電通はやばい? 激務? 広告業界出身の専門家が紐解く

本企画について

「噂や評判に、プロの確実な視点を。」をテーマに企業選びや意思決定の支援をする企画です。漠然とした不安には「確度の高い事実」を、意思決定には「キャリアの専門家による視点」を提供することを目指します。

電通は、広告業界では日本国内最大手となり、多くの就活生が気になっている企業の一つです。しかし、同社には「ブラック」「激務」といったネガティブな噂から、「収入が高すぎる」という疑念の声まで挙がっているようです。

そこで、信頼できる情報を用いて、企業の正しい姿を客観的な視点で読み解きます。また、広告業界出身のキャリアコンサルタントからも専門家の視点からのアドバイスをしているので、企業研究の参考にしてください。

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1分でわかる電通

電通とは

1901年に創業した日本の広告業界を牽引するリーディングカンパニー。独自の経営方針「B2B2S」(Business to Business to Society)のもと、顧客企業と共に社会課題を解決し、社会全体の持続的成長を実現することを目指す。

強固なグローバルネットワークを有し、従来の広告だけでなく、デジタルやテクノロジー、スポーツ、エンターテインメント領域を融合した「人起点の変革」と価値創造に挑戦し続ける。

会社名株式会社電通(DENTSU INC.)
上場東京証券取引所プライム市場
従業員数(連結)67,667人(2024年12月時点)
本社所在地東京都港区
おもな事業「人」への深い洞察を軸に、複雑化・高度化する顧客課題から本質的課題を見出し、統合的なソリューション “Integrated Growth Solutions” を提供。
広告やマーケティングにとどまらない広い領域から顧客の持続的成長を支援し、社会の活性化に貢献。
売上高(連結)1兆4,109億6,100万円(前年同期比8.2%増)(2024年12月期)
経常利益(連結)1,249億9,200万円(同175.8%)(同期間)
平均年収1,507万5,028円(同期間)
福利厚生・スーパーフレックス制度
・確定拠出年金制度
・資産形成のサポート
・慶弔金・医療補助
・︎契約施設の利用
・︎電通会(社員互助会)
・ベネフィットステーション
・子の出生休暇
・育児休業・産後パパ育休
・育児看護休暇
・母性保護休暇
企業HPhttps://www.dentsu.co.jp/
新卒採用HPhttps://www.career.dentsu.jp/recruit/2028/
企業情報

「電通がやばい」と言われる5つの理由|プロが読み解く

電通がやばいと言われるおもな理由を5つにまとめています。広告業界で勤務した経験のあるキャリアコンサルタントからの解説も参考にしながら、企業の実態を紐解いていきましょう。

①残業時間が長くブラックだから

電通がブラックと言われる要因の一つとして、2015年に社員が過労により自殺する事件があったことが挙げられます。後にこの一件は、労働基準法違反として起訴され、罰金50万円の有罪判決を受けています。

同社は電通労働環境改革本部を立ち上げ、22~5時の業務禁止や、1人当たりの総労働時間の80%削減など、残業時間を含めた労働環境の是正に向けて動きました(※1)。その結果、2016年に2,166時間だった総労働時間は、2019年には1,903時間へと減少しました。

労働管理の改善事例

  • 1人あたりの総労働時間を80%に削減しつつ100の成果を目指す
  • 22時〜5時 業務原則禁止の実施
  • 原則午後10時から翌5時の全館消灯と同時間帯における持ち帰り残業禁止の継続

また、残業時間について、公表されている最新値では、2016年の26.9時間から、2023年には9.0時間(※2)になったとされています。同時期の日本企業の平均13.8時間(※3)と比較すると、働きやすい環境になっていると言えます。

※1 電通 統合レポート2017
※2 電通 採用サイト 「電通」の働きやすさ
※3 厚労省 毎月勤労統計調査 令和5年分結果確報

プロのアドバイザーはこう分析!今はブラックではない? 働き方改革が進んだ現在の姿

キャリアコンサルタント

高尾 有沙

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労務管理の面から言えば、かつてのような違法な長時間労働が常態化するブラック環境ではありません。

急速に労働環境の適正化が進んだというのが実態です。全館消灯やPCログ管理などにより、勤怠管理は国内トップクラスに厳格化されています。

電通のきつさは残業時間ではない! 日本トップクラスの業務の密度にある

しかし、人によっては「ハードで厳しい」と感じられる可能性があります。その理由は、物理的な残業時間ではなく、「業務の密度とプレッシャーの高さ」にあります。

電通が扱うのは、日本を代表する大手企業の巨大なプロジェクトです。顧客からの期待値やコンペでの競合との戦いは極めてシビアで、限られた時間のなかで圧倒的なクオリティと成果を出し切ることが求められるのは変わりません。

労働時間で不当に縛られるブラックさではなく、プロとしての思考の深さや結果への妥協なきプレッシャーが存在する環境です。

この高い負荷を自身の成長機会ととらえられるか、負担と感じるかで評価が大きく分かれるでしょう。

②年収が高すぎるから

電通の平均年収は1,595万9,402円(※1)と公表されています。日本企業の平均が486.0万円(※2)であり、広告業界が含まれる学術研究、専門・技術サービス業、教育、学習支援業の平均が568.3万円(※2)であることから、かなりの好待遇であることがわかります。

また、年収以外の面でも、通常の有給に加えて、育児や介護のための休暇制度が整っていたり、本社ビルに複数の診療機関を設けていたりと、従業員の働き方を支える仕組みが多く取り入れられています(※3)。

また、働く場所も会社だけでなく、自宅やサテライトオフィスなどでも許可されており、すべての部署でスーパーフレックスタイム制度が導入されているなど、柔軟な働き方が推奨されている点も、好待遇の一つと言えます。

電通の福利厚生の一例

  • 働く場所
    自宅、会社、サテライトオフィス、外出先
  • 働く時間
    完全週休2日制、スーパーフレックス制度、22~5時は業務禁止、半日や1時間単位の休暇取得、3カ月に1日のリフレッシュホリデー
  • 充実した医療体制
    社内の電通健康管理センター設置、曜日ごとに整形外科・眼科・耳鼻科・精神科などの受診可
  • 住まいの支援
    借り上げ社宅、住宅購入やリフォームの優待サービス
  • 保険の支援
    雇用保険・労災保険・健康保険・厚生年金・介護保険など
  • 育児を支える制度
    子の出生休暇、育児休業・産後パパ育休、育児看護休暇、母性保護休暇、
  • その他
    確定拠出年金制度、資産形成のサポート、慶弔金・医療補助、契約施設の利用、︎電通会(社員互助会)、ベネフィットステーション

※1 電通 有価証券報告書 2025年12月期
※2 国税庁 令和6年分 民間給与実態統計調査
※3 電通 採用サイト 「働きやすさ」を支える制度

プロのアドバイザーはこう分析!圧倒的収益を支える社員への手厚すぎる労働環境

国家資格キャリアコンサルタント

馬場 岳

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2025年12月期の決算短信によれば、連結売上総利益は1兆1,975億円、日本国内セグメント利益は1,211億円と、高い収益力を誇ります。

一方で、企業選びでは数字だけでなく、働く環境にも注目したいところです。同社には、3カ月に1日の特別休暇や有給奨励日など、定期的なリフレッシュを促す制度があります。

また、本社ビル内の「電通健康管理センター」では、内科だけでなく眼科や精神科なども受診でき、心身の健康を支える環境が整っています。

表面的な企業選びは危険! 制度の実態を企業に聞いて判断しよう

ただし、就活では制度の「有無」だけで判断するのは危険です。実際に利用しやすいのか、どのように仕事へ活かされているのかまで確認することが重要です。

OB・OG訪問では、「リフレッシュホリデーで得たインプットは仕事にどう活きていますか」など、一歩踏み込んだ質問をしてみましょう。

自ら調べ、疑問を解消する姿勢が、納得できる企業選びにつながりますよ。

③新卒の就職難易度が高いから

電通は広告業界における大手企業の一つのため、就活生からの人気も非常に高いです。具体的な採用倍率は公表されていませんが、東京経済オンラインが発表している「入社が難しい有名企業ランキング」では22位にランクインしたことがあります(※1)。

また、同社には67,667人の従業員がいますが、新卒採用は毎年120~140人前後で推移しています(※2)。そのため、新卒での入社は非常に狭き門だと感じる就活生も多いでしょう。

確かに、職種によっては一定のスキルや経歴が要求されることもありますが、職種によっては学歴や学部などを指定していません。そのため、選考のなかで企業が求める人物像をすり合わせていくことが求められるようです。

学歴・年齢指定特記事項
総合職・学歴不問・既卒可
・⼊社時点で30歳未満
特になし
デジタルクリエイティブ職・学歴不問・既卒可
・⼊社時点で30歳未満
特になし
アート職・学歴不問・既卒可
・⼊社時点で30歳未満
・美術系の⼤学または⼤学の美術系学部・学科・コースで学んでいる
・⼤学の⼯学デザイン・情報デザイン系の学部・学科・コースで学んでいる
・デザインやビジュアルを用いたコミュニケーションなどの活動をしている
電通の募集要項(※3)

※1 東洋経済オンライン 「入社が難しい有名企業ランキング」トップ200 コンサル、商社、不動産…上位企業はどこか
※2 マイナビ2028 電通
※3 電通 採用サイト 選考について

アドバイザーのリアル・アドバイス!「電通に入りたい」では不十分! 難関を勝ち抜く本当の評価基準

キャリアコンサルタント/1級キャリアコンサルティング技能士

木原 渚

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電通の採用難易度が高いのは、応募者が多く、高いレベルの比較選考がおこなわれるためと考えると良いでしょう。

学歴や資格などの形式的な条件だけで、明確にふるいにかけるというより、総合的に評価されます。

特に見られやすいのは、「自分なりの視点を持っているか」「その考えを相手に伝えられるか」「周囲を巻き込みながら行動できるか」といった点です。

広告・コミュニケーションの仕事では、正解のない課題に対して新しい価値を生み出すことが求められるため、単に頭の良さや華やかな経験だけではなく、物事への好奇心、発想力、行動力、他者との協働力なども重要になります。

そのため、「電通に入りたい」という気持ちを示すだけでは差別化しにくく、「自分は何に関心を持ち、どのような経験から何を考え、どう行動してきたのか」を具体的に語れることが大切です。

ライバルと差がつく自分ならではの語り方で挑もう

募集要項上のハードルは高くなくても、選考では応募者同士の比較になります。

自分ならではの経験や価値観を言語化し、それを電通で何を実現したいかにつなげられるかが、選考突破のポイントになるでしょう。

④リストラがあったから

電通は2025年度の決算にて、海外事業に従事する従業員の約8%にあたるおよそ3,400人の人員削減を計画していると発表しています。そして、実際に2,100人の人員削減を完了したと報告されており(※1)、この取り組みがリストラの噂の実態だと考えられます。

大規模な人員削減の背景としては、海外事業の買収が想定外の赤字を計上してしまったことが挙げられます。

ただし、日本国内の拠点についてはリストラの対象となっていません。同年度の新卒採用人数の実績も148人と、前年143人(※2)と大きな変化がなく、引き続き安定的に人員を確保していくことが予想されます。

※1 電通 2025年通期 説明会資料
※2 マイナビ2028 電通

プロのアドバイザーはこう分析!リストラは企業体制が変化するタイミングで起こることがある

キャリアコンサルタント

高尾 有沙

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結論から言うと、従来の日本型雇用のような「業績悪化による一方的な解雇」が国内拠点で突発的に起きる可能性は、完全にゼロとは言えませんが極めて低いです。

国内事業は依然として強固な収益基盤を持っており、法的な解雇規制の壁も高いためです。

ただし、「人材構造の入れ替え」という意味での適正化は、形を変えて進行していくと考えられます。現在の広告業界は、従来のメディア枠の販売から、AI(人工知能)活用やデータ分析、経営コンサルティング領域へと急ピッチでシフトしています。

そのため、国内でも従来のスキルセットしか持たない層に対しては、早期退職支援制度の拡充や、デジタル領域への再配置(リスキリング)が進められていくことが想定されます。

大手=安定とは限らない! 変化に対応する姿勢が求められる

国内最大手だからといって「入社すれば一生安泰」と安心しきるのではなく、時代の変化に合わせて自身の市場価値を高め続ける意識を持つことが、これからの時代を生き抜く鍵となるでしょう。

⑤3,000億円超えの大幅赤字を計上したから

電通が発表した2025年12月期の決算によると、2,892億1,200万円の営業損益、3,276億100万円の、親会社の所有者に帰属する当期損失があったと報告されています(※1)。この大幅な赤字から、「倒産のリスクがあるのではないか」と思われることもあるようです。

しかし、電通の赤字は海外事業におけるのれんの減損などが原因となっており、現金の流出をともなうものではありません。実際に、本業の収益力を表す調整後営業利益においては、安定的に黒字を記録し続けています(※2)。

のれん

M&A(買収や合併)をおこなった際に、買収した企業の純資産を上回る金額を支払った場合に、その差分のことを表す用語

年度調整後営業利益
2015年度1,604億円
2016年度1,665億円
2017年度1,639億円
2018年度1,532億円
2019年度1,407億円
2020年度1,239億円
2021年度1,790億円
2022年度2,031億円
2023年度1,635億円
2024年度1,762億円

そのため、赤字を計上したからといって、経営状況が不安定だとは言い切れません。企業が赤字を計上した事実は認識しつつ、現状の経営状況を確認することが大切です。

※1 2025年12月期決算短信〔IFRS〕(連結)
※2 電通 決算短信 各年

アドバイザーのリアル・アドバイス!赤字かどうかはとらえ方による? 電通の業績を読み解く見方

国家資格キャリアコンサルタント

馬場 岳

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「赤字」という言葉、就活中はどうしても引っかかりますよね。電通グループの2025年12月期決算短信によると、本業の儲けを示す「調整後営業利益」は約1,725億円、日本国内セグメントも約1,211億円の黒字です。

一方で、おもにのれんなどの「減損損失」を約4,025億円計上したことで、最終的な当期損失は約3,276億円の赤字となっています。

このように、本業は黒字でも一時的な損失計上により、最終利益が赤字に見える構造があります。

数字に深い理解を示す姿勢が大事! 面接官が興味を持つ質問の仕方

現在の就活市場では、単に数字の表面だけを見ず、なぜその数字なのかを主体的に調べる姿勢が非常に高く評価されます。

面接の逆質問で「国内の調整後営業利益は黒字ですが、減損の影響と今後の展望について教えてください」と具体的に質問できれば、深い企業研究のアピールになります。

自分で数字を紐解いた経験は、あなたの大きな自信になります。不安を学びに変えて、一歩前へ進んでくださいね。

電通の噂は事実と受け取れるがやばいとは言えない

電通の5つの噂についておおむね事実ではあったものの、企業が「やばい」と言い切ることはできません。噂の原因や実態を理解したうえで、どのように受け取るべきかを考えることが大切です。

一つひとつの情報を正しく理解して、そのうえで自分自身との適性を確かめることで、納得できる企業選びを目指しましょう。

プロのアドバイザーならこうアドバイス!広告づくりだけではない! ほかの事業や業務内容を把握しよう

キャリアコンサルタント/1級キャリアコンサルティング技能士

木原 渚

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電通を目指す際には、実際にどのような仕事を、どのような環境でおこなうのかまで具体的に確認しておくことが大切です。

「電通=広告をつくる会社」というイメージを持つ人も多いですが、実際にはマーケティング、デジタル、事業開発、コンサルティングなど仕事の領域は幅広くなっています。

自分が興味を持っている仕事がどの領域にあり、入社後どのようなキャリアを歩めるのかを調べておきましょう。

また、仕事の進め方や求められる働き方との相性も重要です。多くの関係者と協働しながらプロジェクトを動かす仕事では、調整力やスピード感、状況の変化への対応力などが求められます。

イメージで決めない! あらゆる角度から自身との適性を考えよう

「有名企業だから」「クリエイティブな仕事ができそうだから」だけではなく、こうした働き方そのものを楽しめそうかを考えてみてください。

企業研究では、採用サイトだけでなく、社員インタビューやOB・OG訪問、説明会など複数の情報源から実態を確認することをおすすめします。

「電通に入ること」をゴールにするのではなく、電通でどのように働き、何を実現したいのかまで考えることが、入社後のギャップを防ぐうえでも重要です。

執筆・編集 PORTキャリア編集部

明日から使える就活ノウハウ情報をテーマに、履歴書・志望動機といった書類の作成方法や面接やグループワークなどの選考対策の方法など、多様な選択肢や答えを提示することで、一人ひとりの就活生の意思決定に役立つことを目指しています。 国家資格を保有するキャリアコンサルタントや、現役キャリアアドバイザーら専門家監修のもと、最高品質の記事を配信しています。

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記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi

高校卒業後、航空自衛隊に入隊。4年間の在籍後、22歳で都内の大学に入学し、心理学・教育学を学ぶ。卒業後は人材サービスを展開するパソナで、人材派遣営業やグローバル人材の採用支援、女性活躍推進事業に従事。NPO(非営利団体)での勤務を経て、「PORTキャリア」を運営するポートに入社。キャリアアドバイザーとして年間400人と面談し、延べ2500人にも及ぶ学生を支援。2020年、厚生労働大臣認定のキャリアコンサルタント養成講習であるGCDF-Japan(キャリアカウンセラートレーニングプログラム)を修了

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