この記事のまとめ
- IRの基礎情報を確認してみるべき項目を知ろう
- IRの中でもこの4つだけは絶対に見ておくべき
- 就活に活かす4つの方法でIRを有効活用しよう
自分の就活や企業研究に自信がない人は、企業情報の宝庫であるIRの活用を目指してみましょう。IRには企業の業績や今後の展望など、さまざまな情報が網羅されているため、内容の濃いエントリーシート(ES)や履歴書を作成したい際には欠かせない情報といっても過言ではありません。
しかしIRを見慣れていない場合、企業のサイトなどを見てもどの点が重要なポイントかわからず、情報をうまく活用できるか不安な人もいるかもしれません。
この記事では、IRを就活に活用するための見方を詳しく解説します。キャリアアドバイザーの瀧本さん、高尾さん、板谷さんとともに、特に重要な部分の見方ついても解説するため、第一志望の企業がある人はぜひ参考にしてください。
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IR情報を活用して就活を有利に進めよう
IR情報には企業の売り上げや業績など経済情報以外にも、社風や社員の待遇、今後の方向性などが掲載されており、IRのみで企業のさまざまな情報がわかります。そのためまず、IRの基礎的な知識と重要な部分の見方を押さえて活用することが、内定の近道になるのです。
この記事の前半ではIRの基礎知識や企業がIRを公開する意味について解説します。まずは、どのような情報がIRに当てはまるのか、ここで基礎知識を固めていきましょう。
記事後半で重要な部分の見方と、履歴書やESに活かす方法について解説します。第一志望の企業に入社したい人のほか、まだ入りたい企業が見つからない人もぜひ参考にしてください。
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そもそもIRとは? IRの基礎情報を確認しよう
そもそもIRとは? IRの基礎情報を確認しよう
- IRは投資家向けの情報
- IRと広報は似て非なるもの
- IRはおもに企業の公式HPで公開
- IRが見つからない企業のIR確認方法
IRが就活に役立つからと聞いて実際に見てみても、最初は全体の見方や重要な部分がどこなのかもわからないものです。そのためまずは、IRの基礎情報や情報の種類を確認しましょう。
ここからは、まずIRの基礎知識について解説します。IRを意識して探したことがない人や、どこで情報を見られるのかわからない人はぜひここで基礎知識を学び、志望する企業のIRをチェックしてみてくださいね。
IR情報には、企業の経営状況や将来の展望に関する重要な情報が含まれます。具体的には、売上高や利益、経営戦略、新製品や新技術の発表、役員の経歴や変更などです。
これらは企業の健全性や将来性を判断するための手がかりとなり、「会社がどんな仕事をして、これからどうなりたいかを説明する大事な情報」です。
IRは投資家向けの情報
IRは「Investor Relations」の頭文字を取った言葉です。Investorは投資家、Relationsは関係という意味であり、その名の通りIRは投資家や株主向けの情報として発信されるものです。
企業の視点では、企業の財務状況や方向性などを投資家にわかりやすく説明して投資してもらうために発信し、投資家の視点では、その企業に投資の価値があるか考えるための判断材料になるといった役割があります。
そのため、就活中の学生がIRを参考にすることで、企業が目指している方向性や財務状況、社風などさまざまな情報を履歴書やESに盛り込みやすくなります。
IRと広報は似て非なるもの
IRと似た情報に「広報」がありますが、IRと広報は異なる意味を持つため、混同しないように気を付けましょう。
IRで公開する情報は企業の業績や売り上げなど決算の動きといった、投資家や株主向けの情報が多いなか、広報は企業のサービスを紹介したり商品のアピールをしたりなど、認知度を高める「CM」のような意味を持ちます。
IRは「Investor(投資家) Relations(関係)」の頭文字を取った言葉であり、広報の意味を持つPRは「Public(公共)Relations(関係)」の意味があるため、情報の対象者が異なる点がポイントです。
IRはおもに企業の公式HPで公開
IRは企業のさまざまな情報を指すため、企業のHPを見ている際には、IRと知らずに情報を見ていることもあると思います。企業により掲載場所が異なりますが、HPではおもに以下の場所に掲載されているケースが多いです。
IRが掲載されてる場所
- 企業情報
- お知らせ
- 投資家の皆さまへ
- 株主の皆さま
- IR情報について
これらのページに進むと事業案内や企業の取り組み、経営計画といった詳しいIR情報にアクセスできます。
企業のHPにはIRのほか、主力のサービスや商品、事業内容などが細かく記載されているため、面接を受ける企業のHPは必ずチェックしてみてください。
企業のHPには、企業の理念や事業内容といった、企業が学生に最低限知っておいてほしい情報が詰まっています。
特にIR情報は、企業の経営状況や今後の展望を把握する手がかりとなります。
具体的な志望動機を作成する際や、自分の将来をイメージするうえでの前提情報となるので、ES作成前や面接前には必ず目を通しておきましょう。
IRが見つからない企業のIR確認方法
IR情報はHPがある企業であれば掲載されいてるケースが多いですが、中にはIR情報が載っている場所やHP自体が見当たらないことも想定されます。その際は「会社四季報」や「決算公告」を参考にしてみましょう。
会社四季報とは東洋経済新報社から発行されている投資情報誌であり、全上場企業の株式データから業績予想まで、最新の資料が掲載されています。
決算公告とは、貸借対照表や損益計算書を公開する手続きを指します。決算公告はすべての株式会社に義務付けられているもので、会社法第440条1項により大会社は貸借対照表と損益計算書の両方を、それ以外の株式会社では貸借対照表のみの公告が必要です。
財務状況を読み取って履歴書やESの内容に組み込むことは難易度が高いですが、面接時ではしっかり情報をチェックしているといったアピールにもつながるため、企業のHPが見つからない場合は一度チェックしてみましょう。
- 会社四季報や決算公告以外で、ほかにも会社のIRを知る方法はありますか?
特許・商標のデータを調べたり直接アプローチしたりしてみよう
企業の公式ウェブサイトのほかに、公式SNSや地域の商工会議所からも情報を得ることができます。
また特許や商標に関するデータベースから、企業の注力している技術などを調べることも可能です。
日本の特許に関しては、特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)から無料で出願状況を検索することができます。
ほかにも過去の展示会やイベント情報から会社の情報を知ることも一つの手です。また、地方の中小企業などで情報の入手が難しい場合には、直接企業にメールや電話で連絡を取り、会社案内などの資料を送ってもらえないか依頼してみましょう。
ちなみに企業に所属している場合は、取引先企業の情報を得るために、帝国データバンクなどで信用情報を得るなどの調査をおこなうこともあるので一つの方法として押さえておきましょう。
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企業にとっては超重要! 企業がIRを出す理由とは
企業がIRを出す理由とは
- 投資家に自社をアピールするため
- 業績や活動方針を公開して信頼してもらうため
- 社会的価値を向上させるため
企業がIRを公開している理由は、会社法で義務付けられているからだけではありません。IRは投資家や株主に向けた自社の紹介であるため、HPやパンフレットなど見られやすい場所に公開することで、さまざまな良い効果をもたらします。
IRの詳しい見方を知る前に、まず企業がなぜIRを出すのか確認してみましょう。
①投資家に自社をアピールするため
企業がIRを人の目につきやすい場所に公開することは、おもに投資家に向けて、自社への投資が価値のあるものか判断する資料にしてほしいと思っていることが大きな理由の一つです。
投資家はIRを見ることで業績や今後の傾向、どのようなサービスに取り組んでいるかなど、さまざまな事項を把握できます。そのため企業は株式市場で正当な評価を得て、積極的に投資してもらうためにIR情報を公開しているのです。
特に費用が必要になりやすい事業展開や大きな成長計画がある場合は、いかに多くの投資家に注目されるかが重要なポイントでもあるため、IR情報のページに力を入れている企業もあります。
投資家の出資によって、企業は新規事業の立ち上げや技術開発を進めるための資金を得ることができます。
近年では、AI(人工知能)技術や再生可能エネルギーなど、成長が期待される分野への投資が増えていて、企業はこれにより競争力を高めると同時に、社会に対しても価値を提供することが可能になっています。
②業績や活動方針を公開して信頼してもらうため
IR情報には業績や活動方針も含まれるため、これらを自社HPで公開することで企業の透明性が高まり、同時に投資家や株主からの信頼度も上がるのです。
会社法で義務付けられている事項のみを公告するのであれば、貸借対照表や損益計算書のみの公開で問題ないところ、多くの企業は今後の展望や企業活動の詳細など、さまざまな情報をIRとして公開しています。
そのため企業がIRを公開する理由の一つには、投資家らに対する透明性・信頼性の向上も含まれると考えられます。企業の信頼度が上がれば、投資家と消費者のどちらからも選ばれやすくなるといった大きなメリットがあるのです。
③社会的価値を向上させるため
IR公開による透明性・信頼性の向上は、投資家のみならずすべてのステークホルダーに影響を及ぼします。
企業におけるステークホルダーとは、企業に直接的・間接的に影響を与える利害関係者を指すため、株主や投資家、消費者のほか、従業員や地域社会も企業のステークホルダーといえます。
持続可能な開発目標である「SDGs」や、企業が担う社会的責任の「CSR活動」など、企業の社会的価値に関する情報は、数あるIR情報の中でも比較的消費者に注目されやすい部分です。
石井食品という「イシイのおべんとクンミートボール」などで有名な企業があります。この会社は持続可能な「地域と旬」モデルの創出を企業の使命として掲げているのが特徴です。
たとえば収穫したての国産の新栗を使った栗ご飯を砂糖不使用で仕上げ、全国の4つの産地ごとに販売しています。各産地の特色もWebページで紹介し、地域の雇用拡大や生産量の増加を支援しているとのことです。
このほか食品ロス対応として、規格外の野菜や果物を適切な価格で購入し、そこからスムージーを作ったりカット野菜で大根おろしソースを作ったりなどの取り組みをおこなっています。
特にIRを読んでおくべき人の特徴4つ
特にIRを読んでおくべき人の特徴4つ
- 入社したい企業がわからない
- 企業研究に自信がない
- 志望動機が抽象的になってしまう
- 面接でありきたりなことしかいえない
IRはまだ応募する企業か決まっていない人から最終面接が決まっている人まで、就職を目指す学生全員が見ておくべき情報の一つです。今回はその中でも、特にIRの見方を知るべき人の特徴を解説します。
特徴に当てはまった人は、ぜひ記事後半で解説している重要な部分の見方についても参考にしてみてください。
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①入社したい企業がわからない
現在、入社したい企業がなかったり、第一志望の企業が見つからなかったりする人は、企業や業界に対する理解を深めるために、さまざまな企業のIR情報をチェックすることをおすすめします。
IRには企業の内部がわかるさまざまな情報が掲載されています。売り上げの推移や予想といった業績関連の情報を見て、企業を選ぶことは難しいですが、IRからは企業がどのような商品やサービスを提供しているか、今後の経営はどのように進めていくかといった情報も得られるのです。
給与や勤続年数といった労働に直結する情報も載っているため、複数の企業のIRを見ることで、「自分もここで働きたい」と思えるような企業を見つけやすくなるかもしれません。
IRには企業の財務状況や将来の経営方針、労働環境などが事実に基づき詳細に記載されていることから、企業の実態や価値観を客観的に判断できます。
複数の企業のIRを比較することで、企業の表面的なイメージではなく、どの企業が安定して成長しているのか、あるいはどの企業がリスクを抱えているのかといった、企業の実態や将来性を客観的に判断できます。
また、企業の経営方針や将来のビジョンを読むことで、その企業が自分の価値観やキャリアビジョンに合致するかどうかを見極めることも可能です。
自分が入社したい会社のイメージを作るためにも、ぜひIRに目を通してみてください。
②企業研究に自信がない
企業研究は、応募する企業をよく調べて情報をまとめる作業です。就職を目指す学生であればするべき作業の一つですが、企業研究に自信がない人は、一度IRをよく読んでみることをおすすめします。
IRは投資家や株主向けの情報ではありますが、企業の売り上げといった数値的な情報以外に価値や魅力も公開して、投資のプロが投資に値するか判断材料にできるほど正確かつ質量のある情報です。
今後の展望や経営計画など、企業研究をさらに深めるには積極的に知るべき情報も網羅されているため、まずIRの重要な部分の見方を知って、選考に活かせる部分がないかぜひチェックしてみてください。
企業研究に自信がない人やまだ企業研究を始めていない人は、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。企業研究で得た情報のまとめ方や情報の集め方まで詳しく解説しています。
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企業研究ノートは企業選びと選考対策に有効! 就活は情報戦で情報を収集するだけでなく、いかに活かせるかが重要です。記事では企業研究ノートの作り方、必須の情報16項目から情報収集の方法まで、キャリアコンサルタントのアドバイスも交えて解説しています。企業研究ノートで情報を整理し、企業研究を効率的に進めましょう。
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③志望動機が抽象的になってしまう
IRは第三者ではなく企業が公開する情報であるため正確性があり、データにも根拠があります。そのためIR情報を用いて志望動機を作ることで内容に具体性も出て、他社との比較や自分が志望したいと感じた理由などにも根拠を持たせやすくなります。
志望動機が決まっていない場合でもIRを読むことで、企業が大切にしていることやその企業ならではの強みもわかり、より深い志望動機が考えやすくなるのです。
IRを使った志望動機の作成では、企業の中長期経営計画や成長戦略を読み解き、自分のスキルや経験がその計画にどう貢献できるかを具体的に示すことが効果的です。
たとえば、「貴社の持続可能な成長を支える〇〇分野の強化に共感し、自分の△△スキルを活かして貢献したいと考えました」といった形で、企業の戦略と自分のキャリアを結びつけると良いでしょう。
志望動機がうまく書けないという人は、ぜひこちらの記事も参考にしてみてください。自分なりの書けない原因がわかり、どのように進めていけばうまく書けるようになるのか例文とともに解説しています。
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④面接でありきたりなことしかいえない
IRにはその企業ならではのデータが豊富で、同業他社にはない個性を探したい場合には必要不可欠です。IR情報を利用した回答の作り方の練習をすることで、独自の回答を作りやすくなります。
また、IRは逆質問の内容にも使いやすいため、面接でほかの学生に埋もれてしまうことが心配な人こそ見るべき情報といえます。
特に第一志望の企業の選考では、IR情報を活用して事業や経営についての質問でも答えられるようにすることが理想です。
- IRを活用した面接の回答で、印象深かった内容はありますか?
IRの内容と自身のスキルを絡めて質問していた学生は印象深かった
私が人事として面接官をしているとき、面接終盤の質問タイムに「IRに記載されていた将来の事業展開について質問があるのですが……」といった切り口で質問を受けたことがあります。
自社の強化を図っている分野に対して、自分のスキルや経験がどのように活かせるかというものでした。
この質問をきっかけに、企業が目指す方向性についてさらに掘り下げた議論が起き、面接官に強い印象を与えたことで、結果としてその候補者は通過となりました。
ほかの候補者との差別化を図るうえでも、IRを活用した面接は効果的であるといえるでしょう。
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まずは強みを理解し、自分がどの職業で活躍できるか診断してみましょう。
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・時間をかけずに自己分析をしたい人
学生必見! IRの見方を知っておくべき理由4つ
IRの見方を知っておくべき理由4つ
- 志望動機の素材となる情報が多いため
- 事業内容をより詳しく理解するため
- 企業が求める人物像を知るため
- 一次情報で正確性が高いため
ここまではIRの基礎知識や企業目線の目的について解説しましたが、なぜIRが重要であり、見方を知って読み解くべきかわからない人も多いと思います。
ここからはIRの見方を知るべき4つの理由について解説します。いずれも選考に通りやすくするために重要な内容であるため、ここで一つずつチェックしていきましょう。
IRを読むことで、経営層の思いや企業の文化、大切にしている価値観などを把握することができます。
また業界内での立ち位置や競合企業の状況、中長期のビジョンなど多くの情報を理解できることが大きなメリットです。
①志望動機の素材となる情報が多いため
IRのなかでも、経営戦略や社長のメッセージからは企業が求める人材が読み取りやすく、事業ごとの利益がわかれば企業に貢献するべきこともわかりやすくなります。新規事業の業種が自分の専門知識と同じであれば、知識を活かしたアピールも可能です。
いくつかの情報を見ていると企業の方向性も理解しやすくなり、自分がその企業で働いている姿も想像しやすくなります。IRをよく読むことで志望動機が作りやすくなるだけでなく、面接時の質問にも対応できる力をつけやすくなることがIRの見方を知るべき理由の一つです。
②事業内容をより詳しく理解するため
IRではその企業が現在取り組んでいる事業や新規事業の計画など、事業に関する情報も詳しく掲載されています。
事業ごとの顧客対象や市場についても把握でき、さらに業界研究を徹底することで他社との比較もしやすくなるため、企業の深い部分を履歴書やESに盛り込みたい場合はIRの見方を知ることが必須です。
事業の詳しい内容を知っていれば入社後にやりたいことなども回答しやすくなり、「入社後はどのような業務を担当したいですか?」や、「5年後の自分はどのように働いていると思いますか?」といった派生する質問にも答えやすくなります。
そのため、応募する企業が何に取り組んでいる企業か詳しく知らない場合は、企業のHPで事業内容についての情報を探しましょう。
- IRを読んでも、同業他社との違いがよくわかりません。どの部分を重点的に比較すれば良いでしょうか?
以下の4つのポイントからその企業の強みや将来像が見えてくる
同業他社との違いを把握するためには、IR情報の中でも特に以下の項目に注目することが重要です。
・事業セグメント別の売上高と利益率
・海外売上比率
・財務指標
・経営方針と将来戦略
まず、各事業の売上高や利益率を比較することで、企業がどの分野に強みを持っているかを理解できます。また海外売上比率からは、企業の成長可能性やリスク分散の状況が見えてきます。
さらに売上高や純利益、負債比率などの財務指標を数年間比較することで、企業の安定性や成長性を評価することが可能です。最後に、IR資料には企業の将来戦略が示されていることが多く、これにより企業が今後どのように成長していくのかを理解し、他社と比較する際の参考になります。
③企業が求める人物像を知るため
企業は面接を通して、この先自社で活躍できそうな人材を探しています。そのため合格に近づくには、履歴書やESで「自分は御社の求める人材です」と、アピールすることが重要です。
IRの中でも社長や役員からのトップメッセージや、今後の経営戦略に関する情報は、企業が求めている人材の姿が読み取りやすく、志望動機や自己PRにも組み込みやすいです。
また入社後の活躍も重要ですが、応募前にIR情報をよく読むことで自分と企業の相性についても判断できます。入社後に「思っていた働き方と違った」と思わないためにも、IRの見方を知ることは重要です。
- 実際に経営戦略から企業が求める人物像を読み取るには、どのような部分を見ればよいでしょうか?
トップメッセージをはじめとして理念や人材育成方針を確認しよう
まず、「トップメッセージ」を読むことをおすすめします。経営層がどのようなビジョンを持っているのか、企業の将来像が書かれているため、企業がどのような人材を求めているのかを理解できるでしょう。
また経営戦略や中長期経営計画を読むと、企業が注力する分野やスキルを理解することにつながり、自分の経験がどのように貢献できるかを考えるきっかけにもなります。
さらに、企業理念や人材育成方針も確認することで、企業の価値観やキャリアパスと自分の適性を照らし合わせてみましょう。
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受けない方がいい職業を診断しよう
就活で大切なのは、自分の職務適性を知ることです。「適職診断」では、あなたの性格や価値観を踏まえて、適性が高い職業・低い職業を診断します。
就職後のミスマッチを避けたい人は、適職診断で自分に合う職種・合わない職業を見つけましょう。
- 自分に合う職業がわからない人
- 入社後のミスマッチを避けたい人
- 自分の強みを活かせる職業を知りたい人
④一次情報で正確性が高いため
株式会社がIRを公開する目的は、投資家を含むステークホルダーに見てもらうためです。常にHP上で最新情報を発信している企業も多いため、まずは応募する企業のHPを確認することが重要になります。
一方で企業の公式HP以外で公開されているIRの情報は、第三者による評価が含まれていたり過去の情報を利用していたりなど正確ではない可能性があるため、履歴書やESに用いないようにしましょう。
企業研究を徹底するならIRのチェックは必須
第一志望の企業に入社するためには、企業研究は欠かせません。企業研究には正確な情報源によるデータが必要であり、一次情報であるIRは企業研究するにあたり最も適した情報源と考えられます。
そのため徹底した企業研究を目指すには、IRの正しい見方を知ってよく読み込むことが求められます。ここでは、キャリアコンサルタントが、プロの目線からIRの重要なポイントを解説するため、今後の企業研究に役立ててみてください。
アドバイザーコメント
板谷 侑香里
プロフィールを見る企業の注力分野や目標など入社後の自分とかかわる部分に注目しよう
企業研究をする際は、従業員数や売上高、主要事業などの基本情報に加え、事業内容や業績、中期経営計画の中で、企業が注力している事業などをまとめましょう。3~5年の経営目標や戦略を理解しておくことで、自分自身がその中でどんなことができるのかイメージしやすくなります。
またトップのメッセージから感じた企業の価値観などについてもメモしておくことが大切です。自分自身と合うのかどうか検討する際や、面接での会話で役立てられるかもしれません。
他社との違いや業界のポジションも整理すると「なぜこの企業か」につながる
このほか、業界の中でのポジション付けと、企業の強みや他社と差別化を図っている項目についても把握することをおすすめします。企業理解を深めることで、自分自身の働き方などが具体的にイメージできるようになるでしょう。
一通りIRを読み込んだ後に、「なぜ、この企業に興味を持ったのか?」ということと、「企業でどんな貢献ができるか?」についても併せて箇条書きで記載しておいてください。企業ごとにまとめておくことで、選考の際にスムーズに確認できますよ。
IRを徹底解説! IRでわかる企業の情報
IRを徹底解説! IRでわかる企業の情報
ここまでIRの重要性について解説しましたが、ここからはIRの具体的な内容について解説していきます。企業HPに掲載されている情報にもIRが散りばめられているため、今までの企業研究でどこかで目にしたことはあるかもしれません。
IRの具体的な中身がわかることで、いざ企業研究で情報を探したいときにHPのどの部分を参照すれば良いのかわかるようになります。今後、情報を探しやすいように、ここでIRの内容についてチェックしておきましょう。
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①IRニュース
IRニュースとは、企業に関する大きな情報が掲載されている部分です。たとえば新支店のお知らせや役員が代わったこと、IRの大きな部分が更新されたことなども掲載されるため、まずはIRニュースをチェックすることをおすすめします。
特にIRの大きな変更は株価にも影響を及ぼすことが多く、投資家や株主もよく確認する重要な部分であるため、IRニュースの欄には常に最新情報が並んでいます。数日間にわたり企業研究を進める場合は、新しい情報が出ていないか頻繁にチェックしましょう。
②有価証券報告書
有価証券報告書は、IRの中でも法律で公告することが定められている「法定開示」の情報にあたります。内容は経済・財務状況から設備状況など企業のさまざまな情報が網羅されており、大きな企業であるほど膨大な情報量になります。
経済・財務状況など数字の情報も多いですが、事業が成功した理由や新規事業についてのリスクといった今後の経営に関することなども記載されており、投資家にとっては最も重要な情報といっても過言ではありません。
有価証券報告書の内容は基礎的かつ正確な情報で、企業研究の際はなるべく読んでおきたいものではあります。しかし複数の企業の面接を受けるに際し、有価証券報告書の膨大な内容のすべてを読み、どのような質問にも対応できるようにすることは現実的ではありません。
企業研究に役立てるには、内容のすべてを見るよりも、重要な部分のみを抜き出してしっかり読み込むことがおすすめです。記事後半では、有価証券報告書の重要な部分の見方について解説していきます。
有価証券報告書では、特に「事業の概況」や「事業等のリスク」に注目することで、企業の主要事業やリスク対応を理解できます。
企業がリスクに対してどのように対応しているのかを確認できるため、企業の戦略的な柔軟性や対応力を判断する材料となります。
また「財務情報」の中でも特に、売上高や純利益、ROE(自己資本利益率)などの指標を確認すると、企業の成長性や競争力を評価できるのです。
さらに、「役員の状況」からは企業のリーダーシップ層の考え方や経営方針が見えてきます。「CSR活動」からは企業が果たしている社会的責任を通じて企業の価値観や文化を理解することができ、企業研究に役立ちます。
③財務(業績)ハイライト
財務ハイライトとは、財務に関する事項をわかりやすく伝える資料のことです。おもに企業の売り上げや営業利益についての数年の動きや、今年と前年度の比較といった推移が、一目でわかるように掲載されています。
財務ハイライトでは売上推移が一目でわかるように、グラフを用いたわかりやすい資料として作成されていることが多く、財務ハイライトを見ればざっくりと売り上げが伸びているのか落ちているのかを確認できます。
企業全体の利益のほか、特定の事業で得た利益や商品・サービスごとの売り上げなど、細かくさまざまな情報が掲載されているため、志望動機に落とし込める内容を探すには見ておくべきIRの一つです。
④決算短信
決算短信とは、企業の決算に関する発表をまとめた資料です。有価証券報告書は1年に1回発行される資料ですが、決算短信は四半期に1度発行されるため、「四半期報告書」と呼ばれることもあります。
決算短信も有価証券報告書と同じくお金に関する情報が記載されていますが、有価証券報告書との違いは情報が発表される早さです。
有価証券報告書は決算後3カ月後以降の発表になりますが、決算短信は集計期間終了の45日以内に発行が義務付けられているため速報のような役割があり、有価証券報告書よりも早く投資家のもとに情報が届くようになっています。
しかしその分、決算短信には有価証券報告書のような情報量はなく、あくまで企業の基礎的な情報と近況や、業績のみが記載されたものとなっています。そのため決算短信は、投資家たちが株式を購入するか売却するか早く決断したい際の資料の一つとして活用されているのです。
決算短信を利用する最大のメリットは、情報の速報性、つまりスピードです。これは迅速な投資判断が求められる場面で特に重要となります。
情報量は有価証券報告書に劣るものの、最新の企業動向をタイムリーに把握するために、決算短信は非常に有用な資料です。
⑤決算説明資料
決算説明資料は、有価証券報告書や決算短信などのIR情報を、投資家や株主向けにわかりやすく伝えるために作られる資料です。そのため数字のみではなく視覚的・感覚的に見やすく作られており、IRを調べるのは難しそうと思っている学生でもふれやすい資料となっています。
売り上げや利益など経済状況以外に、事業内容や今後の経営方針についても説明されているため、どんな企業か大まかに知りたい人は決算説明資料から見てみても良いかもしれません。
⑥中長期経営計画
中長期経営計画とは、中期または長期的な経営計画を実現するために、今後どのような経営の舵を取るべきか考える計画のことです。中期や長期に明確な年数は定められていませんが、中期はおよそ3~5年、長期になると5~10年ほどの期間を指します。
中長期経営計画では今後の経営方針がわかるだけでなく、企業の現状の問題や課題を洗い出して、目標に進むために企業がするべきことが記載されているため、企業が求める人物像や今後取り組んでいきたい事業内容などがわかります。
そのため志望動機や自己PRで書くことが思い浮かばない人は、一度中長期経営計画を見て企業の今後の課題や目標に沿った内容を考えてみることもおすすめです。
- 面接では「企業を成長させる方法」や「売り上げを伸ばす方法」も聞かれますか? 働いたこともないのに、IRを見ただけでは答えがわかりません。
可能性はあるが問われるのは正確な答えをいえるかどうかではない
「企業を成長させる方法」や「売り上げを伸ばす方法」というのは、一般的な質問とはいえないですが、聞かれる可能性はありますね。
何らかの正しい受け答えをするのではなく、現在の限られた情報から論理的に考え、自分自身の意見を述べることができるのかという部分が見られているかもしれないですね。問題解決力や発想力が問われているともいえるでしょう。
IRの情報をもとに、企業が直面している課題や企業が注力しているテーマと関連付けて答えることで、面接官に説得力を持たせることができます。
企業に合った自己PRが思い浮かばず履歴書が途中で止まっている人は、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。部活動やアルバイトにとどまらず、大学受験や交友関係を用いた自己PRが作れるようになるため、IR情報と照らし合わせて、その企業に適した自己PRが作りやすくなります。
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⑦統合報告書・アニュアルレポート
統合報告書とは、法的に開示が定められている財務状況や、企業の目標に向けた経営戦略、社会的責任を果たすための取り組みといった「非財務情報」も記載された資料です。
アニュアルレポートとは、統合報告書よりも経営や財務状況をメインに開示する報告書ですが、統合報告書をアニュアルレポートとして開示している企業もあります。
統合報告書は売り上げや経済状況以外に、事業の取り組みや強み、そして環境への取り組みなどサステナビリティ活動まで紹介されており、すべてのIR情報を総合したような内容がまとめられています。
企業の個性が色濃く出ている資料であるため、応募する企業が決まっている場合は内容の把握や他社との比較に使えるように、スマートフォンやパソコンに保存したり印刷したりなどの方法で、何度も読んでおくことがおすすめです。
⑧CSR報告書
CRS報告書では、環境活動や従業員の働き方についてなど、財務以外の部分を詳しく知ることができます。
CSRとは、企業活動において従業員や投資家などのステークホルダーに対して責任ある行動を取ることや、環境への配慮など社会的公正について説明責任を果たすことを指します。
CSR報告書に書かれる内容を統合報告書に記載している企業も多いですが、CSR報告書は企業の社会的責任に特化した資料であるため、自己PRでボランティアや社会活動の要素を加えたいのであれば、特に見ておくべきIRです。
- 企業が課題とする社会的責任は、そこに勤める社員の責任にもなりますか?
CSRで掲げる社会的責任は社員も意識していくべきこと
企業の社会的責任(CSR)は、企業がその活動を通じて社会や環境に与える影響について責任を負うという考え方であり、これには社員一人ひとりの行動も含まれます。
企業がCSRを推進する際、従業員の労働環境改善や人権尊重が重要な要素として含まれ、これによって従業員の意識や行動にも影響が及びます。
結果として、企業のCSRに対する取り組みは、従業員自身がその責任を感じ、行動することにつながるのです。
たとえば、企業が環境保護を重視する場合、従業員も日常業務で環境に配慮した行動を取ることが求められるようになります。
これによりCSRは単なる企業の義務ではなく、従業員一人ひとりが社会的責任を意識することで、企業全体としての持続可能な成長が実現されることになります。
したがって、企業が掲げる社会的責任は、そこで働く社員の行動や意識にも大きく影響を与えるといえるでしょう。
⑨トップメッセージ
トップメッセージとは、その名の通り企業のトップである代表取締役によるメッセージを指します。そのため企業のイメージや株価にも影響を及ぼす部分であり、就職を目指す学生にとっても重要なポイントとなります。
代表取締役が考える企業の課題や目標、継続すべきことなど業務内外に関するさまざまな意思がわかるため、応募する企業のトップメッセージは必ず確認しておきましょう。
より深く企業を知りたいなら必見! IRの詳しい見方について
より深く企業を知りたいなら必見! IRの詳しい見方について
- 有価証券報告書
- 統合報告書・アニュアルレポート
企業の情報を深く知るには、IRの情報を正確に理解するための見方を学ぶことが近道です。ここからは企業のさまざまな情報が網羅されている有価証券報告書と統合報告書の見方を重要度別に解説します。
有価証券報告書も統合報告書も、履歴書やESに落とし込める要素が豊富であるため、書く内容が決まらないという人こそIRの見方を詳しくチェックしましょう。
有価証券報告書
法定により開示が求められている有価証券報告書には、企業の財務状況や事業の詳細などさまざまな情報が掲載されており、数あるIRの中でも最も情報量が多いといっても過言ではありません。
そのため第一志望の企業だからといって全ページを読み込み理解することは現実的ではなく、重要な部分のみを抜き出してチェックする必要があります。
ここで有価証券報告書内の大事な情報の見方を知って、就活に活かせるように準備しておきましょう。
重要度☆☆☆☆純資産
純資産とは企業の保有する資産のうち、どこかに返済する義務がない資産を指します。
純資産の金額は「資産=負債+純資産」の構図である貸借対照表で確認可能です。貸借対照表は、資産の合計額と負債・純資産の両方を合わせた金額が必ず同額になるようにできています。
そのため純資産が高額であることは、企業が保有するすべての資産に対して負債の割合が低いことになり、企業が使える資産が多いことがわかります。
しかし貸借対照表に出てくる金額は大きすぎるため、見慣れていないと負債が高額なのか、純資産が高額なのかわかりにくいです。その場合は純資産比率を使い、純資産の割合を計算してみましょう。
純資産比率は「純資産÷資産×100」で簡単に割り出せます。たとえば資産が100円で負債が70円、純資産が30円である場合の純資産比率は30%となります。
一般的な目安としては、純資産割合が40%であれば安定した企業といえます。自己資本が十分にあるため、外部からの資金調達に依存することなく、経済変動などに耐えることができる水準です。
純資産割合が20%以下になると、財務リスクが高い場合があるという見方をされることもありますが、宿泊業や飲食業などは業界平均が15%程度です。業界による部分も大きいので、必ずしもすべての業界に当てはまるわけではありません。
重要度☆☆☆売り上げと利益

企業の売り上げや利益の内訳は、損益計算書に記載されています。売り上げにも企業が得たすべての売り上げを計上する「売上総利益」や、企業の事業によって得た「売上高」、売上高から売上原価を差し引いた「売上総利益」など、さまざまな種類があります。
売上高が高くても、利益がなければ経営は継続できないため、有価証券報告書では売り上げとともに利益を確認することが重要です。売上総利益から販売費、一般管理費などを差し引いた額が「営業利益」と呼ばれるものとなります。
そして営業利益から企業が本業以外で得た利益を足して、損失を差し引いたものが「経常利益」です。経常利益から特別利益を足し、特別損失を引いたものが「税引前利益」となり、最終的に税金を差し引いた額が「当期純利益」として本当の利益額となります。
そのため見方としては、税金を差し引く前の「税引前利益」が赤字になっていないか確認することが重要です。税引前利益がマイナスの額になっている場合は利益よりもかかった費用のほうが高額であることになるため、その企業の業績は良いとはいえません。
さまざまな名称が出てきて難しく思えますが、商品・サービスが売れた金額から、売るためにかかった費用を差し引けば最終的に本当の利益(当期純利益)になるといった流れです。そのため、売り上げと利益は別物であるということは覚えておきましょう。
- 売り上げを見て、赤字になっている企業は選ばないほうが良いでしょうか?
赤字にもさまざまな理由が考えられるためよく分析してから判断しよう
赤字になっている企業だからといって、短絡的に選ばないほうが良いというわけではないものの、慎重な判断は必要です。
まず、赤字は一時的な損失なのか長期的な傾向なのかを判断しましょう。次に赤字の理由を確認します。景気の変動や大規模な設備投資や新規事業への投資など、一時的な理由であれば回復の見通しが高いです。
長期的に利益を出せていない場合や、斜陽産業の場合は構造的な理由での赤字の可能性があります。自己資本比率や財務状況を確認し、赤字にどれくらい耐えることができるのかを判断しましょう。
さらに業界の状況や回復の見込みがあるかどうかを踏まえ、冷静に判断することが大切です。赤字やリスクがあることを認識したうえで、「それでもこの企業の一員になりたい」と思う魅力を感じているのであれば、あえて選んで、立て直しに貢献するという選択もあります。
重要度☆☆☆事業別(セグメント)売上

事業別売上は、複数の事業を経営している企業で使われる数値です。どのような分野で活躍しているか、売り上げが伸びているかわかるため、有価証券報告書を見る際は意識して探してみてください。
事業別売上を見ることで、ただ単に商品やサービスが利用されているといった数値の情報のほか、目標を達成できない際や低迷している場合の課題や、どの事業に力を入れているかなどもわかります。
そのため自分が担当したい分野もわかりやすく、課題や目標があればそれに沿った自己PRや志望動機も書きやすくなると考えられます。
重要度☆☆平均年収
年収や待遇に関しては、働くうえで非常に重要なポイントです。しかし面接で「給与はどのくらい上がりますか?」といった質問は印象が悪くなる可能性があるため、有価証券報告書内の情報で先に確認しておきましょう。
有価証券報告書では平均年収以外にも、従業員数や平均年齢、平均勤続数など現在働いている社員のさまざまなデータが掲載されています。
多くの企業では有価証券報告書がPDF化されているため、見方としては「年間給与」や「平均年収」、「従業員」など関係性のある単語で検索すると情報が早く見つかります。
平均年齢や平均勤続年数は一概に良い悪いはないため、自分のキャリアパスやキャリアのイメージに照らして評価しましょう。
平均勤続年数が長い企業は、長期間働き続けられる環境が整っている一方で、キャリア形成はゆっくりの傾向です。反対に短い企業は、離職率が高い可能性があるものの、いろいろな経験ができるかもしれません。
また平均年齢が30歳前後なら活発な職場環境が望める一方で、労働強度としては高い可能性があり、40歳以上なら、経験豊富で安定した雰囲気が期待できるものの、保守的な傾向があるかもしれません。
企業選びの際には、自分がどのような職場で働きたいか、どのようなキャリアを築きたいかを考慮し、これらのデータを活かすと良いでしょう。
統合報告書・アニュアルレポート
統合報告書は有価証券報告書と同じく情報量が多いIRであり、企業の個性が色濃く表れた資料です。そのためよく読み込むほど企業の強みや弱み、特色などが理解できて、就活にも活かしやすくなります。
有価証券報告書よりも資料としてわかりやすく作成されていますが、こちらも内容は膨大であるため、重要な部分を優先的に探して読んでみましょう。
重要度☆☆☆社内制度
統合報告書では、企業が導入している福利厚生や社内制度についても紹介されています。社内制度も待遇と同じく、面接で詳しい話を聞きにくいジャンルといえます。
そのため統合報告書内に記載されている社内制度を見て、社員がどのような働き方をしているか確認してみましょう。中でも働き方改革や人材育成についての考え方などは、入社後特に密接にかかわる部分です。
たとえば、先輩がプライベートやメンタルの悩みなど業務以外の相談にも乗ってくれる「メンター制度」や、今後のキャリア向上に関する相談に乗ってくれる「キャリアコンサルティング制度」を導入している企業もあります。
また社内制度は統合報告書のほか、企業の採用HPに詳しく記載されていることもあります。統合報告書で社内制度の情報が見当たらない場合は、企業のHPをよく探してみてください。
- IRで見た情報や面接で聞いた働き方が、入社後に全然違うといったことはありますか?
特に仕事内容や労働条件が違ったという声はある
就活で不安に感じる「IR情報や面接で聞いた働き方が、入社後に全然違う」といった事例は、実際に多くの人が経験しています。特に、仕事内容や労働条件、社風については入社前に詳しく確認しておくべきだという声が多いです。
このことから、採用面接時に説明された労働条件や職場環境は入社後には異なる場合があるといえるため、入社前に逆質問の機会を使って、疑問点をしっかりと確認することが重要です。
また、希望する部署や職種に配属されるとは限らない「配属ガチャ」のリスクもあります。
企業側の説明を鵜呑みにせず、自分自身で積極的に情報収集し、現場での実際の働き方や社内の雰囲気を可能な限り把握することが、就職後のミスマッチを防ぐためには有効です。
会社の福利厚生について詳しく知りたい人は、ぜひこちらの記事も参考にしてみてください。多くの企業が導入している一般的な福利厚生の基礎知識から、福利厚生に力を入れている企業が88社紹介されており、濃い内容の記事となっています。
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就活生向けに多くの企業で導入されている福利厚生や人気の福利厚生をランキング形式で紹介し、福利厚生に着目した企業選びについて解説します。キャリアアドバイザーによる企業側の視点も解説しているので、ぜひ参考にしてくださいね。
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重要度☆☆事業以外の活動
入社するうえで、企業が事業以外にどのような活動をしているのかは選考前に知っておくべきポイントの一つです。統合報告書では環境問題への取り組みや社会貢献、多様性を重視したダイバーシティの推進といった、事業以外の活動も記載されています。
大きな企業であるほど社会貢献性が高いことが多いため、寄付や物的支援をおこなっているなどの情報は一度目を通しておきましょう。中小企業の場合は地域密着型の活動が多く、文化の保全や地域の清掃活動といった内容も見られます。
- 「御社で働きながら社会貢献したい」という志望動機は良い印象を持たれますか?
それだけでは抽象的すぎるので注意! IRから学んだことを盛り込もう
「御社で働きながら社会貢献したい」という志望動機は抽象度が高いので、面接官の社会貢献に対する思いによって評価が分かれてしまう危険性があります。
企業のIRの項目を読み込んで学んだことを活かして、社会貢献についての具体的な方法と企業との関連性を示すことを意識しましょう。
企業の活動と社会貢献を結びつけたり、企業のCSRやSDGsに対する取り組みに共感を示したりすることで、その一員として貢献したいという思いを具体的に伝えることができると思います。
ここだけでもチェックしておこう! IRの特に重要な部分の見方
ここだけでもチェックしておこう! IRの特に重要な部分の見方
- 企業情報が数字でわかる有価証券報告書
- 企業の方向性を知れる中長期経営計画
- 企業分析に役立つ統合報告書・アニュアルレポート
- 企業の雰囲気を感じられるトップメッセージ
IRの情報は膨大であるため、すべてを見て内容を把握することは第一志望の企業でも難しいです。そのため、IRの中でも特に重要な部分をよく見て、選考に備えておきましょう。
ここからはIRの中でも重要度が高い部分と、就活に活かせるポイントについて解説します。さまざまな企業のIRを見ていると特色の差も見えてくるため、応募を検討している企業のIRは積極的に調べてみましょう。
企業情報が数字でわかる有価証券報告書
有価証券報告書の中で重要な部分
- 経営方針
- 事業状況
- 財務状況
- 設備状況
- 従業員に関する事項
上場企業や特定の非上場企業に発行が義務付けられている有価証券報告書は、IRの中でも最も企業について詳しく書かれている資料です。その分情報量が膨大であるため、重要な部分のみでも目を通しておきましょう。
応募前に経営方針を把握しておけば自分と企業の相性がわかり、事業状況や財務状況がわかれば履歴書にも活かせます。設備状況は事業状況と併せて見ることで、企業がどの部分にお金をかけているかがわかり、平均年収や平均年齢など従業員に関する事項を見れば、今後のキャリアの判断材料となります。
また決算短信や決算説明資料は有価証券報告書に記載されいてる内容も含まれており、かつ資料として見やすく作成されていることが多いため、有価証券報告書で情報を探しにくい場合は決算短信や決算説明資料も併せて参考にしてみてください。
有価証券報告書を読む際に特に注目すべき重要なポイントは、「企業概況」、「事業状況」、「経理状況」の3つです。
これらのセクションでは、企業の経営方針やリスク、財務健全性を理解できるため、投資判断の基礎となります。
企業の方向性を知れる中長期経営計画
中長期経営計画では、企業の今後のビジョンや課題、目標などがわかります。企業が抱えている問題や課題など改善すべき部分は、外部の人間である学生からはわかりにくいため、中長期経営計画を活用して今後のビジョンに対する理解を深めていきます。
中長期経営計画では企業が目指したい姿や、それに向かうための改善点、リスクなど具体的なビジョンが説明されており、企業理解を深める資料としては非常に活用しやすいIRです。
自分がその理念に共感できるかどうか、そして入社後は社員として目標に向かって進みたいと思えるかイメージしてみましょう。共感できた部分は、志望動機や自己PRに落とし込める素材として活用してみてください。
企業分析に役立つ統合報告書・アニュアルレポート
統合報告書では経営計画・経営戦略といった未来のビジョン以外に、社会貢献や環境活動など現在の取り組みまでさまざまな情報がまとめられています。その企業が事業以外にどのようなことに取り組んでいるか知ることができるため、企業分析や同業他社の比較には欠かせないIRともいえます。
企業がこれまでどのように成長してきたかなどのストーリーや、企業が大切にしていること、これからの取り組みなど、企業の個性といえる部分を探したい場合は統合報告書やアニュアルレポートを参考にしてみてください。
統合報告書で得た企業の個性を志望動機や自己PRに落とし込むには、統合報告書から企業を表すキーワードを抜き出し、そのキーワードが自分自身の経験や能力、価値観とどうつながっているかを書き出してみましょう。
企業の価値観やビジョンに共感したということを志望動機にしたり、企業のCSRなどの具体的な取り組みと自分自身の過去の経験で親和性の高いものを結びつけて自己PRにしたりすることが可能です。
企業の雰囲気を感じられるトップメッセージ
代表取締役が直々に書くトップメッセージは、他社との比較をしやすい部分の一つであり、知らない企業でもトップメッセージを読めば企業の特徴や雰囲気をつかめます。
トップメッセージの内容は、企業の方向性そのものといっても過言ではありません。そのため企業と自分の相性が知るためには、トップメッセージをよく読むことが重要です。
代表取締役が新卒向けにどのような人材を求めているか書いている企業もあるため、IRを就活に活かしたい人は必ず一度は目を通してみましょう。
- 「トップメッセージを見て理念に共感して応募しました」という内容の志望動機は、面接官にどのような印象をもたれるでしょうか?
悪くはないものの工夫は必要! 自身が貢献できる理由も示そう
「トップメッセージに共感して応募しました」といった志望動機は、良い印象を与える可能性があるものの、伝え方には注意が必要です。
具体的な理由や自分のスキルとの関連性を示すこととセットにする必要があります。
単に共感するのではなく、その理念に基づき、自分がどのように企業に貢献できるかを明確に伝えましょう。
それにより説得力が増し、企業への深い理解と貢献意欲を持っていることを面接官に効果的にアピールできますよ。
プロ直伝! キャリアコンサルタントがIRの見方を解説
ここまでIRの重要性や細かい見方について解説しましたが、いざ就活でIRを使う際、どのような情報を活用して良いかわからないかもしれません。
ここからは数多くのIRや履歴書を見てきたキャリアコンサルタントが、IRの重要な部分についての見方について解説します。
まだ応募する企業が決まっていない人や履歴書に何を書いていいかわからない人は、プロが伝授するIR情報の見方を知って、就活に活用してみてください。
アドバイザーコメント
瀧本博史
プロフィールを見るIRの中でも特に決算説明資料と事業別売上高が就活に役立つ
まず、決算説明資料はIR情報の中でも特に重要です。この資料には、企業の売上高、営業利益、今後の経営計画などが詳細に記載されていて、企業の財務状況や戦略を把握するのに役立ちます。
これらのデータを過去数年にわたって比較することで、企業の成長性や安定性を評価することが可能です。たとえば売上高が毎年増加している企業は、安定した成長が望めると判断できます。
次に、事業別売上高を確認することも重要です。企業がどの事業に注力しているかを知ることで、企業の強みや将来の展望を理解することができます。
これにより、志望動機や逆質問で具体的な質問を用意することが可能で、たとえば「御社のIR資料で、◯◯事業に力を入れているとありましたが、今後の展開について詳しく教えていただけますか?」といった形で質問することで、面接官に対して企業への深い理解と関心をアピールできますよ。
経営計画から企業の方向性と自身のビジョンを比較することもおすすめ
さらに、経営計画を読み解くことも企業の未来を見通すうえで不可欠です。経営計画には、企業が今後どのような戦略を採用し、どの市場に進出しようとしているのかが詳細に記載されています。これを理解することで、企業が目指す方向性と自分のキャリアビジョンが一致しているかを確認することができます。
IR情報を効果的に活用することで、企業研究の深みが増し、就活においてほかの応募者との差別化を図ることができるでしょう。
IRを就活に活かすためのポイント4選
IRを就活に活かすためのポイント4選
- 自分なりに分析しながらIR情報を見る
- 何度も見返す情報はPDFでまとめる
- IR情報に出てくる単語を理解しておく
- SWOT分析で企業情報をまとめる
IR情報を就活に活かすためには、情報を見ることに加え、得た情報をどう利用するかが重要です。
複数の企業に応募する場合は、その分見るべきIRも多くなり、情報がまとまりにくくなってしまうものです。そのため、IRの見方のみならず、どのように情報を処理するかを考えることで、IRを最大限活用できるといえます。
IRを見る際は、ここで解説するIR情報を効果的に活用するためのポイント4選が役に立ちます。誰でも取り組みやすい内容であるため、最も気になる企業のIRを見ながらぜひ実践してみてくださいね。
①自分なりに分析しながらIR情報を見る
IRには企業の強みや目標、課題点など、良いことも悪いことも書いています。そのため情報を見ながら、自分なりに「なぜこの企業はこうなってしまったのか」ということを考えてみましょう。
売り上げが不調である場合は、売り上げが下がった要因や、今後どのような動きで回復するのかなど、情報をノートに書きこんでみると自分なりの考え方がまとまりやすくなります。
一方で商品やサービスが大ヒットして、今後も成長が予想される場合は、どの点が同業他社の商品と違ったのか疑問を持ち、自分なりの考えを出してみましょう。
その企業のIRを初めて見た学生よりも、役員や社員、株主など、企業と長年つきあってきて関係が深い立場の人間のほうが的確な意見を出せるため、自分の考えの正確性は重要なポイントではなく、自分で考えて情報をまとめることが大事です。
もちろん面接でIRの情報を使う場合は正しい情報であることに越したことはないので、IRに答えが記載されていることは自分の意見を別で加えつつも、正しくまとめましょう。
- IRを見たうえで企業の課題点や弱みなど、自分の意見をいってくる学生は、生意気だと思われませんか?
それだけでネガティブな評価になることはない! むしろ印象を良くするチャンス
伝え方さえ気を付ければ、IRを見たうえで企業の課題点や弱みについて自分の意見を述べることは、生意気だと感じられることはまずないでしょう。むしろ、企業の現状を理解し、建設的な改善策を提案する姿勢は評価されます。
具体的には、批判ではなく前向きなアプローチを心がけ、課題を指摘するだけでなく、自分なりの改善策や提案を加えることで、たとえその指摘が芯を食ったものでなかったとしても、少なくとも面接官に対して「問題解決に積極的で前向きな人材」として良い印象を残せます。
ちなみに、仮に多少「生意気」と受け取られたとしても、そのことが直接面接で落とされる理由にはならないことがほとんどなので、安心してくださいね。
②何度も見返す情報はPDFでまとめる
膨大なIRは1回で見ても覚えられるものではなく、参照するたびに企業のHPから確認していると時間がかかるため、情報を活用するために工夫することがポイントです。
何度も参照するIRは、いつでも確認できるようにPDFでダウンロードしておきましょう。その中から重要なポイントや知りたい部分を抜き出したり、他社のIR情報と比較しやすい資料を作成したりなど、自分の知りたい情報をPDFにまとめておくことをおすすめします。
ダウンロードして終わりではなく、自分が見やすいようにIR情報をまとめて、そこに自分の感想や考えをメモしておくことも情報を活用できる良い方法です。
IR情報は見るだけではなく、そこから志望動機や自己PRに役立てられる要素を抜き出し、自分の経験やスキルと関連付けて、自分自身の言葉で伝えられるよう、考えながらまとめることが大切です。
具体的な情報が数多く示されているので、自分のイメージだけではわからなかった部分が明確になりますよ。
③IR情報に出てくる単語を理解しておく
IRを見ていると、見慣れない単語がいくつも出てきます。投資関連の専門用語が出てくることに加え、たとえば統合報告書とアニュアルレポートのように、同じ内容の資料でも企業によっては別の言葉で表していることもあります。
そのため、活用したいIRの中に知らない単語がある場合は、うやむやにせず一度調べてメモを取っておきましょう。単語の意味がわかれば内容が頭に入りやすく、IRを履歴書やESに落とし込む際にも内容をまとめやすくなるため、わからない単語は積極的に調べてみてください。
④SWOT分析で企業情報をまとめる

SWOT分析の言葉の意味
- S:強み(Strength)
- W:弱み(Weakness)
- O:機会(Opportunity)
- T:脅威(Threat)
SWOT分析は、企業が効果的な経営戦略を立案するために、自社の強みや弱みを把握するための分析方法です。自社の内部による環境は強みと弱み、外部による環境は機会と脅威で情報をまとめましょう。
たとえば自社製品やサービスに関することは強みと弱みになり、競合他社の状況や市場規模、法律など外部の環境は機会と脅威に分類されれます。
本来SWOT分析は企業が使う分析方法ですが、IRを見ながら自分なりに情報をSWOT分析のように分類していくと、企業の強みや弱みなどを可視化することができるのです。
特に最終面接では「当社の弱みはどこだと思いますか?」や「なぜ他社ではなく当社に応募したのですか?」といった、企業の情報を把握していなければ回答が難しい質問を投げかけられることもあるのです。その際、企業の強みや弱みを理解していれば、回答の幅を広げられるでしょう。
最終面接の質問対策に自信がない人は、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。最終面接でよく聞かれる質問や、ポイントを突いた逆質問の例が詳しく解説されています。
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最終面接で聞かれることをキャリアコンサルタントとともに解説。企業側が重視するポイントも踏まえながら回答例も紹介しています。さらに最終面接のメインともされる逆質問についても、企業に聞いておくべきことを説明しています。
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SWOT分析で志望動機や逆質問を作る方法
SWOT分析でまとめた企業の情報は、志望動機や逆質問に活かせる素材となります。
たとえば企業がグローバルな商品開発に強く、海外事業の利益が上がっている場合は、「英語力を活かして、さらに世界で認められるような商品を開発・販売したい」という志望動機の枠組みが作れます。統合報告書や決算説明資料などで具体的な目標が掲げられていれば、さらに詳しい志望動機を作りやすくなりますね。
逆質問を作る場合は、たとえば特定の事業の売り上げが不調で、今後は規模縮小が予想される場合はそのまま、「今後○○の事業は規模を縮小して運営していく方針なのでしょうか?」といった、IRを見た人のみが作れる質問が思い浮ぶようになります。
特に自分が希望する事業の質問であれば、学生側は今後の方向性がわかるメリットと、企業側は自社のことを考えている、思ってもらえているというメリットがあるため、的確な志望動機や逆質問を作りたい場合はぜひSWOT分析にチャレンジしてみてください。
SWOT分析は難しそうと感じる人もいるかもしれませんが、IR情報を活用すれば、SWOT分析を使わなくても効果的な志望動機や逆質問は作成できます。
IR情報には企業の経営戦略や財務状況、今後の展望が詳しく記載されているため、これをもとに企業の強みや今後の方針を理解することで、より具体的で説得力のある志望動機や質問を作成できます。
実践編! IRをもとに志望動機を作ってみよう
実践編! IRをもとに志望動機を作ってみよう
- 企業の方向性に賛同した場合
- 長期間にわたり売上推移が上がっている企業の場合
- 海外進出に積極的な企業の場合
IRから情報を抽出することはできても、実際にIRから志望動機を作るとなると、どの情報を活用すれば良いかわからない人もいるかもしれません。そんなときは、まず実際の例文をお手本にしてみてください。
3つの例文すべてにキャリアコンサルタントからのコメントがあるため、まずは例文を読んでみて、IRで得た情報からどのような志望動機を作っているか見てみましょう。
ケース①企業の方向性に賛同した場合
企業の方向性に賛同した場合
私は御社の「企業や人がつながる力」という企業理念に共感して、今回志望いたしました。
私は人とのつながりこそが、自分を大きく成長させてくれるものだと思っています。部活動では一つの目標に向かって、チームが一丸となって努力をしたからこそ優勝できた経験があり、一人で結果を出すよりも大きなやりがいを感じました。
そして御社のインターンシップでも、社員の方からチームで大きなイベントを成功させたお話を伺い、御社では本当につながる力を大切にしていると再確認できたことが応募に至ったきっかけです。
企業の理念やビジョンに直結する具体的な経験や実績をエピソードとして伝えることで、効果的に説得力のある志望動機を作ることができます。
こちらの例文では、部活動でのチームワークを通じてつながりの大切さを実感したことと、インターンで企業の理念を確認した経験がうまく結びついているといえるでしょう。
ケース②長期間にわたり売上推移が上がっている企業の場合
長期間にわたり売上推移が上がっている企業の場合
私は大学で〇〇といった研究をしており、自分の知識と経験が活かせる業界で活躍したいと思っていました。
業界の数ある企業の中で御社に応募した理由は、御社の売上高が高く、トップレベルだったことです。簡単なことではありませんが、この売上高を守りつつ、利益率も上げられるような社員になりたいと思っています。
売り上げのみに注目してしまうと、表面的な印象を与えてしまう危険性があるので、その売り上げがどのように構成されているのかという点や、どんな強みがあるのかについてIRを読み込んで探って盛り込みましょう。
売り上げの背景にある戦略や企業の強みを明確にすることで、企業について理解していることをアピールできます。
ケース③海外進出に積極的な企業の場合
海外進出に積極的な企業の場合
私が御社を志望したのは、IRから今後の海外進出にも積極的であることを拝見したためです。
私は1年間アメリカに留学して、さまざまな文化にふれて知見を広げられました。中でも印象的だったのは、街から少し離れた場所に散乱したゴミや地面で寝ている人が多く、貧困の格差を感じた点です。
御社は現在、日本に加え、先進国を中心とした事業の展開に取り組んでいますが、IRからは今後発展途上国への進出も考えているとのことで、そこに魅力を感じたことが一番の志望理由です。
これまで培ってきた語学力を活かして、安心して事業を継続できるような利益の出せる社員になりたいと思っています。
志望動機が具体的で企業の最新情報に基づいている点や、留学経験を活かして説得力のあるエピソードを述べている点が優れていて、ほかの応募者との差別化につながっています。
学生がこのように自身の経験を具体的にアピールすることで、リアルな印象を与えることが可能です。
さらに差を付けるアピールを! IRを利用した逆質問の例
さらに差を付けるアピールを! IRを利用した逆質問の例
- 経営方針や企業理念に関する質問
- 事業に関する質問
- 今後のビジョンに関する質問
面接では最後に逆質問の場が設けられることが多いですが、ここで的外れな質問やIRを見れば知っているはずの質問をしてしまうと、一気に印象が悪くなってしまう可能性があります。
IRの情報を利用して逆質問を作ると、ありふれた内容になりにくく、最後の一押しとしても良いアクセントになります。
特に最終面接では社長や役員が同席することも多く、絶対に失敗したくない場面です。オリジナリティを出しつつ、面接官から高評価を得られるような逆質問を考えましょう。まずは例文で、IRで得た情報からどのように逆質問に変えていくかチェックしてみてください。
面接の逆質問が思い浮かばない人は、こちらの記事もおすすめです。一次面接と最終面接では逆質問にふさわしい内容も多少変わってくるため、自分の状況に合わせて逆質問を考えてみてください。
一次面接の逆質問
一次面接の逆質問例60選|4つのポイントを押さえて好印象を掴もう
最終面接の逆質問
最終面接の逆質問30選! 内定をつかむ必須準備と差別化のコツを解説
①経営方針や企業理念に関する質問
経営方針や企業理念に関する質問
- 御社が現在、不足していると感じる人材はどのような人ですか?
- 御社の〇〇な企業文化に関して、何かエピソードを教えていただきたいです。
- 御社の〇〇な企業理念を反映するために、社員におこなっている教育などはありますか?
- 御社の〇〇な企業理念を感じられる、社内でのエピソードはありますか?
- 御社は地域活動にも取り組んでいると伺いしましたが、具体的にどのような活動をしていますか?
経営方針や企業理念は有価証券報告書や統合報告書、トップメッセージなどで確認できる部分で、企業と自分の相性を判断しやすい質問です。
IRを見ておかなければ作れない内容であるため、企業研究がしっかりできており、入社の意欲も高い学生と評価されやすいです。まずは情報を読み込んで、自分なりに理解を進めることが逆質問を作る第一歩といえます。
また経営方針や企業理念に関する質問は、社長や役員が出席することの多い最終面接に適している内容です。一般の面接官では答えられない、企業のトップの意思を確かめられる質問がふさわしいと考えられます。
- 社長や役員が同席する面接では、どのようなことを質問すれば高評価になるでしょうか?
経営方針や長期的なビジョンなど企業の先を見すえた質問をしよう
社長や役員には、企業の経営方針や長期的なビジョンに関する質問がおすすめです。
たとえば中長期的なビジョン、注力分野、業界変化に対する見解や戦略といった企業の未来を見すえた質問をすることで、企業への深い理解と積極的に貢献したい意欲をアピールできます。
ただし、抽象的な質問はすでにHPに記載されている内容と重複する可能性もあり、準備不足の印象を与える可能性もあるため、IRなどを読み込んだうえで自分が持った疑問など、一歩踏み込んだ質問をすることがより有効になるでしょう。
②事業に関する質問
事業に関する質問
- 前年度と比較して〇〇事業の売り上げが伸びましたが、新たに取り組んだ施策などはありますか?
- 〇〇を新規事業として展開した理由はなんでしょうか?
- 業界でもトップシェア率を誇る御社の強みは〇〇だと思いますが、社長はどうお考えでしょうか?
- 御社が最近取り組んでいる〇〇事業に関して、現在の問題点や課題点などはありますか?
- 〇〇事業に関しては、入社後にどのような能力があれば携われますか?
事業に関する質問では、売り上げや事業に関する強み、弱みなど、実際に働くうえでも関連が深くなる部分について確認できます。希望する配属先や事業がある場合は、積極的に質問することで意欲の高さも評価されるのです。
IRを見たうえで自分が疑問に思ったことを逆質問として問うことで、オリジナリティのある内容にできます。そのためIRを見る際は、自分なりの考えをメモしながら情報をまとめてみましょう。
また、事業に関することはすでにIRで記載している可能性があるため、逆質問と公開されている情報が被らないように意識してみてください。
③今後のビジョンに関する質問
今後のビジョンに関する質問
- 今後、競合他社とのさらなる差別化のためには、どのような点を意識していますか?
- 今後、力を入れていきたい事業などはありますか?
- 企業を成長させるためには、どのような要素が重要だとお考えですか?
- IRに記載されている経営戦略は、どのように決定されているのですか?
- 中期経営計画を拝見しましたが、10年後といった長期のビジョンはどのようなお考えでしょうか?
企業の今後のビジョンについては、有価証券報告書や決算説明資料、中長期経営計画などで解説されています。今後の展望に関しての質問もIRを見ていなければ作りにくいため、企業の情報を調べているといったアピールにもつなげていけます。
応募した企業が今後どのように成長していくかは、いくら情報をキャッチしても、外部の人間である学生には正確なことがわからないものです。
しかし「私はこう思っていますが、〇〇さんはどのようなお考えでしょうか?」といった、自分なりに考えた仮説とともに逆質問を投げかけることで、面接官からも「自分の考えを持っていて企業のことをしっかり調べている学生」と思われやすくなります。
好印象を残すために、自分の意思で物事を考えられる学生だと面接官に思わせましょう。
正確な企業情報を知るにはIRの見方を知ることが必須
IRは投資家や株主向けの情報ですが、就職を目指す学生も必ず見ておくべき情報源となります。
IRの見方を知ることは、企業を理解して企業研究を進めることと同じです。IRは、すでに志望する企業が決まっている、面接を絶対に成功させたい学生から、まだどの企業に応募するか決まっていない学生まで見ておくべき部分です。
今回紹介したIRの重要な部分や就活に役に立つ部分の見方を実践して、実際に気になる企業のIR情報を自分なりにまとめてみてくださいね。
一度IRの見方を知れば、さまざまな企業のIR情報を見て比較できるようになり、同業他社との違いやその企業ならではの強みが理解できるようになりますよ。
アドバイザーコメント
高尾 有沙
プロフィールを見るIR情報は正しく活用することで企業理解や周囲との差別化に効果を発揮する
IR情報は、企業の本質を理解するための非常に重要なツールです。単なる表面的な情報ではなく、企業がどのような戦略を持ち、どのように成長しようとしているのかを深く知ることができるため、これを活用することで、志望動機や面接での発言に具体性と説得力を持たせられ、ほかの応募者と差をつけることができるでしょう。
ただし、IR情報をただ読むだけではなく、自分なりに分析し、考えをまとめることが大切です。企業の強みや課題、今後のビジョンを理解し、それに対して自分がどのように貢献できるかを考えることで、より具体的な志望動機や逆質問を作成できます。
このプロセスを通じて、面接官に対して「この学生はしっかりと企業を理解し、自分の考えを持っている」という印象を与えられます。
調べてわかったことや自分なりの考えも書き留めて活用しよう
さらに、IR情報を活用する際には、業界内の複数の企業の情報を比較することで、志望する企業の立ち位置や競合他社との差別化ポイントを把握することも可能です。これにより、志望する企業の強みや独自性を理解し、その魅力を自分の言葉で伝えられるようになります。
最後に、IR情報は一度見ただけでは理解しきれないことも多いので、何度も見返すことや、必要に応じてメモを取りながら整理することをおすすめします。こうした努力が、最終的に自分の自信につながり、就職活動を成功に導く鍵となるでしょう。
IRを通じて企業理解を深めることで、自分の未来に向けた第一歩につなげましょう。
執筆・編集 PORTキャリア編集部
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記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi
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キャリアコンサルタント/キャリアコンサルティング技能士
Hiroshi Takimoto〇年間約2000件以上の就活相談を受け、これまでの相談実績は40000件超。25年以上の実務経験をもとに、就活本を複数出版し、NHK総合の就活番組の監修もおこなう
プロフィール詳細キャリアコンサルタント
Arisa Takao〇第二新卒を中心にキャリア相談を手掛け、異業種への転職をサポートする。管理職向けの1on1やコンサルティング業界を目指す新卒学生の支援など年齢や経歴にとらわれない支援が持ち味
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Yukari Itaya〇未就学児から大学生、キャリア層まで多様な世代のキャリアを支援。大企業からベンチャー、起業・副業など、幅広いキャリアに対応。ユニークな生き方も提案するパーソナルコーチとして活躍
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