就活を控えた人の中には「HR業界に興味はあるけれど、自分に向いているかわからない」「人材業界とHR業界の違いがわからない」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。HR業界は学生にとって接点が少ない業界であるため、就活を始める前に基礎知識から理解することが重要です。

そこで、まずはHR業界の特徴や仕事内容を正しく理解し、自身との適性を見極めましょう。HR業界にはさまざまなサービス領域があるため、自身が携わりたい業務を見定める必要があります。

この記事では、キャリアコンサルタントの野村さん、隈本さん、平井さんのアドバイスを交えながら、HR業界のビジネスモデルや今後の展望、求められるスキルについて詳しく解説します。

HR業界への就職を考えているものの、具体的な仕事内容や自身の適性に不安を感じている人は、ぜひ参考にしてみてください。

HR業界の仕事を理解してどの領域が自身に向いているか正しく見定めよう

HR業界の仕事内容は幅広いため、具体的にイメージできない人もいるのではないでしょうか。また、HR業界は人材業界との違いがわかりにくく、どの領域が自身に向いているか判断するのが難しいため、就活を始める前に理解を深めたいところです。

この記事では、HR業界の基礎知識やニーズが高まっている背景について詳しく解説していきます。まずはHR業界の現状を理解し、HR業界の全体像を把握することから始めましょう。そうすることで、自身のキャリアプランに合った企業を選びやすくなります。

また、HR業界で働くうえでの適性や向いていない人の特徴も解説します。自身の将来のキャリアを見すえるためにも、業界の特徴をしっかり理解しておきましょう。

記事の後半では、HR業界での企業選びのポイントを解説します。HRテックの台頭など業界の変化も含め、今後のキャリアをどう築いていくか長期的な視点で考える際の参考にしてみてください。

まずはここから！ HR業界とは

就活に向けて業界研究をしているなか、HR業界という言葉を最近知った人もいるのではないでしょうか。HR業界は人材業界と混同されやすいですが、それぞれの特徴や提供するサービスには違いがあります。

まずはHR業界と人材業界の違いを理解し、「自身がHR業界で長期的に活躍し続けられるか」「自身がやりたい業務内容と一致しているか」を判断するために、HR業界の全体像を把握しておくことが重要です。

ここでは、HR業界の基礎知識として、人材業界との違いや市場規模、ビジネスモデル、そして近年注目を集めているHRテックについて解説します。

これらの情報を理解することで、HR業界特有の特徴や今後の展望を把握しやすくなります。就活での企業選びの判断材料を増やしていきましょう。

人材業界とHR業界の違い

HR業界と人材業界は、その役割や支援の範囲に大きな違いがあります。人材業界は、企業の採用活動を支援し、求職者と企業をマッチングすることに特化した業界です。

一方で、HR業界は企業の採用支援だけでなく、人材育成や評価制度の構築・組織開発など、より幅広い人事課題の解決をサポートします。HRとは「Human Resource（人的資源）」の略称であることから、HR業界は人材を企業経営における重要な経営資源としてとらえる考え方に基づいているのです。

人材業界では転職や就職が成立した時点でサービスの提供が終わることがありますが、HR業界では採用後も企業に継続的にかかわり、人材の定着や成長を支援するケースがあります。

つまり、HR業界は人材業界よりも広い範囲の領域において、より継続的な支援をおこなう業界といえます。

人材業界への就職も併せて検討している人は、こちらの記事をチェックしておきましょう。人材業界出身のキャリアコンサルタントが人材業界で活躍する人の特徴を解説しています。

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市場規模

デロイト トーマツ ミック経済研究所のHRTechクラウド市場の実態と展望によると、HRテッククラウド市場は、2020年度には426億円だったのに対して、2021年度は前年比132.9%の566億円に拡大しました。

これは新型コロナウイルス感染症による影響で働き方が多様化し、人材の採用や定着、業務の可視化の重要性が高まったことがおもな要因と考えられています。

HR業界の市場は、採用支援、組織開発、人材育成、人事コンサルティングなど、複数の領域で構成されています。特に近年は、従来の人材紹介サービスに加えて、HRテックを活用した新しいサービスが次々と生まれていて、市場の裾野が広がっているのです。

また、大手企業だけではなく、中小企業でもHRサービスの活用が進んでいることも、市場拡大の要因の一つです。このように、人材確保の課題を抱える企業が増えるなか、採用や育成に関する支援への需要は着実に高まっているといえます。

ビジネスモデル

HR業界の企業は、クライアント企業が抱える人事課題に対して解決策となるサービスを提供し、その対価として収益を得ます。収益の形態は、各種サービスの月額利用料を支払ったり、システムを利用し始めるたびに導入費用を支払ったりなど、提供するサービスによってさまざまです。

たとえば人材育成サービスでは、研修プログラムの企画・実施に対する報酬を得たり、eラーニングシステムの月額利用料を受け取ったりします。また、組織開発のコンサルティングでは、プロジェクトの規模や期間に応じた報酬体系を設定することが多くあります。

近年では、従来の人事コンサルティングに加えて、HRテックを活用したサブスクリプション型のサービスが増えてきました。企業はサブスクリプション型サービスから必要な機能を選ぶことも可能なケースが多いため、導入のハードルが低くなっています。

HRテックとは

HRテックは、AI（人工知能）やクラウドなどの最新技術を用いて、企業の人事課題を効率的に解決することを目的としています。

HRテックを導入するメリットは、人事担当者の業務負担を大幅に軽減できることです。従来は手作業でおこなっていた給与計算や勤怠管理、採用業務などを自動化することで、より戦略的な業務に時間を使えるようになるのです。

また、データに基づく客観的な評価や分析が可能になり、HR業務全体の品質向上にもつながります。たとえば、HRテックサービスには以下のようなものがあります。

このようにHRテックは、人事業務を効率化するだけでなく、データに基づいた採用や育成を可能にすることで、企業の人材マネジメント全体の質を高める役割を担っているのです。

平均年収

openworkによると、HR業界の有名企業の平均年収は以下のとおりです。

国税庁の令和4年分民間給与実態統計調査によると、日本の給与所得者の平均年収は458万円です。つまり、HR業界を含む人材サービス業界の有名企業は、平均より高い水準となっていることがわかります。

ただし、企業規模や個人の役職、経験年数によって実際の年収は大きく変動するため、興味のある企業が見つかった際は、給与体系や昇給制度も含めてあらかじめ確認しておきましょう。

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平均残業時間

リクルートエージェントのアンケート調査によると、人材業界の月間の平均残業時間は、15.5時間です。上記の表を見ると、運輸業界が19.2時間と最も多く、次いでコンサルティング業界が18.3時間となっています。特に運輸業界は不規則な勤務形態が多いことから、残業が発生しやすい傾向にあります。

エンタメ業界や広告業界も、イベントや納期に合わせた業務が多いため、比較的残業時間が多くなるのが特徴です。

人材業界は5位となっていて、一定の残業が発生している状況です。人材業界と一部の業務領域が重なるHR業界も、同様の傾向が見られる可能性があります。

ただし、残業時間は企業や配属先のチーム・職種などによって異なるため、就職活動では企業の残業削減への取り組みや、実際の労働時間について確認することが重要です。企業の採用ページで残業時間や有給休暇取得率をチェックしたり、OB・OG訪問で実際の働き方について質問したりして確認しましょう。

実は幅広い！ HR業界が提供するおもなサービス

HR業界では、企業が抱える人事課題に応じて最適なソリューションを提供することが求められます。しかし、具体的にどのようなサービスを提供しているのかイメージできない人もいるのではないでしょうか。

ここでは、HR業界が提供するおもなサービスを4つの領域に分けて解説します。企業研究する際は、各企業がどの領域に強みを持っているか、また自身がどの領域に興味があるかを見極めることで、より的確な企業選びができるようになります。

そして、最近では複数の領域を組み合わせてサービスを提供する企業も増えているため、それぞれの領域の特徴や違いを理解しておくことが自身により合う企業を見つけるうえで重要です。

採用支援

HR業界における採用支援は、企業の人材採用に関する課題を解決するサービスのことです。具体的には、採用戦略の立案から採用広報の運営、選考プロセスの設計、内定者フォローまで、企業の採用活動全般をサポートします。

たとえば、企業が求める人材像の明確化や採用計画の策定をサポートしたり、学生向けの会社説明会の企画・運営を支援したりします。近年ではAIを活用した適性診断や、オンライン面接システムの提供など、テクノロジーを活用したサービスも増えてきました。

採用支援では、単に人材を集めるだけでなく、企業の目指す方向性や価値観に合った採用活動を実現することが重要になってきます。これは企業の文化や実現を目指す未来に合わない人材を採用してしまうと、長期的な成果につながりにくく、その企業や採用された人材にとっても望ましくない結果となるためです。

そのため、企業の経営方針や組織文化を深く理解したうえで、最適な採用手法を提案することが求められます。

組織開発・育成

組織開発・育成は、企業の組織力を高め、生産性や従業員満足度の向上を支援するサービスです。具体的には、組織診断による課題の可視化や、社内コミュニケーションの活性化、リーダーシップ開発などをサポートします。

たとえば、従業員の意識調査を実施して組織の現状を分析したり、社内研修を企画・運営したりします。また、経営理念の浸透や企業文化の醸成、働き方改革の推進など、組織全体の変革を支援することもサービスの一部です。

組織開発では、経営層の明確なビジョンと現場の理解や協力が必要であるため、全社的な取り組みをおこなうことになります。そのため、経営層から現場社員に至るまで、あらゆる立場の人の声に耳を傾け、企業の実情に合わせた施策を提案することが重要です。

人材育成

人材育成は、企業の従業員の能力開発と成長をサポートするサービスです。具体的には、研修プログラムの企画・開発から、さまざまな立場の社員向けに研修を実施したり、eラーニングシステムを提供したりします。

たとえば、以下のように社員の役割や経験に応じた育成プログラムを提供します。

最近では、オンライン研修などの時間や場所を問わない学習機会の提供も増えてきました。

なお、人材育成は、個々の社員が持つ可能性を最大限に引き出し、活躍できる人材へと成長させることが目的です。そのため、企業の目指す方向性に合わせて、社員一人ひとりの成長をしっかりとサポートできる研修内容を考え、実行する必要があります。

人材育成プログラム以外の企画にかかわる業務にも興味がある人は、こちらの記事をチェックしておきましょう。企画職の仕事内容や魅力・厳しさを解説しています。

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人事コンサルティング

人事コンサルティングは、企業の人事戦略全般に関する課題解決を支援するサービスです。具体的には、人事制度の設計から評価・報酬制度の構築、労務管理の最適化まで、人事に関するあらゆる課題に対するソリューションを提供します。

たとえば、「若手社員の退職率が高い」という課題に対して、アンケートやヒアリングで原因を調査し、新入社員研修の見直しや成長を実感できる評価の仕組みづくりを提案することがあります。

また、従業員の残業が多い場合、業務の可視化や効率化、出退勤を比較的自由に設定できるフレックスタイム制度の導入など、具体的な解決策を提示することもあるのです。

このように、企業が抱える人事の課題に対して、調査・分析から具体的な制度設計まで、一貫したサポートをおこなうのが人事コンサルティングです。

人事コンサルティングでは、企業が目指す方向性と人材マネジメントの方針にずれが生じることを避けるために、経営戦略と人事戦略とを密接に連携させることが重要です。そのため、企業のビジョンや経営課題を深く理解したうえで、中長期的な視点での解決策を提案することが求められます。

なぜ今注目されている？ HR業界のニーズが高まっている3つの背景

近年、HR業界は多くの企業からの需要が急速に高まっています。これには、少子高齢化による人材不足や働き方改革の推進、政府によるDX推進など、企業を取り巻く環境が大きく変化していることが背景にあります。しかし、これらの背景の具体的な状況を知る人は少ないのではないでしょうか。

ここでは、HR業界のニーズが高まっている3つの背景について解説します。これらの社会的な変化を理解することで、HR業界の重要性や将来性をより具体的にイメージしやすくなります。

なお、これらの変化にともない、HR業界の役割が進化し続けているため、業界の最新トレンドを把握しておくのが重要ということは覚えておきましょう。

企業の人手不足が深刻化しているため

日本国内では、少子高齢化の影響で働き手となる人材が年々減少しているため、多くの企業が人材確保に力を入れざるを得ない状況となりました。

このような状況で、企業は単に人材を採用するだけではなく、採用した人材の定着や育成にも力を入れなければいけません。なぜなら、人材の採用には多くのコストと時間がかかる一方で、せっかく採用した人材が早期に退職してしまうと、また一から採用活動を始める必要があるからです。

そのため、採用支援から人材育成、組織づくりまで一貫してサポートできるHR企業への需要が増加しているのです。また、人手不足を補うための業務効率化や生産性向上も重要な課題となっていて、HRテックを活用した新しいソリューションへのニーズも高まっています。

特に人事部門の人員が限られるような中小企業では、採用活動の実施や人材育成プログラムの開発において、HR企業からのサポートがよりいっそう重要になってきています。

働き方が多様化したため

新型コロナウイルス感染症の影響で、テレワークやフレックスタイム制など、働き方の選択肢を広げる企業が増えました。また、副業・兼業の解禁や育児・介護との両立支援など、従業員のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方への対応が求められています。

このような働き方の多様化にともない、従来とは異なる働き方となるため、企業は人事制度や評価制度の見直しを迫られるようになりました。たとえば、出社時間や勤務場所にとらわれない新しい評価基準の設計や、リモートワーク環境での効果的なコミュニケーション方法の確立が必要となっているのです。

そのため、多様な働き方に対応した環境を整えるためにも、最新のトレンドや成功事例を知るHR企業への相談が増加しています。このように、働き方改革を成功させるためのアドバイスや具体的な施策の提案など、HR企業の専門的な知見を求める企業が増えているのです。

DX推進の需要が増加したため

政府は2018年にDXレポートを発表し、企業のデジタル化推進を強く呼びかけています。これは2025年以降、日本企業がデジタル化に遅れをとることで、年間約12兆円もの経済損失が発生する可能性があると警鐘を鳴らしているためです。

このような背景から、多くの企業が業務のデジタル化や効率化に積極的に取り組んでいます。

さまざまな企業の人事部門でも従来の紙ベースの業務から、クラウドシステムやデジタルツールを活用した働き方への移行が急速に進んでいます。それにともない、HRテックの導入や活用方法について、専門的なアドバイスを必要としている企業が増えているのです。

たとえば、オンライン面接システムの導入支援や勤怠管理システムの選定、人事データの分析ツールの活用方法など、デジタル化に関する相談が増えています。

また、DXを推進できる人材の育成や、デジタルスキルを持つ人材の採用支援など、企業の人材面でのデジタル化対応もHR企業に求められる仕事の一つです。そのため、HR業界自体もデジタル技術への理解を深め、より効果的なソリューションを提供することが重要になってきています。

将来性はある？ HR業界の現状と今後の展望

HR業界は、特にHRテック領域を中心に急速な成長を続けています。デロイト トーマツ ミック経済研究所のHRTechクラウド市場の実態と展望によると、HRテック市場は2020年に426億円を記録し、2025年には1,710億円規模まで拡大すると予測されています。

このようなHR業界の成長を支えているのは、企業のデジタル化推進と人材マネジメントの重要性の高まりです。特に、オンライン面接システムをはじめとする採用管理ツールや、勤怠管理のデジタル化など、さまざまな場面でHRテックの活用が広がっています。

また、テレワークの普及や働き方改革の推進により、人事部の働き方も大きく変化しています。このような変化に対応するため、企業のHRテック導入はさらに加速し、HR業界の重要性は今後も高まり続けると予想されているのです。

HR業界の大手企業

HR業界では、人材サービス事業を手掛けていた企業が新たにHRサービスを展開していたり、HRテックに特化した企業が業績を伸ばしたりしています。そして、HR業界には以下のような大手企業が存在します。

採用支援や転職サイトで知られるリクルートやマイナビは、従来の人材サービスに加えて、採用管理システムや人事データの分析ツールなど、HR領域のサービスを次々と展開し、事業範囲を広げているのが特徴です。

また、管理職層向けの転職サイトで成長したビズリーチも、人事業務の効率化をサポートするHRテックサービスを提供するなど、HR領域への進出を積極的に進めています。

さらに、クラウド人事労務ソフトを主力事業とするHRテック企業も急成長を遂げており、たとえば、SmartHRの導入企業数は60,000社を超えています。

このように、HR業界では従来の人材サービス企業とHRテック企業がそれぞれの強みを活かしながら成長を続けているのです。

HR業界への就職を検討しているけど志望企業がまだ決まっていない人は、企業規模の観点からも自身に向いている就職先を検討してみましょう。企業規模の基準や大企業で働くメリットを解説しています。

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事前に理解しよう！ HR業界で求められる4つのスキル

HR業界で活躍するために求められるスキルが、コミュニケーション能力や分析力などです。そこで、HR業界で働くために必要なスキルを把握することで、就活を始める前の自己分析や企業選びの判断材料として活用したり、入社後に働くイメージを描きやすくなったりします。

ここでは、HR業界で求められる4つのスキルについて解説します。これらのスキルは、企業によって重視する度合いは異なりますが、いずれもHR業界で活躍するために必要な要素です。自身の強みと照らし合わせて、どの領域や職種が自身に向いているかを検討しましょう。

就活前の自己分析にまだ取り組めていないため、自分が身に付けているスキルがわからない人は、こちらの記事を参考に自己分析を進めましょう。自己分析をおこなう時期や、効果的な自己分析にするために必要な6つのことを解説しています。

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①HRに関する専門知識

HR業界で働くうえで、人事制度や労働法規などの専門知識は必須です。たとえば、採用や評価制度の基礎知識、労働基準法などの法律の理解、給与計算の仕組みなど、幅広い知識が求められます。

これらの専門知識は学生のうちから身に付けられるものがあれば、積極的に習得するのがおすすめです。ただし、すべて入社前に身に付けておく必要はありません。新卒採用においては即戦力よりもポテンシャルを重視した採用がおこなわれ、多くの企業では入社後の研修やOJTを通じて、必要な知識を学べる環境が整っているからです。

また、近年は人事関連の資格取得支援制度を設けている企業も増えているため、入社後に関連資格を取得してスキルアップしていくことも可能です。

新卒就活をおこなううえで大切なのは、人事の仕組みや制度に興味を持ち、常に新しい知識を吸収しようとする姿勢です。HR業界のニュースやトレンドに関心を持つことから始めてみましょう。

HR業界への理解を深めるためにさまざまな業界の研究をしたいと考える人は、こちらの記事を参考にしましょう。業界研究をする適切なタイミングや、効率的に進めるために活用するものを解説しています。

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②戦略立案・企画のスキル

企業の人事課題を解決するための戦略を立案するうえで、具体的な施策を企画する力は重要です。そして施策を企画する際は、クライアント企業のニーズを理解し、それに応える最適なソリューションを提案することが求められます。

たとえば、採用支援では採用計画の立案から選考プロセスの設計まで、人材育成の支援をおこなう場合は研修プログラムの企画から実施までを担当します。そのため、目的に応じた企画を立てたり、実現可能な計画を組み立てたりする力が必要となるのです。

なお、戦略立案・企画のスキルは、学生時代のサークル活動やプロジェクト型のインターンなどで基礎を培うことができます。イベントの企画や運営をすることは、戦略立案・企画力を磨く機会となるため、可能な範囲でこのような経験を積み、自己アピールの材料として準備しておくことがおすすめです。

③コミュニケーション能力

HR業界では、クライアント企業の人事担当者や経営層など、さまざまな立場の人とコミュニケーションを取る機会が多くあります。そのため、相手の立場や状況を理解し、適切なコミュニケーションを取る力が重要です。

たとえば、企業の人事課題をヒアリングする際は、相手の本質的な悩みを引き出す力、解決策を提案する際は、専門的な内容をわかりやすく説明する力が求められます。さらに、プロジェクトを円滑に進めるために、関係者との情報共有をこまめにおこなうような調整力も必要です。

コミュニケーション能力は、アルバイトやサークル活動、ゼミでの研究活動など、日々の活動を通じて磨くことができます。特に、立場の異なる相手と協力して物事を進める経験は、HR業界で必要なコミュニケーション力の向上につながります。

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④分析力

HR業界では、企業の人事データや市場動向を分析し、課題解決につなげる力が求められます。特に、近年のHRテックの普及により、データを活用した意思決定が重要視されるようになりました。

たとえば、採用データを分析して効果的な採用戦略を立案したり、従業員の意識調査の結果から組織の課題を導き出したりします。また、人事制度の設計では、提案の裏付けとなるデータを集めるために、業界の動向や他社の事例を分析することも必要です。

分析力を身に付けるには、企業の採用情報や決算資料を読み比べて傾向を探ったり、気になるニュースの背景を考えたりしましょう。また、エクセルなどの表計算ソフトでデータを整理・集計するための基礎スキルを身に付けておくこともおすすめです。

適性はある？ HR業界に向いている人の特徴

HR業界の仕事では、人の成長や組織の発展に深くかかわります。そのため、貢献意欲が高い人やそれに近い考え方を持つ人が活躍しやすい傾向にあるのです。

ここでは、HR業界で活躍している人に共通する3つの特徴について解説します。この3つの特徴は、就職活動で企業選びをする際の判断材料になるだけではなく、面接でも自身の志望度や適性をアピールする際に重要なポイントとなるのです。

なお、すべての特徴を完璧に備えている必要はありませんが、これらの要素に共感できるかどうかは、HR業界で長く活躍できるかを考えるうえで大切な判断基準となります。自身が共感できるかどうか確かめながら読み進めていきましょう。

貢献意欲が高い

HR業界の仕事は、企業や働く人の成長をサポートすることがおもな業務であるため、人や組織に貢献したいという強い意欲が必要です。単に業務をこなすのではなく、クライアント企業の成長や、そこで働く人の活躍を心から応援できる姿勢が求められます。

たとえば、企業の採用支援では、その会社の魅力を引き出し、最適な人材との出会いをサポートします。また、人材育成では一人ひとりの可能性を信じ、成長を後押しする気持ちが大切です。

人の成長過程は一人ひとり異なり、目に見える成果が表れるまでに時間がかかることも多く、粘り強くサポートし続ける姿勢が求められるからです。

このように、HR業界の仕事は、他者の成長や成功を自分のことのように喜べる人が向いています。学生時代にサークルや部活で後輩の指導をおこなったり、ボランティア活動などを通じて人の成長にかかわったりした経験がある人は、やりがいを感じやすいといえます。

新しい知識を学び続けられる

HR業界では、働き方改革や新しい人事制度、最新のIT技術を使ったHRテックなど、人事に関するトレンドが日々変化しています。そのため、常に新しい知識を吸収し、変化に対応していく姿勢が活躍していくうえで大切になるのです。

たとえば、労働法制の改正や最新のHRテックのサービスを定期的にチェックしたり、効果的な人材育成の手法を学んだりして、自主的に学び続けていく必要があります。また、企業が抱える課題も時代とともに変化するため、真の課題を見つけ出し、新しい解決策を考え出す柔軟性も求められるのです。

このように常に学習意欲を持ち続けられる人や、新しいことにチャレンジすることを楽しめる人が、HR業界では活躍しやすいといえます。

相手の立場で物事を考えられる

HR業界では、企業の経営層、人事担当者、現場の社員など、立場の異なる多くの人々とかかわります。そのため、相手の状況や考えを理解し、それぞれに適切な提案や支援をすることが求められるのです。

たとえば、企業の人事課題に対して解決策を提案する際は、経営側の視点と従業員側の視点の両方を考慮する必要があります。また、人材育成の支援では、研修を受ける社員の立場に立って、一人ひとりに向けた効果的なプログラムや教え方を考えることが必要です。

このように、さまざまな立場の人の気持ちに寄り添い、最適な解決策を導き出せる人がHR業界の仕事に向いています。

相手の立場で物事を考えられることに自信があり就活でアピールしたい人は、こちらの記事をチェックしておきましょう。相手の立場に立つことがビジネスシーンで役立つ理由や、相手の立場に立って考える力を養う7つの方法を解説しています。

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HR業界に向いていない人の特徴

HR業界に向いている人の特徴を解説しましたが、HR業界に向いていないと言われる特徴を持つ人がいるのも事実です。入社後のミスマッチを防ぐためにも、向いていない人の特徴を理解し、自身のキャリアプランや価値観を見つめ直しておくことが重要です。

ここでは、HR業界に向いていない人の特徴について解説します。これは単なるマイナス要素ではなく、ほかの業界では強みとして活かせる可能性もある特徴です。就活の段階で、自身の志向性を見極める際の参考にしてみましょう。

HR業界以外の仕事も検討しているけど、自身に向いている仕事がまだわからない人は、以下の記事で探してみましょう。適職の見つけ方を図を使って解説しています。

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人の成長や変化に関心を持てない

HR業界では、社員の成長や組織の変化をサポートすることがおもな業務内容です。そのため「人が成長する瞬間に立ち会うことにあまり喜びを感じられない」「組織の変化に興味が持てない」という人は、仕事にやりがいを見出しにくい可能性があります。

たとえば、採用した社員が活躍していく姿を見守ったり、研修プログラムを通じて成長を支援したりする場面が多くあります。しかし、このような他者の成長や変化のプロセスに関心が持てないと、日々の業務にモチベーションを保ちづらくなることが考えられるのです。

長期的にHR業界で働き続けられるかを判断するために「自身が本当に情熱を持って取り組める仕事か」どうかをじっくりと考えることが大切です。

就活が始まる前にインターンに参加して実際の業務を体験してみたり、OB・OG訪問をしてHR業界の仕事の実態について理解を深めたりして、自身がHR業界に向いているか判断する材料を増やしていきましょう。

「自身がHR業界で長期的に活躍できるか」を見極めるためにOB・OG訪問をする人は、こちらの記事を参考にしましょう。OB・OG訪問の目的ごとに、どのような質問をすべきかについて解説しています。

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売り上げや成果を増やすことを重視したい

HR業界では、人材育成や組織づくりなどのすぐには成果が見えにくい仕事が中心です。そのため「短期的な成果を重視したい」「数字で結果を実感したい」という人は、HR業界の仕事に達成感を得にくい可能性があります。

たとえば、クライアント企業の課題を分析し、新しい人事制度を導入しても、その効果が表れるまでには時間がかかります。また、人材育成の成果も数カ月や数年をかけて、長期的にその効果を見ていく必要があるのです。

そのため、短期的な成果を重視したいけどHR業界に興味がある人は、HR事業を展開する企業の営業職を検討してみるのがおすすめです。営業職なら、採用支援の成約数やシステム導入数など、具体的な数値で実績を実感できます。

就活のプロに聞く！ HR業界での企業選びのポイント

HR業界が提供するサービスは多岐にわたり、企業によって特色も大きく異なります。そのため「どの企業を選べば良いのか」「自分に合った企業をどう見極めれば良いのか」と悩む人も多いのではないでしょうか。

また、近年はHRテックの普及により、テクノロジーを活用したサービスも増えているため、従来の人材サービスとの違いを理解しておきたい人も多いと思います。HR業界での企業選びには、いくつかの重要なポイントがあります。

ここではキャリアアドバイザーの野村さんにHR業界の企業選びで押さえるべきポイントについて詳しく聞きました。特に興味のある領域が絞りきれていない人は、自身のキャリアで実現したいことや希望の条件と照らし合わせながら参考にしましょう。

志望先企業を決めるためにHR業界の企業同士を比較・分析する際は、こちらの記事を参考にしましょう。ミスマッチを防止するために効果的な企業分析の項目を解説しています。

こちらのQ＆Aでも、企業分析で自身に合った仕事を見つける方法についてキャリアアドバイザーが解説しています。併せてチェックして理解を深めましょう。

HR業界で携わりたい仕事を考えたうえで自分の適性を判断しよう

HR業界は、採用支援から人材育成・組織開発まで、人と組織の成長にかかわるさまざまなサービスを提供しています。そのため、自身がどの領域に携わりたいのか、またその仕事に必要なスキルや適性を持っているのかを見極めることが重要です。

そして、単にHR業界に興味があるというだけでなく「どのような仕事を通じて企業や働く人に貢献したいのか」を考えることで、より的確な企業選びができるようになります。

たとえば、HRテックに興味がある人は技術領域の知識を、人材育成に関心がある人は研修プログラムの企画力を意識して準備を進めることがおすすめです。

HR業界は今後も成長が期待される分野ですが、長く活躍するためには自身の志向性との相性が重要です。インターンやOB・OG訪問などで、実際の業務や働く人の声に触れながら、自身に合ったHR業界のサービス領域を見つけていきましょう。

記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi

高校卒業後、航空自衛隊に入隊。4年間の在籍後、22歳で都内の大学に入学し、心理学・教育学を学ぶ。卒業後は人材サービスを展開するパソナで、人材派遣営業やグローバル人材の採用支援、女性活躍推進事業に従事。NPO（非営利団体）での勤務を経て、「PORTキャリア」を運営するポートに入社。キャリアアドバイザーとして年間400人と面談し、延べ2500人にも及ぶ学生を支援。2020年、厚生労働大臣認定のキャリアコンサルタント養成講習であるGCDF-Japan（キャリアカウンセラートレーニングプログラム）を修了

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