この記事のまとめ
- 総合商社のおもな事業はトレード・事業投資・事業経営の3つ
- 同じ総合商社でも企業によって強みや特徴が異なる
- 総合商社の選考はハイレベルだからこそ適性を踏まえて挑戦しよう
毎年膨大な学生がエントリーする総合商社。「海外で活躍したい!」「高い年収を目指したい」などと考えて、総合商社への就職を検討している人もいるでしょう。
ただし、総合商社の仕事は日常生活で接点が少ないため、仕事内容を具体的にイメージできない人も多いはず。エントリーを検討する前に、まずは仕事内容や商社業界の現状をしっかり理解しておくことが重要です。
この記事では、キャリアアドバイザーの加藤さん、瀧本さん、渡部さんのアドバイスを交えつつ、総合商社の仕事内容について解説します。総合商社が気になっている人は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
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総合商社の仕事は幅広い! 業界の実態をつかむことが大切
「カップラーメンからロケットまで」という言葉で評されるように、総合商社の仕事は多岐にわたります。仕事のイメージを付けるため、また入社してからのギャップをなくすためにも、事業内容や日々の仕事について理解することが重要です。
この記事では、総合商社の事業内容や職種、7大商社の特徴などを解説します。まずは基礎知識や企業ごとの特徴を押さえて、総合商社の全体像を把握しましょう。
また総合商社で働く魅力や大変なところも解説します。よく知られた特徴以外の魅力も深掘りするので、仕事の実態をつかめますよ。
記事の後半では、総合商社に挑戦したい人に向けて今からできることを解説します。人気の総合商社を受けるうえで、どんなアプローチや覚悟が必要かを理解して、選考に臨めるようにしましょう。
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そもそも総合商社とは? まずは基本情報を押さえよう
そもそも総合商社とは? まずは基本情報を押さえよう
- 総合商社のおもな事業内容
- 総合商社のおもな職種
- 商社業界の現状・トレンド
総合商社とは、幅広い商材・サービスを国内外から仕入れて流通させる業界のことです。海外にも拠点がある総合商社がほとんどで、そのネットワークは欧米から東南アジア・アフリカまで世界各地に及びます。
ちなみに専門商社とは、特定の商材・分野に特化した商社のことです。海外では専門商社が主流で、総合商社は日本独自のビジネス形態となっています。
前提を押さえたら、ここでは総合商社の概要について解説するので、まずは基本情報を押さえましょう。
総合商社のおもな事業内容
総合商社のおもな事業内容
- トレード
- 事業投資
- 事業経営
総合商社といえば、貿易や国内への物資の流入といったイメージがあるかもしれませんが、実際にはさまざまな事業をおこなっています。
ここでは総合商社の代表的な3つの事業を解説するので、ビジネスモデルを理解しましょう。
トレード
トレードとは、簡単にいうと売り手と買い手の間に入ることで利益を得る事業です。総合商社が売り手から商材を仕入れ、メーカーや卸売業者などの買い手に販売することで、仕入れ値と売値の差額や仲介手数料から利益を得ることができます。従来はこのトレードが総合商社のビジネスの主流でした。
総合商社のトレードは商材に制限がないため、利益が出る分野に積極的に参入していくのが特徴です。さらに総合商社では、トレードの過程で総合商社ならではの付加価値を提供することで顧客に貢献しています。
付加価値の例
- 安全で効率的な物流手段がある
- 商材の知識を豊富に持っている
- 輸送経路の整備拡大ができる
- 購入代金を立て替えられる
- マーケティングまで請け負う
上記のような付加価値を提供できるのは、総合商社に豊富な資金力や、長年培った人脈・独自のネットワークがあるためです。
ただし、メーカーが自ら仕入れルートを確保したり、インターネットの普及によって直接商品を顧客に届けられるようになったりしたことで、総合商社のトレード事業は減少傾向にあります。
日本の総合商社のトレード事業は減少傾向にありますが、その重要性は依然として高く、新たなビジネスモデルへの適応が求められています。
そのため、これからも柱としての位置づけは保ちながら、事業の多角化や新たな価値提供に向けた変革が求められる状況です。
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事業投資
事業投資は今後成長が見込まれる企業や分野に投資して、利益を獲得していく事業です。総合商社の事業投資は、投資先企業への出資で得られるようになる配当金と、既存事業との相乗効果によって利益を出すことが目的です。
たとえばある総合商社がプラスチックの原料を輸入していた場合、さらにプラスチック原料を加工する企業の株式を取得してグループ企業にすることで、仕入れから加工までワンストップでできるようになります。
これにより、株式の配当で得られる利益と、既存事業との相乗効果による利益増加を狙えるのです。
なお総合商社による事業投資は、近年、トレード事業と並ぶメイン事業となっています。企業によってはトレード事業よりも事業投資の売り上げのほうが大きくなっているケースもあるほどです。
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事業経営
近年では事業経営に取り組む商社も増えていて、代表的な例としてはコンビニの子会社化が挙げられます。総合商社はもともと、コンビニで取り扱う食品や弁当容器などの原料調達から加工まで、幅広い事業をおこなっていました。
その基盤を活かして、総合商社自体がコンビニを子会社化することで、従来よりも原材料を安く買い付けて利益率を高めることに成功しています。たとえば三菱商事はローソン、伊藤忠商事はファミリーマートとの協力関係を強めていることで有名です。
また総合商社の人材が投資先企業に出向し、経営を改善したり新規事業を立ち上げたりする事例も多くあります。このように、総合商社は異なる分野の事業経営に取り組むケースが増えているのです。
- 総合商社は結局何をミッションとしているのでしょうか? 事業範囲が広すぎてよくわかりません……。
総合商社は「仲介役」が重要な役割
いろいろと事業が多岐に展開されているので、何をミッションとしているかわかりにくい部分がありますよね。
総合商社の社会での重要な役割は、ビジネスの中心となり、製造業者やサプライヤー、小売業者や消費者などの間で仲介役を担うことです。
そのため、商品やサービスの仲介・販売、取引の調整、国内外のビジネスパートナーとの関係構築など、さまざまな業務を担当することがミッションとなるので、事業範囲が多岐にわたります。
総合商社のおもな職種
総合商社のおもな職種
- 営業職
- 企画職
- 事務職
事業内容と同じく、総合商社の職種について知る機会はあまりないでしょう。商社業界を深く理解するには、職種の種類や役割を把握することも大切です。
ここでは総合商社のおもな職種を解説していきます。どんな職種があるか理解することで、総合商社での働き方が想像しやすくなりますよ。
営業職
総合商社の営業職は、自社製品・サービスの販売や取引先への営業を担います。新卒で総合商社に入社するなら、この営業職を希望する人が特に多いでしょう。営業職では、おもにトレードにおける以下の業務をおこないます。
営業職のおもな業務
- 価格設定
- 仕入れ数の調整
- 流通経路の取り決め
上記に加えて、売り手と買い手のパイプ役を担うこともあります。そのため、デスクワークよりも外回りが中心となるのが特徴です。また契約後も、取扱商材の知見の共有やトラブルサポートまでおこないます。
なお、営業職では取引先の担当者との関係構築が重要です。顧客からの信頼を得ることで、長期的に取引が続いたり、大きな商談に発展したりします。ときには、緊急で客先まで向かうケースもあるでしょう。
つまり総合商社の営業職は、顧客の助けになるのであれば自分の業務範囲外まででも泥臭く対応することが求められる仕事です。
- 総合商社の営業職はきついって本当ですか?
たしかに激務だがその分高待遇なことが多い
総合商社の営業職は、長時間労働や休日出勤が一般的であり、海外取引に伴う時差への対応や人脈維持のための社外交流が求められるため、たしかに激務です。
たとえば、週に何度も深夜まで働き、ときには週末も出勤している社員がいると聞いたことがあります。
しかし、その見返りとして、総合商社は非常に高い給与を提供し、充実した福利厚生を用意しています。また世界各国との取引を通じて視野をグローバルに広げることができるため、多くの就活生にとって大きな魅力となっています。
仕事の厳しさはありますが、それに見合うだけの大きなやりがいと成長の機会が存在していますよ。
営業職に不安がある人は、こちらの記事で適性をチェックしておきましょう。具体的な仕事内容や、向いていない人の特徴を解説しています。
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営業向いていないと十分な検討をせずに決めつけることは危険です。まずは営業職の理解を深めましょう。この記事では営業に向いていない傾向のある人の特徴16選や、おすすめの道をキャリアコンサルタントが解説します。
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あなたが受けない方がいい職業を確認しよう!
就活では自分のやりたいことはもちろん、そのなかで適性ある仕事を選ぶ事が大事です。適性が低い仕事に就職すると、イメージとのギャップから早期退職に繋がってしまうリスクが高く、適職の理解が重要です。
そこで活用したいのが「適職診断」です。質問に答えるだけで、あなたの強みや性格を分析し、適性が高い職業・低い職業を診断できます。
まずは強みを理解し、自分がどの職業で活躍できるか診断してみましょう。
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企画職
総合商社の企画職は、事業投資の企画立案を担当します。新規参入ができそうな分野を探したり、どんな企業と新たに取引するかを検討したりします。
さらに、自社だけでなく他社の投資計画を立案するのも業務の一つです。たとえば子会社化した企業に出向して、企画や戦略に携わることもあります。また自社商品やサービスのマーケティングをしたり、他社事業のコンサルティングをしたりすることもあります。
このように、企画職は幅広い業務を担当するので、市場の洞察力や分析力などが求められる職種です。
なお総合商社の企画職は、経営戦略や事業企画に携わる点で、営業職で一定の経験を経てから配属されるケースが多くなっています。そのため、入社1年目から企画職として配属される可能性は低いことを理解しておきましょう。
企画職を目指すなら、ポイントを押さえた対策が必須です。こちらの記事で詳しい仕事内容や適性を確認してみてください。
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事務職
総合商社の事務職は、営業や貿易部門のサポートをおこないます。以下のようなデスクワークが中心です。
事務職のおもな業務
- 電話応対
- 営業書類の作成
- 通関手続き
事務職は外国語での対応を求められる可能性が高く、たとえば取引先の海外企業からの電話に英語で応対したり、英文のメールに対応したりします。
また通関手続きは貿易業務に欠かせないものです。具体的には、輸出入したい企業に代わって税関へ税金を申告したり、配送の手配をしたりします。そのため通関手続きを担当する場合は、法規制や税務に関する専門的な知識が求められます。
なお商社によっては、営業事務と貿易事務が分かれているケースもあるため、必要なスキルは企業や配属先によって異なることを理解しておきましょう。
通常の事務もおこないますが、大手顧客との取引の場合はプロジェクトチームに入ることもあります。
海外での調達業務などではイレギュラーなことも起こるため、営業担当者と速やかに連携でき、機転の利く人が活躍している印象です。
事務職に興味がある人は、こちらの記事もおすすめです。求められるスキルや就職のコツを具体的に解説しています。
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事務職は多くの就活生から人気を誇る職種の一つであり、志望する学生は事務職への理解に努めることが大切です。記事では、事務職の種類とそれぞれの仕事内容をはじめ、事務職に対して多くの人が抱く誤解とその実態についてキャリアコンサルタントのアドバイスを交えながら解説します。
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営業事務と貿易事務については、以下の記事でそれぞれ詳しく解説しているので併せて参考にしてみてください。
営業事務
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貿易事務
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商社業界の現状・トレンド
近年はネットショッピングの普及によって、商社を介さない直販ビジネスが拡大しています。そのため商社は、従来のように仕入先と販売先をつなぐだけでは売り上げを獲得するのが難しくなっているため、あらゆる付加価値を模索しています。
その一例が、DX(デジタルトランスフォーメーション)による業務効率化や顧客のコンサルティングです。
たとえばトレードに伴う取引先とのやりとりを電子化したり、事業投資ではデジタルデータを収集することで、マーケティングや顧客のコンサルティングに活用したりしています。
もう一つのトレンドが、サステナビリティ経営に取り組む総合商社が多くなっていることです。2015年の国連サミットでSDGs(持続可能な開発目標)が採択されたことを受け、2020年には日本政府もカーボンニュートラルを2050年までに実現することを宣言しました。
これに伴い、各総合商社で経営資源の環境負荷を減らす目標を立てたり、再生可能エネルギー発電事業に取り組んだりしています。
上記に記載のあるDXなどもそうですが、やはり、国際会議でもよく話題に出るといわれているGX(グリーントランスフォーメーション)に関するビジネスが最近のトレンドだと感じます。
また二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を抑える「カーボンニュートラル」の考え方もトレンドの一つです。
こちらのQ&Aでも、商社の動向や将来性についてキャリアコンサルタントが解説しています。併せてチェックして知見を広げましょう。
理解を深めよう! 総合商社の日々の仕事内容
理解を深めよう! 総合商社の日々の仕事内容
- 取引先への訪問営業
- 社内外でのミーティング
- プレゼンテーション
- メール・資料作成などのデスクワーク
総合商社の事業や職種について解説しましたが、ビジネスの規模が大きく、かつ幅広いため、まだ仕事のイメージがうまくつかない人もいるかもしれません。
そこでここでは営業職を例に取って、日々の仕事内容を解説します。事業内容を知るだけでは就職後のミスマッチが生じる可能性もあるため、仕事内容までしっかり理解して、総合商社で働くイメージをより正確にできるようになりましょう。
取引先への訪問営業
総合商社でのメイン業務として、取引先への訪問営業があり、これは新規開拓から既存顧客への対応まで幅広くおこないます。新規開拓とは、たとえば取引できる可能性のある企業に新しいビジネスを提案したり、商品やサービスの契約を持ちかけたりすることです。
一方、既存顧客への営業では、定期的な訪問により関係性を深めたり、継続して利用してもらうためのサポートをしたりします。また受注量を増やすための交渉や、既存のトレードで問題がないかの確認も業務の一部です。
このように訪問営業では、売り上げを拡大するための交渉や、既存顧客に継続して取引してもらうためのサポートをおこないます。
新規開拓と既存顧客への営業比率は、担当分野によって大きく異なると思います。
成長分野であれば急成長企業や新規参入企業のウェイトが高いため新規顧客が多くなりますが、歴史が古く業界の構造があまり変わらない分野では、既存顧客との取引がほとんどになるでしょう。
社内外でのミーティング・プレゼンテーション
新規顧客とのミーティングでは、企業の状況をヒアリングしたうえで、新たな事業・トレードなどを提案します。また既存顧客には、トレードの新たな受注・規模拡大や、新規ビジネスになり得るアイデアを提案します。
社内ミーティングは、おもに他部署と連携が必要な案件があるときに実施されます。たとえば輸出入に伴う法規制や会計・税務上の注意点を把握するには、コーポレート部門と打ち合わせして知見を得ることが必須です。
なお総合商社のミーティングは、海外顧客や海外支店の社員とおこなわれるケースも多いです。そのため相手地域の時間に合わせて、深夜帯や早朝にWeb上でミーティングすることもあります。
メール・資料作成などのデスクワーク
訪問営業やミーティングがないときは、メール・資料作成などのデスクワークをします。提案時に使う資料を作成したり、国内外の顧客とメールでやり取りをしたりなどがおもな例です。
トレードを担当している場合は特に、商材の輸送ルートに乱れが生じたことで各取引先への連絡が必要になることも多いです。たとえば船が高波で出港できず、スケジュールが遅れると、早めの状況報告が必要になります。
またデータ収集や分析業務も重要な業務の一つです。顧客への報告や提案に必要なデータを集め、上司や関係部署と連携しながら、課題を分析したり戦略を考えたりしていきます。
このように総合商社のデスクワークでは、営業やプレゼンテーションに必要な準備をしたり、トラブル対応にあたったりすることが多いです。
総合商社というと大半の人は営業職を想像するものですが、デスクワークも非常に重要です。
事業計画や貿易事務などの内勤業務は、企業の運営やプロジェクト管理に不可欠であり、商社の多角的なビジネスを支える基盤となっています。
アドバイザーコメント
渡部 俊和
プロフィールを見る総合商社はあらゆる場面で企業をサポートしている
ファーストリテイリングのようなアパレルの製造小売業の顧客を例にとって、総合商社について説明しますね。
会社が小さいうちは、メーカーから洋服を仕入れ、自社のラベルを付けて売っていた小売業が、売り上げが大きくなると自社で商品を開発したいと考え始めます。自社の企画で商品を作れば、利益率が上がるうえに調達もスムーズになるためです。
しかし、それまで既製品を仕入れて商売をしていたので、素材メーカーや加工業者を知りません。そんな場面で商社の出番がやってきます。
総合商社は世界中の素材メーカーや加工業者、物流業者のネットワークを持っていて、現地での商談から店頭に商品を送るまでのあらゆるサポートができます。そしてお世話をした商品の売り上げの数%を手数料として受け取ります。
2,000円弱の商材でも100億円以上の儲けにつながることも
ユニクロが有名になったきっかけのフリースジャケットは、累計で3億枚以上の販売数量があると言われていますが、1,900円のフリースの商社のマージンが仮に2%だったとしても、商社の収入はフリースだけで114億円になる計算になります。
もちろんこれは架空の数字であり、実際の計算はもっと複雑ですが、世の中に流通しているあらゆる商品に、このような形で商社が介在しているのです。
基本の5大商社・7大商社をチェック! それぞれの特徴や年収も紹介
総合商社の中でも特にトップクラスの業績を誇る、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、丸紅、住友商事の5社を5大商社と呼びます。毎年多くの学生が応募するので、就職難易度は非常に高いです。
上記に加えて、売り上げ上位7位までの豊田通商と双日も含めて、7大商社と表現することもあります。
豊田通商と双日も同様に、海外で活躍できるチャンスや事業基盤の安定性があり、5大商社より劣るというわけではありません。総合商社の呼び方として、分類が異なるだけということを覚えておきましょう。
ここでは7大商社の特徴や年収について、それぞれ解説していきます。
一口に総合商社といっても、各企業ごとに強みの分野や特徴があります。人気の業界でもあるからこそ、トップクラスの7大商社の各特徴を把握したうえで就職活動に挑みましょう。
また自分が何の分野に従事していきたいのかも、把握する過程で明確にしていくことが大切です。
三菱商事
企業ホームページ(HP) | https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/ |
設立 | 1950年4月1日 |
資本金 | 2,044億4,666万7,326円 |
会社拠点数 | 国内:11 海外:107 |
連結対象会社数 | 1,815 |
従業員数 | 5,448名(連結:79,706名) |
本社所在地 | 東京都千代田区丸の内二丁目3番1号 |
平均年収 | 1,939万円 |
三菱商事の特徴は、総合力の高さです。自動車事業をはじめとした幅広い事業と積極的な海外展開によって、バランスの良い事業経営を実現していて、海外拠点数はすでに100を超えています。
三菱商事は、特に天然ガスや金属資源による利益が大きいのが特徴です。さらに近年では、コンビニやアパレルなどのコンシューマービジネスや、電力ソリューションにおける利益も増加傾向にあります。このように従来のトレードに加えて事業領域を広げ、総合力をさらに高めています。
コンシューマービジネスとは
一般消費者をターゲットにした商品・サービスを販売する事業のこと。いわゆる「BtoCビジネス」は、コンシューマービジネスと言い換えられる
三井物産
企業ホームページ | https://www.mitsui.com/jp/ja/index.html |
設立 | 1947年7月25日 |
資本金 | 3,430億6,238万0,506円 |
会社拠点数 | 国内:11 海外:115 |
連結決算対象関係会社 | 513 |
従業員数 | 5,449名(連結:46,811名) |
本社所在地 | 東京都千代田区大手町一丁目2番1号 |
平均年収 | 1,783万円 |
三井物産は、資源分野に強い点で有名です。特に金属資源とエネルギー分野での利益が大きくなっています。
ただし資源分野は資源価格の増減による影響を直接受けるため、三井物産も近年では食料やメディカル・ヘルスケアなどの生活産業へビジネスを広げています。
2022年度有価証券報告書によると、2023年度の生活産業の業績は前年比352億円増と予想されていて、全分野のうち2位となるほどです。
三井物産は、非資源分野へ領域を広げつつ、資源分野の依存から脱却を進めているといえます。
伊藤忠商事
企業ホームページ | https://www.itochu.co.jp/ja/index.html |
設立 | 1949年12月1日 |
資本金 | 2,534億4,800万円 |
会社拠点数 | 国内:7 海外:86 |
連結対象会社数 | 1,815 |
従業員数 | 4,187名 |
本社所在地 | 東京都港区北青山2丁目5番1号 |
平均年収 | 1,730万円 |
三井物産とは対照的に、食料品や住宅・繊維などの非資源分野に強いのが伊藤忠商事です。資源価格の増減による影響が少ないため、安定した収益を上げています。
特に機械部門では航空機の売却、食料部門ではファミリーマートの運営やドン・キホーテ事業が有名です。
一方、金属部門も好調で、2022年度の有価証券報告書によると前年度から21.6%増の、2,250億円の増益となっています。ほかの5大商社と比べて、資源分野と非資源分野でバランス良く利益を挙げているのが強みといえます。
丸紅
企業ホームページ | https://www.marubeni.com/jp/ |
設立 | 1949年12月1日 |
資本金 | 2,633億2,400万円 |
会社拠点数 | 国内:12 海外:119 |
連結対象会社数 | 子会社:317社 関連会社:163社 |
従業員数 | 4,340名(グループ従業員数:45,995名) |
本社所在地 | 東京都千代田区大手町一丁目4番2号 |
平均年収 | 1,593万円 |
総合商社の中でも、資源分野の電力事業、非資源分野の食料事業に力を入れているのが丸紅です。電力事業では国内外の再生可能エネルギー発電の拡大に取り組んでいて、2022年度では679億の増益となっています。
食料事業では、特に畜産物や穀物の生産販売をグローバル展開する部門が、2022年度に304億の増益を達成しています。
さらに日本のコーヒー豆消費量のうち、約30%を丸紅が輸入していることも有名です。したがって資源分野と非資源分野の両方で大きな収益を上げているのが丸紅の特徴といえます。
住友商事
企業ホームページ | https://www.sumitomocorp.com/ja/jp/ |
設立 | 1919年12月24日 |
資本金 | 2,204億円 |
会社拠点数 | 国内:20 海外:108 |
連結対象会社数 | 連結子会社:649社 持分法適用会社:251社 |
従業員数 | 5,196名(グループ従業員数:79,513名) |
本社所在地 | 東京都千代田区大手町二丁目3番2号大手町プレイス イーストタワー |
平均年収 | 1,605万円 |
7大商社の中でも最も早く、1919年に設立された住友商事は、多種多様な非資源分野で事業を拡大してきました。
身近な例では、ケーブルテレビ事業「J:COM」や、第5世代移動通信システム(5G)関連事業などをおこなっています。2022年度の有価証券報告書によると、メディア・デジタル事業の利益は、総利益の約10%を占める1,213億円です。
さらに、国内オフィスビル開発や不動産ファンドを運営する生活・不動産事業にも強みを持っています。2022年度の生活・不動産事業の利益は、総利益の約20%となる2,428億円でした。このように住友商事は、競合他社よりも非資源分野で幅広い強みがあります。
5大商社について深く理解したい人は、こちらの記事も併せてチェックしておきましょう。それぞれの強みや社風まで解説しています。
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5大商社を徹底比較! 事業や社風の違いから内定への道筋まで解説
5大商社の入社難易度は高いため各社の違いを押さえることが必須です。5大商社の特徴や魅力を理解しましょう。この記事では自分に合った5大商社の見つけ方や内定に向けた対策などをキャリアコンサルタントが解説します。
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豊田通商
企業ホームページ(HP) | https://www.toyota-tsusho.com/ |
設立 | 1948年7月1日 |
資本金 | 649億3,600万円 |
会社拠点数 | 国内:12 海外:50 |
連結対象会社数 | 連結子会社:779 持分法適用会社:231 |
従業員数 | 3,315名(連結:66,944名) |
本社所在地 | 名古屋市中村区名駅四丁目9番8号(センチュリー豊田ビル) |
平均年収 | 1,180万円 |
豊田通商は名古屋に本社を置く総合商社で、自動車メーカー大手であるトヨタのグループ会社でもあります。トヨタグループとのネットワークを有しているため、自動車事業や金属、グローバル部品・ロジスティクスの利益や安定性が高くなっています。
2023年統合レポートによると、2022年度の総利益のうち、全体の約4割を自動車関連事業が占めているほどです。
さらに豊田通商は、アフリカ事業にも強みがあります。アフリカの自動車や医薬品を取り扱うフランスの商社CFAO S.A.へ資本参加を実施し、2016年に完全子会社化しました。
アフリカ事業では、自動車や発電関連の事業を拡大していて、2022年度は1,984億9,600万円の利益を挙げています。これは全セグメントのうち、最も高い利益です。
このように豊田通商は自動車関連事業と、競合商社よりも先行しているアフリカ事業に強みを持っています。
双日
企業ホームページ(HP) | https://www.sojitz.com/jp/ |
設立 | 2003年4月1日 |
資本金 | 1,603億3,900万円 |
会社拠点数 | 国内:5 海外:72 |
連結対象会社数 | 国内:129 海外:302 |
従業員数 | 2,551名(連結:22,422名) |
本社所在地 | 東京都千代田区内幸町2-1-1 |
平均年収 | 1,208万円 |
7大商社の中で最も設立が新しいのが双日です。ニチメン株式会社と日商岩井株式会社が合併したことで設立されました。
双日は国内民間航空機の販売代理店として、1位のシェアを獲得しています。統合報告書2023によると、2022年度の航空産業・交通プロジェクト部門の利益は70億円で、全体の6.3%を占めています。
さらに資源分野をはじめとして、自動車やインフラ・ヘルスケア、生活産業など幅広い事業で強みがあるのもポイントです。
2023年には電気自動車(EV)販売台数世界1位BYDの日本国内正規ディーラーに参入し、世界的にEVの普及が進むなか、国内でのEVディーラー事業による業界での先行が期待されています。
7大商社の企業研究をさらに入念におこないたい人は、こちらの記事で対策しましょう。各商社の事業領域の内訳をわかりやすく解説しています。
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やりがいはお金だけではない! 総合商社に就職する魅力
やりがいはお金だけではない! 総合商社に就職する魅力
- 規模の大きな仕事を経験できる
- 海外で活躍できるチャンスがある
- 扱う商材の専門性が深まる
総合商社の代表企業について解説してきましたが、どの企業も平均年収が非常に高いことに驚いた人が多いのではないでしょうか。
総合商社に就職すれば高年収を実現しやすいといえますが、総合商社には年収以外にもさまざまな魅力があります。また実際に年収が高くてもやりがいを感じられなければ、長続きしないかもしれません。
ここでは総合商社の魅力を解説するので、「自分にとって何が魅力的か」を確認してみましょう。総合商社に就職する目的や、そこで実現したいことが明確になりますよ。
企業選びの基準が高年収の人は以下の記事を参考にしてみてください。新卒から高収入を目指せる業界をまとめています。
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規模の大きな仕事を経験できる
あらゆる商材を取り扱っているのが総合商社の強みです。買い手と売り手をつなげる役割をするなかで、国内外のネットワークを活用するため、多くの人や地域がかかわる案件に携われます。
加えて、海外での事業投資にかかわる場合、数千万円以上の規模のプロジェクトも多いです。特に7大商社なら億単位の資金を動かせるチャンスもあり、ストレスや負担もあるかもしれませんが、その分ほかの業界では経験できないほどのやりがいが感じられるでしょう。
かかわる人・地域の多さや、金額的にも大規模なビジネスに挑戦できることが総合商社の魅力の一つです。
- 規模の大きな仕事に挑戦したいのですが、1年目から携われるのでしょうか?
1年目でも間接的に携わることはできる
初めのうちは先輩と同行、もしくはチームのメンバーとして仕事をすることになると思いますが、間接的に携わる案件であっても、規模はそれなりに大きいものになるはずです。
そもそも総合商社は、顧客企業が自前で取引できる以上の規模で、なおかつマージンの低い専門商社でも扱えない大きな案件を扱うことがほとんどなので、担当する仕事のスケール感は学生が想像する以上のものになると思われます。
ただ個人的には、大規模な案件は全体を見ることが難しいので、初めのうちは案件の規模にこだわらず、小さい仕事を最初から最後まで責任を持ってやり遂げることを覚える方が成長は早いように思います。
海外で活躍できるチャンスがある
総合商社は、世界中に海外支店を持つ企業がほとんどです。近年では多くの業界でグローバル展開が進んでいますが、総合商社はあらゆる商材を扱うという点で、海外で活躍できるチャンスが多くあります。
海外出張だけでなく、海外駐在を経験しやすいのも総合商社のポイントです。海外に赴任すれば現地の言語でビジネスをする必要があり、交渉の中で日本では経験できないような海外の文化や慣習にかかわることもあるでしょう。また総合商社の場合、先進国から発展途上国まで、幅広い国に拠点があるのも魅力です。
一方、国内で働いていても海外の顧客と打ち合わせをしたり、メールや電話でコミュニケーションを取ったりするケースも多くあります。このように、海外の人ともビジネスができるグローバルな人材になりたいなら、総合商社はぴったりな環境です。
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扱う商材の専門性が深まる
総合商社では幅広い商材を取り扱っていますが、実際に入社すると1つの商材を任されるのが一般的です。原料の調達から消費者に製品・サービスが届くまで、すべての段階でその商材にかかわることになります。
つまり総合商社なら、一般的なメーカーで働くよりも商材についてさまざまな角度から理解できるのです。すでに取り扱っている商材に関連する分野で利益を得るチャンスがあれば、新たに参入することもできます。
また特定の商材に精通すれば、社内外の関係者を調整し、自らプロジェクトのメンバーを整えてビジネスを広げていけるのも総合商社の魅力です。
総合商社で働く一番の魅力は、多様性です。
製品や資材の国際取引をおこなうことで、さまざまな産業に関与し、広範なビジネスネットワークとリスクマネジメント能力を駆使して、国際的なビジネスの最前線で活躍するチャンスがあります。
これにより、高度な専門知識と経験を積むことができ、多様なキャリアの展開が期待できます。
こちらのQ&Aでも、商社のやりがいについてキャリアコンサルタントが回答しています。気になる人は併せてチェックしてみてください。
理解を深めよう! キャリアの専門家に聞く総合商社の仕事の実態
総合商社の魅力について解説しましたが、「やっぱり大変なのでは?」と実態が気になる人もいるでしょう。また魅力だけでなく、現実的なキャリアビジョンまで把握して理解を深めたい人もいるかもしれません。
そこでここでは多くの求職者を支援し、各業界に詳しいキャリアコンサルタントに、総合商社の実態について聞きました。就職前に魅力以外の面まで理解して、ミスマッチを防ぎましょう。
総合商社のキャリアは?
総合商社の仕事内容について解説しましたが、いざ入社後はどのようにキャリアアップしていくのか、あまり想像がつかない人もいるのではないでしょうか。
数年後のキャリアまで理解することで、総合商社の実態をよりリアルにつかむことができます。ここではキャリアコンサルタントの渡部さんに、総合商社のキャリアについて詳しく聞きました。
アドバイザーコメント
渡部 俊和
プロフィールを見る総合商社では全国各地・世界中に転勤する可能性が高い
総合商社でのキャリアは、担当分野にもよりますが、数年間の海外駐在を挟んだジョブローテーションがおこなわれていて、世界中に転勤する可能性があります。
そして、担当業界を川上から川下まで理解したうえで、人脈と情報を使って仕事をするというイメージです。
私は顧客側として複数の大手総合商社と取引をしましたが、昇進していった人はプレゼン力や交渉に長けていながら、腰が低く好感度の高い人が多く、対人関係能力の高さが重要な印象を受けました。
活躍するには社外との人脈形成が肝! 独立や転職をする道も
仮に、国内で販売する商品開発を海外でおこなうために、生産国のサプライヤーを紹介してもらうとすると、商社によってまったく違う取引先を紹介されます。
商社の海外駐在員は日頃から現地のメーカーや加工業者の人脈を築き、たとえばコストは多少高くとも日本企業との取引実績がある会社とか、とにかく価格が安い会社とか、顧客の要望に沿った提案ができるようにしているのです。
国内での調達や仲介も基本的に同じで、地方の技術力のある工場や、無名でもコスト競争力のあるメーカーなどを商社の人はよく知っています。
商社の仕事では人脈と情報力によって業界に精通することになるため、そこから起業に至るケースや、顧客側からスカウトされて転職に至る場合もありますよ。
総合商社の大変なところは?
総合商社に魅力を感じていても、「実際に入社してから大変なことも多いのでは?」と心配な人もいるでしょう。
事前に総合商社の大変なところも理解しておけば、入社後のギャップを少なくすることができます。ここではキャリアコンサルタントの瀧本さんに、総合商社の大変なところについて詳しく聞きました。
アドバイザーコメント
瀧本博史
プロフィールを見る華やかなイメージの裏には長く・泥臭い努力がある
総合商社に入社することは、多くの学生にとって魅力的な選択肢ですが、その実態は華やかなイメージとは異なる場合が多いです。
総合商社での仕事は、長期間にわたる市場調査や現地調査、多くの関係者との交渉など、地道で泥臭い作業が大部分を占めています。
大規模なビジネスプロジェクトが成功するまでには、大抵1年以上の長い期間と多大な労力を要し、多くは目に見えない努力の積み重ねがあります。
また総合商社の日系企業としての特性上、スピード感の欠如や年功序列の残る文化も存在し、これが新しいアイデアや事業機会を逃す原因となることもしばしばです。
若手のうちに総合商社を離れる者も少なくないとされ、入社前の理想と実際の業務とのギャップに耐えられず退職するケースも見られます。
総合商社を目指すなら大変なこともやり抜く覚悟を持とう
総合商社で活躍するには、ただ事業に興味を持つだけでなく、業務の本質を理解し、それに対する強い思いや覚悟が必要です。事業を成功させるための「やりきる」姿勢や、泥臭い作業にも意義を見出せる能力が求められます。
そのため総合商社を志望するなら、実際の業務内容と自身が抱く事業への情熱を照らし合わせて、自分に合った職場かどうかを慎重に考えることが重要です。
総合商社を目指すなら? 今からできること
総合商社を目指すなら? 今からできること
- 総合商社で求められる力を把握する
- 自己分析を深めてマッチする総合商社を考える
- 総合商社に活かせるスキルを磨く
総合商社は毎年多くの学生から人気です。たとえば、ダイヤモンドオンラインの5大総合商社 採用大学ランキング2022によると、2021年の三菱商事の採用大学上位は、以下のとおりです。
大学名 | 採用人数 | |
1位 | 慶應義塾大学 | 25 |
2位 | 東京大学 | 21 |
3位 | 早稲田大学 | 20 |
4位 | 京都大学 | 6 |
5位 | 東京工業大学 | 5 |
〃 | 一橋大学 | 5 |
〃 | 大阪大学 | 5 |
このように有名大学出身者が多く、優秀な学生がライバルになると考えられます。そのため総合商社へ入社したいなら、早めに準備することが大切です。ここでは総合商社を目指すうえで今からできることを解説するので、今のうちに準備を進めておきましょう。
①総合商社で求められる力を把握する
総合商社で求められる力
- 海外の人と働く語学力
- 交渉を進めるコミュニケーション能力
- タフな業務をこなす体力
総合商社の選考を突破するには、企業がどんな人材を求めているかを理解したうえで、自分の魅力をアピールする必要があります。そのため、まずは総合商社で求められる力を理解しておきましょう。
ここでは総合商社で活躍するために特に重要な3つのスキルを解説するので、自分ならどんな力を磨いていけそうか考えながら目を通してみてください。
海外の人と働く語学力
総合商社では海外の顧客と働くケースが多いため、語学力が求められます。電話対応やメールでのやり取りはもちろん、ときには英語でプレゼンをすることもあるかもしれません。
また総合商社は世界各地に拠点があるため、英語以外の語学力も求められる場合があります。特に商談やプレゼンの場合では、現地の言葉で伝えたほうが相手の信頼を獲得できたり、スムーズに事業ができると判断してもらえたりする可能性があるため、語学に長けた人は重宝されるのです。
なお現状、5大商社の応募要項では、語学力が必須とは記載されていません。ただし、SPIなどの学力試験では英語の問題が出題される傾向にあるので、一定の英語力は必要となることを覚えておきましょう。
担当分野や国によって英語や中国語、ポルトガル語などを使いますが、現地のエージェントがついてくれる場合も多いです。
そのため教科書的な語学力を磨くよりは、会話力、多少カタコトであってもコミュニケーションを取ろうとする能力の方が重要でしょう。
商社に入社するならどの程度の英語力が必要か気になる人は、こちらの記事で求められるレベルを確認しましょう。資格や検定ごとのスコア基準まで解説しています。
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交渉を進めるコミュニケーション能力
トレードや事業投資をおこなう総合商社では、取引先との商談や打ち合わせが多いので、高いコミュニケーション能力が求められます。営業職はもちろん、一般職でも来客対応をおこなうケースが多い点で必須です。
特に営業職でトレードを担当するなら、原材料メーカーと食品メーカーをつなぐというように、企業同士を結びつける役割を担います。互いが仕事をしやすい環境や雰囲気を作ることも求められるでしょう。
また営業職では、取引に関与するさまざまな業界の人と接点があります。顧客の立場や国籍・文化によって、適切なコミュニケーション方法は異なるため、交渉を進めるうえで臨機応変な対応が必要です。このように総合商社では、交渉をスムーズに進めるコミュニケーション能力が重要です。
総合商社は仲介役としての采配が重要な役割でもあるので、結びつけようとしている双方の会社が、仕事がスムーズに進めるように立ち回るのはもちろんのこと、双方のビジネスについての深い知識を習得したうえで交渉に臨んでいかなければなりません。
そういった点で、交渉業務が難しいといわれることが多々あります。
コミュニケーション能力が強みの人は、こちらの記事でアピール方法も確認しておきましょう。言い換え表現や例文も紹介しています。
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タフな業務をこなす体力
総合商社で働くには、慣れない環境やイレギュラーな業務にも対応してタフに活躍できる体力が必要です。
たとえばトレードでは、国内外問わず直接現場に足を運んで商材を見つけたり、交渉したりします。輸送ルートによっては早朝や深夜に運行しているケースがあるため、トラブルが起きれば時間に関係なく迅速な対応が求められます。
また海外顧客との打ち合わせは、時差の関係で夜中になることもあります。さらに海外拠点への出張や駐在をすることになった場合、現地の生活に順応する必要もあるでしょう。日本とは食生活や気候が異なるため、体調管理も簡単ではありません。
このように総合商社の仕事にはハードな面も多いため、語学力やコミュニケーション能力などのスキルに加えて、体力も持ち合わせている必要があるのです。
②自己分析を深めてマッチする総合商社を考える
自己分析とは
自分のこれまでの経験や思考を振り返って分析し、自身の能力や価値観・将来像などを理解すること
総合商社に漠然と憧れる人の中には、総合商社ならどこでも良いと考えている人もいるかもしれません。しかしどの企業が自分に合うかを考えないと、選考で理解不足の印象を与えたり、入社後にうまく活躍できなかったりといった事態になりかねません。
自己分析をすることで、自分が仕事で大事にしたいことや発揮できる強みなどがわかり、企業選びの大きなヒントになります。また選考でアピールできる点がわかったり、志望動機や自己PRを考えやすくなったりと、就活には不可欠の準備です。
マッチした総合商社を見極めるには、まずどんな企業に魅力を感じるのか自己分析をして、自分に合う企業を定義することが重要です。
魅力を感じる企業の特徴を挙げる例
- 事業に将来性がある
- 業務内容にやりがいを感じる
- 給与が高い
上記のように人によって魅力を感じる企業は異なります。総合商社の中でも事業の強みや、携われる業務内容は異なるため、まずは自身がどんな企業に惹かれるか考えてみましょう。
7大商社から自分に合う企業を選ぶときには、各社の「企業文化」と「事業焦点」に注目しましょう。各社の特徴が表れる部分であるため、自分とマッチしているかを判断しやすいです。
就職後の自分のキャリア目標と合致する会社を選ぶことが、重要なポイントとなりますよ。
自己分析の詳しいやり方はこちらの記事で解説してるので、併せてチェックしてみてください。
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③総合商社に活かせるスキルを磨く
自己分析で自分にマッチする企業の目星を付けられたら、総合商社で活躍するために必要なスキルまで磨いておくことで、選考時にライバルと差をつけられます。
総合商社に必要な知識や能力はさまざまにありますが、ここではこれから実行しやすいおすすめのスキルアップを2つ紹介します。どの総合商社を受ける場合でも効果的なので、現状のスキルと照らし合わせながらぜひ早めに取り組んでおきましょう。
語学の勉強や資格取得に挑戦する
総合商社に活かせる資格として、上記のような語学・会計・貿易に関するものが挙げられます。海外で活躍したいと考えている場合は特に、TOEIC730点以上を獲得することで十分な語学力をアピールできるでしょう。
一方、事業投資にかかわりたいなら、取引先企業の財務諸表を読み込む必要があるため、簿記の勉強で得られる会計知識が役立ちます。さらに貿易実務検定や通関士資格は、海外とのトレードをおこなう際に直接活かせます。
学生時代の突出した実績がなくて不安な人でも、資格を取得することで熱意や実力をアピールできます。7大商社には毎年優秀な学生が多数エントリーするため、最初の書類選考で採用担当者の目に留まるように、ぜひ資格取得に挑戦してみましょう。
- 総合商社ではやはり学歴は重視されますか? 資格でカバーできるか不安です……。
学歴は有利にはなるがそれだけが重視されるわけではない
取り扱う商材を1つ任されたりと、総合商社の業務は広く・深いのが特徴です。そのため、知見や思考力を示すことができる学歴は、たしかにある程度は必要です。
また学歴だけでなく、総合商社で活かせる資格や海外留学などの経験があると、選考に有利にはなるでしょう。
しかし、学歴や資格や経験も大事ですが、最終的にはあなたの人としての人柄や能力が一番重視されるはずです。
ほかにも就職に有利な資格をこちらの記事で33選紹介しています。業界・状況別に分かれているので、併せてチェックしてみましょう。
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インターンシップで実績を残す
就職活動をする中でインターンシップで実績を残しておくと、総合商社の就職に役立つかもしれません。たとえば営業職の長期インターンなどで実績を残しておけば、総合商社の選考でも実務能力をアピールできます。
また総合商社もインターンを開催しているので、応募してみるのがおすすめです。インターンでは総合商社の業務を体験できるほか、企業の雰囲気なども直接感じられます。
実際に参加して良い評価を得られれば、選考を有利に進められる可能性も高いです。中にはインターン参加者限定の特別選考を用意している総合商社もあるほどです。
さらに総合商社のインターンは、書類選考や筆記試験などがあるうえに倍率が非常に高いため、参加しているだけでも入社したい意思が強いことをアピールできます。入念に準備をして積極的に参加しましょう。
総合商社は商取引に係る複雑系の仕事なので、エラーやトラブルは日常的に起こります。
そのような仕事での適性として、明るさ、積極性、コミュニケーション能力、多少のことではくじけないレジリエンスなどが判断材料になっているため、インターン選考でアピールしてみてください。
インターン選考に向けて準備したい人は、こちらの記事で対策しましょう。通過率を上げる準備を具体的な手順ごとに説明しています。
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総合商社は難関だからこそキャリアの適性を見極めてチャレンジしよう
総合商社では規模が大きい仕事に携わることができ、海外で活躍するチャンスもある点で人気の業界です。しかし多くの学生に人気だからといって、自分の適性ややりたいことにマッチするとは限らないため、イメージだけで挑戦せずに、まずは事業内容や日々の仕事を把握することが大切です。
記事では総合商社で求められる能力や仕事の大変なところまで解説したので、入社後の姿をイメージしながら理解を深めてくださいね。
総合商社に挑戦したい気持ちが固まったら、自己分析で自分に合う総合商社を考え、解説した方法で総合商社に活かせるスキルを磨いていくのがおすすめです。
自分の強みをどのように発揮できるか、また理想のキャリアを実現できるかを見極めて、自信を持って総合商社の選考にチャレンジしましょう。
アドバイザーコメント
加藤 賀子
プロフィールを見る総合商社の仕事は難易度が高いからこそ幅広いスキルが身に付く
取り扱う商材の幅も多岐にわたり、日本だけでなく海外も含め活躍できる総合商社。給与面も厚待遇であるため、いろいろと大変さはありつつも、やりがいも大きそうで魅力的に感じますよね。
一つの商材の川上から川下まで携われるので、知識も増え、さまざまな業界や分野に携わることで知見も広がると考えられます。
先入観だけでなく自分と本当に合うかを見極めて挑戦しよう
総合商社という固有名詞への憧れだけで志望するのではなく、その前に改めて自分としっかり向き合い、以下のような点を整理したうえで選考に進むようにしましょう。
・自分がやりたい仕事内容なのか
・自分のスキルや強みを具体的にどのように活かせそうなのか
・職種によってはカレンダー上の休日や早朝・深夜にも対応することを受け入れられるのか
など
人気の業界で選考の倍率も高いので、少し不安になるかもしれませんが、自分と向き合い整理し、考えを棚卸しすることで、受けることへの自信も出てくるでしょう。
あなたが希望の会社や職種・仕事内容に就き、生き生きと職業生活を送っていけることを心より応援しています。
執筆・編集 PORTキャリア編集部
> コンテンツポリシー記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi
3名のアドバイザーがこの記事にコメントしました
キャリアコンサルタント/産業カウンセラー
Yoshiko Kato〇人材会社で約15年間、18,000人以上のキャリア相談を受けてきた。独立後は企業や大学、個人と契約し、キャリア構築の支援をおこなう。キャリアコンサルタント歴は20年以上
プロフィール詳細キャリアコンサルタント/合同会社渡部俊和事務所代表
Toshikazu Watanabe〇会社員時代は人事部。独立後は大学で就職支援を実施する他、企業アドバイザーも経験。採用・媒体・応募者の全ての立場で就職に携わり、3万人以上のコンサルティングの実績
プロフィール詳細キャリアコンサルタント/キャリアコンサルティング技能士
Hiroshi Takimoto〇年間約2000件以上の就活相談を受け、これまでの相談実績は40000件超。25年以上の実務経験をもとに、就活本を複数出版し、NHK総合の就活番組の監修もおこなう
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