この記事のまとめ
- ビジネスの流れを把握して化学メーカーへの理解を深めよう
- 化学メーカーの動向と将来性をチェック
- キャリアのプロが化学メーカーで働く魅力を徹底解説
化学に興味はあるが、「化学メーカーにどのような企業があるのかわからない」「働く魅力を知りたい」と、悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
一括りに化学メーカーといっても、大きく3つの段階に分かれていてそれぞれ異なる役割を担っています。立ち位置ごとに違う役割を把握することで、業界への理解が深まり、相性の良い企業を見つけやすくなります。
この記事では、キャリアアドバイザーの加藤さん、古田さん、吉田さんのアドバイスを交えながら、化学業界の商流や各工程でのメーカーの役割を解説します。
化学メーカーへの就職を考えている人は、ぜひチェックしてエントリー候補に加えるかの判断に役立ててください。
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化学メーカーから内定をもらうためには商流や職種への理解が重要
化学メーカーへの就職を目指す際には、業界や企業の商流、職種への理解が大切です。なぜなら、商流のどこに位置するかによって役割が変わり、働きやすさや求められるスキル、キャリアパスが異なるからです。
この記事では、化学メーカーを川上・川中・川下という3つの工程に分けて解説し、それぞれの役割を説明します。
また「大手以外にもどんな企業があるのか知りたい」という人向けに、売上高ランキングやホワイト企業、高年収といったさまざまな切り口で、化学メーカーを紹介します。
理系と文系に分けておすすめの選考対策も説明しているので、相性を確認して化学メーカーへの応募を決めた人は、専門分野に合わせた対策に役立ててください。
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各工程でのメーカーの役割とは? 3段階に分類できる化学業界

一括りに化学メーカーと言っても、その役割や事業内容は大きく異なります。そのため、化学業界を「川上」「川中」「川下」という商流ごとの3つの段階に分けて考えることで、それぞれの特徴や役割を理解しやすくなります。
ここでは、化学業界の3つの工程を確認し、それぞれの段階に位置する化学メーカーがはたしている役割を見ていきましょう。
川上:原料を作っている
川上の化学メーカーは石油や鉱物といった資源をもとに、化学製品の基盤となる原料や素材を製造しています。石油や鉱物などは複数の成分が混ざり合った混合物であり、そのままでは利用できません。
そのため、熱や電気を用いて分解・精製をおこない、エチレンやナフサ、ベンゼンといった基礎製品を単離する工程が必要です。川上の化学メーカーは、資源を利用できる状態にする分解・精製の工程を担っています。
また生み出された原材料は、プラスチックや医薬品、化粧品など、さまざまな製品の素材として利用されています。川上に位置する企業は原料の大量生産に向けて、大規模な設備があるケースが多いです。
川上企業は主に川中の部品メーカーに原材料を提供する形のBtoBビジネスを展開しています。たとえば、石油化学メーカーが生産したエチレンやプロピレンは、川中のメーカーによって合成樹脂やゴム製品に加工されます。
BtoB(Business to Business)とは
化学メーカーが、ほかの企業向けに原材料や部品を供給するビジネスモデルのように、企業同士で行われる取引のこと
川上の役割を担うのは、いわゆる総合化学メーカーが多いです。規模が大きいことから知名度が高くてエントリー数も多いため、就職難易度は高い傾向にあります。
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川中:製品の中間素材を作っている
川上企業から調達した原材料を加工し、プラスチックや合成ゴム、合成繊維などの中間製品を作っているのが川中に属する化学メーカーです。製造された中間製品は自動車、家電、衣料品、医薬品など、さまざまな分野で利用されています。
川中工程は川下の最終製品に必要な部品を提供する形のBtoBビジネスであるため、消費者にはなじみが薄く、知名度はそれほど高くありません。また、川上に比べると事業規模は小さい傾向にあります。
ただし、他社が簡単に模倣できない独自技術や製品を持ち、知名度が高くなくても、特定の領域でトップシェアを誇る企業も少なくありません。
大手に比べて倍率が比較的高くないことも多いため、採用される可能性が高い穴場の企業を見つけられる可能性があります。
- 川上・川中のBtoB化学メーカーを効率良く探すおすすめの方法はありますか?
キャリアセンターや就職エージェントを活用しよう
在籍している学校の卒業生の就職先に化学メーカーが多い場合は、キャリアセンターで相談・確認すると良いでしょう。
そうでない場合は、新卒に特化したエージェントやメーカーへの就職支援に特化したエージェントに登録し、業界の状況や情報も含めアドバイスをもらいながら、一緒に探してもらうのが効率的にもおすすめです。
BtoB企業の概要やBtoCとの違いはこちらの記事で解説しているので、詳しく意味を知らない人はチェックして理解を深めておきましょう。
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川下:最終製品を作っている
川下に属する化学メーカーは、川中で製造された誘導品や中間素材をもとに、最終的な製品を作る工程を担っています。川下で作られる製品は家庭用洗剤、化粧品、食品包装材、自動車部品など、消費者が直接手に取るものや産業で使用される完成品が大半です。
川下メーカーは、製品の用途やターゲット市場に応じて事業内容を専門化しているのが特徴です。たとえば家庭用の日用品を主力とする企業や、化粧品に特化した企業など、それぞれの分野で専門的な商品を製造しています。
川下企業の規模は多種多様ですが、誰もが知るような大手企業は川上メーカーと同様に応募者が多いです。そのため就職倍率は高く、選考突破は難しくなりやすいです。
- 川上・川中・川下のうちどの化学メーカーを選ぶのがおすすめですか?
興味・関心に合わせて目指す化学メーカーを絞り込もう
研究や開発に興味があり新素材や新技術の開発に情熱を注ぎたい人や、探究心が強く新しい発想やアイデアを形にしたい人は川上の化学メーカーが向いています。
製造プロセスや生産効率の改善などに興味があり、実務的な問題解決を楽しみたい人は、効率や品質管理に重点を置いている川中の化学メーカーが向いているでしょう。
マーケティングや営業に興味があり、顧客との関係構築が得意な人は、最終製品の製造後販売やマーケティングを担っている川下の化学メーカーが向いています。
まずは自分の興味や強みを再確認し、自分のスキルを最大限に活かせる分野を選ぶことが、後悔しないためには重要です。
意外と知らない? 化学メーカーは大きく3種類に分類可能
3種類に分類できる化学メーカー
- 総合化学メーカー
- 誘導品メーカー
- 電子材料メーカー
同じ化学メーカーでも、その事業内容や取り扱う製品は多岐にわたります。違いを理解しないまま入社すると希望の職種が限定的だったり、製品分野が自分の興味と異なったりするなど、ギャップを感じる恐れがあります。
したがって、自分に合った企業を選ぶためには、化学メーカーの分類方法とそれぞれの特徴や役割の把握が大切です。ここからは、3種類の化学メーカーがはたす役割を解説します。
①総合化学メーカー
総合化学メーカーは基礎化学品から中間素材、最終製品まで幅広く手掛ける化学メーカーです。川上から川下までの商流全体に関与していて、規模が大きく多角的に事業を経営しているのが特徴です。
企業名 | おもな事業内容 |
---|---|
三菱ケミカル | 基礎化学品から高機能素材、医薬品など幅広い分野で製品を展開している |
住友化学 | 電子材料、農薬・医薬品など、産業や暮らしを支える多様な事業を展開している |
旭化成 | 樹脂・繊維・化学品をはじめ、住宅や医療、エネルギー分野にも進出している |
たとえば旭化成は、石油や天然ガスを原料としてプラスチックの基礎素材を製造し、それを食品包装材や自動車部品に加工しています。同時に住宅向けの建材や医薬品分野にも進出し、多くの最終製品を製造しているのが特徴です。
一つの企業の異なる事業間で原材料や技術を共有することで、最終製品まで効率的に生産できます。また幅広い製品を展開しているため、特定の分野に依存し過ぎず、安定性の高い経営が可能です。
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早いうちに自分に合う職業・合わない職業を知って、就活を成功させましょう。
②誘導品メーカー
誘導品メーカーは、中間材料を製造する化学メーカーです。基礎となる原料をもとにして、製品を製造するために必要な部品や素材を作る役割を川中で担っていて、「メーカーのためのメーカー」といえます。
たとえば、ポリエチレンやポリスチレンといったプラスチック、合成ゴム、塗料などが代表的な製品です。誘導品メーカーが製造する中間材料は、自動車部品や電子機器、衣料品、建材など、多岐にわたる分野で使用されます。
企業名 | おもな事業内容 |
---|---|
信越化学工業 | 塩化ビニル樹脂やシリコーン、半導体材料などで世界トップクラスのシェアを持つ |
三菱ガス化学 | メタノールや機能化学品を中心に、半導体材料やプラスチック原料を展開している |
クラレ | 樹脂や繊維、人工皮革などの開発を手がけている |
BtoBの取引が中心である誘導品メーカーは、日常生活では普段目にすることが少ない形で私達の生活や産業を支えています。
③電子材料メーカー
電子材料メーカーは基礎原料や中間製品を上流工程から調達し、半導体やディスプレイなどを製造する化学メーカーです。電子材料はスマートフォン、パソコン、テレビなど、今では私達の日常生活に欠かせない機器に使用されています。
企業名 | おもな事業内容 |
---|---|
富士フイルムホールディングス | 写真フィルム技術を応用し、医療・電子材料・化粧品など多分野へ事業を展開している |
レゾナックホールディングス | 自動車や環境、情報・電子といった分野で事業を展開している |
日東電工 | 電子部材や粘着テープ、ディスプレイ材料などの分野で高い技術力を誇る |
誘導品メーカーと同様、電子材料メーカーも主にBtoBビジネスを展開しています。製造した電子材料は半導体メーカーや電子機器メーカーに販売されるケースが多いため、一般的な消費者には企業名があまり知られていません。
しかし、電子材料メーカーが作った製品の品質や性能は、最終製品の機能や市場価値に直結します。高い技術力と厳密な品質管理が求められるため、専門性の高い企業が多いのが特徴です。
化学メーカーと聞くと、基礎化学品から中間素材、最終製品まで幅広く手掛ける化学メーカーしかないと思うかもしれませんが、事業領域に特化した専門性の高い化学メーカーもあることを認識して就職活動を進めていきましょう。
化学メーカーは安定している? 動向と将来性を解説
化学メーカーへの就職を考えているものの、「安定して働き続けられる業界なのか」「将来的に発展する見込みはあるのか」と不安に感じている人もいるのではないでしょうか。
ここからは、化学メーカーの現在の動向や将来性を解説します。業界全体の成長性や注目される分野を知ることで、化学メーカーが今後も安定して発展していく可能性があるかどうかを判断する際に役立ててください。
化学メーカーの動向
化学業界では、自動車の電動化やデジタル社会の進展、再生可能エネルギーの拡大にともない、高機能素材や電子材料の需要が増加しています。特に注目されているのが、電気自動車向けのバッテリー材料や半導体製造に欠かせない高純度化学品などです。
また二酸化炭素の実質的な排出量ゼロの脱炭素社会を目指し、CO₂削減技術やバイオマス原料を活用した製品開発も進められています。
一方で原材料価格やエネルギーコストの高騰に対応するため、生産効率の向上やデジタル技術を活用したプロセス改革も進行中です。AI(人工知能)による研究開発やIoTを活用した設備管理が実用化され、コスト削減や品質向上が図られています。
IoT(Internet of Things)とは
さまざまなモノをインターネットに接続する技術
- 上記のような化学メーカーの動向を考えると、化学の専門知識だけでなくIT系のスキルも求められるようになるのでしょうか?
化学メーカーで働くなら化学×ITの知識が求められる
化学メーカーで働く場合、化学の専門知識だけでなく、基本的にはITスキルも必須といえます。
もちろんプログラミングなどの高度なスキルまでは求められませんが、基本的なIT分野の知識がないと業界で生き残っていくのは難しいでしょう。
また、上記の動向は化学メーカーを問わず、どの業界でも議論されている問題です。IT関連スキルを高めていくことは、今後のキャリアアップの観点で必要不可欠といえます。
化学メーカーの将来性
環境問題や技術革新と密接にかかわる化学メーカーは、今後も発展が見込まれる将来性のある業界です。たとえばカーボンニュートラルの実現に向けて、再生可能エネルギーやバイオマス原料を活用した製品の需要が増加しています。
カーボンニュートラルとは
温室効果ガスの排出量と吸収量を差し引いてゼロにすること
また廃プラスチックのリサイクル技術やCO₂を有効活用する技術の開発も進められていて、持続可能な社会を支える重要な役割をはたしています。さらに、自動車の電動化やIoT、AIの普及による半導体や電子材料の需要拡大もプラスの要素です。
一方で化学業界は原材料価格の高騰やエネルギーコストの増加など、外部環境の影響を受けやすいという課題も抱えています。そのため効率的な生産体制を構築したり、最新技術を活用してコストを削減したりする取り組みが必要だといえます。
- これから新卒で化学メーカーに就職しても、定年まで安定的に働けるのでしょうか?
重要な社会課題に取り組む化学メーカーの将来は明るい
未来が不透明で今後の予測が難しくなる状況のことを、VUCA(ブーカ)といいます。
これからはVUCAの時代でもあるので、会社にぶら下がったような働き方ではなく、社会の状況に応じて柔軟にキャリアを積み重ねていけるような、主体的な働き方を意識することが大切です。
こうした意識を心掛けることで、定年まで安定的に働ける可能性が高く、社内でも重宝される人材として活躍できるでしょう。
また化学メーカーは地球温暖化など、スピード感を持って喫緊に取り組む必要のある社会課題に密接に関係しているため、将来性は良好と感じます。
あなたが受けない方がいい職業を確認しよう!
就活では自分のやりたいことはもちろん、そのなかで適性ある仕事を選ぶ事が大事です。適性が低い仕事に就職すると、イメージとのギャップから早期退職に繋がってしまうリスクが高く、適職の理解が重要です。
そこで活用したいのが「適職診断」です。質問に答えるだけで、あなたの強みや性格を分析し、適性が高い職業・低い職業を診断できます。
まずは強みを理解し、自分がどの職業で活躍できるか診断してみましょう。
・楽しく働ける仕事がわからない人
・時間をかけずに自己分析をしたい人
キャリアのプロに聞く! 化学メーカーで働く魅力とは
化学メーカーに興味を持っている人のなかには、「どんな魅力があるのか」「就職先に選んで後悔しないのか」と気になっている人もいるでしょう。また、化学メーカーならではのやりがいも気になるポイントです。
化学メーカーに詳しいキャリアコンサルタントに、化学業界で働く魅力や、やりがいを伺ってみましょう。
アドバイザーコメント
古田 文子
プロフィールを見る社会の役に立っている実感を得やすい点が大きな魅力
世界中でさまざまな団体や施設が研究・開発に取り組んでいますが、化学メーカーでもその一つとして新しい素材や技術の開発に携わることができます。
技術革新を最前線で感じることができ、自分の仕事が社会や産業に大きな影響を与える可能性を感じながら働けることは、とても魅力的だと思います。
また、化学メーカーはグローバルに展開していることが多く、国際的な仕事に携わる機会があるでしょう。異なる文化や市場での経験を積むことができるため、視野が広がりやすいことも挙げられます。
将来のキャリアも幅広く大きなやりがいを得やすい
研究・開発や生産管理、品質管理、マーケティング、営業など、職種も幅広く多様なキャリアパスが展開できるのも、化学メーカーの魅力です。自分の興味やスキルに応じて、異なる分野でキャリアを積むこともできます。
さらに、社会問題に配慮した製品の開発や、医療分野での貢献など、社会に対する貢献度を実感できる仕事でもあります。
こうした面から、自分の強みや興味を活かす機会が多いだけでなく、充実感を得やすい点は、化学メーカーで働く醍醐味といえるのではないでしょうか。
まずは大手企業を押さえよう! 国内化学メーカーの売上高ランキング
企業名 | 売上高(2025年3月時点情報より) |
---|---|
三菱ケミカルグループ | 4兆3,872億円 |
富士フイルムホールディングス | 2兆9,609億円 |
旭化成 | 2兆7,849億円 |
住友化学 | 2兆4,469億円 |
信越化学工業 | 2兆4,149億円 |
三井化学 | 1兆7,497億円 |
日本ペイントホールディングス | 1兆6,284億円 |
花王 | 1兆6,387億円 |
レゾナックホールディングス | 1兆3,893億円 |
積水化学工業 | 1兆2,565億円 |
化学メーカーへの就職を考える際、大手企業の特徴や実績を把握しておくことは重要です。大手企業は安定した経営基盤を持ち、多様な事業分野に展開しているため、働く環境やキャリアの選択肢も幅広い傾向にあります。
そこでまずは、国内の化学メーカーでも売上高の大きい企業を確認してみましょう。それぞれの企業の強みやおもな事業内容も解説しているので、自分のキャリアに最適な企業を見つけてください。
①三菱ケミカルグループ
三菱ケミカルグループは三菱化学、三菱樹脂、三菱レイヨンの3社が統合して発足した国内最大級の総合化学メーカーです。石油化学、炭素材料、高機能素材、エネルギー関連などのさまざまな分野で製品を提供し、人々の生活や産業を支えています。
たとえば石油化学分野で製造しているのは、ポリオレフィンやMMA(メタクリル酸メチル)などの基礎化学品です。またフィルムや半導体などの製品を開発し、AIやロボット、IoTなどの技術を活用した社会変革のサポートもおこなっています。
三菱ケミカルグループの新卒採用では、プラントエンジニアリングやプロジェクトマネジメント、設備管理・メンテナンスに携わる技術系、営業や調達、総務・人事に携わる事務系を募集しています。
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受けない方がいい職業を診断しよう
就活で大切なのは、自分の職務適性を知ることです。「適職診断」では、あなたの性格や価値観を踏まえて、適性が高い職業・低い職業を診断します。
就職後のミスマッチを避けたい人は、適職診断で自分に合う職種・合わない職業を見つけましょう。
- 自分に合う職業がわからない人
- 入社後のミスマッチを避けたい人
- 自分の強みを活かせる職業を知りたい人
②富士フイルムホールディングス
富士フイルムホールディングスは「地球上の笑顔の回数を増やしていく。」を目的に掲げ、国内外で幅広い事業を展開する電子材料メーカーです。
写真フィルムの製造で発展を遂げた企業でありながら、現在では医療やヘルスケア、バイオテクノロジー、先端材料などにも事業を拡大しています。
たとえば医療・ヘルスケア分野では、画像診断装置や医薬品、再生医療技術を提供し、健康寿命の延伸や医療課題の解決に貢献しています。また写真フィルム技術を応用した化粧品やサプリメントも開発していて、多角的な事業展開が特徴的です。
富士フイルムホールディングスの技術職では、化学や生物、薬学、機械、電気・電子など幅広い専攻分野で人材を募集していて、入社後は専門性を高められます。
一方で事務系として採用されれば、営業やマーケティング、商品企画、コーポレートスタッフなど、希望に合わせて多様なキャリアパスを描けます。
- 活躍できる専攻分野が幅広い場合、化学以外の知識も網羅的に学んでおく必要がありますか?
複数分野のスペシャリストはきわめて貴重な存在
化学以外の知識やスキルも網羅的に学んでおくことで、より市場価値の高い人材になることが可能です。
たとえば、ある知識やスキルを100人中1位のレベルまで高めたとします。その知識が3領域あれば100×100×100で100万分の1の人材になることが可能です。
1つの知識のスペシャリストは比較的多いですが、3分野が掛け合わさることで希少価値や市場価値が格段に高まり、昇進や転職の場面でも有利に役立ちます。
化学の知識はもちろん、営業やマネジメント、IT、語学力、マーケティング、コミュニケーション、資料作成など、細分化すればどこかに強みを発揮できるスキルがあるはずです。ぜひそれを見つけ、学び伸ばしていきましょう。
③旭化成
旭化成は「想いを、貫く。」をコンセプトに、マテリアルと住宅、ヘルスケアの3つの領域で事業を展開する総合化学メーカーです。多角的な事業展開を通じて、人々の快適な暮らしと持続可能な社会の実現に貢献しています。
たとえば住宅領域では、「ヘーベルハウス」などの住宅事業を展開し、安全で快適な住環境を提供しています。またヘルスケア領域で開発しているのは、治療薬や診断薬といった医薬品、ウイルス除去フィルターや輸血用血液フィルターといった医療機器などです。
技術系には研究・開発や生産技術開発、プラントエンジニアリング、知的財産などの活躍フィールドが用意されています。また事務系の場合、企画営業やコーポレートスタッフなどの職種で活躍可能です。
④住友化学
住友化学は、持続可能な社会の実現に向けた環境保護や社会貢献に貢献している総合化学メーカーです。環境・食糧・ヘルスケア・ICTの4分野に重点を置いて、事業を展開しています。
ICT分野には、ディスプレイの性能向上に寄与する偏光フィルム、モバイル製品に必要なタッチセンサーパネルなどの製品があります。また農業分野では、作物の生産性を向上させる農薬や肥料などを提供し、世界中の食糧問題の解決に努めているのです。
住友化学の新卒採用ホームページ(HP)では、2022〜2024年に実施された社員の座談会の様子が公開されています。入社前後のギャップや仕事内容、今後の展望などが語られているため、住友化学に興味がある人はぜひチェックしてください。
⑤信越化学工業
信越化学工業は、塩化ビニル樹脂や合成石英(液晶用フォトマスク基版)などで世界トップシェアを誇る誘導品メーカーです。
世界トップシェアを誇る技術力を武器に、おもに生活環境基盤材料や電子材料、機能材料、加工・商事・技術サービス事業の4事業をおこなっています。
主力製品である塩化ビニル樹脂は耐久性に優れていて、建築用のパイプや窓枠、バッグなどの幅広い用途に活用されています。リサイクルもしやすいため、私達の生活基盤を支えながら持続可能な社会の実現に向けた取り組みにも貢献しているのです。
また信越化学工業は、現場で活躍する社員の姿勢や考え方に触れられる1Day仕事体験を実施しています。技術系と事務系それぞれ開催されているため、興味がある人は希望職種に合わせて参加してみてください。
大手企業から中小企業まで、化学メーカーで仕事体験を実施している企業は多くあります。
仕事体験を通じて、実務的なスキルの習得や就活での自己PR、業界内でのネットワーク構築につなげられるなどメリットも多いため、参加することには非常に大きな価値があります。
⑥三井化学
三井化学は、基礎化学品から高機能材料まで幅広く事業を展開する総合化学メーカーです。自動車や建築、化学品、家電、ヘルスケアなど、多岐にわたる分野で製品を提供しています。
たとえば自動車分野で取り扱っているのは、外装や内装に使用される塗料や接着剤などです。またヘルスケア分野では、オーラルケアやビジョンケア材料、医薬品や化粧品の原料などを開発し、人々の健康や美容を支えています。
三井化学の新卒採用ホームページ(HP)では、20以上のQ&Aがコンテンツとして掲載されています。採用関連の質問だけではなく、残業時間や海外勤務といった入社後の疑問にも回答しているため、興味を持っているなら企業理解を深める目的でぜひ確認してみてください。
⑦日本ペイントホールディングス
日本ペイントホールディングスは、塗料の分野で国内外において高いシェアを誇る化学メーカーです。建築用や自動車用、家庭用、船舶用など、塗料に特化した事業を展開しています。
たとえば建築用塗料は住宅や商業施設の外壁や内装向けに開発されていて、防水性や耐久性に優れています。また自動車用塗料では軽量化やデザイン性の向上を実現し、自動車に付加価値を提供しているのです。
ただし、日本ペイントホールディングスは2024年は新卒採用をおこなっていませんでした。2025年は実施される予定ですが50人規模と予想されていて、入社するためには狭き門を突破する必要があります。
⑧花王
花王は、「人をよく理解し期待の先いく企業に」をビジョンに掲げる化学メーカーです。消費者向けの日用品を多く取り扱っているため、ほかの化学メーカー以上に身近に感じる人も多いでしょう。
日用品分野では洗濯用洗剤のアタックや台所用洗剤のキュキュット、消臭スプレーのリセッシュなど、多くの家庭で愛用される製品を提供しています。
またBtoCの製品だけではなく、プラスチックや金属、半導体といったBtoB製品も取り扱っているのが大きな特徴です。
BtoC(Business to Consumer)とは
企業が一般消費者向けに商品やサービスを提供するビジネスモデル
花王の新卒採用では、技術職と事務職に加えてクリエイティブ職も募集しています。そのためグラフィックデザイナーやパッケージデザイナーとして、業務に携わることも可能です。
- 新卒未経験でも化学メーカーのクリエイティブ職を目指せますか?
必要知識の習得は前提だが新卒未経験でも十分目指せる
新卒未経験でも、パッケージデザイナーやグラフィックデザイナー・広報などのクリエイティブ職に就くことは可能です。ただし、希望している職種によって求められている知識や経験は異なります。
たとえば、パッケージデザイナーであればグラフィックデザインの基礎知識は習得していることが前提になります。
業界問わずさまざまな商材のパッケージを見るようにして、どのようにパッケージのデザインをすると顧客に商品の良さが届くかという視点で商品の見せ方を勉強・観察しておきましょう。
BtoCの意味やBtoBとの違いはこちらの記事で解説しているので、正しく理解できているかチェックしてみてください。
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BtoCとは? BtoBとの違いや向いている人を徹底解説
この記事ではBtoCについて解説しています。BtoCの特徴やメリット・デメリット、BtoCがおすすめな人の特徴を紹介。キャリアコンサルタントからのアドバイスも記載しているため、ぜひ参考にしてください。
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⑨レゾナックホールディングス
レゾナックホールディングスは、2023年に昭和電工と昭和電工マテリアルズが統合して誕生した化学メーカーです。素材の昭和電工、材料の日立化成がそれぞれの強みを掛け合わせ、自動車や環境、情報・電子といった分野で事業を展開しています。
たとえば自動車用分野で製造しているのは、アルミ合金やバンパーなどです。また電子分野では、LEDチップやハードディスクメディアなどを取り扱っています。
なお2025年1月時点では、事務系の新卒採用は実施していません。研究開発や生産技術、知的財産、情報管理などに携わる技術系のみ、理系学生限定で募集をおこなっています。
⑩積水化学工業
積水化学工業は「Innovation for the Earth」を長期ビジョンに掲げ、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでいる化学メーカーです。社会インフラや住宅、ヘルスケア、インダストリアルなどの分野で、環境に配慮した事業を展開しています。
たとえば住宅分野では、大容量ソーラーや蓄電システムを搭載したスマートハイムを提供しています。またインダストリアル分野では、再生プラスチック製コンテナやリサイクル素材製の包装用テープなどを開発し、環境に配慮した製造をおこなっているのです。
2024年度夏季インターンシップでは、住宅や環境・ライフライン、高機能プラスチックスの3分野に分けて座談会や実務体験を実施しました。このように、自身の興味に合わせてインターンを選択できるように工夫されているのが特徴です。
- どの化学メーカーも魅力的に思えますが、自分に合った企業を見つけるにはどうしたら良いのでしょうか?
自己分析と企業研究が自分に合った化学メーカーを見つける鍵
有名な企業のなかでも特に自分に合った企業を見つけるには、まずは自己分析をしっかりおこない、自分の興味や強み、仕事に求める価値観、持っているスキルや知識をどう活かしたいかを言語化してまとめましょう。
企業研究は情報収集から始まります。事業内容や企業の方向性、価値観、企業文化、提供している商品やサービスの種類、業績、また企業単体だけでなく業界全体の将来性といった情報の収集も重要です。
このように収集した情報をもとに、自己分析の結果と照合してみましょう。企業文化を理解できるかどうか、ビジョンやミッションに共感できるか、自分が望む働き方が実現できそうかどうかなどをじっくりと考えてみてください。
加えて、スケジュールが合う限り、気になる企業のインターンや1Day体験に参加し、マッチ度を肌で感じ取ってみましょう。
穴場の企業もある! ホワイトや高年収の化学メーカー
穴場の企業もある! ホワイトや高年収の化学メーカー
- 健康経営優良法人認定のホワイト企業
- 高年収の企業
- 経済産業省認定のグローバルニッチトップ企業
- 地方を支える企業
ここまで売上高ランキングに沿って化学メーカーを解説しましたが、大手企業だけを見ていると選択肢はあまり多くありません。そこでホワイト企業や高年収の企業にも目を向けることで、エントリー候補を増やせます。
これらの企業は働きやすい環境を整えているだけでなく、専門分野で独自の強みを持ち、安定した収益を上げているケースも多いです。
ここからは健康経営優良法人に認定されたホワイト企業や、高年収が期待できる企業をはじめ、グローバルニッチトップ企業や地方を支える企業など、化学業界の穴場ともいえる企業を解説します。
健康経営優良法人認定のホワイト企業
企業名 | おもな事業内容 |
---|---|
大王製紙 | ティッシュや紙おむつなどの紙製品を製造している |
ライオン | 生活用品やオーラルケア製品、医薬品などを開発し、消費者向けに販売している |
石油資源開発 | 国内外で石油・天然ガスの開発・生産を手がけ、エネルギー供給を支えている |
artience | プラスチック製容器包装をリサイクルしやすくする技術を持っている |
ポリプラスチックス | 自動車や家電などに使用されるエンジニアリングプラスチックを製造している |
化学メーカーには従業員の健康を重視し、働きやすい職場環境づくりに取り組んでいる企業も多いです。従業員の健康管理やワークライフバランスの向上に特化した施策を実施しているホワイト企業を判別するのに役立つのが、健康経営優良法人認定制度です。
健康経営優良法人認定制度とは
経営的な視点から従業員の健康を考える健康経営に取り組んでいる企業を見える化する制度
たとえば大王製紙はワークライフバランスの推進に向けて、フレックスタイムやテレワーク、短時間勤務といった柔軟な勤務制度を導入しています。
生活習慣の改善サポートも実施していて、社員はスポーツクラブを格安で利用したり、独身寮でサラダを無償で食べたりすることも可能です。
またライオンでは、予防歯科検診やブラッシング指導による予防歯科プログラム、がん検診の費用補助などを実施し、従業員の健康をサポートしています。
健康経営優良法人認定を受けている企業以外のホワイトな化学メーカーを見つけるには、OB・OG訪問をしましょう。
そもそもホワイトの定義が人によってあいまいであるため、あなたにとってのホワイト企業とは何か、定義を明確にすることが必要です。
それをもとにOB・OG訪問をして現場の声を聞くことによって、自分にとってのホワイト企業をより見つけやすくなるでしょう。
ホワイト企業についてはこちらの記事で解説しているので、そもそもどんな企業がホワイトかイメージできていない人は読んでみてください。
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高年収の企業
売上高ランキングの上位企業以外にも、高年収を期待できる化学メーカーは多いです。グローバル市場で高い競争力を誇り、収益性の高い事業を展開しているため、従業員の給与水準も業界全体で見ると比較的高い傾向にあります。
就職四季報 総合版2025-2026によると、「素材の会社」というCMが印象的なAGCの平均年収は1,107万円です。ガラスやセラミックスなどを取り扱うAGCは、規模の大きな企業が多い化学業界で、最も高い年収水準を実現しています。
また化学品や機能性材料、医薬品分野において高い競争力を持つ三菱ガス化学の平均年収は990万円です。そして農薬や医薬品の原料、液晶ディスプレイ材料などを中心に事業を展開する日産化学の平均年収は982万円です。
こうした専門性の高い事業分野は競合が少なく、安定して利益を得られるため、年収が高くなりやすいといえます。
- 高年収は魅力的ですが、その代わりに仕事がきついように思います。やはり年収と大変さは比例するのでしょうか?
社会からのニーズや求められる専門性が年収を左右する
年収の高さと仕事の大変さは、必ずしも比例するとは限りません。
化学メーカーが開発・生産する商材が社会に強く必要とされていたり、職種によっては希少な専門性を保有している人しか就けなかったりすると、年収が高くなる要因となります。
携わるプロジェクトによっては業務の負荷が重いこともありますが、「高年収=仕事が大変」というわけではないということを理解しておきましょう。
給料が高い仕事はこちらの記事で紹介しているので、高年収に共通する特徴を見つけてみてください。
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経済産業省認定のグローバルニッチトップ企業
企業名 | おもな事業内容 |
---|---|
⽩⽯⼯業 | 高い市場シェアを誇るシーリング材・接着剤向けの炭酸カルシウムを製造している |
⽇華化学 | 人工皮革の柔らかさや耐久性を高める人工スウェード用の水系ポリウレタンエマルジョンを製造している |
フルヤ⾦属 | 貴金属を用いた電子材料・触媒を提供している |
ナミックス | 半導体や電子部品向けの導電性接着剤や封止材を開発している |
知名度は高くないものの、特定の分野で世界的なシェアを持つ化学メーカーも存在します。特に経済産業省が認定するグローバルニッチトップ企業は、独自の技術や製品で高い競争力を誇る企業です。
グローバルニッチトップ企業とは
大手企業が手がけない専門性の高い製品や技術に特化し、世界的に競争力のある企業
経済産業省が公開する2020年版グローバルニッチトップ企業100選から、特定の分野で圧倒的な強みを発揮する企業を見つけられます。
たとえば白石工業は、シーリング材や接着剤業界向けの炭酸カルシウムを提供しています。東南アジアや北米、ヨーロッパなどにも拠点を置き、海外拠点数は10以上です。
また日華化学は、人工皮革の柔らかさや耐久性を高める人工スウェード用の水系ポリウレタンエマルジョンを製造する化学メーカーです。アジアを中心とした9つの国と地域に、14拠点の子会社を有し、国内だけではなく海外でもニッチな分野でシェアを拡大しています。
これらの企業は大手化学メーカーほどの規模ではないものの、特定のニッチ市場で強みを発揮し、安定した経営基盤を築いているのが魅力です。
- グローバルニッチトップ企業の魅力があまりピンときません……。
ニッチ分野でのニーズが高いからこそのメリット多数!
グローバルニッチトップ企業の特徴は、小規模だからこそのチームワーク力や専門性・革新性の高さなどが挙げられます。
規模が小さいゆえの小回りの良さがあり、特定の市場での成長が見込まれることが多いため、将来的な安定性にも期待できます。
また、特定の分野でのスキルを高めることができ、専門性を活かせることでキャリアパスを明確にしやすくなるのも魅力です。
加えて、規模が小さいために透明性も高く、従業員が企業の動きをより理解しやすいといった点も挙げられ、この点をホワイトな印象ととらえる人もいます。
これらのことから、就職先の選択肢としてグローバルニッチトップ企業を候補に入れておくことは、多くのメリットがあるといえます。
地方を支える企業
企業名 | おもな事業内容 |
---|---|
登米精巧(宮城県) | スマホや自動車向けの半導体製造装置や精密部品を設計・製造している |
阪和電子工業(和歌山県) | 半導体の品質管理に不可欠な測定・解析装置を開発し、国内市場で高いシェアを誇る |
三田尻化学工業(山口県) | 各種化学製品の原料開発を手がけ、産業向けの基礎素材を提供している |
化学業界には、大都市圏に本社を置く大手企業だけでなく、地方に根付いた企業も多く存在します。これらの地方企業は特定分野における高い技術力を活かし、地域経済や雇用を支えています。
登米精巧は、スマホの半導体製造装置などを取り扱うメーカーです。宮城県内に2つの工場を構え、地元の雇用を創出しています。
阪和電子工業は、半導体の品質管理に欠かせない静電気破壊自動測定器で国内シェア70%以上を誇る企業です。和歌山県を拠点に半導体評価装置やエレクトロニクス機器を製造し、地域に根差した企業として地元経済の発展に寄与しています。
三田尻化学工業は山口県に拠点を置き、化学製品のベースとなる原料の製造や研究開発をおこなう企業です。
このような地方企業を選択肢に加えることで就職活動の幅を広げられるため、化学メーカーに入社したいなら大手の化学メーカーだけではなく、地域に根差した企業にも目を向けるのがおすすめです。
- 地域に根差した企業の採用は、地元出身者が優遇されるのでしょうか?
企業側の判断軸はあくまでも「一緒に働きたい人かどうか」
結論から言うと、地元出身者が優遇されること自体はゼロではありませんが、それはあくまで結果論であることがほとんどです。
内定者の実際として、地元出身であるという人が多い場合もありますが、地元出身で落とされている人もそれ以上に存在します。
また同時に、地元出身でなくても内定している人はいます。よく企業の人事とも話しますが、地元出身かどうかはあくまで一つの要素でしかなく、それだけで決まるわけではないとのことです。
最終的に企業が求める人材は「一緒に働きたい人」です。それに該当する能力や価値観を持った人材が、結果として地元出身者であったりそうでなかったりするだけなので、そこに因果関係があるとは限りません。
上記を踏まえると、地元出身であることを猛烈にアピールしても良い評価にはつながるとは限らず、また地元出身でないからといって選考を諦めてしまうのももったいないことです。
しっかりと選考対策をすることによって、地方を支える化学メーカーであっても内定に近付くことは可能といえます。
活躍できる幅は広い! 化学の周辺分野にかかわる業界とメーカー
化学の周辺分野にかかわる業界とメーカー
化学の技術や製品は、私達の生活や社会に欠かせないさまざまな分野で利用されています。そのため周辺分野での働き方を視野に入れることで、キャリアの選択肢を広げられるのです。
ここからは化学の周辺分野にかかわる業界と、それに関連するメーカーを解説します。周辺分野にどんな企業があるのかを把握し、視野を広げて興味を持てる選択肢を探してみてください。
食品業界
食品業界では、化学技術が食品の安全性や品質向上を支える役割を担っています。食品添加物や保存料、包装材、酸化防止剤など、食品の製造・保存に活用される素材や技術は、化学の知識が求められる分野であり、化学専攻で培った専門性を活かすことが可能です。
たとえば飲料を取り扱うサントリーは、ペットボトルの軽量化技術の開発や、飲料の酸化を防ぐ成分の研究、健康機能性食品の成分分析などで化学の知識を活かしています。特に、ビールや清涼飲料の味の安定化や発酵技術の向上には、化学・生物学の知識が不可欠です。
また旭東化学産業は、食品添加物の分野で高い技術力を誇り、冷凍食品やお菓子、パン、デザートなどの幅広い食品の安全性を支えています。
このように、食品の風味や保存性を高める成分の開発、製造工程の最適化、包装材の改良など、消費者が安心して食品を楽しめる環境を支えているのです。
そのため化学を専門的に学んでいれば、食品メーカーだけでなく、食品添加物やパッケージ素材を扱う企業でも活躍するチャンスがあります。
食品メーカーの基本情報や志望動機の作成方法はこちらの記事で解説しているので、興味のある人はチェックして業界への理解を深めてください。
飲料メーカー
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食品業界の志望動機
例文9選|食品業界の志望動機でやりがちなNG例と高評価のコツ
医薬・バイオ業界
医薬・バイオ業界では、化学技術が新薬や衣料品の開発・研究などに活用されています。化学分野で培った知識やスキルがあれば、病気の治療や予防、再生医療の発展にも貢献可能です。
たとえば武田薬品工業は、デング熱やパンデミックインフルエンザのワクチンを開発したり、消化器系疾患や神経疾患に焦点をあてたバイオ医薬品を研究したりしています。
バイオ医薬品とは
遺伝子組換え技術や細胞培養技術などを活用して製造するタンパク質が主成分の医薬品
またグンゼは、手術後の抜歯が不要な吸収性縫合糸や、静脈血、リンパ液のうっ滞を軽減・予防するストッキングなどの医療機器を製造する企業です。
このように、新薬の研究から医療機器の開発、製造工程の改善まで、医薬・バイオ業界では化学を学んできた人の活躍の場が広がっています。
薬剤の成分設計や合成、生体材料の研究、品質管理など、化学の専門知識が求められる業務が多いため、化学系の学生も就職できるケースがあります。
化学専攻の学生が就職することは現実的に可能ですが、医薬品会社での研究職になると薬学部出身が有利になるので、化学専攻の学生なら修士以上でないと厳しいのが現実です。
医薬系の企業でも営業職であれば、化学専攻でも問題はないでしょう。
医療業界の志望動機の作成方法はこちらの記事で説明しているので、気になる人はぜひチェックしてみてください。
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エネルギー業界
エネルギー業界では、化学技術が発電や蓄電、燃料の効率化などに活用されています。特にガスや石油業界では、燃料の精製やエネルギーの貯蔵、カーボンニュートラルに向けた技術革新において、化学の専門性が求められているのです。
たとえば東京ガスでは、都市ガスの製造や供給において、化学的なプロセスを用いた精製・改質技術を活用しています。そして天然ガスをより効率的に利用するための触媒技術や、CO₂排出量を抑えるための燃焼制御技術の開発も進められています。
またENEOSは、石油精製や石油化学製品の開発をおこなう企業です。ガソリンや軽油、ジェット燃料などの分解・合成では、化学の知識やスキルが活用されています。
このように、エネルギー業界では燃料の製造や供給、脱炭素技術の開発など、化学の知識を活かして社会のエネルギーインフラを支える仕事が多いです。燃料の組成分析や環境負荷の低減、触媒の開発など、化学専攻の学生が貢献できる分野も広がっています。
- 資源関連の事業は海外に多いイメージです。エネルギー業界の企業に就職すると、海外駐在の可能性が高いのでしょうか?
エネルギー業界は企業規模問わず海外駐在の可能性がある
部署や職種にもよりますが、エネルギー業界に就職すると海外駐在の可能性があります。
大手企業は海外のエネルギー市場にも参入していて、ビジネス展開や技術導入、多くのプロジェクトを国際的におこなうため、現地での管理や支援が欠かせません。
大手でなくとも新規事業を海外で展開している企業はあるため、エネルギー業界全体で海外駐在の可能性は高いといえるでしょう。
また人材育成の一環として、グローバルに活躍できる社員を育てるため、海外で経験を積む機会を積極的に提供している企業もあります。
企業説明会や面接などで海外駐在の有無を確認し、自分が目指すキャリアとマッチするかどうか納得したうえで就職を目指すかどうか選択しましょう。
エネルギー業界の基本情報や志望動機の作成方法はこちらの記事で解説しているので、少しでも興味を持った人はぜひ読んでみてください。
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環境・リサイクル業界
環境・リサイクル業界では、化学技術が資源の有効活用や環境負荷の低減に貢献しています。プラスチックのリサイクル技術、廃棄物処理、環境対応素材の開発など、持続可能な社会の実現に向けた取り組みが進められています。
たとえばDOWAホールディングスは、資源循環を軸とした環境事業を展開している企業です。金属リサイクルや産業廃棄物処理、土壌浄化など、環境負荷を低減する幅広い事業を手掛けています。
またフジクリーン工業は、生活排水や工業排水の処理システムの開発・提供など、水処理技術に強みを持つ企業です。微生物を利用した浄化技術に加え、化学的処理の知識も活用し、環境保全と水資源の有効活用に貢献しています。
このように環境・リサイクル業界では、化学の知識やスキルを活かして、資源循環や環境保全に直接携われます。化学専攻の学生にとっても、新たなキャリアの選択肢となる業界です。
自動車業界
燃費向上や電動化、軽量化といった技術革新が進められている自動車業界では、化学の知識が活かせる場面が多いです。
エンジン部品の耐熱性向上や、車体の軽量化に向けた高機能材料の開発、電気自動車(EV)用バッテリーの性能向上など、化学技術は自動車の進化を支えています。
たとえばトヨタ自動車は、化学反応による発電で走る燃料電池自動車(FCV)を開発しています。水素と酸素の化学反応を活用して電気を生み出しているため、化学の知識が欠かせません。
またアイシンは、低温でも優れた始動性を発揮するガソリン車用エンジンオイルを開発しています。オイルの開発・精製をする際は、成分の特性を引き出すために化学の知識が必要です。
このように、自動車メーカーや部品メーカーでは、化学の知識を活かせる領域が多く存在します。特に環境負荷を低減しながら自動車の性能を向上させる技術開発において、化学学生の活躍の場が広がっています。
- 事業領域が多岐にわたる企業の場合、配属希望の分野は伝えられるのでしょうか?
希望の仕事に対する思いを可能な限り伝えてみよう
事業領域が多岐にわたる企業の場合、配属希望の分野を伝えること自体は可能ですが、希望の部署に配属されるかはその企業の採用基準や状況により変わってきます。
実際に志望動機のなかで自分がやりたいことや思いを伝える学生もいます。
企業側から「入社して具体的に何をしたいか」「どの事業部を希望するか」などが聞かれるケースは非常に多いです。
しかし、現実的にはそのときの採用状況や市場の状況によってニーズが日々変わるため、配属希望の実現度はまちまちです。
不安な人はOB・OG訪問を重ねたり、口コミサイトを利用したりして実態を調べることをおすすめします。
自動車業界の概要や志望動機の作成方法はこちらの記事で解説しているので、興味が湧いた人はぜひチェックしてみてください。
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自動車業界の志望動機は、自動車業界でしか成し遂げられないことを明確に伝えることが重要です。この記事ではキャリアコンサルタントと一緒に、自動車業界で評価される志望動機の作り方を解説します。職種別の例文8選も参考にしてくださいね。
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化学メーカーでの仕事を理解しよう! 6種類の職種を解説
化学メーカーにはさまざまな職種があり、それぞれ役割や求められるスキルが異なります。向き不向きを確かめることにもつながるため、それぞれの仕事内容を把握しておきましょう。
ここからは、化学メーカーの6種類の職種を詳しく解説します。化学メーカーにある職種ごとの仕事内容や役割を理解し、自分に合った職種を見つけるのに役立ててください。
①研究開発職
研究開発職は、基礎研究・応用研究をおこなって新しい製品や技術の開発を担う職種です。化学メーカーでは、化学材料の分析や新素材の開発、製品の改良などがおもな業務です。
たとえば、耐久性や環境負荷の低減を目的とした新しいプラスチック素材の開発、リチウムイオン電池の性能向上を目的とした材料研究などをおこないます。研究開発は成果が出るまでに数年単位かかることもあるため、長期的な視点で研究を進める力が必要です。
また、研究開発職は化学や生物、電気・電子に関連する専門的な知識が求められる場合があります。高度なスキルが求められる分、4年制の大学を卒業した学士よりも、大学院を卒業した修士の方が就活を有利に進めやすい傾向にあります。
研究開発職を募集している企業のなかには、修士卒しか採用しない企業もあります。学士では業務に必要な経験や知識が足りないと判断されるためです。
学部卒でも化学メーカーの研究開発職に就けないわけではありませんが、多くても3割程度とされています。
研究職の仕事内容や志望動機の作成方法はこちらの記事で解説しているので、志望度の高い人はチェックして業種への理解を深めてください。
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研究職を志望する場合は、仕事内容や適性の理解が必須です。また研究職のメリットデメリットも押さえておきましょう。この記事では研究職に向いている人の特徴や研究職に就くコツをキャリアコンサルタントが解説します。志望動機例文も紹介するので参考にしてください。
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②製造・生産技術開発職
高品質を保ちながら無駄なく製品を生産するための技術を開発・導入する職種です。制御回路の設計やプログラムの開発などをおこない、安定的に大量生産ができる設備を構築します。
新しい設備の導入は生産の効率化やコスト削減につながるため、企業の競争力強化に貢献しているのです。また、コストを抑えつつ効率的に生産を進めるためのシステム構築もおこなっています。
企業の利益にも直結する生産システムに携わるためには、技術的な視点だけでなく、経営的な視点も大切です。そのため、化学工学や機械工学といった技術面に加え、経営工学のような経営に関連する知識やスキルも求められることがあります。
- 工学に関する知識があまりありません。入社後に学ぶというスタンスでは、内定獲得は難しいでしょうか?
知識面以外の企業に対する思いや成長意欲を伝えよう
すでに授業で社会のあらゆる物や仕組みを作るために必要な技術などを学んでいる工学部や理工学部出身の学生と比べると、知識面ではスタート地点で差が出ていて不利な状況であることは確かです。
ただ昨今、ポテンシャルで採用する企業も増えてきているので、「工学に関する知識が薄くてもこの会社に欲しい」と感じてもらえる要素をアピールできるかが鍵となるでしょう。
生産技術職の志望動機の作成方法はこちらの記事で解説しているので、興味のある人はチェックして選考対策を進めてください。
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③品質管理職
品質管理職は、使用する素材や部品、出荷する製品に問題がないかをチェックする職種です。原材料の受け入れから製品の出荷まで、各工程で厳格な品質管理をおこない、安全性と性能を守っています。
品質管理の現場では化学分析機器を用いた測定を実施し、仕入れた原材料や製造過程の中間品、最終製品が規格を満たしているかを確認しています。また機械にはトラブルが付きものであるため、分析機器やシステム設備の管理も品質管理職の仕事です。
もし品質に問題がある製品を出荷してしまうとテレビやSNSで広まり、企業の評判は一気に悪くなってしまいます。そのため品質管理職には、製品や設備を入念にチェックできる慎重な人が向いているといえます。
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④営業職
営業職は、自社の化学製品を企業に提案・販売する職種です。おもにメーカーや商社などの法人顧客を対象に、製品の特性を理解したうえで、課題やニーズに合った提案をおこないます。
また顧客企業は仕入れを安定させたいため、目先の利益を狙って取引先を変更するケースは少ないです。そのためすでに取引のある顧客を回るルート営業が大半で、飛び込みやテレアポのような営業をする機会はそれほど多くありません。
化学メーカーの営業職にも専門的な知識が求められますが、基本的には入社後の研修で学べます。そのため化学や生物、電気・電子などの分野を専攻していない文系の人でも、内定を得られるチャンスがあります。
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化学メーカーの営業に向いている人の特徴として一つ挙げられるのは、長期的に信頼関係を築く能力がある人です。
化学メーカーは他業界に比べてそこまで業界の動きが活発でなかったり、製品の実用化などにも時間がかかったりするため、取り引きが長期にわたることが多い傾向にあります。
そのため、長期的に粘り強く信頼関係を得たり継続したりできる能力を持っている学生が内定を得ている印象です。
⑤知的財産部
知的財産部は企業の技術や発明を特許・商標として保護し、知的財産権を管理する職種です。新しい化学素材や製品の開発が化学メーカーの競争力の源泉となるため、自社技術を保護する役割を担っています。
おもな業務は特許出願の手続き、既存の特許調査、他社とのライセンス交渉などです。研究開発部門や製造・生産技術開発職などの他部門と連携しながら、新しい技術が特許として登録できるかを確認し、競合他社に対する優位性の確保に動いています。
専門的な業務に携わる知的財産部は、転職者や弁理士資格保有者が配属される傾向にあります。ただし新卒でも知的財産業務に携われる企業もあるため、新卒採用HPの募集要項をチェックしてみましょう。
新卒から知財部に配属されるのは、レアなケースとなります。研究開発職と比べて人員も少ない構成で運営していることが多いです。
研究開発職を数年経験してから知財部に配属になるというキャリアパスが一般的です。
⑥調達・購買職
調達・購買職は、必要な素材の発注や納品対応を担当し、製造に必要な原料や設備を安定的に供給する職種です。新しい素材や製品が必要になった場合は、仕入れ先や納品業者の選定、品質・価格交渉もおこないます。
近年では海外原料の調達をおこなう企業も増えていて、英語を使った取引や契約業務の機会も多いです。また仕入れ対象が植物由来の原料のような天然物の場合は、季節要因を考慮した調達計画を立てる必要があります。
そのため英語力や交渉力、計画性といった幅広いスキルが求められます。物流や輸送に関する知識も必要であるため、新卒社員が配属されるケースはそれほど多くありません。
上記6つの職種のうち、研究開発や生産技術、品質管理は化学的知識や技術が求められるので理系に向いている傾向があります。
それ以外の職種はコミュニケーション能力や法律知識などが求められるので、文系に向いているといえるかもしれません。
ただし個々のスキルや興味にもよるので、一概にはいえません。
化学メーカー志望の理系学生は専門分野を意識! 選考対策3選
理系の選考対策3選
- 自身の研究に打ち込む
- 企業との共同研究に参加する
- 自分の研究内容を簡潔に説明できるようにする
理系学生が化学メーカーに入社すると、研究開発職や製造・生産技術開発職などに携わる可能性が高いです。これらの職種では専門的な知識や研究で得たスキルが求められるため、理系学生は専門性をアピールできるかどうかが大事になります。
ここからは、理系学生が化学メーカーの選考で押さえておくべき3つの対策を解説します。専門性を武器にして選考に臨めるように、効果的なアプローチができるように準備しましょう。
①自身の研究に打ち込む
化学メーカーにエントリーする理系学生には、専門性が求められる傾向にあります。学生時代に取り組んだ研究内容が選考の評価につながるため、まずは自身の研究に打ち込みましょう。
また研究で成果を出すために真剣に取り組むことで、企業に対するアピール材料となります。研究への姿勢や成果は面接でも質問される傾向にあるため、熱心に研究していれば高評価を得られる可能性が高まるのです。
面接やエントリーシート(ES)などの選考対策も重要ですが、それらの基盤となるのは研究です。選考で自信を持ってアピールできるように、まずは目の前の研究に全力を尽くして確かな成果を残しましょう。
②企業との共同研究に参加する
企業との共同研究では専門性だけでなく、現場で活躍する研究員から論理的思考力やコミュニケーション能力を学べます。企業の現場で求められる実践的なスキルを身に付けておくことで、選考時のアピール材料になります。
さらに、企業の研究活動を体験することで、実際の職場環境や研究のスピード感を理解できるのも大きなメリットです。これにより入社後のギャップが少なくなり、スムーズに現場に適応しやすくなります。
また優秀な研究成果を出した場合、共同研究をおこなった企業から特別選考の機会が与えられ、通常の選考よりも有利に進められるケースもあります。就活解禁前に特別に選考を受けられることもあるため、研究職を目指す理系学生には大きなチャンスです。
共同研究先の企業から内定をもらえる学生の特徴として、その企業のネガティブ面も踏まえて志望しているという点が挙げられます。
たとえば、長時間労働や年功序列、精神的負荷の高さなどさまざまなネガティブ面があったとしても、それらを志望動機に盛り込み伝えている学生は、退職リスクも少なくマッチ度も高いとみなされ内定している印象です。
コミュニケーション能力のアピール方法は以下の記事で解説しているので、確認して面接やESで強みを伝えられるようにしましょう。
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コミュニケーション能力の言い換え
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③自分の研究内容を簡潔に説明できるようにする
化学メーカーの選考に通過する確率を高めたいなら、自分の研究内容をわかりやすく説明できるようにしておく必要があります。
なぜなら、面接官は必ずしも専門知識を持っているわけではなく、複雑な研究内容を理解してもらうには要点を整理して簡潔に伝えることが大切だからです。
化学分野にあまり詳しくない人が聞いても理解できるように、なるべく専門用語を使わずに回答しましょう。さらに自分の研究が化学メーカーの事業や製品とどのように関連するのかを説明できると、企業に対する貢献度を強調できます。
また面接練習は専門分野に詳しい同じ学部の友人ではなく、他学部の友人や家族、キャリアセンターの人などとおこなうのがおすすめです。専門知識がない人にもわかりやすい説明を意識し、自身の研究内容を簡潔に伝えられるようにしておきましょう。
- 担当者が専門分野に詳しい場合、平易な言葉を使うと「あまり詳しくないのでは?」と思われそうで不安です……。
書類選考や面接のフェーズによって使い分けるのがコツ
履歴書などの応募書類は、人事部など専門分野に詳しくない人が見ることを考え、できるだけ専門用語を避けて記述しましょう。
大まかな研究テーマや目的、成果などを簡潔にまとめるのがポイントです。
一次面接では、面接官が基本的な専門知識を持っていることを前提とし、専門用語を少し交えて具体的な説明をします。
ただし詳細には踏み込まず、わかりやすい例などを用いる程度にしましょう。
二次面接では配属先の上司が面接官になる可能性があるため、詳細な技術的説明をおこないましょう。実験方法やデータ、成果について詳しく説明してください。
最終面接は高い知識レベルが求められる可能性があります。自分の研究内容を掘り下げ、社会的意義などにも触れて説明すると良いでしょう。
文系学生でも化学メーカーに入社できる! 選考を突破するコツ3選
文系学生が選考を突破するコツ3選
- なぜ化学メーカーなのかを明確にする
- TOEICで700点以上を目指す
- スカウトサイトに登録して化学メーカーとの接点を増やす
化学メーカーは理系学生が多いイメージを持たれがちですが、文系学生が活躍できる職種もあります。特に営業職のようなコミュニケーション能力が求められる職種は、文系でも活躍できる可能性が高いです。
ここからは、化学メーカー志望の文系学生におすすめの選考対策方法を解説します。できることから実践して、志望度の高い化学メーカーで内定獲得を目指しましょう。
①なぜ化学メーカーなのかを明確にする
文系総合職として入社すると、営業職や購買職のような他業界にも共通する職種に就く傾向があります。もし化学メーカーの志望理由が曖昧なら、「ほかの業界でも良いのでは?」と思われ、選考で不利になる可能性が高いです。
そのため、化学メーカーで内定獲得を目指すなら、以下のような方法でなぜ化学メーカーなのかを明確にしておく必要があります。
化学メーカーへの志望理由をより明確にする方法
- 企業のホームページ(HP)の事業内容を見て共感できる部分を探す
- 採用サイトに掲載されている文系総合職や事務職の社員のインタビューを見る
- 化学メーカーの製品がどのように社会で使われているかリサーチする
- 他業界と比較してどんな魅力があるのか整理する
- 化学メーカーが集まる合同説明会に参加する
たとえば「持ち前のコミュニケーション能力を活かして環境負荷の少ない素材の普及に努め、持続可能な社会の実現に向けて貢献したい」のように、さまざまな業界があるなかで化学メーカーを選んだ理由を明確にしましょう。
強みを活かした貢献方法を伝えることで、担当者はあなたが入社後に活躍する姿をイメージしやすくなります。そのため化学メーカーの志望理由を固める際は、自己分析と業界研究を並行しておこなうのがおすすめです。
深い業界理解と強みを掛け合わせた説得力のある志望理由を作成し、選考を突破できるようにしましょう。
- 化学メーカーはホワイトと聞きました。文系なのでほかに明確な志望理由が思い付かないのですが、選考突破は難しいでしょうか?
3つのポイントを押さえれば文系でも内定獲得可能!
結論、文系でも大手化学メーカーに内定することは可能です。これまでに何人も内定者を輩出してきたので、その経験から伝えます。
文系学生が化学メーカーに内定を得るために大切な点は、自己分析、企業研究、選考対策の3点を徹底的に高めることです。
他者よりも高いレベルで自己分析と企業研究をおこない、ES添削や面接練習も高いレベルで対策できれば、最大手の企業でも内定を獲得することができます。
化学メーカーは、商社やコンサル、広告マスコミなどの人気業界に比べ比較的ライバルが少なく、就活としては戦いやすい業界だと感じています。
本質的な対策をすればチャンスは十分あるので、ぜひ本気で就活対策に取り組んでいきましょう。
自己分析や業界研究の方法は以下の記事でまとめているので、実践して自身や業界への理解を深めてください。
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②TOEICで700点以上を目指す
化学メーカーは、海外からの原料調達やグローバル市場での製品展開をおこなうことが多く、英語力を持つ人材が求められる業界です。そのため、選考を有利に進めたいならTOEICで700点以上のスコアを目指しましょう。
TOEICで高スコアを取得すれば、英語力があることを客観的に示せます。さらに、語学力はTOEICスコアだけでなく、取得までの過程もアピール材料になります。
たとえば「部活動と勉強を両立してTOEIC730点を達成した」など、努力や具体的なエピソードを交えて伝えることで、英語力の高さとともに継続力や効率の良さも同時に伝えることが可能です。
TOEICで700点以上を取るためには、日々の学習を計画的に進める必要があります。同じ問題集を繰り返し解いたり、スキマ時間に単語を覚えたりするなど効率的に勉強し、目標達成を目指しましょう。
730点以上を目指す勉強法はこちらの記事で解説しているので、計画的に学習して高得点を目指してください。
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③スカウトサイトに登録して化学メーカーとの接点を増やす
化学メーカーには、大手以外にも魅力的な企業が多くあります。ただし、自身ですべての穴場企業を見つけるのは難しいため、企業側から気になる学生に選考案内を送れるスカウトサイトへの登録がおすすめです。
スカウトサイト | 特徴 |
---|---|
キミスカ | 3種類のスカウトから企業の本気度を測れる |
キャリアチケットスカウト | 事前の診断結果を見て相性の良い企業から連絡をもらえる |
OfferBox(オファーボックス) | 大手企業の登録数が多い |
スカウトサイトでは、プロフィールや興味分野を見た企業が学生に対してアプローチできます。そのため、通常の選考ルートでは得られないインターンや特別選考の案内を受け取れるケースもあります。
化学メーカーとの接点を増やして選択肢を増やすためにも、スカウトサイトに登録してみてはどうでしょうか。
以下では文系のメーカー就職についてキャリアコンサルタントが解説しています。「本当に化学メーカーに入れるのか不安」という人は、ぜひ確認してみてください。
理系・文系別の対策をして希望する化学メーカーの内定を勝ち取ろう
化学メーカーは理系学生が活躍するイメージが強いですが、文系学生でも挑戦できる職種が多数あります。それぞれの得意分野やスキルを活かした選考対策をおこなうことで、自分に合った化学メーカーでのキャリアを実現可能です。
化学の専門分野を担う傾向にある理系学生は、自身の研究内容や専門知識をアピールできるように、学校での研究に励みましょう。一方で文系学生は、コミュニケーション力やグローバルな視点を活かせる職種がおすすめです。
ここまで解説した化学業界の商流を理解したうえで理系・文系別の選考対策を実践すれば、志望企業の内定を獲得しやすくなります。後悔なく就職活動を終えるためにも、ポイントを押さえた選考対策をおこない、志望度の高い化学メーカーの内定を勝ち取りましょう。
アドバイザーコメント
加藤 賀子
プロフィールを見る化学メーカーは社会貢献度が高く魅力的なキャリアが期待できる
この記事では、化学メーカーを目指しているあなたが、迷いなく自信を持って就職活動を進められるように、業界のことをさまざまな視点から詳しく解説しました。
化学メーカーの将来性や今後の動向、職種理解、活かせる強み、選考のコツなど具体的にイメージできたのではないでしょうか。
あなたが目指している化学メーカーは、日本のみならず世界の社会課題を解決していくために必要な業界です。喫緊に取り組んでいかないと、私達人間の存続の危機にも関連する可能性があります。
化学メーカーは高度なスキルが求められる分やりがいも大きい
化学メーカーは業務を進めるなかで難解な部分も多い分野のため、大変な場面も多いかもしれません。しかし、あなたの頑張りで救われる人達も多いので、自信を持って働ける業界でもあると感じています。
この記事で習得した知識を活用し、スムーズに選考が進められるように祈っています。そして、自分自身にとっての素敵なキャリア・ライフプランを構築できる社会人としての門出になることを心から応援しています。
執筆・編集 PORTキャリア編集部
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記事の編集責任者 熊野 公俊 Kumano Masatoshi
3名のアドバイザーがこの記事にコメントしました
キャリアコンサルタント/産業カウンセラー
Yoshiko Kato〇人材会社で約15年間、18,000人以上のキャリア相談を受けてきた。独立後は企業や大学、個人と契約し、キャリア構築の支援をおこなう。キャリアコンサルタント歴は20年以上
プロフィール詳細キャリアコンサルタント/上級心理カウンセラー
Fumiko Furuta〇キャリアに関する記事の執筆・監修や、転職フェアの講演、キャリア相談、企業や学校でのセミナー講師など幅広く活動。キャリア教育に関心があり、学童クラブの支援員も務める
プロフィール詳細キャリアコンサルタント/就活塾「我究館」講師
Hayato Yoshida〇東証一部上場の人材会社で入社2年半で支店長に抜擢。これまで3,000名以上のキャリアを支援。現在はベストセラー書籍「絶対内定」シリーズを監修する我究館でコーチとして従事
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