税理士に将来性はある? 替えの利かない人材になるための4つの行動

3名のアドバイザーがこの記事にコメントしました

  • キャリアコンサルタント/就活塾「我究館」講師

    Hayato Yoshida〇東証一部上場の人材会社で入社2年半で支店長に抜擢。これまで3,000名以上のキャリアを支援。現在はベストセラー書籍「絶対内定」シリーズを監修する我究館でコーチとして従事

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  • キャリアコンサルタント/コラボレーター代表

    Yukari Itaya〇未就学児から大学生、キャリア層まで多様な世代のキャリアを支援。大企業からベンチャー、起業・副業など、幅広いキャリアに対応。ユニークな生き方も提案するパーソナルコーチとして活躍

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  • キャリアコンサルタント/なべけんブログ運営者

    Ken Tanabe〇新卒で大手人材会社へ入社し、人材コーディネーターや採用、育成などを担当。その後独立し、現在はカウンセリングや個人メディアによる情報発信など幅広くキャリア支援に携わる

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近年、AI(人工知能)・ITツールの進歩によって、将来性を不安視される仕事が増えました。税理士もその一つで、これまで税理士が請け負っていた仕事を、AI・ITツールが代行できるのではといわれているのです。

しかし、技術が進歩したとはいえ、果たして本当に税理士の業務のすべてをAI・ITツールが代行できるのでしょうか。また、デジタル領域が広がることで税理士の業務領域はこれからどのように変化するのかも気になりますよね。

記事ではキャリアアドバイザーの吉田さん、板谷さん、田邉さんとともに、税理士の将来性について解説します。「税理士になりたいけれど将来性が不安」「これから税理士はどうなっていくの?」といった悩みや疑問を抱えている人はぜひ参考にしてください。

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目次

税理士の仕事は将来性あり! 税務のプロとしての存在感を高めよう

近年の生活様式の変化やAI・ITツールの進歩に伴い、さまざまな領域でロボットやシステムが人間の仕事をサポートしたり代行したりしています。税理士がかかわる税務領域でも、税務処理を助ける会計システムが開発され、多くの企業に導入されています。

とはいえ、AI・ITツールが税理士の業務のすべてを代行できるわけではありません。

まずは税理士の将来性に疑問を抱く人が増えた3つの原因をチェックし、税理士とAI・ITツールの違いや、現在税理士を取り巻く環境について把握しましょう。税理士の将来性を自分なりに考えることで、これから税理士として活躍するために必要なスキルが見えてきます。

後半では、税理士業界をリードする存在になるための方法を解説します。税務領域は今後、多くの税理士だけでなく、IT企業やコンサル企業らとも競い合うことになるので、激しい競争を勝ち抜くには早め早めの準備が大切です。

税理士業界の変化を先読みし、税理士としての豊かなキャリアを築いてくださいね。

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3つの理由を解説! なぜ税理士の仕事に将来性がないといわれるのか

3つの理由を解説! なぜ税理士の仕事に将来性がないといわれるのか

  • 業務をAI・ITツールに取って代わられる可能性があるから
  • 税務処理が簡略化されたから
  • 税理士の競争率が上がっているから

前提として、税理士とは税務の専門家として、納税に関する業務を代行したり、税務にまつわるアドバイスをおこなったりする仕事です。これらの業務はきわめて専門性が高く、税理士資格を持った人でないとおこなえないと税理士法第52条にも定められています。

これほど重要な仕事であるにもかかわらず、なぜ税理士の将来性が疑問視されるようになったのでしょうか。以下にて3つの理由を解説するので、まずは税理士が置かれた状況を把握し、税理士の将来性を正しく認識できるようになりましょう。

①業務をAI・ITツールに取って代わられる可能性があるから

2015年、野村総合研究所は日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に~601種の職業ごとに、コンピューター技術による代替確率を試算~という、マイケル・オズボーン、カール・ベネディクト・フレイとの共同研究の結果を公表しました。

レポートには「日本国内の601種類の職業で働く人の約49%が、2025年~2035年までにAIやロボットに取って代わられる」と記されています。さらにAIやロボットは「データの分析や秩序的・体系的操作が求められる」作業が得意とされ、定型的な業務や計算を多く含む業務を人間の代わりにできる可能性が高いです。

税理士はお金の計算をおこなったり、法律に沿って書類を作成・提出したりすることも多いので、AI・ITツールと領域が部分的に重なっています

さらにレポートには「人工知能やロボット等による代替可能性が高い100種の職業」もリストアップされていて、ここに挙げられた職業の多くが将来性を危惧されるようになりました。

このなかに税理士は入っていないものの、税理士と同じく税務・会計領域の仕事を担う会計監査係員が挙げられています。

つまり、税理士が活躍する財務領域の業務をAI・ITツールが得意とするために、「税理士の仕事はやがてAI・ITツールに取って代わられるのでは」といった認識が広がった可能性があるのです。

板谷 侑香里

プロフィール

領収書や請求書のデータ管理、帳簿への自動記載といった書類作成に伴う業務や、税額試算などのデータ分析の分野で、AI・ITツールが今後も活用されていきます。

税理士のほかにも、AIの登場によって将来性を不安視されている仕事はいくつかあります。こちらの記事ではAIによりなくなる可能性のある仕事について解説しているので、併せて仕事選びの参考にしてください。

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②税務処理が簡略化されたから

現在、日本国内では税務手続きのデジタル化が加速しています。国税庁は2023年の国税庁の税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2023-にて、「税務行政のDXを推進」するとして、さまざまな税務手続きをWeb上でおこなえるように改革中です。

また、税務に関する質問を24時間受け付けるチャットボット(ふたば)が国税庁のホームページ(HP)に導入されるなど、税務にまつわる情報を個人でも集めやすくなりました。

加えて、近年は多くの企業が会計システムと呼ばれるクラウドソフトを導入しています。企業のお金の流れを自動記入したり、税務処理に必要な書類を瞬時に作成したりといった、これまで税理士が依頼を受けて代行していた業務を会計システムが担っているのです

このように税務領域にAI・ITツールが明確に参入したことで、税理士の将来性が疑問視されるようになりました。

しかし、会計システムは税理士のすべての仕事をカバーしてはいません。税理士の仕事は税理士法第2条第1項第1~3号に定められた独占業務、つまり資格のない人がおこなってはいけない業務であり、会計システムが担うのは税理士が独占業務に付随する業務の一部なのです。

とはいえ、これまで税理士に依頼していた業務の一部をAI・ITツールが担うようになったことで、税理士の必要性を感じなくなった個人や企業もあります。

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③税理士の競争率が上がっているから

税理士の将来性を危ぶむ声がある一方で、実は税理士の人数は年々増加しています。日本税理士会連合会および国税庁が公表する税理士登録者数は下記のように推移しています。

なお、税理士業務は、日本税理士会連合会の税理士名簿に登録された者でないとおこなってはならないと税理士法第18条に定められているので、登録者数を税理士の人数ととらえることが可能です。

会計年度登録者数
2020年度79,404人
2021年度80,163人
2022年度80,692人
2023年度81,280人
2024年度81,428人
日本国内の税理士の人数の推移

一方で、税理士の顧客となる企業は減少傾向にあり、令和5年経済センサスによると、2023年6月時点で国内の事業所数は13万929と、2022年に比べて0.8%減少しています。つまり、より少ない顧客をより多い税理士同士で取り合う状況になりつつあるのです。

競争が激化することで、思うように顧客を獲得できない税理士が増える可能性があるため、「一部の優秀な税理士しか将来生き残れない」と考える人もなかにはいるのです

「将来性がない」といわれているのに税理士が増えているのはなぜですか?

吉田 隼人

プロフィール

キャリアチェンジや活躍幅の拡大を目的に目指す人が増えている

税理士が増えている理由の一つに、大学院税法科の修士課程修了者、税務署OB・OGといった試験免除者の増加、公認会計士や弁護士の有資格者による登録の増加が挙げられます。

特にキャリアチェンジや独立開業のため、中高年世代を中心に税理士資格を取得するケースが増えているようです。

中高年世代が中心となった動きで、人数も多いので、このトレンドはしばらく続くと思われます。

そもそも税理士は何をする人? AIには担えない役割をチェック

税理士とAI・ITツールの業務領域の違い

先述のとおり、税理士の将来性が不安視されるのは、税務領域の業務や手続きを税理士に任せきりにする人が減ったからです。税理士を頼らなくなった人の多くは、AI・ITツールを活用したり、インターネットで調べた情報を頼りにしたりして税務手続きを済ませます。

しかし、税理士の業務はそれだけではありません。デジタル化が進む現在、税理士がどのような仕事をしているのかを理解し、税理士はAI・ITツールに取って代わられない存在であることを確認しましょう。

業務内容:税務に関するあらゆる相談への対応

税理士法第2条第1項第1~3号によると、税理士しかおこなってはならない仕事は、大きく分けて下記の3つです。これらはAI・ITツールではおこなえません。

分類概要
税務代理・本人に代わり、所得税や法人税などの申告をおこなう
・本人に代わり、調査に来た税務署に対して主張をする
税務書類の作成・本人に代わり、所得税や法人税などの申告書を作成する
税務相談・納税に際し、申告や書類作成にまつわる相談に乗る
・相続や節税などについてアドバイスをする
税理士の独占業務

「書類の作成は会計システムもしていることでは?」と思った人もいるかもしれませんが、会計システムは納税者本人が決めた内容の代筆をしているととらえることができ、書く内容まで本人の代わりに決められるのは税理士だけです。

また、税務の相談窓口としては国税庁のチャットボット(ふたば)も挙げられるものの、ふたばはフローチャートやQ&Aを凝縮したものであり、個別の事例について相談したり、節税などのアドバイスをもらったりできるわけではありません。

税理士は専門性を人間ならではの柔軟性と掛け合わせることで、AI・ITツールとは異なるサービスを提供しています

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顧客との関係性:財務・経営のアドバイザー

税理士の顧客は個人と法人に分けられ、それぞれから下記のような依頼を受けます。

顧客依頼内容の例
個人/個人事業主・確定申告の代行
・納税手続きに関する相談
・法人化に向けた相談
法人・財務面からの経営状況のチェック
・資金調達・融資に関する相談
・事業継承にまつわる支援
税理士が受ける依頼の例

このように税理士は、個人・法人を問わず「財務面から現状をチェックしてほしい」「財務面から将来のことをアドバイスしてほしい」といった抽象的な依頼を受けることも多くあります。

データ分析などはAI・ITツールにもおこなえますが、顧客の不安に寄り添ったり、社内事情を汲んだりしながら相談に乗れるのは人間の税理士だからこそです

従業員がいなければサービスを提供できず、お金がなければ従業員を雇えないように、経営基盤である人・モノ・金はお互いに影響を与えます。

そのため経営者や個人事業主は、お金のエキスパートである税理士に財務面を起点にして経営のことまで幅広く相談できることを期待しているのです。

個人の場合は確定申告や税務相談など、比較的シンプルな対応が中心になります。一方、法人では決算業務や経営相談など、より売り上げに直結するようなアドバイスが求められます。

本当に税理士に将来性はあるのか? キャリアコンサルタントが解説

ここまで税理士に将来性がある理由を解説してきましたが、なかにはまだ「税理士になっても大丈夫だろうか」と不安を感じたり、「失職の可能性があるなら税理士になるのは辞めるべきだろうか」と思う人もいるでしょう。

また、デジタル化は今後も進んでいくので、「デジタル技術がさらに進歩したら、本当に税理士はAI・ITツールに取って代わられるのでは」と考える人もいるかもしれません。

そこで今回、キャリアコンサルタントの板谷さんに、税理士の将来性について聞いてきました。板谷さんの意見を参考に、税理士の将来性について自分なりの意見を持ってみましょう

アドバイザーコメント

ビジネスの複雑化で税務手続きが難しくなると税理士の需要は高まる

まず、デジタル化は税理士にとって悪というわけではなく、税務計算や申告業務などの作業が自動化されることにより、付加価値の高い業務に集中することができるようになります。

顧客との信頼関係は人間でないと築けないものであり、また税法の解釈には、人間ならではの総合的な判断が必要となることもあるものです。

さらに、デジタル技術が進化していくことで、メタバースのゲームなど国境の枠を超えるものも増えています。国際取引の増加に伴い、国際税務など専門性の高い分野のニーズは今後さらに増えていくことでしょう。

顧客にとって欠かせないパートナーを目指して自己研鑽しよう

また、日本の経済を牽引してきたベビーブーム世代の高齢化に伴い、事業継承やM&Aなども活発になっています。事業継承やM&Aなどの複雑な税務への対応なども、税理士に求められている業務の一つです。

デジタル技術の進歩により税理士の仕事がなくなるのではなく、顧客の事業を成功に導くための助言など価値提供することにより、企業にとってなくてはならない存在であり続けることが重要だと認識しておきましょう。

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チャンスにできるかは自分次第! 税理士が将来迎える4シーン

チャンスにできるかは自分次第! 税理士が将来迎える4シーン

  • AI・ITツールとの共存による業務の高度化
  • 経営者・個人事業主の相談相手としての需要の増加
  • 業務領域の広がりによる競争率の高まり
  • 高齢化による税理士の引退者の増加

記事の前半では、現在の税理士を取り巻く状況について解説してきましたが、将来性を考えるのであれば、これから税理士が迎えることになる変化についても把握しておく必要があります。なぜなら、今後の状況の変化に伴って税理士の将来性も変わる可能性があるからです。

今回は、将来的に税理士が直面する4つの変化を取り上げます。これらはとらえ方次第で大きなビジネスチャンスにもなり得ます。

記事の内容をヒントに、税理士の特性や自身の強みの活かし方を考え、税理士としての将来性を高めましょう。

①AI・ITツールとの共存による業務の高度化

会計システムをはじめとするAI・ITツールが税務領域に進出したことで、今後税理士に依頼される業務内容は、AI・ITツールでは担えないものの割合が高まります。

2015年に野村総合研究所が発表した日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能にというレポートによると、AIはデータ分析や定型的な作業が得意な一方、抽象的な概念を扱うことや、人とのコミュニケーション・交渉は苦手です。

よって人間の税理士には、抽象的な相談や、金融機関などとの折衝といった業務の依頼が集中すると予想できます

つまり今後の税理士は、明確な答えのない抽象的で高度な業務にも対応していかなくてはならないのです。そのような業務をこなすには、書類作成といった定型的な業務ではそれほど重視されなかった、傾聴力、交渉力、概念的思考力といったヒューマンスキルが必要です。

依頼そのものの抽象化・複雑化に対応しつつ、それらをこなすための専門領域外でのスキルアップもおこなうことで人間の税理士ならではの付加価値を示しましょう。

吉田 隼人

プロフィール

抽象的な業務をこなすには、信頼関係を構築するスキルが必要となるでしょう。AIやITが進歩すればするほど、専門知識よりも目の前の顧客に選ばれ、そして信頼されるようなスキルが必要となります。

人間力を高めることが、同業者との最大の差別化につながるはずです。

今後税理士に求められるヒューマンスキルをすでに持っている人は、就職時にそれを効果的にアピールして志望企業からの内定獲得につなげましょう。以下の記事を参考に、自分の魅力がしっかりと伝わる自己PRを作成してください。

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②経営者・個人事業主の相談相手としての需要の増加

AI・ITツールを活用する顧客は、税理士に対してAIでは答えられない相談をすると予想できます。たとえば、リアルタイムの市場変化にまつわる相談や、企業や事業のあり方についての相談などです。

さまざまな分野で技術が進歩し、これまでになかった事業も立ち上がる現代では、経営者の悩みもこれまでにないものになる可能性があります。経営者にとっては財務と事業は地続きなので、税理士は外部の人間として顧客の事業を客観的に評価し、そのうえで経営者にアドバイスしなくてはなりません。

さらに、国内全体で働き方改革が推進され、ビジネスのあり方が多様化していることにも注意が必要です。

政府は2017年に働き方改革実行計画を発表し、そのなかで副業・兼業を解禁・促進するとしました。厚生労働省の資料副業・兼業の現状と課題によると、政府は2027年度以降希望者が原則的に副業・兼業をできるようにすることを目指しています。

副業で継続的に利益を生むと、個人事業主になることもできます。つまり副業・兼業をする人が増えれば経営に携わる人も増える可能性が高いのです。そうなれば、新しく個人事業主になった人からの依頼が来るかもしれません。

今後、税理士はこのような社会情勢や新たなシステムにも敏感になり、さまざまなあり方の経営者から依頼を受ける必要があります。そのためにも財務に留まらず、経営を中心とした幅広い領域の知識を持ち、経営者の相談相手としての存在感を示しましょう

経営者が税理士に相談するのは、税務のことだけではないんですか?

板谷 侑香里

プロフィール

税理士は企業のパートナーとして経営や人事などの相談にも応じる

税理士は、財務を通して事業を深く理解してくれる存在です。特に中小企業の経営者にとって、税理士が最も信頼できる相談相手になっていることも多いです。

税務のこと以外にも、税理士が相談に乗る内容は以下のように多岐にわたります。

・財務や経営の相談
・設備投資や出店計画などの事業展開に関する相談
・役員報酬や従業員の給与体系といった組織や人事に関する相談
・事業継承や相続対策、金融機関対策としての決算書の説明に関する相談や事業計画書の相談

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③業務領域の広がりによる競争率の高まり

現在、会計システムの導入によって伝票入力や帳簿・決算書などの作成の手間を削減することが可能になりました。

これにより、税務代理や税務書類の作成を税理士に依頼しなくても良くなった顧客は、税理士との契約を更新せず、そのまま打ち切ってしまう可能性があるのです。また、同じ理由で新規契約のハードルも上がります。

このような状況で今後も顧客から「税理士が必要だ、この人に相談したい」と思ってもらうためには、税務代理や税務書類の作成から発展させた、新しい業務を請け負わなくてはいけません

税務・経営の知識・スキルを活かせる仕事の例として、経営や金融のコンサルティングのほか、専門学校や大学などで税務・会計分野について教えることなどが挙げられます。

ただし、これらの業務は税理士の独占業務ではなくなってしまうので、コンサル会社などが競合となります。業務領域を広げても、先行してその業務に従事していた人々と業務を奪い合うことになるので、競合他社との差別化を図らなくてはいけません。

新しい業務と税理士業務の掛け合わせや、税理士としてのスキルアップなどで、付加価値を高め続けましょう。

④高齢化による税理士の引退者の増加

税理士の年代ごとの比率

日本税理士会連合会が2014年に実施した第6回税理士実態調査報告書によると、日本国内の税理士のうち、最も人数の多い年代は60代でした。この調査から現在まで10年が経過している点には注意が必要ですが、60代以上の税理士が非常に多いことがわかります。

税理士は専門性の高い仕事なので、個人事務所を立ち上げていたり、顧客との顧問契約が続いたりといった理由で、一般企業の定年を超える年齢になっても働き続ける人が多いのです。

しかし、高齢の税理士が多いということは、国内の税理士の引退の時期が重なる可能性が高いともいえます。つまり高齢の税理士の顧客が、新たな税理士を探したり、税理士からのアプローチに興味を持ったりするかもしれないのです

若手層の税理士にとっては、税理士の必要性を感じている顧客との新規契約を結ぶ大きなチャンスといえます。ベテラン税理士と比較されてもしっかりと自身の強みをアピールできるよう、ビジネスチャンスに備えて経験を積み、スキルを磨きましょう。

ベテランの税理士には人脈や顧客数では勝てない気がするのですが、そうした人達と差別化するにはどうすれば良いですか?

専門領域での実績を作ってベテランの税理士との差別化を図ろう

たしかに、すでに実績がある税理士と比較されると、値段の安さくらいでしか勝てそうにないですよね。

しかし、何かに特化することでベテランよりも高い専門性を身に付けられれば、顧客から高く評価される税理士になることも可能です。

たとえば業界を絞ったり、相続やM&Aに力を入れたりすると、業界ならではの情報や、近年の市場の状況などを鑑みたアドバイスができるようになります。

まずはあなたの興味や強みを活かして、「◯◯業界の税理士といえば◯◯さん」と言われるように、ニッチな分野のNo.1を目指しましょう。

プロに聞く! 税理士として活躍するキャリアの切り拓き方

デジタル技術が進歩したり、コンサル業界などが競争相手になったりと、今後も税理士を取り巻く環境は目まぐるしく変化することが予想されます。そのようななかでも税理士として活躍していくことは果たして可能なのでしょうか。

今回はキャリアコンサルタントの吉田さんに、激しい変化に対応しながら税理士として活躍する方法について聞いてきました。吉田さんの意見を参考に、時代変化、技術進歩に対応しながら、より豊かなキャリアを築く未来の自分を想像しましょう。

アドバイザーコメント

これから税理士として活躍するには自己成長を続けることがカギ

私は、祖父・父ともに税理士で、自宅が兼会計事務所という税理士一家で育ちました。数十年に渡り税理士として活躍してきた家族を見てきた経験から伝えます。

税理士業界は、AI・ITツールの導入や業務の高度化、経営者からの相談需要の増加、競争の激化、高齢化による引退者の増加など、大きな変化が予測されています。その中で活躍するためには、以下の2点が重要です。

1つ目は「人間力の向上」です。信頼関係の構築や信用を得るスキルが求められます。税理士の仕事は「他人の財布を見る」ことでもあり、当たり前のことを徹底し、信頼を守る姿勢が大切です。

2つ目は「継続的な学習」です。税務知識に加え、ITリテラシーを高めたり、新しい法律や制度に迅速に対応するための学習習慣が必要でしょう。

現状維持ではなく成長を心掛けて税理士としての活躍を目指そう

成長意欲を持ち、学び続ければ、変化に対応して活躍できますが、その覚悟がない場合は別のキャリアを検討するのも一案です。

不安な気持ちはわかりますが、「現状維持は衰退」という言葉もあるとおり、どのキャリアを選んでも成長を続けていくことが大切です。

税理士の将来的なキャリアプランとして個人事務所を持つくらいしか思いつかないのですが、ほかにどんな選択肢がありますか?

個人事務所以外にも税理士の専門性を活かせる転職先は多数ある

たしかに、税理士の将来的なキャリアプランは「企業や事務所に所属せずに個人の肩書きで働く」というイメージが強いですよね。

しかし、個人事務所を持つ以外にもキャリアアップする方法は多数あるので安心してください。

たとえば、税理士法人でのマネージャーやパートナー、事業会社の経理部門責任者、金融機関の財務アドバイザー、M&Aコンサルタントなどです。

特に近年は、スタートアップ企業への支援や、事業承継の専門家として活躍する税理士も増えています。

個人で事務所を持つ働き方が必ずしも全員に合っているとは限りません。あなたの価値観にあったキャリアプランを、数ある選択肢の中から考えましょう。

税理士は学歴や職歴を問わず、資格を取得することでなれる仕事です。以下のQ&Aでは大学を受験し直すか税理士資格を目指すかで迷う質問者に、キャリアアドバイザーが独自の回答をしています。税理士を目指すか迷う人はぜひ併せて目を通してください。

替えの利かない税理士になろう! 自分自身の将来性を高める行動3選

替えの利かない税理士になろう! 自分自身の将来性を高める行動3選

  • あらゆる情報を収集して経営者からの相談に乗れるようにする
  • 特定領域での専門性を高めて差別化要素を作る
  • 幅広い経験を積める就職先を選ぶ

IT業界やコンサル業界は、税理士と同じように税務領域での仕事も存在し、経営者の相談に応じたり、税務手続きを代行したりする場合があります。

つまり、顧客が税務に関する相談や依頼をしたい場合、依頼先は税理士以外の選択肢も存在することになるといえます。そのため数多くの競合の中から自身を選び続けてもらうには、高い付加価値のある税理士になることが重要なのです。

ここからは自身の税理士としての将来性を高められる3つの行動を紹介します。時代の変化を味方につけて、替えの利かない税理士になりましょう。

①あらゆる情報を収集して経営者からの相談に乗れるようにする

ここまで解説してきたとおり、AI・ITツールの普及などによって、今後税理士は税金や経営に関連してさまざまな領域の相談を受ける必要があります。

特に、現代社会は情勢変化のスピードが非常に速いので、情報をリアルタイムでキャッチしなくては経営者の話についていけなくなってしまう可能性もあります

また、税理士の競合相手であるAI・ITツールの動向も都度チェックしていないと、AI・ITと自分の能力との差別化も難しくなるので、自身でツールを活用しながら情報を集めることも大切です。

税理士としての活躍の幅を広げるために、各業界や経営のトレンドを幅広く収集し、経営者の相談に活用していきましょう。

板谷 侑香里

プロフィール

経営者の相談に乗るには、まずは財務分析やキャッシュフローの基本を押さえるところから始めましょう。

次に同業他社との比較や、財務上の問題点の把握、改善提案など経営分析に必要な事柄について学びます。

先輩税理士の相談に同席させてもらうことも学びになりますね。

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②特定領域での専門性を高めて差別化要素を作る

先にも触れたように、現在は税理士の人数が増えています。それにもかかわらず、税理士の顧客となる企業の数が減っているため、将来的に税理士同士の競争が激しくなると予想されます。

そのため、ほかの税理士との差別化を図れるポイントを持つことが大切です。

たとえば、グローバル化に対応して国際税務や、少子高齢化で多くの人が考える相続、業界再編や成長加速を目的として活発化するM&Aなどについて専門性を高めることにより、「特にこの領域に強い税理士です」というアピールポイントを持てます。

得意領域で多くの顧客からの信頼を得て、継続的な契約や、新たな仕事につなげましょう

③幅広い経験を積める就職先を選ぶ

税理士の就職先として、会計事務所や税理士事務所をイメージする人も多いかもしれませんが、選択肢はほかにも多くあります。それぞれの就職先では経験できる業務や触れられる情報が下記のように異なります。

就職先業務の概要得られる学びの例
会計事務所・税理士事務所個人・法人の顧客の依頼を受ける。税務書類の作成、税務相談への対応など税理士の独占業務や派生業務を実務を通して学べる
事業会社の経理部門自社の経理業務全般。入出金の管理や従業員の給与・賞与の計算など事業会社の仕組みや、事業会社ならではの財務面の悩みを、特定の企業を例にして学べる
銀行・証券会社などの金融機関自社の決算・税務業務や税務ポリシーの構築・運用など自社の各部門との連携を通じて、金融ビジネスの基礎を学べる
コンサル会社財務面でのコンサルティングなどさまざまな事業の仕組みや、顧客の実際の課題について、実務を通して学べる
税理士の就職先ごとに得られる学びの違い

「より多くの領域で活躍する税理士になりたい」という人は、会計事務所・税理士事務所や、コンサル業界など、幅広い経験を積める就職先を選ぶのがおすすめです。税理士の顧客は業界・業種を問わないので、さまざまなビジネスについて知識を持っていることで、顧客の相談に応じやすくなります。

また、税理士以外の仕事にも興味がある人は、より多くの業界・職種についての知識を蓄えておくことで、自分に合う転職先を考えやすくなるだけでなく、転職先でその知識を活かして働くこともできます。

それぞれの就職先で何を学べるのかを見比べ、自分が歩みたいキャリアをよく考えて就職先を選ぶことが大切です。長期的な目線で自身のキャリアを考え、将来像に近づくために必要な経験・スキルを明確にしたうえで就職先を選びましょう。

将来は独立して税理士事務所を開きたいです。独立に役立つ経験を積むにはどんな就職先を目指せば良いですか?

吉田 隼人

プロフィール

幅広い実務経験を積みながら人脈を広げられる就職先を選ぼう

個人的には、独立を目指すならまず税理士事務所や会計事務所への就職が良いかと思います。なぜなら個人事務所業務で必要な実務経験を積むことができるからです。

あるいは、コンサルやM&A業界も良いでしょう。経営者との接点が多いためコネクションが作りやすく、高収入なので独立開業の資金も準備しやすいです。

どちらの道を選ぶにせよ、幅広い実務経験と人脈作りが独立後に役立ちます。

記事で紹介した就職先に興味が湧いた人は、以下の記事も併せて参考にしてください。各企業・業界の特徴を把握して、自分が希望する経験を積めそうか確かめましょう。

金融業界
金融業界を徹底調査! 押さえておくべきトレンドや対策まで大解剖

銀行
銀行に就職したら勝ち組って本当? 将来性や向いてる人の特徴を解説

証券
証券会社の就職に必須な3つの対策|就活のプロが働き方の実態も解説

税理士事務所
例文4選! 税理士事務所の志望動機を具体化する3つの準備

コンサル
例文12選|コンサルの志望動機で必須のアピール内容とNG例を解説

さまざまな業界に目を向けてみたい人や、今すでに興味を引かれる業界がある人は、こちらの記事を参考にしてみてください。各業界への理解を深める方法を詳しく解説しています。

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業界研究のやり方|業界全体を捉えたうえで気になる業界を研究しよう

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税理士の将来性は個人で伸ばす時代! 業務領域を広げて変化に対応しよう

税理士の将来性が疑問視されるのは、AI・ITツールの進歩や競合の増加など、税理士の環境が大きく変化しているからです。どのような変化が起きるのか、変化にどう対処できるのかを考えれば、税理士の仕事がそう簡単になくなることはないことがわかります。

ただし、仕事そのものや顧客の評価基準が変わった時、それに柔軟に対応できなければ、ほかの税理士や新しく財務領域に参入してきた個人・企業に勝てない可能性もあります。大切なのは、変化に備えて個人のスキルを磨き続けることです。

税理士という職種の特性と、個人の強みを掛け合わせ、高い将来性を持つ税理士になりましょう。

アドバイザーコメント

税理士の本質的な仕事に集中して専門家としての将来性を高めよう

「税理士の仕事はAIなどによってなくなることはない」といわれても、AIに代替されないほどのスキルや実績ができるか不安な人も多いのではないでしょうか。

求められるスキルが高くなると「資格を取って終わり」ではなくなるので、将来の不安は大きくなりますよね。

しかし、税理士の本質的な仕事は何かを改めて考えてください。適切な記帳をされた後に、その内容を踏まえて税務判断や経営アドバイスをすることが税理士の仕事の本質です。

だからこそ、AIやITツールによって業務の効率化が図れます。すると、本来すべき仕事に集中できるというメリットが大きくなるのです。

人によっては労働時間を減らして、顧客への価値貢献度合いを上げられる可能性もあります。

AI・ITツールを活用して顧客のパートナーとしての力を伸ばそう

もしかしたら、業務の効率化だけでなく経営アドバイスもAIができるようになるかもしれません。

しかし、感情のないAIからのアドバイスよりも、人間として信頼できる税理士からのアドバイスのほうが信頼度が高まるものです。

だからこそ、今のうちからAIツールに触れて使用に慣れたり、業務に役立てられる知識を身に付けたりして、顧客にとって欠かせないパートナーになれるように準備を進めていきましょう。

執筆・編集 PORTキャリア編集部

明日から使える就活ノウハウ情報をテーマに、履歴書・志望動機といった書類の作成方法や面接やグループワークなどの選考対策の方法など、多様な選択肢や答えを提示することで、一人ひとりの就活生の意思決定に役立つことを目指しています。 国家資格を保有するキャリアコンサルタントや、現役キャリアアドバイザーら専門家監修のもと、最高品質の記事を配信しています。

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記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi

高校卒業後、航空自衛隊に入隊。4年間の在籍後、22歳で都内の大学に入学し、心理学・教育学を学ぶ。卒業後は人材サービスを展開するパソナで、人材派遣営業やグローバル人材の採用支援、女性活躍推進事業に従事。NPO(非営利団体)での勤務を経て、「PORTキャリア」を運営するポートに入社。キャリアアドバイザーとして年間400人と面談し、延べ2500人にも及ぶ学生を支援。2020年、厚生労働大臣認定のキャリアコンサルタント養成講習であるGCDF-Japan(キャリアカウンセラートレーニングプログラム)を修了

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