社員の仕事がつながって利益を創出しています。直接的に売り上げを立てるのは営業や販売を担当する社員ですが、その仕事ぶりは営業事務や経理などを担当する社員のサポートがあってのものです。広報によるサービスの宣伝や、人事や経営企画による業務効率支援なども、売り上げを多角的に支える取り組みです。
それらのつながりが途切れることを恐れて、社員の退職を拒む会社もなかにはあります。全社的な問題に対して個人で対策を練るのはきわめて難しいですが、会社への遠慮やプレッシャーを抱え込むとますますつらくなるので、周囲や専門家への相談も視野に入れましょう。
自己分析をするなら自己分析ツールが一番おすすめ!
自分の弱みはわかっていても、強みは思いつかないものですよね。「それ、強みって言えないよ」と思われたくない人も多いはず。
そんな時は「自己分析ツール」を活用しましょう。このツールを使えば簡単な質問に答えていくだけで、あなたの強み・弱みが簡単にわかります。
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自分の長所を分析するなら「自己分析ツール」がオススメ
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④新たな人材を育成する余裕がない
一人の人材を採用するために、会社は大きなコストを掛けています。求人情報の掲載費はもちろん、社員本人に支払う給与や研修などの費用も含めれば相当な額です。
費用だけではありません。新しい人材の採用・育成にはほかの社員の時間も費やされます。採用担当者は自社に合う人材を探して多くの人と面接をし、新人の配属後には上司や先輩が従来の業務にプラスして社内教育をおこないます。退職によってその投資が水の泡になってしまうのは、会社にとって痛手です。
会社の事情を知ってかえって退職に罪悪感を感じる人もいるかもしれませんが、退職の自由は認められた権利なので、自分に適した働き方を大切にできる行動を取りましょう。権利については次の章で詳しく解説していきます。
アドバイザーコメント
村谷 洋子
プロフィールを見る会社が人を辞めさせたがらないのは会社の将来性への懸念のため
人手不足の会社が従業員を辞めさせたがらない理由としては、経営の安定性や将来のビジョンへの影響が大きいです。
特に期待される人材が去ると、会社の将来的な成長戦略に大きな穴が開いてしまうという背景があります。優秀な人材が抜けると残った従業員も将来に不安を感じる可能性もあり、これも理由として挙げられます。
また、人手不足の中で新しい人材を見つけるのは大変なうえ、採用と育成には時間と費用がかかります。大切に育てた優秀な人材が辞めてしまうことは、人という資産の喪失となり、会社にとって大きな打撃です。残された人材には業務負荷もかかってしまうでしょう。
周囲に相談して自分の将来のためになる選択をしよう
しかし、これらは会社側の事情です。仕事の内容や職場環境が合わない場合、退職することも自分の未来のために必要な選択です。
その際は、職場内での異動や改善策について周囲に積極的に相談することが一つの解決策となります。社内での配置変更によって悩みが解消されたことで退職を踏みとどまり、長く活躍している人もいます。
最終的に退職を決断した場合は、会社の就業規則に従い、余裕を持って退職の意思を伝えることが重要です。
人手不足でも会社を辞めることは可能! まず知ってほしい4つのこと
人手不足が会社の問題であろうと、その会社に属する以上は他人事ではない、と感じる人もいるかもしれません。たしかに責任感を持って仕事や会社に向き合うのは大切なことですが、過度なストレスやプレッシャーを抱えたまま働くと、モチベーションの低下や体調不良を引き起こす恐れもあります。
まずは退職にまつわる基礎知識を押さえ、退職が労働者に保障された権利であることを今一度確認しましょう。併せて、退職を申し入れたことで社内トラブルに巻き込まれてしまう心配はないという点もチェックするので、人手不足の会社を辞めることへの不安を払拭してください。
人手不足にかかわらず「仕事を辞めたいのに辞めさせてもらえない」と悩んでいる人はこちらの記事も参考にしてみてください。退職に関するトラブルへの対処法をプロが法律にもとづいて解説しています。
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①2週間前に退職の意思を伝えれば退職は可能
先にも挙げた民法第627条が保障するとおり、就業先と無期雇用契約を結んでいる労働者は、退職の意思を伝えてから2週間で退職できます。基本的に正社員はこれに該当します。契約社員でも雇用期間に定めがなければ同じ条件で退職が可能です。
民法第627条1項
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
なお、パートやアルバイトなどの有期雇用の場合でも、民法第628条にあるとおり、やむを得ない事情があれば退職が可能です。
民法第628条
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
- よく「退職は3カ月前までに申し入れるべき」と聞きますが、2週間前でも良いのですか?
就業規定や業務内容から退職日を設定するのがおすすめ
正社員(無期雇用)の場合、法的には民法627条に基づき、退職の意思を2週間前に通知することで退職が可能です。
契約社員など有期雇用の場合、通常は契約期間中は中途解約ができませんが、例外もあります。契約期間が1年を超えてからは、1年経過後のいつでも2週間前の通知で退職が可能です。また、やむを得ない事由がある場合は即時解約も認められます。
ただし、仕事内容や会社の状況によっては、引継ぎに長い期間を要することもあります。特に重要な業務や引継ぎが必要な場合は、1〜2カ月以上前に退職意向を伝えることが望ましいです。
結論としては、退職に緊急を要する場合でない限り、就業規則に規定された期間は最低限守ることを推奨します。
まずはあなたが受けない方がいい職業を確認してください
就活では自分のやりたいことはもちろん、そのなかで適性ある仕事を選ぶ事が大事です。適性が低い仕事に就職すると、イメージとのギャップから早期退職に繋がってしまうリスクが高く、適職の理解が重要です。
そこで活用したいのが「適職診断」です。質問に答えるだけで、あなたの強みや性格を分析し、適性が高い職業・低い職業を診断できます。
まずは強みを理解し、自分がどの職業で活躍できるか診断してみましょう。
・楽しく働ける仕事がわからない人
・時間をかけずに自己分析をしたい人
②退職したい従業員を強引に引き止めることは違法
退職を願い出たときに、上司や経営層から引き止めを受けることも考えられます。特に人手不足の会社の場合、「今あなたに辞められたら困る」とさまざまな角度から交渉してくるかもしれません。
労働基準法第5条は、そういった引き止めに応じなくても良いことを保障しています。万が一強引な引き止めを受けた場合には、社内の相談窓口や、厚生労働省が運営する総合労働相談コーナーに相談するといった手もあります。
総合労働相談コーナーでは、労働に関するあらゆる相談を受け付けています。退職にともなうトラブルの解決策や、穏便な退職のためのアドバイスを無料で聞けるので、行動する前に専門家から助言をもらいたいという人にもおすすめです。
現地へ行くのが難しい、総合労働相談コーナーの開いている時間での相談が難しいといった場合には、労働条件相談ほっとラインを活用しましょう。こちらでも労働時間や職場環境など、労働にまつわる幅広い問題を相談することができます。
労働基準法第5条
使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神または身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
③有給を消化させないなどの嫌がらせは無効
退職を申し入れたあとや、実際に退職日が定まって以降も、在籍中の社員は有給休暇をはじめとする福利厚生を受ける権利があります。しかし、退職を取り下げさせたいといった狙いや、あるいは退職予定者に対する攻撃的な気持ちから、有給取得を認めないなどの嫌がらせをおこなう会社もゼロではないのが実情です。
まず労働基準法第39条1項には、6カ月以上勤続し、かつ全勤務日の8割以上出勤した社員には10日分の有給を与えなくてはならないとあります。この条件を満たしていれば有給を取得することは可能です。なお、勤続年数が長ければ付与される有給の日数も増えます。
そして、労働基準法第39条5項は申請された有給を正当な理由なく認めないといった行為も禁止しています。もし有給を消化させないなどの嫌がらせを受けた場合には、人事労務や総合労働相談コーナーへ相談しましょう。
労働基準法第39条1項
使用者は、その雇入れの日から起算して6カ月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、または分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。
労働基準法第39条5項
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、ほかの時季にこれを与えることができる。
このようなトラブルも実際に起こっています。
保育系のサービスで「卒業する生徒を送り出すために、年度末に退職したい」と伝えたにもかかわらず、人手不足が深刻化するという危機感から感情的になった上層部によって、有休消化という扱いで休みを取らされた人の相談を受けたことがあります。
思い入れのある生徒たちの卒業に関する行事や、生徒と接する機会そのものを奪われてしまったそうです。
④そもそも人手不足は会社が解決すべき問題
会社がサービスを提供・改善するには人材と資金は欠かせません。会社運営に必要なだけの人材・資金を確保するのは経営層であり、もしも確保できなかった場合、その責任は経営層が負います。
そのため人手不足の会社を辞めることに対して、責任や罪悪感を必要以上に感じる必要はないのです。社員として会社全体の利益を考えられる視野の広さは強みになりますが、会社が持つべき責任を個人で担おうとすると、心身への強い負担になりかねません。自分の成長やキャリアアップのために優先させたいことを明確にして、行動を定めましょう。
- ただでさえ人手が足りないので、みんなに迷惑がかかると思うと辞められません……。
想定されるシーンをノートに書き出して対策を練ろう
実際は「退職の意思を伝えてしまえば何ということはなかった」「あっさりと話が終わってしまった」ということも意外に多いのですが、報告するまでが怖くて言い出せないことはありますよね。まずはスモールステップで心の準備をしていくと良いでしょう。
おすすめな方法としては「言い返されそうな言葉をノートに書き出していく」です。これをすることで上司の思考を前もって検討することができます。引き止められた場合の返し方などを想定できるだけでなく、少しばかりの勇気も湧いてくると思います。
自分がしようと思っている発言を書きとめて、それを上司になったつもりで反論していくと、自分が退職のためにすべき受け答えも具体的になってくるでしょう。
アドバイザーコメント
板谷 侑香里
プロフィールを見る自分の成長や幸福を大切にできる働き方を選ぼう
「辞めたいけどこの状況で退職するのは無責任かな」と考えることができるのは、日頃から周囲のことを気にかけてきて仕事をしてきたからこそかもしれません。
学校は入学や卒業のタイミングがあらかじめ決まっていますが、正社員雇用だと退職するタイミングを自分で決めなくては次の環境に移ることができないので、悩ましい側面もありますよね。
あなたのキャリアと人生はあなたのものなのです。「自分自身をどうしたら幸せにしてあげることができるだろうか?」と考えたときに、自分自身の成長や幸福を最優先に考えてもらえたらと思います。
たとえば「仕事が忙し過ぎて結婚のタイミングがつかめない」「子どもを産み育てることが難しいかもしれない」という場合もあるかもしれません。今の仕事を定年まで続けたとしても、退職した後に、老後の面倒を誰かが看てくれる訳ではないのです。
現在の仕事での責任を果たしてから退職しよう
人手不足というのは、あなた個人の責任ではありません。会社の人事や経営の分野の責任です。十分に引き継ぎをおこなえるタイミングを見計らって退職する必要はありますが、きちんと引き継ぎをおこなうことができれば責任をまっとうしたと言うことはできます。
人手不足の会社を辞める決意の示し方! スムーズな退職のための3ステップ
前章のとおり、法律は退職の自由や、退職が業務上の不利益を生じさせないことを保障しています。しかし人手不足の会社にとっては一人の社員の退職が通常以上の損失になるため、「どうか考え直してほしい」とさまざまなアプローチをかけてくる可能性があります。
そういったアプローチをかわすためには、退職する意思の固さを示さなくてはなりません。とはいえ会社と争いたいわけでもありませんよね。
交渉に応じない姿勢を保ちつつ、スムーズなやり取りを経て退職を受理してもらうための方法を3ステップで解説するので、退職の申し入れをする際の参考にしてください。
①就業規定などのルールを確認して退職までの予定を組む
民法第627条1項によると、2週間前に申し入れを済ませれば退職は可能です。しかし、もし会社の就業規定に「退職する場合には〇日前に申し入れること」といった文言があれば、できる限り就業規定に従うことをおすすめします。
就業規定はその会社のルールです。ルールに従わないことで「自分勝手な行動で周囲に迷惑をかけた」と思われてしまうと、退職日まで居心地の悪さを感じながら仕事をすることになりかねません。反対に、最後まで会社のルールを守ろうとする姿勢を示すと、トラブルを予防する効果が期待できます。
就業規定よりも法律のほうが強い効力を持ちますが、法律を前に出して退職を狙うのは最終手段です。社内規定や契約内容などを確認し、穏便に退職できるスケジュールを組み立てましょう。
円滑な退職のスケジュール例
- 退職4カ月以上前:就業規定で「退職は3カ月前に申し入れる」ルールを確認する
- 退職4カ月以上前:退職までの3カ月と繁忙期が重ならないように申し入れ日を計算する
- 退職3カ月以上前:業務の引き継ぎに必要な準備を進める
- 退職3カ月前:上長にアポイントを取って退職の意向を伝える
- 退職3カ月前~退職:上長と連携して業務の引き継ぎを完了させる
- 退職1カ月前~退職:社内外への挨拶を済ませて退職する
退職を申し入れる時、繁忙期はできる限り考慮することをおすすめします。また、早めに退職意向を伝えて円満に退職しましょう。
「繁忙期まで頑張り、その後に退職する」という提案であれば、会社側も受け入れやすいはずです。
②上司にアポイントを取って退職の意思を伝える
退職日までのスケジュールを立てたら、退職の意向を上司に伝えましょう。基本的に退職を申し入れる相手は直属の上司です。今後の業務の割り振りや後任者探しは上司の仕事になるので、最初に上司へ伝えることがスムーズな退職への第一歩です。
部下の退職は上司にとっても重大なことなので、話が長くなることも想定し、事前にアポイントを取ることをおすすめします。
上司も突然「退職したい」と言われたら困惑してしまいますが、約束を取り付けることで落ち着いて話を聞くための心構えをしてもらえる可能性がぐっと上がります。
- 上司が「人手が足りない」と忙しくしているので、怖くて辞めたいと言い出せません……。
信頼できる先輩に相談してアドバイスや橋渡しを頼もう
上司に相談しづらい場合には、先に身近な先輩に相談するというのも手です。先輩は社内のルールや雰囲気をよく知っているので、相談すること自体は適切です。
あなたの状況を客観的に見てアドバイスをしてくれたり、上司との橋渡しをしてくれたりする可能性もあります。
ただ、「辞めたいと思っているらしい」ということが広がってしまって居心地が悪くなってしまう可能性もあるので、相談する先輩には信頼できる人を選びましょう。
また相談の際には、「今後の方向性についてアドバイスが欲しい」や「今後のキャリアについて相談したいことがある」などと切り出してみましょう。
実際に退職の意思を伝えるときは、感情的になり過ぎず、冷静に伝えるように意識してください。
会社が引き止めにくい退職理由を説明する
部下から退職を申し入れられたら、上司は当然その理由をたずねます。繰り返しになりますが人手不足の会社にとっては一人の退職が大きな損失です。そのため、考え直してもらえる余地がないか確認をしたいと考えています。
言い換えれば、社内の取り組み次第で解決できそうな悩みを退職理由として伝えると、引き止められる可能性が高いです。退職は重大な決断です。重いテーマのやり取りを続けると心身の疲弊につながるうえ、交渉の余地があると見なされると話がうやむやになりかねません。
仕事を続けるかどうかの相談ではなく退職の意思表示であると示すために、会社が引き止めにくい目的を掲げて退職の意向を伝えましょう。
会社が引き止めにくい退職理由の例
現職ではできない新たなチャレンジのために転職したい
体調を崩していて治療に専念するために退職したい
家族が看病・介護を必要とする状態なので退職したい
会社が引き止めやすい退職理由の例
業務量が多く負担に感じるので退職したい
職場の人間関係が良くないので退職したい
給与に不満があるので退職したい
客観的に見ても仕方ないと思える理由にすると、引き止めに合いにくいように思います。具体的には「親の仕事を手伝わなければいけなくなった」などです。
個人の選択が尊重される時代なので、そこまで踏み込んで詮索されることは少ないでしょう。
紙面で退職願を提出する
口頭での説明に加えて退職願を提出すると、より意思の固さが伝わります。紙面でもって意思表示をすることで、「辞めたい」という言葉が相談ではなく本人のなかで固まった意向であると証明できるからです。
さらに、退職願には退職希望日を書かなくてはなりません。退職日にまで考えが及んでいると、真剣さがいっそう伝わります。たとえば、退職日の根拠として転職先への入社日が決まっていることを付け加えると、会社はますます引き止めがしづらくなります。
第三者から見ても「この日までに退職しなくてはいけない」と納得してもらえる理由にもとづいて退職希望日を決めて、早めに退職までの予定を確定させましょう。
- 転職の予定が決まっていない場合は嘘をついてもバレませんか?
嘘はつかずに誠実な態度で退職の意思を伝えよう
後から嘘がバレてしまった際に、同僚との信頼関係が崩れてしまうかもしれません。嘘をつき続けることは精神的な負担や罪悪感につながる可能性があります。
最初から正直に「これから転職先を探す」「今転職先を探している最中だ」ということを伝えることで、心理的な負担は軽減されるでしょう。また、引き継ぎをしっかりおこなう時間的余裕を持つ姿勢も伝えられます。
転職した場合に数年後に会社が合併してしまうことや、そうでなくともどこかで以前の職場の人に再会してしまうこともありえます。会社への感謝を伝え、応援してもらえる形で退職することを意識しましょう。
③人事部に退職届を提出する
上司が退職に納得してくれた場合には、上司に退職届を提出します。しかし、もし上司が退職を認めてくれなかったら、人事部や人事労務の担当者に退職願または退職届を出すという手段もあります。社員の退職にともなう諸手続きを主導するのは人事の担当者なので、上司を飛び越えて手続きに入ることが可能です。
提出の際に「上司が退職を受理してくれなかったため」と理由を申し添えれば、担当者も状況を理解してスムーズに手続きを進めてくれます。とはいえ、このやり方では上司の反感を買う可能性があるので、退職するまで職場での居心地が悪くなってしまうリスクもあります。
退職までの日数が短い人や、外出などで職場にいる時間を短くできる人にとっては有効な選択肢ですが、そうでない人がこの手段を取る場合にはその後の職場での振る舞いまで考えておきましょう。
それでも仕事を辞めさせてくれなかったら? ケース別に次の手を考えよう
それでも仕事を辞めさせてくれなかったら? ケース別に次の手を考えよう
人手が足りていない会社にとって、社員の離職は深刻な問題です。そのため、社員に仕事を辞めたいと言われたら、どうにか退職を取り下げてもらえないかと頭をひねります。その結果、会社と退職希望者の間にトラブルが発生することがあります。
このようなトラブルを避けてスムーズに退職するには備えが大切です。今回は4つのケースを想定して、それぞれへの対処法を解説しています。自社で起きそうな事態をイメージし、対処の参考にしてください。
ケース①「待遇を改善するから」と引き止められる
会社も人手不足という経営課題自体は認識しているはずです。そのため、「社員の退職の原因は業務負担に対する不満にある」と考え、待遇や労働環境の改善を提案してくることがまず想定されます。昇給や昇格、あるいは残業時間を削減するための施策を打つことで、退職を考え直してもらおうという考えです。
しかし、昇給や昇格を受け入れると、さらに業務量が増えるリスクが考えられます。昇給によって地位が向上すると部下をマネジメントするといった役割が増えたり、今まで以上の給与を払っているのだから相応の働きをしてほしいと要求されたりするかもしれません。元々人手不足の会社なので、残業時間の削減も一時的な効果で終わってしまう可能性が高いです。
このような引き止めに合わないためにも、「この会社で働き続けていては実現できないことがある」という理由をはっきりと伝え、交渉に応じない毅然とした姿勢を示す必要があります。
引き止めを拒否すると在職期間中に少し険悪なムードになってしまう懸念はたしかにあります。
しかし、「労働基準監督署に相談しようと思う」や「労働に関する問題を専門としている弁護士に相談している」という話をすればそれ以上は引き止めてはこないと思われます。
ケース②「後任が決まるまでは」と退職日の延長を頼まれる
人手不足の会社は、退職希望者の業務をすぐに代行できる知識や余力のある社員がいないことが想定されます。
よって、新しい人材を採用するか、現在の社員の配置を調整するかして、退職者の業務を引き継げる状態を整備しなくてはなりません。せめてその準備ができるまでは現在の業務を続けてもらわないとほかの人の仕事にも差し障りが出る、と退職日の延長を試みる会社もあるでしょう。
ただ、一度その要求を受け入れると、「この人は頼めば応えてくれる」と会社に安心感を与えかねません。その安心感は後任者探しを後ろ倒しにさせ、結局ずるずると在籍期間が伸び続けるといった事態を引き起こす可能性があります。
転職先への入社日が迫っているなどの理由で要求を断るのが一番の手ですが、プラスして担当業務をマニュアル化しておくといった提案ができると、会社も引き止めがよりしづらくなります。
- 引き止めは違法ではないのですか?
労働者の意思決定を妨げる引き止めは違法の可能性がある
説得や交渉といった一般的な引き止めは合法的な手段を用いるのに対し、暴行や脅迫などの違法な手段を用いることは労働の強制となり、違法となる可能性があります。
具体的には、退職を認めないと脅したり、嫌がらせや威圧的な行為をおこなったり、違約金や損害賠償の請求をしたり、労働条件を一方的に不利に変更したり、退職金の支払いを拒否したり減額したりするといった行為です。
上に挙げた行為は労働者の権利を不当に侵害する可能性があるため、法的に問題となることがあります。
これらは具体的な事例にもとづいて判断されるため、違法性はケースバイケースで評価されますが、いずれにせよ労働者の意思決定を妨げるような引き止めは違法となる可能性があります。
ケース③会社が退職のための交渉に応じてくれない
引き止めの場合、会社は一度社員の退職の意向を受け止めたうえで話を進めています。しかし、そもそも退職の希望を聞き入れる姿勢すら示してくれないという事態もありえないことではないです。
たとえば「人手不足だから無理」と最初から取り合ってくれないかもしれません。「この状況で部下に退職されたら評価が下がるかも」と上司が話をなかったことにしてしまう可能性もあります。社内の窓口に相談できると話は早く進みますが、人手不足が全社的な問題だとしたら関係者を頼ることに抵抗を感じる人もいるでしょう。
総合労働相談コーナーに相談すると、個別の状況に応じたアドバイスがもらえるだけでなく、状況によっては労働基準監督署として会社へ是正勧告をしてくれることもあります。自力での解決が難しいときには、法律の専門家の力を積極的に借りましょう。
ケース④退職を認める条件として金銭などを要求される
あってはならないことですが、「今退職するなら懲戒解雇にする」「退職による損害の賠償を請求する」といった強引な言葉で退職を阻止しようとしたり、あるいは退職希望者に嫌がらせをしようとする会社もあるかもしれません。
内容次第では、労働基準法第5条だけでなく刑法第222条にも当たる可能性があります。
刑法第222条
生命、身体、自由、名誉または財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処する。
総合労働相談コーナーや弁護士を頼ることをおすすめしますが、違法性が明らかな場合には労働基準監督署へ直接通報することも可能です。
どうしても退職させてもらえない場合、退職代行サービスの利用や退職届の郵送という手段もあります。有効ではあるのですが、雇用主との関係が悪化してしまう可能性もあるので、あくまでも最終手段だと考えましょう。
自分で入社を決めた会社のはずです。まずは直接の交渉から始めてみてくださいね。
社労士が解説! 人手不足だからと仕事を辞めさせてくれないときの対処法と注意点
人手不足の会社を辞めるにはどんな対策が必要か、一般的な対処法を解説してきました。しかし、具体例や実際にあったトラブルを知って、これからの自身の行動をより明確にイメージしたい人もいるかと思います。
そこで今回は社会保険労務士の資格を持つ村谷さんに、人手不足を理由に従業員の退職をなかなか認めてくれない会社に対してどのような姿勢を取るべきか、実際のトラブルを仲裁してきた経験にもとづく意見を聞いてみました。
村谷さんはこれまで約30年間に渡って民間企業の人事・採用に携わってきました。労働者の権利を守るプロである社労士としての知識を活かし、現在まで求職者と会社のマッチングを支援しています。人手不足の会社を辞めるにはどうするべきか、プロがすすめる対処法を知りましょう。
アドバイザーコメント
村谷 洋子
プロフィールを見る自身の将来と心身の健康を第一にして適切な行動を取ろう
人手不足による過重労働が続き、100日連続勤務をした人の相談を聞いたことがあります。ここまで来ると、体調や精神的ストレスの影響が心配です。退職者が増え、残った社員の負担が急増し、さらなる退職者を生む悪循環に陥るケースもあります。
人手不足の会社を辞めるのをためらう人たちへのアドバイスとして、私は退職の法的権利を理解することの大切さを伝えます。
労働者には退職の自由があるので、健康を第一に考え、必要であれば退職を決断しましょう。人手不足の環境での働きがキャリアにとって良いか、長期的に考えることも重要です。
専門家や労働組合の力を借りて適切な対処をおこなうことも大切
また、会社と建設的なコミュニケーションを心掛けることも大切です。冷静に退職理由を説明し、引き継ぎに協力する姿勢が円滑な退職につながります。解決できない場合は、社労士や弁護士などの専門家に相談することも選択肢の一つです。労働組合がある場合は活用しましょう。
人手不足は会社の責任であり、個人が犠牲になる必要はありません。自身のキャリアと健康を最優先に考え、適切な判断と行動を取ることが重要です。
平和的に会社を辞めるために必要な準備や注意すべきことをQ&Aから学ぼう
ここまでにも円滑な退職のポイントを解説しましたが、「似た状況の人はどのように退職の意思を伝えようとしているのだろう?」と疑問に感じた人もいるのではないでしょうか。
以下のQ&Aでは、どうすればより早く退職できるか、どうすればより穏便に退職できるかという悩みに対してキャリアコンサルタントが回答しています。理想的な退職をかなえるための行動を考える際、自分と似た悩みへのアンサーもぜひ参考にしてみてください。
退職決定後の過ごし方も重要! 穏便な退職のために心掛けるべき4つのこと
退職決定後の過ごし方も重要! 穏便な退職のために心掛けるべき4つのこと
- 現在担当している仕事をまっとうする
- 担当業務の引き継ぎを丁寧におこなう
- 最終出勤日までに社内外へ挨拶する
- 現職の愚痴をむやみに漏らさない
退職の申し入れが受理されたあとも、社内外での振る舞いには注意が必要です。大きな区切りの直前にトラブルに巻き込まれるといったことのないように、退職日までに進めるべき準備や、避けるべき行動について押さえておきましょう。
人手不足の職場は社員一人ひとりの業務負担が大きくなりやすいので、引き継ぎなどのイレギュラーな業務へ柔軟に対応できない場合があります。なるべくわだかまりを残さずに退職するためには、周囲への気配りも大切です。
①現在担当している仕事をまっとうする
第一に、今担当している業務に対する責任はしっかりと果たしましょう。人材の確保は会社が責任を持ちますが、担当業務については担当者も責任を負っています。
「もう退職するから」と注意が散漫になると、思わぬミスを起こしてしまったり、周囲から「もう辞めるからとサボっているのでは」と誤解されてしまったりといったリスクが生じます。すっきりとした気持ちで退職日を迎えられるよう、一社会人として、退職日まで誠実に仕事に取り組みましょう。
今向き合っている仕事が今後の評価に直接つながらないわけなので、退職が決まった人のモチベーションの低下は当然だと思います。
私なら「最後までやり切らないと給料が振り込まれないかもしれないな」と考えます。割り切った気持ちで仕事をできれば、辞める日までのモチベーションを保てるかもしれませんね。
②担当業務の引き継ぎを丁寧におこなう
人手が不足していると業務が属人化しやすいため、その人がどんな成果を上げているかは知っているものの、どうやっているのかは把握していない、といった状態が当たり前になっていることもありえます。
その業務に慣れた担当者にとっては「ここまで説明しなくても大丈夫だろう」と感じる部分が実はとても重要である可能性があります。あるいは「自己流のやり方を押し付けてしまうかも」と共有内容が大まかになると、かえって後任者を混乱させてしまうかもしれません。
業務の進め方や現在までの進捗の共有にとどまらず、後任者の疑問点を解消できる丁寧なコミュニケーションを心掛け、円滑な引き継ぎを進めましょう。
退職した後に確認することができるように、音声や動画を使ったマニュアルを用意することが有効な場合もあります。FAQ(よくある質問)も用意し、マニュアルを見るだけで後任者が業務をおこなえるようにしておくことが大切です。
③最終出勤日までに社内外へ挨拶する
有給消化期間や退職日を迎える前に、社内外の関係者へ挨拶をするのが社会人のマナーです。異動や休職も含め、現在の業務から離れる際には一般的におこなうものです。とはいえ、特に退職の場合はこれまでの感謝を伝える最後の機会になる確率が高いので、機械的にではなく誠意を持って臨みましょう。
挨拶には2つのメリットがあります。まず社内においては、感謝や敬意を示すことで穏便に退職できる可能性を上げる効果があります。そして社外の関係者に対する挨拶は、自分の退職によってやり取りの相手や連絡先が変わってしまうことなどを相手に謝罪しつつ、これまでお世話になったことを感謝するためのものです。
社外の関係者は社内状況を詳しく知らないので、挨拶をすることで、相手の今後のやり取りへの不安や疑問を払拭することができます。退職直前にトラブルが発生することのないよう、関係者には事情を丁寧に説明しましょう。
④現職の愚痴をむやみに漏らさない
人手不足の環境で業務に取り組んできたなかで、会社や職場の人に対して思うところもあったかもしれませんが、批判的な言葉や愚痴を口にするのは控えましょう。社内の信用できる相手にのみ言ったつもりでも、ひょんなことから職場中にその事実が広まり、肩身の狭い思いをすることになるかもしれません。
また、社外の人への挨拶の際に退職理由を聞かれた場合も、現在の会社の評判を貶めるようなネガティブな返答はしないように注意しましょう。どのような背景があったとしても、現職の批判や社内情報をむやみに漏らす人は社会人としての信用を損ねてしまいます。
それでも、特に人間関係のストレスがあると誰かに聞いてもらいたくなるものですよね。愚痴を漏らしたくなるほど現在の上司への不満がある場合は、以下の記事を参考にして退職日までの期間を乗り切りましょう。
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もう人手不足トラブルで悩まない! 納得いく転職のための3ポイント
もう人手不足トラブルで悩まない! 納得いく転職のための3ポイント
- 会社が人手不足に陥る要因を理解して同様の環境を避けよう
- 転職活動は在職中から始めて就職先をじっくり検討しよう
- 従業員を大切にする制度や文化を持つ会社を選ぼう
人手不足の会社を辞めたとしても、転職先が同じく人手不足だったら悩みは解消されません。転職には時間も体力もかかるので、転職先とのミスマッチが後から発覚するのは避けたいですよね。
ここからは、人手不足の環境を回避して転職を果たすために押さえておきたい3つのポイントを紹介します。人手不足の悩みから解放されて活き活きと仕事に取り組めるよう、納得のいく職場を見つけましょう。
①会社が人手不足に陥る要因を理解して同様の環境を避けよう
人手不足に陥りやすい会社の特徴の例
- 絶対的な社員数が少ない
- 急速に事業規模を拡大している
- 離職率が高い
会社が人手不足になるのは、社員の処理能力を超える量の業務があるからです。そもそもの社員数が少ない会社は当然そういった状況になりやすいです。
人材の採用・育成が追いつかないスピードで事業を拡大する会社も、人手不足に陥る可能性が高いと言えます。社員数自体が多くとも、新入社員ばかりでは業務を処理しきれません。経験豊富な中途社員を雇ったとしても、その会社自体に慣れるにはある程度の時間を要します。また、採用人数が多ければ育成にも人手を割かなくてはならないため、そのバランスが取れているかどうかが重要です。
人手不足になりやすい会社には共通点があるので、それらを押さえれば人手不足の会社へ応募することを高確率で避けられます。上記の例を参考に、自分のいた環境がなぜ人手不足だったのかを深掘りしつつ、人手不足に陥りやすい会社を避けるためのチェックリストを作成しましょう。
人手不足の会社を外からでは見分けることはなかなか難しいですが、「成長・夢・希望・社会貢献」など抽象的なワードばかりで会社の説明が具体性に欠けると感じる場合は避けておいたほうが良いかもしれませんね。
②転職活動は在職中から始めて就職先をじっくり検討しよう
転職活動は退職前から始めることをおすすめします。安定した収入がない状態では精神的な余裕が保てず、焦りから十分な検討をできないまま転職先を決めてしまう可能性があるためです。加えて、転職先が決まれば会社も引き止めが困難になります。
また、退職後に転職活動をすると、どうしても職歴にブランクができてしまいます。ブランクが必ずしも転職で不利になるわけではありませんが、ブランクがないことで働き続ける意欲を示すことが可能です。
一方、在職中の転職活動はきわめて忙しいというデメリットもあります。特に人手不足で業務量が一人ひとりに集中している会社に勤務している状態では、面接のための時間調節が難しいかもしれません。メリット・デメリットを比較し、自身の状況に合ったやり方を選びましょう。
転職については以下の記事でも詳しく解説しています。人手不足でない会社はたくさんありますが、その中から自分の強みを発揮できる環境を探すのは至難の業です。働くにあたって大切にしたいことを明確にして、活き活きと働ける環境を探すための材料をそろえましょう。
自己分析の方法
自己分析マニュアル完全版|今すぐできて内定につながる方法を解説
転職のコツ
第二新卒の転職必勝法|納得のいくキャリアを見つける3つのコツ
③従業員を大切にする制度や文化を持つ会社を選ぼう
社員の定着や活性化に力を入れている特徴の例
- 経営層が現場社員の状況をキャッチアップする仕組みがある
- 評価基準が社内で周知されている
- 社員のヒューマンスキルアップに注力している
- 定期的な面談の実施を制度化している
- 社内でのキャリアパスが豊富にある
- 休暇を取得しやすい
- 職場の問題を相談できる社内窓口が設置されている
人手不足によるトラブルで再び困ることのないように、転職の際には、応募先の会社が社員を守るための制度や風土づくりに力を入れているかどうかを確認することも大切です。自分がより安心して働ける環境を見つけるために、応募先の会社の取り組みなどについてしっかりと情報を集めましょう。
ホームページ(HP)やIR情報にそういった取り組みを掲載している会社も多いですが、誤解やミスマッチを防ぐためにも、実際の運用状況などを面接で確かめてすり合わせをすることがおすすめです。
- 環境面や福利厚生のことばかり質問すると受け身な人だと思われそうで心配です。
会社の強みや自身の関心と関連した質問から情報を引き出そう
環境面や福利厚生だけを質問するのではなく、関連付けた質問という形で面接の中で聞き出すのがコツです。
たとえば、会社の強みを問う体裁で、「同業他社と比較して、御社の労働環境や福利厚生の特徴、強みは何だと思いますか?」と質問してはどうでしょう。
または、「私自身、効率的な業務改善を図っていくことに関心があり、貢献したいと考えています。長時間労働を減らすための取り組みがあれば教えてください」というように、自分自身の事柄と結びつけて質問することもできます。
なお、活き活きと仕事に取り組むための将来設計のやり方は以下の記事で詳しく解説しています。転職を経てどのような自分になりたいかを明確にして、転職の軸を確立しましょう。
キャリアビジョン
キャリアビジョンとは|就活のプロが意義と描き方を徹底解説!
キャリア形成
キャリア形成とは? 4ステップでこの時代を生き抜く方法を考えよう
人手不足で仕事を辞められない悩みを抜け出して活き活き働ける環境をつかもう
人手不足を理由に仕事を辞めさせてくれない会社をスムーズに退職するには、人手が足りない会社ならではの事情を把握したうえで準備を進めることが大切です。退職の権利があることを念頭に置き、引き止めに応じない姿勢を示しつつ、引き継ぎなどを丁寧におこなって穏便に会社を辞めましょう。
人手不足の会社は社員一人ひとりの業務が多くなりやすく、また全社員が手一杯で職場の人間関係も悪化しやすい傾向にあります。自分のキャリアや幸福感をもっと大切にできる働き方があるはずだと思ったら、それがかなう環境を手に入れるために積極的に行動してください。
また、これまでの働き方で疲れが溜まってしまった場合には、休みを取るのも一つの手です。活力を持って働くために、現在の自分に何が必要かを第一に考えてください。自分の目標に合った行動計画を立て、活き活きと働ける職場とのマッチングを目指してくださいね。
アドバイザーコメント
永田 修也
プロフィールを見る自分の目標を定めたうえで退職すべきかを明確にしよう
自分が辞めることを考えたときに「会社のことなんてどうでも良いからとにかく辞める」というくらいの気持ちなのか、はたまた「きちんと人手が整っている状態で辞めるべきだ」という気持ちなのかで取るべき行動は大きく変わります。
会社が社員を辞めさせないことも問題ではありますが、実は「自分がどうしたいのか定まっていない」ことのほうが現状を打破できない原因になっている場合もあります。
本当に会社を辞めるべきなのか、実はまだ続けるべきなのか、この部分の覚悟が決まっていれば、人手不足だろうが経営不振だろうが自分が取るべき行動というのははっきりするはずです。
強い気持ちを持って退職のための行動を取ろう
会社が社員を辞めさせないのは法律違反に当たります。そのようなことが事実であればこちらが圧倒的有利になるわけなので、恐れる必要などないのです。本当に退職を考えているのであれば、堂々と強い気持ちで伝えるくらいで丁度良いと私は思います。
精神論になってしまうかもしれませんが、ぜひ強気で臨んで次の仕事につなげてもらえればと思います。
執筆・編集 PORTキャリア編集部
> コンテンツポリシー記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi
3名のアドバイザーがこの記事にコメントしました
キャリアコンサルタント/むらや社労士事務所代表
Yoko Muraya〇上場企業を含む民間企業での人事・採用経験約20年。就職支援や転職相談に従事し多くの求職者を支え、セミナー講師も務める。社労士の専門知識を活かし温かい雰囲気で各人に寄り添う
プロフィール詳細キャリアコンサルタント/メンタル心理カウンセラー
Syuya Nagata〇自動車部品、アパレル、福祉企業勤務を経て、キャリアコンサルタントとして開業。YouTubeやブログでのカウンセリングや、自殺防止パトロール、元受刑者の就労支援活動をおこなう
プロフィール詳細キャリアコンサルタント/コラボレーター代表
Yukari Itaya〇未就学児から大学生、キャリア層まで多様な世代のキャリアを支援。大企業からベンチャー、起業・副業など、幅広いキャリアに対応。ユニークな生き方も提案するパーソナルコーチとして活躍
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